Another School idols diary 作:藤原久四郎
爆発、してくださいなぁ。
今日も昨日も用事はないさ! 女の子もいないさ! 家にある料理だけがクリスマスだ!
では始まります
イルミネーションも終盤に差し掛かったのだろうか、あらゆる光が列をなし、輝きを増しながら点滅を増していく。息を吐かせぬ展開に俺と凛は茫然とライトアップされるツリーを眺めていた。片手の違和感はもはや気にならなくなり、隣にいる凛と俺だけが世界の中心で二人きりでいるかのような錯覚。それ程までに圧倒されるそんな光景に呑まれる、最終的に終わるまではもはや口も開かぬままであった。まるで魔法の様に。
そして、イルミネーションは終わりを告げ、先程までのライトアップが始まるまでの状態に一帯が戻っていく。そして辺りの人々は例外なく感嘆の声を漏らしていた。それは勿論例外なく、俺たちもであった。
「綺麗……だね」
「ん、綺麗だ」
「イルミネーション綺麗だね」
「あぁ、綺麗だな」
「ツリー大きいね」
「んぁ、おっきいな」
「人、沢山いるね」
「ちょっと気持ち悪いくらいにな」
「…………凛の事どう思う?」
「ん……んんん? それはこれまでの事と関係ない」
「ちぇっ……陽月くんはノリが悪いにゃー」
「確かに普段と違う格好だけど、似合ってるんじゃね」
「適当なフォローはいらないにゃ!」
イルミネーションの魔法が解け始めたのか、辺りの人々がまばらになり始め、ようやく体の自由がきき始めた。それに伴って腕の違和感……それに痛みもなくなっていつも通りの感じになってきた様だ。
「ん……?」
と、ようやく違和感の正体に気が付く。
……違和感の正体っておいおい、そりゃじんじん熱く燃えるように感じるわけだよ。
「んー? どうしたの陽月くん」
「どうもこうもないだろ……腕、腕だよ」
「腕…………あっ」
凛はすっかり忘れていた様な、そんなアホみたいなつぶやきを漏らした。
「確かに密集してたし仕方ないけどよ――」
「み、見た? ち、違うの? 別に陽月くんの事がどうとかそういうんじゃなくてただただただただ手がぶつかって絡まってそれでそれで?!」
「お、落ち着け! 確かに柔――」
「にゃあああああああああ!!!!」
「げふっ!?」
凛の動揺の原因、俺の腕に絡められていたもう一つの腕が全力で振りほどかれ、何故か正拳付き。そして素早く俺の手に握られていた荷物を引っ張って回収したかと思えば、目にも止まらぬ速さで駆け抜けていった。今度は確実に間に合わないレベルで、だ。
「……超いてぇ」
さて、痛みもそれなりに襲ってきているがどうするか。凛を追っかけようにももはやどこに行ったかすらわからん。……適当にフォローのメールでもいれとけばいいのか?
「陽月くーん! おーい!」
「ん? あぁ、花陽。なんとも丁度いい所にやってきたな。早速だが凛の居場所を教えてくれ」
「今さっきどこかいったばかりじゃないの?!」
「えっ……幼馴染レーダーとかないの?」
「ないよ?!」
クソ、よくある幼馴染には居場所がばれちゃうとかそんなトンでも適当設定ないのか。
「んんん……じゃあどうしよ。とりあえずメールで『お疲れ』って送っといたけど」
「もう追いかけないつもりなの?!」
「あっ返信だ。『ごめん急用もう帰る!』だってよ」
「えぇぇぇ……凛ちゃんそれでいいの……?」
「まぁそう言う事だ。で、どうしよ」
メインのイルミネーションも見終わってしまったし、店もあらかた見て回ったしなぁ。そういえばあの荷物全部凛のだっけ?
「どうせ暇なら花陽の買い物にでも付き合うぞ。さっきまでずっと俺たちの後、ついてきてただけだったろ」
「えっ、別にいいよ。花陽別に欲しいものと……か……」
話しながらの事だが、何故か花陽の視線が妙に落ち着きがない事に気が付く。それになんでだかわからないが、妙にキラキラしてるような……?」
「ああああっ! あれは伝説の一日限りのアイドルショップ! 早速行きましょう!」
「え、あっ……ちょっとぉぉぉぉ!」
「ああぁぁっ!? あれは伝説の一日限りのお米販売店! 早速行きましょう!」
「おおおおおおい! 欲しいものないんじゃないのかよおおおおお!」
俺の叫び声は虚しく満点の星空に吸い込まれていき、無駄にいきいきとしている花陽に引っ張られるがまま、アイドルショップにて荷物持ちを頼まれ、お米販売店では何故かこの季節にある新米の運びを頼まれ……。
「って結局体のいい荷物持ちじゃねぇか!」
凛の時と同じく、男の特権である荷物持ちの栄誉を与えられたのであった。なんともまぁ……前言撤回、丑の刻参り行きたい。
「はぁぁぁぁっ……大満足ですぅ……」
「……それは良かったな」
「陽月くん! 次はあそこに――」
「いきません」
「じゃああっちに――」
「いけません」
「なんでですかぁ……」
「そりゃ花陽が買った荷物に聞いてくれ」
動けるはずがないだろう。両手にはアイドルグッズ。背中にはどうやって設えたのか不明な籠に入れられた米。重さにして20キロ分ぐらいまとめてあるのではないだろうか。……海未さんのトレーニングメニューでもこんなにハードじゃ――それはもっとキツいわ……。
「仕方ないですね、今日は帰りましょう!」
「そうしてくれ……」
にしてもどうして俺の周りには、自分の荷物を自分で持つことができない奴らばかりなのだろうか……。
「あの……やっぱり持ちましょうか……今更かもだけど……」
「もう大丈夫だ。慣れたし、それにこういうのは男の特権だろ?」
「す、すみません……」
まるでアルコール特有の酔いが切れた時の気まずさの様に、花陽は素に戻ってから自分のしていたことに罪悪感を覚えた様だ。だからと言って今更、といったらそこまでである。俺も女の子に重い荷物を持たせる程腐ってはいないので、花陽の家につくまではこのままで居ようと思っているのだが。
「……本当にすみません」
「いいっていいって、それより道わからんから先導頼むぞ? 如何せん花陽の家、知らないからな」
「…………知らないはずないです」
「ごめん、聞こえねぇ」
花陽との距離が離れているせいか、花陽が小声で喋ってしまうと何も聞こえない。かと言って足を速く動かすのは無理なので、このままの微妙な遠すぎず近すぎの距離で会話を続けざるを得ないのだ。
「あ、そろそろつきます。あと五分くらいでしょうか」
「お、そうか。にしても……なんかこの辺懐かしく感じるなぁ。来た事あったっけ」
「あるんじゃないですか? 最近はないと思いますけど」
「んーわからんなぁ。でもなんか……」
眼鏡の女の子と、歩いた気がする。
「この辺住宅地ばっかりだから、多分似たような地形見たことあるのかも。転勤続きだったし」
「そう、ですか」
気のせいだろうな。そんな記憶、ないはずだ。
「でも私は……ふふっ。なんだか昔を思い出します」
「おい、あんまりはしゃぐと凛みたいになるぞ? クルクル回ったり」
「凛ちゃん? ふふっこうですか?」
「お、おい。今こけられても手の一つも貸せないからやめとけって」
何故か突如楽しそうに回り始める花陽。そしていつからかけられていたのだろうか、花陽の目元には普段していない……メガネをしていた。確か入学してからの間少しだけ見たことが――
『陽月くーん!』
「ッ!?」
「あれ? どうかしました陽月くん」
「い、いや……」
今のは……? 眼鏡をかけた女の子。見たことのある街並み。
俺はここに居たことがある……?
「ああああっ! 陽月くん、雪です!」
頭の中でピースがハマりきる前に、それをかき乱したのは花陽の驚嘆の声だった。つられて上を見れば、パラパラと真っ白い雪がこちらに向かって落ちてきていた。
……仮にもし、過去に何かあったとしても、関係ない……そうだろ。俺は過去を、振り切ったはずなんだから。
「この量なら明日積もっちゃうかもしれないですね!」
「……あぁ、そうだな!」
俺はもう過去は見ない、選ばない。この雪がもしも積もるんなら、その積もった雪が全部とかしてしまうように祈って、もう忘れてしまおう。
瑠衣子の事も――
「あはははっ! 楽しみですぅ!」
今、この瞬間を大切にしたいから。凛と、花陽との時間を。
クリスマス回と見せかけた巧妙なネタちりばめ。
かと言って後々忘れてしまってそうで、ちょっと怖いですが。
一応私の進め方としては、IFがテーマとなっていますので、幾つかENDは用意しています。その起点が瑠衣子……名前だけまたでてきましたこの人です。
√はもしかしたら3.4個くらいになるかも……二つはもう決まってますし。
ではでは、よいクリスマスを(爆発してくださいなぁ