Another School idols diary   作:藤原久四郎

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なんだろう、YAZAWAしか書いてない気がしてきた


遠くの景色と部活動

 生徒会室を後にした俺は残りの時間をどうするか思考を巡らせていた。いくつか案はあるがそうだな……。

 そういえば穂乃果さんたちはスクールアイドル結成したという事もわかっているのでそれを見に行くのもいいかもしれない。

 

「よく考えたらどこで練習してるんだ?」

 

 屋上に神社前にいたのできっといろんな場所でやっているに違いない。となると探すのも一苦労になりそうだ。

 

「ここは俺の第六感に任せてみよう」

 

 誰も居ない廊下で頭を抱えながら俺の中の第六感を働かせる。いやそんなものはない。

 

「屋上行ってみるか」

 

 わけのわからない茶番を終えてから一番手っ取り早い屋上を見に行くことにした。

 

 

 

 行くのは二回目になる屋上の扉を開く。するとそこには誰もおらず、風だけが屋上の床を行き来していた。

 

「ハズレだったか」

 

 自分以外の誰も存在しない屋上で風に靡かれながら一人呟く。こういう時に限って感が外れるんだよな。世の中上手くいかないもんだ。

 折角なので屋上から町を見下ろしてみる。別段変わりだてしているわけではない町だが夕暮れ時の淡いオレンジと相まって哀愁の漂う絵になる風景になっていた。

 そんな風景を目にしながら、様々な事を追想していく。編入、そして皆との出会い。そしてスクールアイドル。

 スクールアイドル、か。何故こんなにも惹かれるのだろう。ダンスや歌だって本物のアイドルの方が歌と踊りのレベルも下世話な話だが金のかけられた方だって比べられないくらい違う。

 だが、何かが違う。それが何かはハッキリはわからない。でも今のこの気持ちを、好きという気持ちを大切にしたいと俺は思う。

 きっと好きの先には今見える世界よりももっと広い世界が広がっているはずだから。

 

「って何柄でもない感傷に浸っているんだ俺は」

 

 きっとこの屋上の、夕方の、景色の、独特の憂いに満ちた風に当てられてしまったのだろう。思わず恥ずかしくなりポリポリと頬を掻く。

 

「今日は帰るか」

 

 俺は誰も居ないこの広い屋上を一瞥してから、一呼吸様々な事を逡巡をしてから後にした。

 

 

 

 次の日、そろそろ新入生歓迎会も目前に控え、各部活動でますます勧誘がさかんになっていた。だがそんな流れに乗らない部活が一つ。俺が入部することになったアイドル研究部だ。

 結局放課後になれば部室に入り浸る癖が入部決定から既に身についているのは一見熱心に見えるだろうが、実の所活動らしいものは一切なく、強いて言うならば部長である矢澤にこ先輩と話すくらいだ。

 

「そういえば矢澤先輩ってなんかアイドルらしいことってできるんですか」

 

 毎度来るたびに入れてくれる暖かいお茶を啜りながら、同じくお茶を啜っている矢澤先輩に聞いてみる。

 

「もちろんあるわよ。みたいなら特別に見せてあげるけど?」

「マジっすか、ぜひお願いします」

 

 しょうがないわねー、と少し嬉しそうに座っていた椅子から立ち上がり、扉側の少し広いスペースへ移動する。

 

「じゃあ一回だけだからね」

「はい」

 

 矢澤先輩は息を吸い込み、目を閉じる。一拍おいてから。

 

「にっこにっこにー!」

 

 瞬間、空気が凍り付いた。主に俺の周り全体が。

 右手を上に高く上げその後頭に、次いで左手も同じく頭に添える。手は中指と薬指を中に折り込んだどこかで見たことのある形。

 

「あなたのハートににこにこにー!笑顔を届ける矢澤にこにこー!」

 

 胸の前で両手を使いハートマークを作る。そして右手をピンと伸ばしおでこの前へ。

 

「にこにーって覚えてらぶにこっ!」

 

 再びさっきの手の形を顔の前で両手で作り、最後に満面の笑みを浮かべた。

 

「こんな感じだけど」

 

 さっきまでの愛らしさが嘘のように普段通りの矢澤先輩に戻っていた。

 

「……キッツい」

 

 矢澤先輩の瞳が再び肉食動物のそれに変わる。

 

「アンタ、今なんだって?」

 

 声には怒気が宿っており、言葉選びに失敗したことを察する。

 

「いや、矢澤先輩はさっきみたいな猫かぶりよりも今の方がよっぽどいいと思いますよ、断然今の方が可愛いというかなんというか」

 

 できるだけ当たり障りのない返事で返してみる。咄嗟のことなのであまり上手く言えなかったが正直さっきのは俺の平常心をいとも簡単に消し飛ばすほど破壊力がヤバかった。

 

「そ、そう?まぁアンタの前でくらいは普通にいてやるわよ」

 

 ぶっきらぼうに答えた矢澤先輩は怒っているのかそっぽを向いてしまった。これでも拗ねてしまうのか、だが反応自体はそこまで不味い雰囲気ではないようで安堵の息を吐く。

 よっぽど自信あったんだろうけど……もう俺は見たくないかな。

 

「じゃ、じゃあ私先に帰るからあとよろしく!」

「え、ちょっとまだ聞いてないことが……」

 

 言い切る前に矢澤先輩は素早く部室を後にして帰ってしまい、部室に一人取り残されてしまった。

 まだ食べかけの物とか飲みかけのお茶とか色々あるんですが。と、愚痴を零してもこればかりは仕方ない、後片付けして帰るか。

 時々女の人はこうやってよくわからない行動したりするから、言動にも気を付けないといけないと思った入部後初の部活動だった。

 

「なにが可愛いよ、生意気な……」

 

 咄嗟に鞄を引っ掴んで部室を飛び出したのは失敗だったとにこは今更ながら後悔していた。

 最近は女子高なのもあり、異性と意識できる男の人と話したのは恥ずかしいが陽月くらいしかいなかったのだ。

 そんな嫌でも意識してしまうような状況で可愛いだの言われたから思わず照れてしまい今に至るというわけだ。心臓は早鐘を打ち、頬は紅潮している。

 

「はぁ……らしくないわね」

 

 深呼吸して落ち着いたので考える余裕ができ、余計に自分の短絡さに嫌気がさす。素直に嬉しいならお礼を言っておけばいいものをあんな返し方でしか返せないのだから。

 

「帰りましょうか……」

 

 三年生になり初めてである新部員を交えての部活動は、部活動らしいこともできずむしろ失敗の内に終わってしまった。

 

 




少々短めです。
またテンポ悪くなっているので頑張っていきます!
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