「クエストは何でも良いですか?」
[ライト:どこでも良い]
[らんらん:喋れライトォ!]
「ええ……普通に喋った方が早くない?」
「だよね?ライトはこの世界になってからもずっとチャットだけど」
自分とユリクリウスのパーティーにライトさんとらんらんさんが加わり、パーティーリーダーはユリクリウス。クエストを受注するのはパーティーリーダーの役目だからユリクリウスがどこでも良いかと聞いて来たけど、あれはたぶん惑星ドゥームズの探索任務を受けるつもりだろうから自分からの要望は特にない。
ライトさんがずっとチャットで喋りかけて来るのは最早コミュ障ってレベルじゃないけど自分もチャット機能で喋りたくなる気持ちは分かる。ただ、普通に喋った方が早い。
まあもしかしたら声が変な設定のままという可能性もあるし、意思疎通ができるなら何とも思わないけど。このライトさん、課金額は累計で6000万円overと比較的ヤバイお方。自分は高校の頃からアベレージで年間60万円ぐらいだから、合計で400万ぐらいしか使ってないけど、ライトさんは年1000万ペースで6年間ずっと最前線でのプレイしているから色々とヤバイ。
というか年1000万ってどの辺に課金しているんだろうと前に聞いたことがあるけど、普通の課金勢ではまず買わない、重課金勢でもほぼ買わないレアドロップ率+400%を高い金額でまとめ購入していた。いやレアドロップ率+200%や+300%が無料でバンバン配られているのに、そこに課金する意味はあるの……?
ただまあ、そういう無駄な課金が出来るぐらいにはほぼ全ての課金要素で大金を突っ込んでいる上、細かい仕様も把握しているから装備も当然10スロット変態仕様。具体的にはMPが400を超える。自分のMPは200程度だし、ユリクリウスや火力特化型の廃課金でも大体が250ライン。300を超えたら変態と呼ばれるMP盛りの世界で1人MP400の装備を用意できるのは頭おかしい。
このMPはあればあるほど、技や魔法を使用し続けることが出来る。ライトさんのクラスはメイジ/キャスターという、魔法攻撃しか考えていないアタッカーだ。MPがあればあるほど継戦力が上がるし、火力も群を抜いているからチーム対抗戦や鯖対抗戦の時は圧倒的エースです。ライトさんがいると、ひたすらに戦場を電撃や氷塊が走る。
息切れをしない魔法使いは、まあ恐ろしい存在だ。そんなライトさんの付き添い人であるらんらんさんはアーチャー/キャスターという完全にサポート特化なクラス編成。攻撃弱体化の弓矢を撃ち込み、防御弱体化の呪符を使い、支援魔法や状態異常回復魔法で補佐をする。特にキャスターの状態異常回復魔法は、状態異常を回復するとMPの回復速度が上がったり攻撃力が上がったりする。マジ便利。
ついでに課金者同士、どれぐらい突っ込んだかというのは分かるんだけど、らんらんさんはかなり微課金よりの人。たぶん月2000円とかその程度じゃないかな。それで第一線で活躍していた人だから頼もしい。
「前回アブダクションを受けた惑星ドゥームズの探索任務にしました。
……やっべ緊張して来た」
「2回目もアブダクションされるなら毎回アブダクションを覚悟した方が良いね。
ただタキオン船団も対策をアップデートしたらしいし、しばらくは来ない可能性もある」
[ライト:二刀流拾いたい]
[らんらん:私も緊張して来ました(*´꒳`*)]
ライトさんがチャットで喋るから、らんらんさんもチャット勢になってしまった。らんらんさんせっかくの可愛いキャラ声が勿体無い。というかこの世界、今気づいたけど女性率が高いから男性視点ハーレムだな。
確か、ゲームをプレイしている層は男性8割女性2割。ゲームの中の性別は男性2割女性8割。中身男性の女性が多いハーレムって需要どこだよ。というか今気づいたけどチーム幼女同盟はユリクリウスと自分以外全員アバターは女性だから外から見たらユリクリウスが完全に黒一点だ。自分はもう、完全に女の子にしか見えないし。だが男だ。
クエストを受注して、キャンプ船で移動するまでは前回と同じ流れ。今回はライトさんとらんらんさんがいるからちょっと賑やかだけど、このキャンプ船とんでもない速度で移動というかワープするのでものの15秒で惑星ドゥームズに到着する。ゲーム的な都合かと思っていたキャンプ船待機15秒だけど、本当に15秒だったのか。
そして今回はアブダクションが起きないので、惑星ドゥームズの大地にそのまま立つことが出来た。日本の昔ながらの街並みが続いているような感じだけど、基本的に住む種族が鬼で大きいから建造物も大きく感じるな。
『北にシャドウの反応があります。殲滅をお願いします』
寺みたいな建物もあるなと周囲を見渡していると、オペレーターの人から連絡が入る。ゲームだと同じNPCで可愛い声だったけど、完全に別の人の声だね。
探索任務なので、この北にいるシャドウの殲滅はすぐに達成しないといけないわけではない。たぶん拠点みたいなのが生えているだけだろうし、釣りとか採掘とかして良いかな?
[ライト:釣りが今までのように秒で釣れるとは思えないからさっさとシャドウ倒す]
「俺も直接シャドウの拠点叩くだけで良いと思う。採取系はもうちょっと時間ある時にやろうぜ」
「それもそうか。
らんらんさんはボス直で良い?」
[らんらん:早く戦いたい]
「らんらんさんも戦闘狂だった……」
少し話し合った結果、採取系はあと回しにしてシャドウの拠点を叩くことに。ゲームの世界ではポットのような拠点を送り付けて、そこでシャドウを繁殖させるというのが大いなる闇のやり方だったけど、現実でも同じ感じなのかな?
しばらく移動すると、シャドウが出て来るけどレベル22。弱い。というかレベル把握した瞬間にライトさんのノンチャヒョウカセンで凍り付いた。ノンチャというのはノンチャージの略で、魔法は基本チャージしないと威力が高くならないが、ライトさんはノンチャで魔法の威力が上がるスキルを大量に取得しているのでノンチャで馬鹿みたいな火力が出る。
ただその分、MPの消費は早くなる。まあ1秒チャージで1発200万ダメージなのを、1秒間に3発撃って300万ダメージ出すみたいな感覚だからMP特化でも中々使い手はいないのが現状。うーん、これはカチ勢の出番ないな。
拠点に近づくと、一斉にシャドウが出て来るけどほとんど20レべ代前半なのでカンスト120レべしかいないパーティーが苦戦するはずもなく、技や魔法の使用感を試すだけで終わった。レアドロップは何もなし。収穫もなし。つまらねえ!
ただ、これでアブダクションが毎回発生するわけじゃないことを確認することが出来た。この後はふおにの森で検証をしていくようなので、自分とユリクリウスは撤退しよう。
「おかえりー。どうだった?」
「ステータスの暴力でクリアして来た」
「せっかく二刀流になったのに抜刀する必要すらなかった」
「あー、ドゥームズの探索任務とかだと魔法職の殲滅速度が一番早いだろうねえ」
クエストを途中で抜けて、チームルームまで移動するとエルフ耳のゼルさんが出迎えてくれた。うちのチームのエースで耐久寄りのキャスター/メイジだ。
「じゃあ、もうクエスト行けるってことだね。
やった。海底神殿には一回行ってみたかったし、行ってこよ!」
「海底ステージは確かに楽しみかも。景色とか綺麗そうだし」
「しょっくしゅ、しょっくしゅ、待っててねー」
「……俺、ゼルさんがガチの女性って信じられないんだけど」
「奇遇だな。自分もゼルさんの動画を見てなかったら信じてない」
ゼルさんはクエストにいけるようになりそうなことを告げると、一目散に惑星オパルの海底神殿へ行くと言ってチームルームを飛び出して行った。口ずさんでいる言葉を聞くに、海底神殿にいるアイツに会いに行くのだろう。
オパルの海底神殿には、エロゲに出て来るようなローパーがいる。知性のない原生生物なのでシアリーを襲って来るし、地味に拘束攻撃は結構なダメージが入る。30レべから40レべ程度の中級者までなら。
……これ、自身の性欲を満たすために自殺しに行ってない?流石に止めたいけど止める必要があるのかも謎。どうせ120レべなら推奨レベル36レべの敵の攻撃なんて1ダメだけだろうし、ゼルさんも自動回復装備は持っているから延々と触手に虐められるとかそういうシチュエーションを受けられるんじゃないかな。
何せ、動画投稿サイトへローパーに虐められる自キャラの様子を何本も投稿する1鯖でもトップクラスの変態だ。ついでにその動画にゼルさん本人の声が入っており、女性ということが判明している。触手で虐められる自キャラを見て第一声が「良いなー」は狂ってるんよ。このゲームのランカー達こんなのばっかか。
しばらくすると、ゼルさんからメールが届くけどローパーの触手に絡まれる動画を撮ってチームメンバーに送り付けていた。随分とこの世界への適合が早いっすね。どこで自立式のカメラ買ったんだよ。タキオン船団の技術力なら普通に売ってそうだし、その動画をメールに貼るのも出来そうだけど習得速度が異常!
「ゲームだと直接性的な描写はなかったけど、現実だと生々しいな」
「……自分も女性型のモンスターの攻撃でも受けて来るかー。アラクネとか良い感じに拘束攻撃あったし」
「あ、それは録画撮れたら撮って」
「……なあ、今思い出したけどユリクリウスの好みって」
「ショタが男の娘のおねショタ」
「親友の縁切って良いか?」
自分もMよりの人間だという意識はあるので、ドン引きすると共に少しだけゼルさんが羨ましい気持ちもある。ちなみにゼルさんはその後、回復薬を使い切るまで触手風呂に入ってました。そんなに死にたいのかコイツ。