Another School idols diary 作:藤原久四郎
アニメで五分程度のことで一話使うあたりテンポの悪い事悪い事。
「ひ、酷い目にあった……」
嘘のように筋肉痛が消えた体を教室に運んでいる途中、さっきまでの保健室での出来事を思い出しながらすっかり叫び疲れた声で呟いていた。
十分程の間、ことりさんにマッサージ(という名の拷問)を受けていたのだが、それがもう思い出すだけでも足が竦むくらいの事で、始終俺は叫びっぱなしだったが対照的に始終ことりさんは満ち足りた笑顔だった。
天然であれなのかそれとも計算づくなのかはわからないが保健室を後にする時のことりさんは怪しい広告サイトの老婆みたいに肌が艶々になっていたのだからまた恐ろしかった。
絶対トラウマ物だとか考えている内に教室に着く。
教室には行きの半分程の速さで教室に着いていた。これもマッサージのお蔭だろうかと考えながら中に入ると俺の机を凛が座って、その隣に花陽が座っていた。
「あれ、陽月くん筋肉痛よくなったのかにゃー?」
痛がる様子も無く歩いていたからだろうか俺から言う前に言われてしまう。これって説明する必要あるのだろうか。
「あ、あぁ。ちょっとマッサージを……」
「マッサージ?って陽月くんなんでそんなに震えてるの?」
「い、いや……大丈夫大丈夫」
説明するのはやめておこう。きっと俺のトラウマスイッチを押す羽目になる。
そんな俺の気持ちを察してか授業の始まりを告げるチャイムがなる。
「あ、授業の用意しないと。じゃあこの話題はおしまい!」
無理矢理話を打ち切り、後ろのロッカーから授業の用意を出しに行く。次の授業なんだったかな……
「世界史にゃー」
「うおっ!」
考え事をしている最中に後ろから声がするもだから思わず飛びのいてしまう。このパターンも本日二回目でそろそろ嫌になってくる。
「なぁ、俺ってなんでこんなに驚かされるんだ?」
至極順当な質問を驚かしてきた張本人である凛に問いかけてみる。
「なんかビックリさせたくなるというか、隙だらけなのにゃ」
「なんか反応に困るわ……」
気を付けないとまた誰かに驚かされる羽目になると嫌な予感を感じながら次の授業を教えてくれた凛にほんの少しだけ心の中で感謝をしておく。
「よーし、授業やるぞー。早く席に着け―」
「やべ、急がねぇと」
「じゃあまた後でにゃー」
凛が席に戻っていくのを横目で見ながら急いでロッカーから授業の用意を引っ張り出し、自分の席に戻る。帰りは何かすることあったかなと考えながら午後の授業を受けていった。
放課後、μ´sのファーストライブの準備も昨日で終わっているので今日は何をしようかと考えてみる。
そういえば凛と花陽にはライブの事は伝えたがもう一人伝えてない人物がいることを思い出す。
教室を見渡してみるがそれらしき人物はおらず、もう帰ってしまったのかと思ったが丁度今教室から出ようとしている目的の人物、西木野真姫を発見した。
声をかける前に先に出て行ってしまったので急いで鞄に荷物を詰め込んで後を追うのだが、真姫は廊下の一点で壁とその前に置かれている机の前で停止していた。
「何してるんだろう」
何故か俺は教室の扉の隙間からその様子をばれない様にコソコソと覗いている。これでは変質者だのなんだの言われてしまうかもしれないが、今ここで出ていくのも何処か恥ずかしいとわけのわからない事を思いそのまま息を潜めて真姫がどう動くか観察する。
真姫は辺りを確認しながら机の上に置かれていた紙の束から一枚を取り、胸に抱えるようにして素早い動きで何処かへ走り去って行ってしまった。
「あ、行っちゃった」
「陽月くん、何してるの?」
「うおぉ!」
これで本日三回目だぞとかそろそろしつこいと思いながらも体は廊下にぶっ倒れた。
「だ、大丈夫?」
「なぁ、なんでそんなに驚かされるんだと思う?」
心配そうにこちらを覗き込んできている俺を驚かせた張本人である花陽に凛にも聞いた質問を問いかけてみる。
「えーっと……隙が多いから?」
「花陽にまで言われるのかよ……」
自分ではわからないくらいには隙があるのだろうか。
「で、陽月くん何してたの?見てたのって西木野さんだよね」
「あ、あぁ。真姫にもμ´sのライブの事言ってみようかなと思って」
「あれ?西木野さんと陽月くんて知り合いだったの?」
「いや、この前音楽室で会ってさ。それだけなんだが」
よく考えたらあれ以来真姫とは話していなかった事を今更思い出す。この分だとさっきのタイミングで出て行ってもまともに話せなかった気がする。
「それなら、あれってきっとμ´sのライブの告知の紙だと思うよ?」
「何?そうなのか」
教室から出て真姫がいた机の前の紙を一枚手に取ってみる。本当だ、可愛らしい女の子三人が書かれたμ´sのファーストライブの告知の用紙だ。
その机の下に何やら小さな手帳のような物を見つける。
「ん?これなんだ?」
屈んで手に取ってみるとどうやら生徒手帳のようだ。中を拝見。何々……真姫のじゃないか。さっき落としたのだろうか。
「なぁ花陽、この生徒手帳真姫のなんだがどうしたらいいかな」
「それなら確か生徒手帳に住所乗ってるから届ければいいんじゃないかな?」
「でも、明日も会うんだから明日で良くないか?」
「で、でも探してるかもしれないよ?」
そう言われると俺にはどうしようもない。物が無くなれば焦って探すだろうからそれを考えると早く持ち主に返してやるのが優しさだろうな。
どうせ真姫とはライブの事話そうと思っていたし、それも必要ないかと思うが紙を自主的に持っていくということはそれなりに興味あるだろうからもうひと押しして来てもらう方がいいだろう。
「じゃあ俺これ届けに行くわ。花陽も来てくれよ」
「えぇ……一応聞くけどなんで?」
「考えてもみろ、いきなり異性の家に押しかけるんだぞ。いくら全うな理由があるとは言えまだ親密ではない間柄だ。キモがられてもおかしくはない」
如何にもそれらしい言葉で畳みかける。掻い摘んで言えば俺がヘタレているだけだ。
「で、でも……私この後用事が……」
「どうか花陽様!お願いします!」
もうこの学院に来て何度やったかわからない土下座を繰り出す。幸い今廊下に人影は見えず素早く土下座に移行することが出来た。
「わ、わかったから!もう土下座とかしなくていいよぉ~!」
「やったぜ!」
無駄のない完璧な俺の土下座を見て慌てふためく花陽。
勝利を勝ち取った俺は花陽ってもしかしなくても押しに弱いんだろうなとか考え、次に頼み事をする時も絶対に土下座してやろうと決めたのだが、弱みに付け込んだりするのは男としてあまりにも情けないと思うそんな放課後の一コマだった。
次はやっと真姫ちゃんでます!