Another School idols diary 作:藤原久四郎
午後の授業も滞りなく終わり、特に何も起きずに今日は下校の時間になる。本当は先生からかなり怒られたんだが……。そんなことより朝のヒデコさん達との約束もあるので急いで講堂に向かうことにしよう。鞄に持って帰る用意を詰め込み背中に背負う。
「じゃあ俺いくわ、また明日」
「うん、またね陽月くん」
「また明日にゃー」
一応隣の花陽と後ろの席の凛に別れの挨拶だけしてから、教室を飛び出す。
さて講堂はどっちだったかな……。そういえば俺講堂の場所知らないじゃないか。
勢いよく飛び出して来たので今更戻るのもなんか恥ずかしい。どこかに地図とかないのか?
とりあえず校舎の中ではないだろうから歩いて回ろう。そう考えて昇降口から中庭の方まで歩いて周りを見て回ることにした。だが結局それらしき場所は見当たらず、自分の不甲斐なさが露呈するだけだった。
「陽月くんどうかしたのかしら?」
「うおぉ!?」
「ちょっと、大声出さないで!」
またもや後ろから声をかけられ学院入学から何度目かわからない素っ頓狂な声を出して後ろを振り向く。
声の主は日本人ではないことを感じさせる輝かしい金色の髪をポニーテールした街で会ったら思わず目を引くであろう美しい顔立ちをしていた。
「なんだ、絢瀬会長じゃないですか。びっくりさせないで下さいよ」
「私、そんなに大声出したつもりないんだけど」
俺は意外にもビビりのようだ。自分でそう評価するのもあれなのだが。
「そうだ、丁度いいんで聞きたいんですけど講堂ってどこですか?」
「講堂に行きたかったのね、講堂は私たちの教室とかがある校舎の昇降口から渡り廊下で反対側に行けばすぐわかるはずよ」
思ったよりもわかりやすい位置にあったようだ。俺は方向音痴でもあったのか。
「すみません、ありがとうございます!」
「また困ったことあったら言ってちょうだいね」
「やっぱり優しいんですね会長って!ではまた!」
感謝の言葉を述べ、それから講堂の方と思われる渡り廊下への道を歩き出した。
にしてもやっぱり会長って恐そうだけど案外優しいんだよな。仲良くなったら案外面白い人かもしれない。
そんな事を思っていると丁度渡り廊下を渡った先に「講堂はこちら」と書かれた紙が貼られているのに気がつく。
その案内に従っていくと俺たちのいる校舎の反対側にあるもう一つの校舎の横にくっ付いている感じで講堂は鎮座していた。
講堂と書かれたプレートの下には仰々しい重そうな扉があり、扉を開けると今のこの学校の生徒なら全員入りきるであろう広さの空間があり、映画館のように椅子もかなりの量が備え付けられてある。その広い講堂の中では既にヒデコさん達は待っていた。
「おーいこっちこっちー」
ヒデコさんがこちらに手招きをしているので講堂のホールの方へ早足で向かう。
「そういえば俺って何すればいいんです?」
「あぁそれはね、今度ここで穂乃果たちライブするでしょ?それに合わせて機材の調整とかするんだよね」
成程、だから男手が要るわけか、照明とかの機材って普通に重いからな。女の人にはそんな重労働一苦労だろうし。
「そんなわけでぇ~早速手伝ってくれたまえ!」
今度は隣にいたフミコさんが俺の背中をグイグイと押しながら声高らかに俺の行動を決定してくる。
「じゃあ私たちはマイクとかの機材見てくるからー」
そういってフミコさんとミカさんはホールとは逆側の二階にある管制室に行ってしまった。
「うふふ、二人きりだね~」
フミコさんは耳元であまーい声で囁いてきた。これは非常によろしくない。
「ちょっとからかうのはやめてくださいよ」
「ちょっとくらいいいじゃ~ん」
うーうーとうなりながら抱き着いてくるフミコさん。そんなに密着すればまぁそれはもう色々とよろしくないわけで?そりゃ男ですし。
これはまた今までの皆とは違ったタイプの女性だ。この手の人は関わってきたことが少ないので思わずたじろいでしまう。だが俺は鋼鉄の意志で体に触れている甘い毒のような誘惑を断ち切る。
「俺たち遊びに来てるわけじゃないんですから、きっちりやることしましょうよ」
フミコさんをやんわりと引き剥がし、少し乱れてしまった制服を整える。というのは建前でよろしくないことになりそうな所と感情を理性で押さえつけていた。
「冗談だからマジにしないでよ~」
手をブラブラと振りながらとぼけるものだから俺は呆れるしかない。
「で、本題なんですが俺は何するんです?」
「あぁそれね、はいはい。これ見て照明の位置とか調整してほしいの」
フミコさんはポケットをガサガサと漁り、一枚の紙を手渡して来た。
内容は講堂の全ての照明の向きやら位置を書いた物だった。
「うわぁこんなにあるんですね。こりゃ大変だ」
「そうなのよ、結構重いし大変なのよー。で、丁度良く陽月くんが来てくれたわけよ」
心底嬉しそうに笑顔で言ってくるのだが、要約すれば体のいい雑用押しつけにすぎない。まぁ俺から引き受けたし、最近のなまった体を元に戻す意味で考えれば嫌でもないからいいのだが。
「じゃあ、直してきますね。フミコさんは何するんです?」
「私は君の活躍をじっくりみてるよ」
「仕事してください」
結局フミコさんは指示を出すだけで何もしてはくれなかった。だがそのおかげでテンポよく機材の調整も終わったので、
「最初から真面目にやってくださいよ」
「無理だよ~」
むしろこういう人だから容量が良かったのだろうと勝手に結論付ける。そうでもしないとただ鬱陶しいだけの人になってしまう。
最初は結構時間がかかると思っていたが終わってみれば一時間ほどで終わってしまった。
「おぉ~凄いぞ少年」
「……お疲れ様です」
一通り整備の済んだ機材達を見て、パチパチと拍手しながら賞賛の言葉をフミコさんは俺に言ってくるのだが、結局俺が全ての力仕事をしたものだから終わることには言い返すこともできないくらい疲労していた。そしてどうでもいいが呼び方が少年に変わっている。
疲労で立てない体を見下ろしながら自分でも思ったより体がなまっている事を実感させられた。筋トレとかをしておこうと自分の体の貧弱さに悪態をつきながら頑張ろうと心に決めた。
「よーしじゃあ今日は帰るぞー」
そういって素早く立ち上がり帰ろうとしているフミコさんに合わせて俺も力の入らない足に発破をかけて立ち上がる。
「ご褒美に帰りは何か奢ってやろうか?少年」
「また今度で……帰ります。じゃあまた今度……」
言葉も危うく、もはや扉を開けるのも一苦労だが倒れそうになるのを寸での所で踏ん張り、講堂を後にする。
「またよろしく頼むぞ~」
もはや後ろから響く声に返事をするのも億劫になっており、重たい体を心で引っ張りながら家までの長く思える数十分の帰りの道のりだった。
真姫ちゃんはμ´s加入の時に多めに出しますとここに宣言します!(きっと忘れる