Another School idols diary 作:藤原久四郎
近況報告と部室にて
様々な事があった一週間を終え、四月も終わり五月に入る。かといって生活にはなんの変化も無くただ平凡な毎日が滞りなく進んでいくのだ。
そんな事をぼんやりと考えながら手に取っているのは弁当箱と箸。今は昼食の時間でいつも通り凛や花陽、それに真姫を加えた四人で食事を取っている。
弁当の中身も以前と変わらずそろそろ真姫の毎日変わる高級そうな輝きを放つ料理の数々も見慣れてきた。そして花陽の一面純白で染められた白米たちも。
「そういえばμ´sの活動ってどうだ?」
ライブの後は何をしているかも把握していないので普通に気になり三人に問いかけてみたのだが何故か真姫は口から食べ物を吹き出していた。その飛んでいった食材たちは吸い込まれるように凛の手元へ飛んでいき、凛はもちろんの事激昂している。以前見た事のある光景だ。
「ちょ、真姫って行儀悪かったのか?」
「べ、別にそういうわけじゃ……」
「真姫ちゃん何回目だと思ってるにゃ……」
「はい真姫ちゃん。ティッシュだよ」
「で、μ´sだけどやっぱり部活じゃないっていうのが思ったよりも厳しいわね」
口元を拭いながら至って真剣な口調で真姫はμ´sの内情を話す。正直笑いたくなっているのを必死にこらえている物だから俺の表情も真剣そのものだ。
「真姫ちゃんって前着替えの時にシャツ反対のまま出てきたことあったんだよね~」
さっきのお返しとばかりに凛が地味に恥ずかしい真姫の実態を暴露する。さっき吹き出したのはそれ思い出したからか……。
「あの時の真姫ちゃん顔真っ赤ですっごい焦ってたよね」
花陽もわかっているのかはわからないが追撃をかけている。俺の笑いを堪えるのもそろそろ限界が近い。
「ち、ちがっ……あれはその……」
「その……なんだね」
もう限界なのを必死に堪え、表情を崩さぬように本気で力を入れ真剣さを通り越して峻厳ささえ感じさせる表情で俺は厳かに問いかける。
「あれは……リバーシブルの服だったの!!」
「「「……」」」
沈黙、そして俺は疑問を凛たちにぶつける。
「なぁ凛、リバーシブルだったのか?」
「全然にゃ。ねぇかよちん?」
「うん、ちょっと擁護できないかな……」
「「あははは!」」
限界を迎えた俺は腹を抱えて笑い、それにつられて凛も吹き出してしまう。花陽はプルプルと小動物のように震えている真姫を必死になだめていた。
「ぶふっ……リ、リバーシブルて……か、かわいい……ぶふっ」
「真姫ちゃん……意外と可愛いとこあるんだにゃ……あははは」
「も、もう!笑わないでよ!」
真姫は顔を真っ赤にして怒っているがそれもまた可愛らしいと思え、更に俺は大きく笑い出す。凛もつられて一緒になって笑っている。
結局詳しい事を聞けていないが真姫の可愛い一面が知れてちょっとラッキーだと思うのでまぁ良しとしよう。
昼食を終え、その後の授業も問題なく終わった放課後。すっかり住処となっているアイドル研究部に今日も顔を出す。
「ちわーっす」
「あぁ、陽月か」
「もう反応がタンパクそのものですね」
矢澤先輩はいつも通りパソコンに向かい合い、俺が来たときに素っ気ない返事だけを返して何かわからない作業を進めている。俺ももう慣れたので勝手にお茶を入れ、矢澤先輩の作業が終わるまでお茶を飲みながらゆっくりと待つ。
「ごめん、今終わったわ」
そう言ってパソコン前の椅子から立ち上がり、軽く背伸びをしながらこちらを向く矢澤先輩。そういえばパソコンで何してるのかとか聞いたことないがきっとアイドル関連のことだから下手に聞くのも面倒な事になりそうなのでやめておこう。
「そういえば穂乃果さん……μ´sの皆ってまだここに来てないですね」
とは言ったもののこの話題が出たのも先週の金曜日なので最速で来るとしても今日なのだが。
話題、先週希さんが来たときにμ´sがアイドル研究部に話し合いに来るという事を端的に話してもらったのだが、その件に関しては矢澤先輩は思うところがあるのか乗り気ではないどころか真っ向から拒否をしてきたのである。
今日の目的はその事なのだが今の一言だけで矢澤先輩は明らかに不満げな表情に変わっていた。
「ふん……このまま来なければいいのに」
「そうは言いますが、矢澤先輩ってスクールアイドルやりたいんじゃなかったんですか?」
遠まわしに言っていくのも良かったが面倒なので直球で問いを投げつける。矢澤先輩は少したじろいだ様子を見せるがすぐさまいつも通りの冷静なたたずまいに戻る。
「確かに、私は今だってスクールアイドルをしたいって思うわよ」
「じゃあ……なんで拒否するんです?」
「……前言ったわよね。私がスクールアイドルやめた理由」
以前、俺がアイドル研究部に入って直ぐ聞いた話の事だろう。確か設立時には他にもメンバーが居たのだが活動を続けていくにつれて一人、また一人とやめていったらしい。その原因は――
「それってμ´sの皆が……前と同じことになるんじゃないかって思ってるんですか?」
それはきっとそうだろうと確信を持てる事だ。多分、矢澤先輩程の熱意と関心をμ´sのメンバーが持っているとは思えない、そういうことだろう。そうなると前回の二の舞になるのではと考えているのだろうか。
「まぁ、そういう事。見てみないとわからないけど中途半端な奴らならすぐさま追い返すわよ」
「……まぁ反論はできない所ですけど、少なくとも皆は本気だと思いますよ?それにスクールアイドルやれば念願のラブライブにも出場できますよ?」
軽く餌をまきながら言葉を返す。確信を持って言えるのは、少なくともμ´sの皆は遊びではなく本気でスクールアイドルと向き合っているという事だ。それにラブライブのサイトに登録してあったという事はきっとラブライブを目指しているのだろうし。
「ってアンタμ´sのメンバーと知り合いなの?」
「え、あぁ一応。全員と面識はあるっていうか色々手伝ったっていうか……」
前のライブでの事を思い出しながら消え入る声で呟く。矢澤先輩の追及は別に怒っているわけではないのだろうが凄みがある。
「ふーん、なら全員の事を知ってる限りで良いから教えてよ。知っておいても損はない事だし」
「それって……μ´sに興味あるってことでいいんですか?」
「……うっさいわね」
意外と矢澤先輩を説得できる日も近いかもしれない。
そろそろ物語も中盤に差しかかかるくらいの所まで来ました。
テンポとしてはそこまで悪くないので頑張っていきます!