Another School idols diary 作:藤原久四郎
体育の名目の下行われたレクレーションの後、股間に違和感を感じたまま着替えを済ました俺は今回は誰にも見られずに着替えを済ますことができた。流石に連続してパンツを見られよう物なら立ち直れなくなってもおかしくない。
さっきの着替えの半分以下の時間で着替え終わり、体操服を片手に持ち教室へ戻る。今日の授業はさっきの体育で終わりなので戻って数分後、先生によるSTが行われ今日も滞りなく学校が終わる。
だが今日はアイドル研究部に用があるので顔をださねばならない。
「じゃあ俺、部活に顔出してから帰るな」
隣で荷物をまとめている眼鏡の似合う大人しい印象を与える小泉花陽に声をかける。
「うん、じゃあまた来週ね。陽月くん」
ほぼ何も入っていないがいつもは入っていないものがあるせいで少し重い通学用鞄を引っさげアイドル研究部の部室へ向かう。そういえばアイドル研究部に顔を出すのも久しぶりな気がする。矢澤先輩はライブの時にも見たが全速力で逃げられてしまった上に捕まえられなかったし。
そうこう考えている内にアイドル研究部の部室前についていた。俺は以前貰った部室の合鍵を取り出し開錠、中に入る。中は相変わらずアイドル、アイドル、アイドル。どこを見てもアイドル関連グッズで埋め尽くされている。
その中で唯一物ではないこの部屋の主……まぁ部長だが、矢澤にこ先輩が部室に備え付けられたパソコンに向かい合っていた。
「こんにちはー矢澤先輩」
「あぁ陽月?適当に座ってお茶でも飲んでて」
多分何かの作業をしているのだろう、こちらへの返事が些か上の空といった様子だ。仕方なく部屋の隅にあるポッドから湯呑へお湯を出し、その隣にあるパックを入れる。そしてそれをもって部室中央の長机の所へ座る。
矢澤先輩とお茶がでるのを待つこと数分、お茶が丁度いいくらいに出きったタイミングで矢澤先輩が作業を終えたのかこちらを振り向いてきた。
「で、陽月今日なんの用?」
「用無いと来ちゃいけないんですか」
「別に」
「パソコン借りてもいいですか?」
「どうぞどうぞ、壊さないでね?」
そう言ってパソコンの前の椅子から矢澤先輩は立ち退き、俺が代わりに座り片手には鞄からとりだしたビデオカメラを握っている。今日の目的はこの前のライブの時の映像をネットにアップすることだ。何もここでしなくてもと思われそうだが実は家でやろうとして勝手がわからず矢澤先輩なら知ってそうだと思ったから部室でやろうと思ったわけだ。
「この前のライブの時の動画なんですけどこれどうやってネットにアップするんですか?」
「あぁ、そういえばアンタ撮ってたわね。パッと見不審者にしか見えなかったけど」
「こそこそしてた矢澤先輩も大概ですからね?」
無駄口を叩きつつ手とり足とりやり方を教えてもらう。どうやらグループ名、所属学校などを登録するようだが、もうμ´sのページはできていたので後は動画をアップするだけだった。
「そういえばこのサイトってなんなんですか?とりあえず撮った動画とかってネット配信するのがスクールアイドルの主流らしいですが」
我ながらもっと調べてからこの話題を振るべきだったと前々からの事で反省しておくべきだった。案の定矢澤先輩の目付きが猛獣のそれに変わっている。
「アンタねぇ、アイドル研究部に所属していながら”ラブライブ”の事も知らないの!?」
無知な俺を前に矢澤先輩は気が狂ったように怒涛の説明を繰り出してきた。
ラブライブ、それは全国スクールアイドルの目標。所謂一つの公式大会の様だ。現在公に開かれているのは知名度も高いこのラブライブだけであり、更に今年の九月頃にスクールアイドルナンバーワンを決めるらしい。
大会の開催が知らされてからというもの公式サイトに登録されたスクールアイドルたちはネットでの評価等でランキングが付けられ、その中でランキング二十位以内が決勝に進めるらしい。
つまり、ラブライブはスクールアイドルにとっての甲子園なのだ。
そんな話を聞きながらμ´sのライブ動画をアップすることができた。後はランキング圏外であるこの順位がどう動くか、というわけだ。
「な、成程。つまり皆はこのラブライブにでることを目標にしてるわけなんですね」
「そんなわけで全国のスクールアイドル達は自分の限界を目指すもの、もっと色んな人を楽しませようとするものと多種多様な方向性で活動をしているの!」
ということは穂乃果さんたちもこのラブライブを目指しているのか……その理由はなんなんだろうか。また今度聞いてみることにしよう。
今はこの目をぎらつかせ女の子らしくない程の声量で未だに話し続けている矢澤先輩を落ち着かせねば。
「ま、まぁ落ち着いてください。そんな事では女が廃りますよ?」
「そもそもアンタはアイドル研究部の一員としての意識が低すぎるのよ!大体ね――」
火のついた矢澤先輩はどうしよもないなと次の策を講じようとした時、この部員二名の部室へ来訪者が現れた。
「こんにちは~。あれにこっち?それに陽月くんまでどうしたん?」
まるでこちらが来訪者で、唐突に来たようきて驚いているような素振りを見せた彼女は三年生で生徒会副会長を務めている東條希さんだった。明らかにおかしい問いかけには一応ツッコミで返すのが礼儀だろうか。
「希さんこそ何か用ですか?」
「おっとぶれないね陽月くんは。まぁちょっと様子見ってところやね」
「用もないのに来ないでよ希……」
「そんなこと言うんやにこっち。あんまつれない事言うとわしわしするよ?」
そういって希さんは手を何か揉むような手つきでまさにわしわしという擬音が似合う事を矢澤先輩に向けながらじわじわと近づいていく。
「う、嘘よ!ゆっくりしていきなさいよ……」
これにはかなわないのか矢澤先輩はガックリと肩を落として希さんがここにいることを泣く泣く認めた様だ。
「で、本当は何しに来たんです?」
希さんの事だ。まだ会って間もないが意味のない事をするような人ではないことはなんとなくわかっている。
「ばれてた?ただこの前のライブの動画、どうしたかなぁってね」
「それならもうアップしましたよ」
「おぉ、仕事が早いね。いい子にはよしよししてあげないとなぁ」
そういって矢澤先輩に向けていた体をこちらに向け、こちらへ手を伸ばし頭を柔らかい手つきでなでてきた。頭をなでられた事なんて何時ぶりだろうか。普通はこんな事をされれば男ならば不快に思うかもしれないが何故か希さんの手は落ち着くというか、母親の手の中で眠っていた幼少の記憶を思い返させるように感じられた。一言で言えば骨抜きにされた。
「あぁ……」
「ちょ、ちょっと!陽月、どんだけ蕩けた顔してんのよ!」
「……はッ!いかん、意識が……」
「うふふ、気に入ってもらえたかな?」
なんだこれは、是非とも死ぬほどなでなでされたい。快楽に溺れていく人種はこんな気分なのだろうか、抗いがたい幸福感に快楽、それに安心感。
「是非もっとやって――」
もっとやってください!と言いかけた瞬間、足を思い切り踏みつけられた。
「ぶふっ!」
あまりの激痛に叫びではなく驚きが勝ったのか思い切り吹き出してしまう。
「アンタなにデレデレしてんのよ……」
「あぁっ痛い!耳が、耳が伸びるッ!」
足を踏みつけられた時に屈んでしまったせいで通常届かない耳へ矢澤先輩の指が食らいついてくる。これでもかと言わんばかりにギリギリと引っ張られるものだから思わず苦悶の声が漏れていく。そんなコントのような俺たちを見て希さんは止めるわけでもなくクスクスと笑いながらずっと見ているだけだった。
そういえば、なんで希さんってライブの動画俺が撮ってたこと知ってたんだろう。
もう矢澤書きたくてしかたない症候群であります!