Another School idols diary 作:藤原久四郎
矢澤が可愛いのが悪い(確信
今日は月初めの月曜日。四月は終わりを告げ桜は徐々に緑の葉をつけ始めている。天気は良好、何か新しく始めるには絶好の季節だ。
そう思っているのは俺、泰原陽月。今やろうとしている事と言えばμ´sへの加入と矢澤先輩の説得。
そして今、その事について語りかけているのは矢澤にこ先輩。μ´sのメンバーについての説明を求められ一人一人知っていることを可能な限り話している。
「とまぁこんな感じで」
一通り説明を終え、一度話を打ち切る。矢澤先輩はなるほどね、と一言だけ言って逡巡する仕草を見せている。できるだけ皆のいい所を並べていったつもりだが二年生の先輩たちの事はどうにも情報が少なく、ことりさんはSの気があることと、海未さんにはパンツを見られたというどうでもいい情報をポロリとこぼしてしまい、軽く引かれたのだが……まぁ良しとしよう。
「まぁなんとなくわかったけど、言葉だけじゃメンバーのやる気がどれ程かわからないのよね」
「それもそうですね……でも確か全員話し合いに来る筈ですよね」
「それもそうね。まぁ来るまで待ちましょうか」
「じゃあお茶でも飲みましょうや。今日は栗ようかん持ってきましたよ」
そう言って俺は鞄から栗ようかんを取り出し、ついでに持ってきた紙皿に一度全て出してから中に入っていた切り分け用のプラスチックナイフで小分けにしていく。
矢澤先輩は俺の分のお茶も用意してくれたようで一通り終わることには目の前にお茶が出されていた。
「もうなんか言葉もいらなくなってきましたね」
「そうねぇ、実際なんとなく伝わるのよね」
お茶を啜りながら栗ようかんを一つパクリといただく。うん、母さんが貰って来たものなのでどこの物かはわからないが甘味も強すぎずお茶との相性も悪くない。矢澤先輩も気に入ってくれたようでとても幸せそうな笑みを浮かべながら食べている。まるで老後に日の当たる庭で団欒をする夫婦の様だと思ったが面倒になりそうなので言わないでおいた。
「ふぅ……美味しかった」
「そうね、アンタが持ってくるお菓子は割と美味しくて困るわ……」
「困るって何がです?」
「デリカシーないわね、察しなさいよ」
「あぁ……でも矢澤先輩って太りはしなくても背は伸び――」
言いかけた時はまずいなと思ったが動いた口は止まらず代わりに口を止めたのは椅子の下から思い切り飛んできた蹴りだった。
「最近は容赦もないですね……」
「まぁ馴染んできたって事で喜びなさい」
そう言って半分怒り気味のまま矢澤先輩はお茶を入れていた湯呑を片付けに行ってしまった。
そして一人部室に取り残された俺は帰ってくるまでどうするかを考える。そういえば矢澤先輩ってパソコンでいつも何しているんだろう。アイドル関連であることは間違いないのだが毎回来るたび俺よりも先に来て作業をしているからな。
思い立ったが即行動。勝手に見なくても聞けば教えてもらえそうだが敢えてそうしないのはもしかしたら説得に役立てる要素があるかもと考えたからだ。
「どれどれ、履歴履歴っと」
さっきまでしていたのはスクールアイドルの投稿動画をまとめたもののようだ。動画に対し自由にコメント投稿したり評価ができるらしい。ログイン状態が保持されていたので何を見たのかもすぐわかり、しかもチェックしていたのはμ´sのファーストライブの物だ。
やはり興味深々の様だが……やはり踏み切れないのは昔の事があるからなのだろうか。三年という月日はきっと長かっただろうし……それでもアイドルを、スクールアイドルとして活動したいっていう気持ちは変わってないはずだ。
穂乃果さん達次第で矢澤先輩のこれからが左右されていると思うと俄然俺も後押ししないと、と決意を新たにしサイトを閉じる。一度電源を落とそうとした時、気になるフォルダがデスクトップにあるのを発見する。
「『アイドル研究部日記』……?」
もしこれが仮に三年間の日記ならこれを見れば何か参考になることが乗っているかも、と思ったがパソコンを切ってしまう。矢澤先輩がそろそろ帰ってくるだろうからな。
「ただいまーって、アンタ勝手にパソコン触ってんじゃないわよ」
もうシャットダウンという所で矢澤先輩が帰ってきてしまった。別にやましい……いや、勝手に人のパソコン漁っているのだからやましいことこの上ないな。
「まぁまぁ別にみられて困るものがあるわけじゃないでしょ?あるんなら話は変わってきますが」
誤魔化しつつ微妙にカマをかけてみる。もし何か反応があるとすればあの日記の事をさりげなく聞き出すこともできそうだ。だが予想に反して矢澤先輩はあっけからんとして至って普通の表情のままで、別にないわよ。とだけ返してくる。
という事はあの日記は大したことないのか?
「今日は来ないみたいだし帰りましょうか。私先に行くわ、じゃあまた明日」
そう言って矢澤先輩はそそくさと用意をまとめ部室を後にしてしまった。そして鍵だけよろしく、と一言忘れていたのか戻ってきてまた行ってしまった。
なんなら再びパソコンつけて見ても良かったのだが、どうにも見る気になれず今日は大人しく帰ることにした。
鞄を持ち、部室の鍵を閉め学校を後にする。矢澤先輩を説得、というより思えばμ´sに入れようとしているのだがその事はもう俺に出来ることの方が少なく、後はμ´sの皆次第といったところだろうか。
俺がどうこう言おうともμ´sの皆を矢澤先輩が気に入らなければどうしよもない。俺は出来るだけ印象が良くなるように言ってきたつもりだが……。希さんも言っていたように三年も待ったのだ。そんな矢澤先輩の夢は叶えてあげたいと帰り道、夕暮れに染まった帰路を歩きながらぼんやりと考えていた。
「はっ……はっ……」
何故か私は走っている。夕暮れのオレンジを小さな背に受け走っている。
陽月のさっきの質問、きっと日記の事だろう。あの様子だと見てなかった様だし、興味を向かせないようにはしたつもりなんだけど……。
あの日記には私がアイドル研究部を始めてからの三年間の活動を一日も漏らさずに書いてきたものだ。中には私の結成したスクールアイドルの事とかも沢山書いてあるし、最近だと……陽月のことばっかり書いてあるし、しかもちょっとメルヘン入った文もあるし。
流石にそんなものを見られてはもう恥ずかしいどころか死んでしまう。
「データ……隠しておこうかな」
見られたら私の考えてること全部ばれちゃう、でもそれもいいかなって思うのは自分から言う勇気がないからだろうか。μ´sの為に動いて、今は私の為にも動いてくれているアイツに。まだ会って一か月くらいだけどアイツのお蔭で少し、救われている気がする。独りぼっちで過ごしてたあの部室に人がいるって、言ったことはないけどすっごく嬉しかったのだ。
息が切れて立ち止まるまで、アイドル研究部部長の矢澤にこは最近の出来事を振り返りながらいつかありがとうを伝えたいな、とぼんやり考えていた。
すすまんのですよ!
そして突発ネタ嘘予告
彼はどこにでもいる平凡な高校生。名前を天草奏という。外見はどちらかといえばイケメンの部類に入り、街を歩いていた時は時折スカウトに会ったこともあるという。だがそれらは全てスカウト側からすぐさまお断りされるのだが。
「あの――これ、落としましたよ?」
「あ、ありがとうございます」
彼は落し物を拾って落とし主である女子高生に落し物を届けていた。こうしてみれば行いも良い学生の規範であるべき青年に見える。
だが、彼にはそれらを全てを以てしても補いきれないどころかマイナスはマントルまで突き抜ける程の残念な要素がある。
絶対選択肢――彼の頭の中でのみ聞こえる無駄にイケメンなボイスが提示してくる選択肢の事で、どんな無理難題だろうと拒否権は無く選ばずにいれば頭痛が起こり最終的には死に至る。らしい。
しかも厄介な事に現実では起こりえない事象でさえもいとも簡単に起こしてしまうトンでもさだ。
そしてそんな苦労の日々を送る彼の脳内に降ってきた選択肢はまた突き抜けて意味不明な物だった――。
選べ――ッ!
➀ ラブライブ!の世界で苦難の日々を一年間過ごす。
② ホモライブ!の世界で濃厚な余生を過ごす。
はてさて天草奏の運命や如何に。
俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している。とラブライブのクロスです投稿は未定(大嘘)