Another School idols diary 作:藤原久四郎
職場にあった差し入れのケーキ、身に染みました。
今回はむさくるしい男のお話。
「ハッピバースデートゥーユー!!!!」
目の前には、大きなケーキ。
「ハッピーハロウィーン!!!!」
目の前には、大きなテーブル。
「メリークリスマス!!!!」
目の前には、一人では明らかに食べられない量の御馳走。
「全部砕け散れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
広い我が家に、呪詛の声が木霊する。
「なあああにがクリスマスだ! なああああにがハロウィンだ! 何がバレンタインだ何が誕生日だあああああ!」
とりあえず、料理をぶちまけるのだけは憚られたので、むしゃくしゃしながら料理をむしゃむしゃ食べる。
「今頃皆はクリスマスパーティーだろうなぁ……」
それは一日前。
『ねぇ陽月くん、クリスマスの日皆でパーティーしようって話なんだけどどうかな?』
『ん……俺がそんなクリスマスの予定が無い奴に見えるか?』
『えっ……誰か一緒に過ごす人がいるの?』
『も、勿論だ。これよ、これ』
小指をピン、と立ててやる。
『よ、余計な事聞いてごめんにゃ……』
『なんかすまんな』
「なんでいらない意地張ってんだよ俺はさああああ!!!!」
むしゃむしゃむしゃむしゃ、うんうまい! ってそうじゃねぇだろ!
「しょうがない、鷹能でも呼ぶか」
『へい鷹能、今からパーティーだ。早速俺の家にこい』
『ん! ヨウかッ! 死ねぇっ! わかった! 今からッ……爆発しろ! いくわ!』
『オーケー、なんか不穏な単語が聞こえるが早く来てくれ!』
よし、一人目は確保した。次はどうしよう。
「そうだ、クレープ屋のおっさんでも連れてくるか」
なんだかんだお世話になってたけど、お返ししてないからな。
「そうと決まればレッツゴーだ!」
部屋着……一昔前のヤンキーの様なプ○マのジャージ姿と、ク○ックスで寒空の下へ飛び出す俺。
「寒いわボケ!」
仕方なくいったん戻り、部屋のクローゼットから厚手のコートを引っ張り出す。全く持ってきていなかった為、なんか家臭いがこの際仕方ない。
靴も、わざわざ大きめの温かいやつに変えてから、今度こそ家を飛び出した。
「クレープ屋は確か、繁華街の方だったな」
家を飛び出し、空が泣き出しそうな空模様であることを危惧しながら、着実に繁華街へ歩を進めていく。とはいっても繁華街もクレープ屋自体もそう遠くないので、移動の過程は記憶がすっ飛んだようにあっという間についた。
「おーいおっさん! 俺の家でパーティーしようぜ!」
「お、陽月……って、なんかお前変だな。頭でも打ったか?」
「細かい事は後! とにかく我が家へ来ないでしょうか来てください暇なんですもうヒルナンデス」
「よ、よくわからんが……お前の頼みなら仕方ない、パーティーとやらにいってやる」
「サンキューおっさん! でもなんでさ?」
「……娘が構ってくれないんだ」
「思春期特有ってやつだ! 諦めろ!」
おっさんも、実のところ一人のハッピークルシミマスというわけだったのか。さながら俺はサンタさんってわけだ。
「あっ、そうだ。もう一人誘いに行ってみよう」
「ん、なんだまだ悲しい一人男のあてでもあるのか」
「んー、いい人だし……話も聞いてみたいから行ってみよう」
「お前人の迷惑考えないタイプか?」
もう一人のあて……『勿忘草』の店長だ。何度かお世話になったし、店長の今の状態もある程度は把握している。……何故か記憶がうっすらだけど。
「というわけで、つきました」
「移動雑だなおい。ってここ……」
「クローズ……クリスマスだからか? お邪魔しまーす」
「お、おい……」
クローズなのにドアを開ける、そんな無礼者を珈琲の香りが迎え入れる。
「ん、今日は休みなのだが――おっと陽月くんか」
「お久しぶりです、店長。早速ですがよかったら今日の俺主催のパーティーに来ませんか? 諸々のお礼もしますんで」
「ふっ……君は優しいな。今日は丁度、誰かを祝ってやりたい気分だったよ」
「……店長、それ以上はいわなくていいです」
今日は楽しい気分だけでいいのだ。負の感情はいらない。……さっきまで家でやってたことはノーカン。
「あぁ、すまない。変な気を遣わせてしまったかな」
「陽月お前俺の時と差がありすぎじゃねぇか?」
「おっとめずらしい、君がいるとは」
「まぁな……久しぶり」
「あれ、お二人ともお知り合い?」
「まぁそう言う事だ」
「浅くも深くもない、そんな腐れ縁ですよ」
「んー今日はそういう詮索はなし! 早速俺の家に行きましょう!」
キ○グ○リ○ゾン、家までの過程は全て吹っ飛ぶ!
今年誕生日をすでに迎えている十七の高校生と、おっさんとおじさん二人。平均年齢は比較的高い俺たちはあっという間に我が家へたどり着いていた。
「という事で、我が家です」
「これはまたでっけえな」
「ふむ、中々にいい家ですね」
「さ、どうぞ」
ドアを開け、お二方を中に入れる。
「おっ、陽月。遅かったな!」
「ってなんでいるんだよ!」
「え、家のドア開いてたから」
「不法侵入!」
俺を迎え入れたのは、一足先に来たらしい鷹能。どんだけ厚かましいんだ俺の親友。
「まぁいい! では、今から男だらけのクリスマスパーティーの開催だ!」
「おうとも!」
「本当は娘と……ぐすっ」
「全く、私は幸せ者だ」
男の、男だけの、男のためだけの祭りが始まる。
さて本編を忘れかけていますが、出番のない男をちょっと書いてみました。
まぁ、その内男どももそれなりに個別回をするつもりではありますが。
皆さまはどのようなクリスマスをお過ごしになったのでしょうか……