カチ勢頑張る   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第32話 本拠地

シャドウ誕生の話を聞いた後は、現時点で存在するシャドウの本拠地についての説明を受ける。シャドウの本拠地に関しては、タキオン船団と敵対していた勢力の元母星だとか。魔力が潤沢に存在し、MPの回復速度は2倍以上になるがシャドウの発生率は2倍どころか数十倍。主人公が生きていた頃は本拠地の惑星の表面積の半分程度を支配していたらしいが、今では極僅かな面積しかない。

 

「直径6500㎞ってことは、火星とほぼ同じサイズだな」

「火星の直径って地球の直径の半分だっけ?それなら表面積は地球の1/4だけどそれでも広いな」

 

ユリクリウスがシャドウの本拠地について、火星の直径とほぼ同じことに言及したが、それなら地球と比較したら小さい惑星だ。海はないが、小さい湖は沢山ある感じ。この惑星のほぼ全地表にシャドウが犇めいているとか根絶するのに何年かかるんだ。惑星ごと破壊した方が早いんじゃないか?

 

主人公が居た頃には表面積の半分程度を支配していたようだけど、現在は撤退を繰り返し10㎞四方の極僅かな面積にしかシアリーの占領領域がない。そしてつい最近、その極僅かな面積の隣に巨大なポットが作られて大型のシャドウが量産されているとか。もうシアリーの占領地域は、風前の灯火なわけだ。

 

「この惑星が全てシャドウに呑み込まれれば、次はこの本拠地にいるシャドウが他の惑星に移動するようになります。そうなる前に、戦線の維持と巨大ポットの破壊をお願いします」

 

シャドウは各惑星にポットを産み付けて、その星の魔力を吸い上げることでシャドウを増やしていくけど本拠地でもその形式は変わらないのか。いよいよ不味い状況だからこそ呼んだんだろうし、このシャドウの本拠地が完成してしまったら各惑星へのシャドウの派遣速度が増加する。となると、地球にも影響は出そう。

 

「……本拠地に行く前に1つ言っておきたいことが。現段階でレベル10以下のシアリーって何人いるか把握していますか」

「10レべ以下であれば約89万人ですね」

「じゃあその人達のノルマの撤廃と、日本への帰還提案をして欲しい。自分はぶっちゃけこっちの方が快適だから良いけど、どう考えてもそこら辺の人は戻りたい人の方が多いだろうから」

 

4人でパーティーを組み、本拠地に行く前にこちらからの要求を通す。報酬はちゃんと用意されていたけど、ゴールドより下位層への配慮の方が良いだろう。自分からの提案に対し、真剣に考え込んだシウラさんはたっぷり10秒は黙った後、こちらからの提案を認めた。

 

……いやまあ、日本に戻りたい人が多いかは分からないけど下位層が89万人もいるならその中でも最低3割、30万人ぐらいは日本に帰りたいはず。元の身体にも戻れるし、望まぬTSをした人にとっては朗報だろう。なんか女性になっても生やせる上に、男性のそれと快感は同じらしいが。

 

日本に帰る提案をするということは、タキオン船団の嘘や悪事も一部開示しないといけない。そもそもかなりタキオン船団に対して猜疑心を抱いている人が多かったから、これで完全な不信に至る人は多いだろう。……帰れるかどうかはタキオン船団側の良心次第なんだよな。魂をこちらの身体に持って来たと最初の頃の説明ではしていたけど、それも恐らくは完全な嘘じゃない。脳と一緒に魂とかいうよく分からない概念も移植していたのだろう。

 

そんなこと、当然自分達には出来ないんだから最終的にはタキオン船団頼りである。自分達に力がなければ、対等な交渉は出来ない。極論を言えば、タキオン船団側が「もういいわ」とキレた瞬間に自分達全員宇宙へ放り出されて全滅する可能性もある。……まあ相当なリソースを費やしているだろうし、それをしたら共倒れになるだろうからこっちがこれだけ生意気なこと言っても追い出せないのだろう。

 

黒猫に個チャで今回の件を伝えたら、キャンプ船に乗り込んでシャドウの本拠地まで一直線。どこにでも30秒でワープする船とか相変わらず科学技術は凄まじいな。距離の概念がない。ただどちらかと言うと、タキオン船団の元は精神に関わる技術が発展してから科学技術が発展した感じがするんだよな。魂の容量とか浄化とか何となく意味は分かるがよく考えれば考えるほど意味不明で原理不明だぞ。

 

「アクアさんは豪運スキルらしいけど何で火力指数あんなに高かったの」

「えっと、アーチャーにクリティカル関連スキルで1つ死にスキルあったの覚えてますか?」

「ああ、クリティカルショットか。クリティカルダメージ150%でジャストガードクリティカルアップと並ぶ威力上昇スキルなのにクリティカル率が下がるやつ」

「ついでに、クリティカル率が下がる代わりにクリティカルダメージが上がる武器スキルもありまして……」

「……今のクリティカル率とクリティカルダメージ倍率教えて」

「クリティカル率は-50%、クリティカルダメージ倍率は342.144%。でも豪運のおかげで全攻撃が確定でクリティカルです」

 

アクアさんはクリティカル率が下がる代わりにクリティカルダメージが伸びる装備を大量に詰めていたようで、このゲームは最低クリティカル率が5%あったからそれに賭けるロマン型だったようだけど豪運スキルを手に入れたことで全ての攻撃が確定でクリティカルになったらしい。これは同じクリティカル型として羨ましいな。

 

自分はクリティカル率を上げるために装備のスロットを何個も使用しているけど、アクアさんは豪運スキル1つで済んでいるとのこと。恐らくデメリット持ちのクリティカルダメージを上げるスキルも詰め込んでいるのだろう。そしてデメリット持ちのクリティカルダメージが上がるスキルは大体デメリットがクリティカル率減少。デメリット踏み倒しはそりゃ強いわ。

 

あとはランダムでデバフを与える技が狙ったデバフになったりアイテムドロップ運が異常に良いなど最早チートの領域である。というかよく考えたらモルモットさんはガンナーだし、ユリクリウスは斬撃飛ばせるから近接しなくて良いし、自分が提案しなくても自分が敵を引きつけている間に残り3人が火力出す形での戦闘になりそうだな。

 

「着いたか。……降りるのすっげえ嫌なんだけど」

「変態カチ勢が先頭行ってくれるでしょ」

「お願いします。クロワッサンさん先に降りて下さい」

「……まあ一番槍は貰うわ。いきなり攻撃飛んできたりするかもしれないしな」

 

3人に先に行けと言われたので降りると、シアリー側の占領地域のようで、シアリー側の簡易拠点もある。流石に敵が集まっているど真ん中は無かったか。

 

「ん?新入りか?いや違う!?地球組か!?」

「フィルさん!?」

 

周囲を見渡すと、1人の大柄な男の人が現れるけどこの人NPCで出て来ていたフィルさんだ。クラスはソードマンで、ソードマンの戦い方をレクチャーしてくれる役割。優しい性格で面倒見が良かったけどあくまでそれはゲームの中での話だからちょっと警戒する。

 

「早すぎるだろ!?上は何考えてるんだよ!?155レべ!?せめて200レべになってから来てくれ!」

 

あ、でもゲーム通りに良い人っぽいな。そして200レべになってから来てくれというだけあって、フィルさんのレベルは231レべ。たぶん現場でのリーダー格なのだろう。

 

ふと、シャドウとシアリーが戦って壁になっている方を見ると大分苦戦しているというかシャドウの数が多い。というかシアリーの数が少ない。あれでよく戦線を維持出来ているな。

 

というわけで移動用の技であるソニックサイドを駆使してシアリーとシャドウの壁を超え、シャドウだらけの地点に着地。おお、ダメージが1だけじゃなくて2や3がある。フィルさんが「待て、早まるな!」とか言ってるけど知らん。とりあえずいつものようにヘイト上昇スキルを使用する。

 

直後、凄まじい数のシャドウが押し寄せて来るけど二桁ダメージにはならないな。そうこうしているうちに残りのパーティーメンバー3人が現れて端から順番に倒していってくれる。やっぱ200レべにもなるとシャドウも硬いのか、かなり耐えるな。

 

しかしどう考えても、周囲のシアリーより早く狩っている地球組のパーティー。約一名頭のおかしなシアリーがこのシャドウ密集地域でヘイト上昇スキルを使用しているから敵が滅茶苦茶集まって来るし、それを纏めて葬っているお蔭でレベルが上がる上がる。

 

「前進……してるぞ……」

「全員あの地球組のシアリーを援護しろぉ!」

「あれで死んでないの!?どうして!?」

 

時々現地組のシアリーの声が飛んでくるけどこいつら200レべオーバーなのに思っていたより弱いということはスキルの詰め込みが上手くいかなかったのか、単純に動きが悪いのか……。

 

というか前進していることに驚いているということは全く前進出来ていなかったということか。どんどん占領地は狭くなっていってたみたいだし、かなり戦況は苦しかったんだろうな。……この程度のシャドウを狩るだけなら、地球組の上位層はあと3ヵ月あれば届くだろう。シウラさんの想定していた1年という準備期間は長かったな。

 

やがてこの場の数が減る頃には、大型のシャドウしか残っていなかった。メカビートルみたいなボスタイプじゃなくて、戦車型や巨大なぬいぐるみ型など自分の身体よりも大きなシャドウ達だ。地味に1発5ダメとか出るからクリティカル受けたら12から13ダメぐらいは行きそう。HP今7000ぐらいあるけど。

 

というかこれよく考えたら-75%で5ダメだから一発20ダメはあるのか。自分の高い防御力とダメ軽減率が無ければ一発500ダメはありそう。一般シアリーだと数秒で死ぬな。だからユリクリウスを始め、モルモットさんやアクアさんも遠くからの攻撃になっているんだけど。

 

というか流れ弾があたっただけでユリクリウスのHPゲージがどんどん減る。これはユリクリウスには流れ弾すら発生させないよう、全部受け切らないと。

 

「目の当たりにすると本当に凄い……」

「な、何者なんだ彼は……?あんなこと、アーノルドすら出来なかったぞ」

「変態カチ勢です」

「アーノルド、があの主人公の名前か。流石にカチ勢ではなかったのか」

 

何か後ろで会話パートが始まっているけど現在進行形でフルボッコにされ中なので助けて下さい。空中でのハメは止めて下さい自分が攻撃出来ないでしょ。まあこっちのHPの減り方は緩やかで自動回復もあってほとんど減らないから、このまま1時間でも2時間でも攻撃は受け続けられるな。

 

 

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