Another School idols diary 作:藤原久四郎
Another diary
東京都千代田区。秋葉原と神田と神保町と御茶ノ水。東京の中でも遠方から人の集まる特色のある町に囲まれた場所に国立音ノ木坂学院はあった。
近年の生徒減少に際し廃校が決定した音ノ木坂学院だったが地元住民や在学生徒からの強い要望もあり今年度の入学希望者が多数の場合、学園は存続することになった。
「ここで……あってるよな?」
勝手知らぬ土地故に、片手に地図をもち音ノ木坂学院の校門の前に立ち尽くしている青年、背はどこにでもいそうな程平均値、ヘアスタイルも乱れず整わず、来ている制服も目につかない程度に着崩している音ノ木坂学院開校以来初めての男子生徒……泰原陽月は不安げに言葉を漏らした。
「なんでまたこんな女の花園に来てるんだか」
元々東京から離れた地方住みの陽月だったが、親の仕事の関係で高校一年生の始業時期の前に引っ越しが決定していたのだ。だが親の諸々の手続きなどで時間をとられてしまい、結局引っ越しの移動時期が四月初めになってしまっていた。
その結果、本来編入するはずだった学校の試験を受けれず、別の学校を探していたのだが、たまた家からも近い音ノ木坂学院が本当に偶然見つかったのだった。
「にしても、だからってわざわざ今年度から受け入れなくても……いや、受け入れてもらえるからこうして路頭に迷わずに済んだんだけどさ」
元々男子禁制の花園だったらしいのだが廃校の危機もあり、生徒を増やし尚且つ学園存続のため今年度から共学になったとのことだ。
流石に今年から共学になったのだから、今年度は受け入れ不可かと思いきや学園理事長は問題ないとのことだったので家族総出で驚いたのはまた別の話。きっと共学になり、男子生徒の入学を目前にした丁度いい参考といったところだろうか。体の良いサンプルだろうか。
流石に学園一人唯一男子なのは少し心細いがあまり贅沢は言っていられる立場でもなかったので入学ということになったのだが――
「入っていいんだろうけどなんか緊張するな……」
これからの新生活に期待と不安がよぎり、校門の前で立ちすくむこと数分がたっている。深呼吸をし、一度気持ちの整理を図る。がやはり緊張は拭うことができなかった。
腕に付けた親からのプレゼントである少し高そうな時計の針を見る。時刻は九時をさしており今日の目的である学園理事長からの説明は九時半からだ。
まだ時間に余裕はあるとはいえこのままではよくないと思い、意を決して校門をくぐろうとした時、
「うわ~! 遅刻だ遅刻~! 」
後ろから大きな声を出しつつ全速力で走ってきたのは音ノ木坂学院のものに見える制服に身を包んだ女子生徒だった。前を見ているのか怪しい勢いでこちらにまっすぐ向かって来ている。徐々に近づいているのにも関わらず、あまりに咄嗟の事で足が動かない。
「うわっ! ぶつかるーっ! 」
突然の出来事に動くこともかなわないまま、唯一出来たのは一言言葉を漏らすことだけだった。
「なんで避けれないんだよ……俺は……」
そしてそのまま何の受け身も取れないまま走ってきた女子生徒にぶつかってしまう。
倒れこむ際には一点の曇りもない六月の青々として空とそれに負けないくらい真っ直ぐな目をした女の子の瞳が目をくぎ付けにした。
こうして泰原陽月の音ノ木坂学院での生活が始まる。
説明多め……0話みたいな感じです。