Another School idols diary   作:藤原久四郎

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やっと真姫ちゃん!
ライブの皆の様子が地味に悩みまする


真姫と約束

「さて、真姫の家まで来たのはいいが……」

「う、うん」

「大きいな……」

「うん……」

 眼前に広がるのは音ノ木坂のどちらかと言えば寂れた雰囲気に溶け込めないまるで漫画やアニメのような大豪邸だ。

 大きさは俺の家、所謂普通の一戸建ての家を二つ並べたくらいの大きさで俺の家にはない庭がある。しかもその庭もかなり広く、なんか大きい木まである。

 なんだこの家は。門まであるし……。しかも家の安っぽい引くだけの門じゃなくて如何にも頑丈そうで金かかってますよーみたいなのは。

「こ、ここで会ってるんだよな?」

「う、うん……」

 おい花陽、さっきからうんしか言ってないぞ、と思ったが流石にこの家じゃ緊張するのも仕方ないか、ましてや知り合いの家というわけでもないからな。

「よし、いくぞ……」

 覚悟を決めている割にしたことは備え付けられているインターホンのボタンを押すだけの簡単な事だ。それだけでも緊張するのは独特の雰囲気だろうか。金持ちオーラというかエリートオーラというのだろうか、一般人である俺からしたら未知の世界でしかないのだからヘタレるのも仕方がない。

 インターホンを押してから少したつとスピーカー部分から声が聞こえてきた。

「はい」

 落ち着いた雰囲気の女性の声だ。機械越しのでもその声は品性だろうか御淑やかで優しげな声音で少し緊張がほぐれた。

「えっと、真姫さんと同じクラスの泰原です」

「あら、ちょっとまってね」

 そういうとスピーカーからブツッという音がして会話が途切れる。

「というか俺がわざわざ来なくても良かったんじゃないか?」

「それいったら私が来る必要も――」

「あ、誰か出てきた」

「最後まで言わせて……」

 門を隔てた奥の家の扉から出てきたのはきっと真姫の母だろう人物だった。真姫と共通している部分がいくつか見られる。目や髪、後は雰囲気だ。

「お二人とも上がって?真姫はもう少ししたら帰ってくるから」

 そういって家の中に案内されたのだが、まず玄関から何もかもが違った、もう説明するのが困難なくらい。

 そして通された居間らしき部屋には大きな長いソファとモダンシックな落ち着いた茶色の長机。それを挟んで一人用のソファが二つ置かれている。

 さらに極め付けがまわりの棚に置かれたいくつもの賞状やトロフィーの数々だ。数はおる指が足を入れても足りないくらいで、一貫していたのが全て名前の欄に西木野真姫と書かれていた事だった。

「ちょっと待っててね、今病院に顔を出しているところだから」

「病院……?」

「ウチ、病院を経営していてあの子が継ぐことになってるの」

「そう、なんですか」

俺が周りの賞状達に目を取られている内に花陽と真姫の母の会話が進んでいた。真姫が病院の跡継ぎねぇ、あの独特の雰囲気はそれから来ているのか。音楽室での会話の時もどこか諦めた感じがしたのも将来が決定しているからか。

「よかったわ~、あの子高校に入学してから友達一人連れてこないものだから。しかも一人は男の子だなんて、あの子も意外と女の子女の子してたのね~」

「い、いや、俺は別にそんな……」

 それもそうだ。今真姫が通っている音ノ木坂は女子高だったのだから男と出会うこともないだろう。それなのに男が来るというのだから下手すると悪い方にとらえられかねない。そうならなかったのは真姫の母が俺の事を知っていたからだろうか。

 考え事をしていると玄関の方から扉を開ける音と共に足音がこちらにやってくるのが聞こえた。

 それに合わせ真姫の母がこちらに会釈をした後玄関の方へ行ってしまう。

「あれ?お母さん誰か来てるの?」

「うふふ、じゃあ私はあっちにいるから」

 そういって扉を隔てた向こうで話していたであろう、さっきまでいた真姫の母の代わりに真姫本人がこちらに来た。

「あれ?陽月と……花陽だっけ?」

「お邪魔してます……」

「いきなり来たりして悪かったな」

 真姫はこちらを一度見てから俺たちの向かいのソファに座り込む。

「で、何の用?」

「あぁ、これ生徒手帳。真姫のだろ?」

「あ、ありがと。どこに落ちてたの?」

「μ´sのポスターの前のとこに……」

「わ、私が?そんなわけないじゃない、人違いじゃない?」

 明らかに動揺してるが、ばれてないとでも思っているのだろうか。しかも俺たち二人とも現場ばっちりみてるんだが。

「ははぁ、さては興味あるな?」

「ち、ちが……別にそんなんじゃ――」

 素早く立ち上がり、身振り手振りで弁明しようとしたのだろうが勢いよく立ち上がったせいで手前にある高そうなモダンシックの長机に片足の膝辺りを思いきりぶつける。

 うわ、絶対痛い。

「いった……ってうわぁぁ!」

 今度はそのぶつけた痛みでバランスを崩し、そのままさっきまで座っていたソファに思い切り倒れこんだ。意外と間抜けなところもあるのか。流石お嬢様。

「だ、大丈夫……?」

 花陽が心配そうにソファに倒れこんだ真姫を覗き込んでいる。俺はと言えばどこかおかしくて笑いを必死にこらえていた。

「も、もう!貴方が変な事言うから!」

 俺は笑いをこらえながら花陽の方を見てみる。すると花陽も俺と同じく笑いをこらえている様子だった。そんな様子の俺を見てか花陽はとうとう笑いを堪えられなくなったようでクスクスと笑い出してしまった。

「―っ!笑わない!」

 恥ずかしがっているのか真姫もソファに体を預けたまま必死にそういってくるのだがそれがまた面白く、俺もとうとう堪え切れずに笑い出してしまう。

「あははは!」

「ふふふっ……」

「も、もう!」

 そんな俺たちを見て真姫は飛び上がって怒り出してしまい笑い声と怒りの声が絶え間なく西木野家に響き渡った。その後真姫の母が飲み物を持ってくるまで俺たちは笑って、真姫はずっと怒りっぱなしだった。

 

 出されたお茶を飲んでやっと落ち着いた俺と花陽と真姫。にしてもこのお茶うまいな。部室で飲むお茶より……これ以上は言わないでおこう。

「なぁ、真姫ってスクールアイドルに興味あるのか?」

 学院で広告を見ている時から気になっていた疑問を真姫にぶつけてみる。歌も上手い、作曲もできる人材なら今のμ´sには喉から手が出るほど欲しい人材だろうし、真姫も満更でもなさそうなのだからな。

「私がスクールアイドルに?」

「そうだよ、私放課後いつも音楽室の近くにいってたの。西木野さんの歌聞きたくて」

 花陽がもじもじとしながら俺に続いて真姫に話しかける。花陽も知ってたのか。まぁ廊下にあれだけ響いてたら誰でも気が付くだろうな。本人は気付いてないと思ってそうだが。

「私の?」

 ちょっと俺は黙っておこうか。

「うん、西木野さんの歌ずっと聞いていたいくらい好きで……だから――」

「私ね」

 花陽が言いかけるのを真姫が一言で遮る。

「大学は、医学部って決まってるの」

「そうなんだ……」

 なるほど……俺完全に空気だがいいのだろうか。

「だから、私の音楽はもう終わってるってわけ」

「ならさ」

 一つの疑問、親から決められている事なのかそれとも自分の意志なのかはわからないがあんなに音楽を楽しそうにする奴がそんな簡単に音楽を諦められるのだろうか。

「何よ」

「今度のμ´sのライブ、来てくれよ。俺は真姫が音楽が心から好きなの、わかるから」

「それとライブって関係あるの?」

「ある。本気でアイドルやろうとしてるμ´sの皆を見て、何か感じるならそれはきっと……なんていったら言いんだろうなぁ」

「なによそれ……」

 思ったことをそのまま口にだす癖のせいか自分でもまとまらないうちに口を開いていた。

 でもこれだけは言いたい。

「だって、諦めてる雰囲気の割には音楽室でまだピアノしてるんだから、まだ真姫の音楽は終わってないってことだろ?」

「それは……」

「もっと自分に……正直になってもいいんじゃないか?」

 自分でも何を言っているのか怪しいが真姫はまだきっと諦めてないから音楽を続けていこうとしてる。

 多分今の真姫には一歩を踏み出す勇気が必要なんだ。でもそれは俺の役目じゃない。

「そうだよ、私もっと……西木野さんの音楽を聞いていたい!」

 俺なんかより適任の奴が隣にいる。少しのきっかけを出してやるだけ、俺にできるのはそれくらいの小さなこと。

「わ、わかったわよ。見に行くから……」

「本当!?西木野さん!」

「ほ、本当よ。というか貴方は見に行かないの?」

「え?私?」

 そういえば花陽は前の時もライブの告知用紙を穴が開くくらい見ていたな。

「貴方、スクールアイドルやりたいんじゃないの?」

「えぇ……そんなこと……ない」

 もしや花陽もスクールアイドルに興味があるか?そうなると以前の豹変ぶりも合点がいく。

「だってこの前ポスターの前でずっと見てたじゃない」

 もう話すタイミングもないし俺は黙ってた方がよさそうだ。

「もし、貴方がスクールアイドルやるなら……ちょっとくらい応援してあげる」

「西木野さん……」

「私の音楽はもう終わってるから、ね?貴方を応援して私も頑張るから」

 この口ぶりだとやはり真姫は音楽を諦めてないし、スクールアイドルにも興味を持っているだろう。だが今の俺にはどうすることもできない。真姫の止まってしまった心を動かすだけの物が無いから。

「じゃあ西木野さん。私と一緒にライブ……いかない?」

「べ、別にいいけど……」

「じゃあ約束だよ!」

 引っ込み思案だと思っていた花陽がここまでいくとは……更に真姫にうんと言わせる程。

 そんな花陽を動かすだけのアイドルって、

「ちょっと羨ましいな」

 二人に聞こえないように小声で呟く。そんな力があるのかアイドルには。ならきっとスクールアイドルにもあるのだろう。真姫や花陽を動かすだけの力が。

 俺にはそんな力はないけど、できたらそんな彼女らを支えてあげられたらなと思う。

 μ´sの穂乃果さん、ことりさん、海未さん。きっと今動き出した花陽と真姫。

 いつか約束した、――との思い出。それを今、果たそう。それだけの価値が今ここにある。

 後悔だけは絶対にしないために。

 意識が闇に落ちる。

 

 

目を覚ます――

 

いつかの約束――

 

彼が喪ったのは過去か記憶か――

 

そんな彼に残ったのは絶望――

 

それを希望に変えられるのはきっと――

 

 再び彼は目を閉じる――

 

「はっ!?寝てたか……」

 さっきまで俺は何をしてた……確か椅子にもたれてて……思い出せん。

「あら、目が覚めた?」

 声の方を見ると制服ではなく部屋着に身を包んだ真姫がいた。

「俺、寝てたか?」

 もうわかりきったことだが一応事実だけ確認しておこう。

「それはもう、と言いたいところだけど三十分も寝てないわよ」

「そうか……花陽は?」

「先に帰ったわよ。陽月は私が見ておくって言っておいたから」

「そうか、迷惑かけたな」

「いいわよ、全然」

 あまり居座るのも迷惑だろう。かけられた時計は既に七時をさしている。鉛のように重くなっている体を無理矢理立ち上がらせる。

「じゃあ、俺も帰るわ」

「うん、えっと今日はありがと……」

「気にしなくていい、困った時はお互い様だ」

 きっとそのありがとうは色んな意味があったのだろうが寝起きの陽月には正しく意味が伝わっているのか怪しい。

「じゃあまた明日、ライブ……来てくれよな」

「わ、わかってるわよ!またね!」

 

 一応念押しだけしてから真姫の家を後にし、すっかり暗くなった道路を街灯の明かりを頼りに歩いていく。

 もう明日はμ´sのライブだ。俺が本気になれたことのスタートだ。しっかり応援しないとな。

 もし観客席一杯だったらどうしよう、俺は舞台裏にいたりしてもいいのだろうか。

 その心配は最悪の結果で終わることをその時の俺は気が付いてはいなかった。

 




ちょこちょこシリアス的なのいれてますが最後の方まで関係ないので9割ほのぼのですね。
よくある最終話の謎シリアスというやつです!(不安
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