Another School idols diary   作:藤原久四郎

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投稿が徐々に間隔のあいていくことに呆れている筆者です。

今回は海未ちゃん回なのですが何故かいつもの倍くらいで焦りました。


彼女と彼の日常

 日は改め後日、俺はまだ見に行っていなかった武道場の方へ足を運んでいた。特に理由はないのだが一応学院生としては全施設の把握がしたかったとでも言えばいいのだろうか。

 武道場では弓道部が主に活動しているらしく、弓道部には海未さんもいるらしい。海未さんと言えば日本舞踊に精通した家系らしく、家の方でも色々な事をしていると以前穂乃果さんに教えてもらった。それに加えμ´sの活動もしているという物だから尊敬の念を抱かざるを得ない。俺ならば二つの事を同時にやろうものなら二秒で投げ出しそうだ。

 校内から少し歩き武道場と書かれた木の立札を確認。一応失礼しますと言ってから中に入る。内装は木張りの床に木の柱、年期を感じさせ、辺りからは少し酸味がかった汗のにおいが香り男子高生には刺激的すぎるそれが鼻孔をくすぐる。汗と言っても男臭い強烈な”臭い”ではなく、女の子らしい爽やかな”匂い”だ。流石女子高、いやもう元か。

 そんな少し変態じみた事を考えながら玄関で靴を脱ぎ、靴下をはいたまま木張りの床に足をのせる。じめじめとした梅雨の熱さを纏った空気とは裏腹にひんやりと冷たい床は心地の良い涼しさを足から体に運び、夏にはちょうどいい気持ちよさだ。これが冬に来ると思うと床暖房とかあればいいのにと、別に関係ないのだが一学生としてそう思う。

 中をゆっくりと歩いていき、更衣室と書かれた部屋を過ぎた後奥まで行くと弓道場と書かれた木の板がかけられた引き戸が見受けられた。勝手に入って良かったのだろうかという疑問が今更ながら襲い掛かり、扉に掛けた手が引くのを躊躇わせる。部活見学とでも言えば誤魔化せるだろうかと何故か言い訳の理由を考えながらゆっくりと引き戸を引いていく。そして少しだけ開けた隙間から覗き込むようにこっそりと仲の様子を確認する。

 

 そこには美しい女神がいた。深呼吸をし、構えを取っている彼女は二年生のμ´sの一員でもある園田海未さんだ。弓道場には海未さんしかおらず、海未さんの動きに伴った音のみが静寂に包まれた空間を震わせていた。そんな雰囲気に飲まれ思わず息をのみ海未さんの行動を見守る。

 どうやらもう弓を発射する寸前の様で一瞬の瞬きの間に弓が数メートル先の的の方へ一直線に飛んでいく。風を切る音の後、的に当たる気持ちの良い音が鳴った。命中しかもど真ん中だ。素人目に見ても素晴らしいと思える海未さんの一連の弓道の所作はきっと誰から見ても拍手が送られることだろう。そう思った俺は拍手でもしながら出ていこうとしたのだが、突然海未さんが辺りを見渡し何やら誰かがいるかを突然警戒を始めた様子だったので思わず張り付いていた引き戸から少し離れ、数泊おいてから恐る恐るもう一度隙間から覗き見る。

 

 見えたのは率直に言えば素晴らしい笑顔だった。流石アイドルと言うべきか、海未さんは横に立てかけられた姿見に笑顔の練習をしていた。あの真面目な海未さんが弓道の練習中にも関わらずアイドルとして必須である笑顔の練習もしているのには驚きを隠せない。

 前は嫌々始めたみたいな事を言っていたが実は満更でもないのではないのだろうか。そう思うと海未さんのイメージが少し変わった事に気が付く。今までは何事にも真剣、品行方正、そんな高嶺の花のイメージだったが、今では親しみやすい下町系アイドルの様なイメージだ。

「……意外と乙女チックなところもあるんだな」

 そんな地味に失礼な事を小声で呟きながら、今は引き戸に手をかけたまま弓道場を覗いていたのだが気を抜いたせいか引き戸に体重を思い切り預けてしまい、倒れこむようにして弓道場になだれ込んでしまった。もちろん受け身を取る余裕などもなく、ヘブッと間の抜けた声を上げながら思い切り顔面から着地、一番顔の中で突出している部分の鼻が真っ先に床に当たる。当然の事痛い……さっきまでいいと思っていた冷たい床がとても恨めしい。

 俺は倒れこんだ直後鼻を労わるようにさすりながら顔を上げるとその倒れこむ音に気が付いたのか海未さんがこちらへ疑問と焦りの混じった視線を向けていた事に気が付く。

あ、これは多分見られたくなかったんだな。あのとても可愛らしい笑顔。

「海未さんこんにちは」

「え?あ、こんにちは」

 真の男ならばこんな時は相手方の女の子のフォローをしなくてはならないだろう。海未さんはきっとこちらの反応を待っているだろうから。

「えっとですね」

「は、はい」

「すっごい可愛かったです」

「見てたんですか……」

 親指を立てて俺の見たものがいかに素晴らしかったかを体を使いアピール、そしてその喜びをアピールする笑顔も忘れない。これで我ながら完璧なフォローが出来た……と思いきや海未さんは両手と膝を床に着き、どこかどす黒いオーラを放出しながらブツブツと呪言の様に何かを唱えていた。

 

「いやぁ……なんかすみませんでした」

 今度はらしくもないフォローの事は考えず素直に謝っていた。場所は弓道場の隅で俺と海未さんは何故かお互いに正座しながら向き合っている。

「ど、どこから見ていたんですか?」

 期待をしながら声を震わせている海未さん。まだ希望を捨てていない様子だが、もう最初から最後まで見ていましたという現実を告げるとまたしても見る者全てを吸い込むような黒いオーラを放出しながら、またブツブツと何かを呟いていた。

「ま、まぁアイドルとしてはいい笑顔だったと思うんですが――」

「そう言う問題ではありません!」

 俺が必死にできもしないフォローに回ろうとすると海未さんが勢いよく立ち上がり、声を弓道場に響き渡るぐらい大きな声で俺に向かって投げかけた。

「いいですか!? 誰にも絶対に言わないでくださいね!」

「あ、はい……」

 あまりの威圧感に空返事を返すことしかできず、どちらかと言えば呆けた顔をしていたに違いない。別に隠すことでもないと思うんだけど……。

 

 何度も念入りに言わないでと釘をさされた後無事解放され、弓道場を後にした俺は次はどうしようかと考えていた。授業も全て終わっており、そして今の時間は部活動などを除き皆下校完了している事だろう。さてどうしようかと考えていると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた事に気が付く。

 声の方を振り向くと、海よりも青い腰まで伸びたロングヘアーをなびかせながらこちらに走ってきており、その人物は先程別れたはずの海未さんだった。

「あれ、海未さんどうしたんですか?」

 流石にどうしたのかわからずこちらに追いついた海未さんに問いかける。海未さんは走ってきたのにも関わらず息を乱した様子もなく、相変わらずの凛とした声で俺の問いかけに返事をする。

「そ、その……さっきは無碍に追い返してしまったので。何か用でしたか?」

 わざわざこんな事を律儀に聞きに追いかけてきてくれる真面目さには思わず笑みがこぼれてしまう。今更特に用はなかっただなんて言いづらいものだ。

「えーっと……ぶ、部活見学ですかね……?」

 とりあえず当たり障りのない返事で返そうとするもなぜか疑問形で返してしまい、もはや嘘ついてますよと自分から吐露したようなものだ。だがそれを聞いた海未さんの反応は俺の予想と違ったものだった。

「そうですか! 陽月さんも武道に興味があるんですね!」

 何故か純粋無垢な赤子の様な輝く瞳をこちらに向け、どこか声も高揚しているようだった。

「最初会った時から陽月さんは良い身体していると思っていたんですよ……あ、すみません……はしたない……」

「あ、あははは……別に大丈夫です……」

 まさか初対面でいきなり自分の身体を観察されていたことを暴露され驚愕の頭の中からは空返事を出すことしかできなかった。

「オホン、じゃあちょっと一緒に来てください!」

「え?」

 海未さんは俺の手を振りほどけない程度の強さで握り、再び来た道を来た時よりも早いペースで歩き出す。握られた海未さんの手は年頃の女の子らしい柔らかさを感じさせ、武道を嗜んでいるとは思わせない程だ。ってそんな事はどうでもよくて、このままだと何か嫌な予感がする。

「ちょ、ちょっと海未さん。離してくださいって」

 やんわりと拘束の解除を申し立ててみるものの当の海未さんはブツブツと何か呟きながら一向に止まる様子もなく俺の言葉もまるで聞こえていない様子だ。

「……仕方ないか」

 幾度かこういうパターンを経験してきたのでわかること。それはもう諦めが肝心だという事だ。

 

 再び武道場に連れられた俺は一瞬の間に道着を着せられ、片手には剣道で使われる竹刀が握られていた。あまりにも突然すぎる事に呆気にとられるしかない。

「では! 音ノ木坂学院の剣道部、ないし弓道部の部活動体験を始めます!」

 そう高らかに宣言した海未さんの顔は今までに見たことがないくらいに活き活きとしており、元気と活力に溢れていた。

 

「……つ、疲れた」

 あの後は二、三時間ほど剣道とは弓道とは何かを身体に叩きこまれ、更に試合でも通用するようにと小技から大技まで、所作や心得を全て覚えさせられた。何が凄いかって海未さんの教え方だ。ほぼ初心者の俺でも簡潔にわかりやすく、わかりにくい所はわかるように噛み砕いて教えてくれたのだ。だからと言ってドのつく初心者にはついていくのが精一杯で終わる頃には全身が悲鳴を上げることになったのだが。

「大丈夫ですか? 少々やりすぎましたかね……」

 再び制服から道着に着替えた海未さんが心配そうにこちらを眺めながら体の安否を問いかけてくる。正直少々じゃない、と言いたいところだが敢えてここは言わないでおこう。

「やっぱり体力がないから……ふぅ……」

 息を大きく吐きながら自分の身体の事を引き合いにだす。やはりトレーニングしないといけないか。

「そう言う事でしたら私がトレーニングメニューを考えましょうか?」

 今度は好奇心や自分の興味からではなく真剣に俺の事を考えた提案をしてくれる海未さん。海未さんはμ´sの練習メニューも考えているそうだし、運動経験も豊富らしいので俺の体力も加味した上でメニューを考えてくれそうだ。

「じゃあ……お言葉に甘えて……あ、無茶なのはやめてくださいね……?」

「はい! もちろんです!」

 デジャヴを感じさせるその返答に不安を抱かざるを得ないものの頼んでしまった手前、もうお断りするわけにもいかないと考え、疲れ切った体を倒れこむようにして木張りの床に預ける。やっぱりこの冷えた木張りの床もいいなと暖まった体を冷ましながら考えていた。

 海未さんは俺が立ち上がるのを待っているのか、隣でこちらを時折見ながら正座している。流石にまだ立ち上がれそうになく、そんな海未さんを見ながら身体の回復を待っているのだが、さっきまで海未さんも一緒に運動していたせいか頬がほんのり紅潮し、道着も汗で体に少し張り付いておりボディーラインを浮かび上がらせている事に気が付く。いつもとは違った官能的な姿に思わず見とれてしまいそのまま呆けたようにじっと眺めてしまう。やっぱり綺麗な人だな……。

 そんな視線に気が付いたのか海未さんもこちらを向きお互いに目と目が合う。

「どうかしましたか?」

 見とれている俺にはそんな言葉に返事を返すこともなく、ただただじっと海未さんの瞳を見つめ返す。

「だ、大丈夫ですか?」

「……」

「そんなに見ないでください! は、恥ずかしいです……」

 じっと視線が合い続ける事に我慢の限界が来たのか海未さんが体をよじるように視線をどこか遠くの方へやってしまう。そんな一挙一動でさえ可愛らしいと思いながら未だに動かない身体の回復を待ち続けた。

 

「よし、動けるな」

「も、もう……陽月さんは破廉恥です」

 海未さんの方から抗議の声が聞こえてくるものの動けるようになった身体に感動している俺は返答する事無くどこか不調の場所はないか確認している。

 よし、痛むところはないっと。まぁ明日は筋肉痛で苦しむことになるだろうな。

「じゃあ今度こそ帰りますか。そろそろ暗くなるでしょうし」

 壁に立てかけられた時計は17時を指しており、そろそろ暗くなることを知らせてくれている。

「はい、じゃあ着替えたら外で待ち合わせということで」

「わかりました。あ、そういえば俺ってこの道着に着替えたときって海未さんが着させてくれましたよね」

「え、えぇ」

「よく考えたら俺のパン――」

「で、ではまた後で!」

 大声で俺の声を遮った後、海未さんが物凄い勢いで女子更衣室へ駈け込んでいくのをあっけにとられながら見送る。そうか……俺はまた見られてしまったのか……と海未さんの反応から察するしかなかった。

 

 道着を着替え、外に出ると一足先に海未さんが制服姿で武道場前に立っていた。

「すみません、遅くなって」

「大丈夫ですよ。私も今来たところですから」

「じゃあ行きましょうか」

 そう言って武道場を後にし、帰路に着く。海未さんの家はどうやら俺の家の方向とは反対らしく学院前で別れることになる。

「じゃあ今日はありがとうございました。練習メニューの方もよろしくお願いします」

「任せてください。それでなんですが……お時間があったら一緒に来てもらえませんか?」

「別にいいですけど、どこいくんですか?」

「その……迷惑かけたお詫びと言いますか……」

 俺自身迷惑をかけられたとも思っておらず、海未さんはどこまでも真面目なんだなぁと考えながら笑う事しかできなかった。そんな俺の様子を見た海未さんも頬を膨らませながらどこか怒っているような素振りを見せており、またいつもと違った海未さんの様子を見て更に俺の笑い声が大きくなる。 最初は海未さんも呆れた様子だったが最後には俺につられたのかクスクスと笑い出していた。

 そんなやり取りをしながら家とは反対方向にある繁華街の方へ歩いていき、あるお店、というより出店の一角で海未さんが足を止める。看板にはクレープ屋と書かれた看板が立てかけられた移動式のお店の様だ。

「ここのクレープはとても美味しくて、最近よく皆と来たりするんです」

 クレープというチョイスがいかにも年頃の女の子らしく、思わず笑みがこぼれる。

「へい、いらっしゃい。って海未ちゃんじゃないか。今日はいつもの皆とじゃないんだね」

 お店の中に立っているのは年も三十半ばぐらいに見える渋めのおじさんだった。声は年相応の落ち着いた声をしており、どこか安心させるような雰囲気を纏っている。

「はい、今日は陽月さんと一緒です」

「ほう、例の陽月ってのはコイツかぁ」

 そういっておじさんは俺の顔を品定めするように顎に手を当てながらんー、と唸りながら数秒眺め、その後満足げに口を開く。

「コイツなら大丈夫そうだな。もしあんまりにもチャラチャラした奴ならガツンと言って性根を叩き直してやろうかと思ってたんだがな」

 おじさんは腕を組みながらガハハハと豪快に笑い飛ばす。俺ってどんな風な印象持たれていたのか少々不安を感じざるを得なかった。

「えーっとおじさん、今日のオススメ二つください」

 海未さんは予め注文の物を決めていたらしく、その旨を伝えるとおじさんが活きのいい返事をした後奥の厨房へ行きクレープを作り始めた。

「あの海未さん……俺ってどんな風に話されてたんです?」

「えっと……あははは……」

 顔を引き攣らせながら乾いた笑いを絞り出す海未さんはどこか申し訳なさそうな雰囲気を漂わせており、それだけで俺がどのように話されていたのかが察することが出来た。

「一応聞いてもいいですか……」

「えっと……主にことりが、それに悪乗りした穂乃果が……」

「あぁ……成程……」

「あ、あと……この前の更衣室での話を……」

 更衣室での話とはきっと俺がパンツを見られた時の事だろう。だがその話で俺はよくある見た側ではなく、見られた側だからむしろ憐れまれるはずだろう。

「その……正しく伝わらなくて私が見られたみたいに……」

「えぇぇぇ……」

 こうやってよくわからないイメージを不特定多数の人にもたれるんだろうなぁと落ち込む気分の中考えていた。

 

「ヘイお待ち、今日のオススメクレープ二つ! 中身はちょっと変えてあるから食べ合いでもしな!」

 相変わらずの屈託のない底なしの明るさを感じさせるおじさんの笑い声には沈みかけた気分もいつも通りに戻してくれるだけの力が感じられた。そういえばと、おじさんからクレープを受け取ってからまだお金を渡していない事に気が付く。

「あぁ、私が払うんでいいですよ。一応おわびですから」

 笑顔でそう言ってくるものの男が奢ってもらうってのもどこか恥ずかしい気がし、どうしようかと考えているとおじさんが腕を組みながら溜息を吐き、そして笑顔で口を開く。

「まぁ海未ちゃん、今日は奢りって事にしとくよ。いつもご贔屓にしてもらってるからな」

「いえ、そんな悪いですよ」

「受け取っといてくれや、ソイツの顔を立てるって事でな」

 そう言って俺の方を顎でクイっと差し、また笑顔を浮かばせる。おじさんは俺の様子から察してくれたのだろうか、気前のいい事を言っている。海未さんも引き下がるのだがそれ以上におじさんは頑として引かず、結局海未さんが折れ、クレープをもらいお店を後にした。今度また個人的にお礼を言いに、ついでに何か買いに来ようと去り際におじさんに感謝しながらそう思った。

 

 繁華街をクレープ片手に歩いていく。生まれて初めてクレープなんて食べたのだが思いのほか美味しく、生地やクリームの程よい甘さにフルーツ類のほのかな酸味が絶妙なハーモニーを奏でており、再び行くことを決意させるには十分なおいしさだ。

 横で同じくクレープを少しずつ食べている海未さんも満足そうな表情で味わうように食べている。そういえば中身が少し変わってるっておじさんが言っていた事をふと思い出す。

「海未さん、そっちの少しもらえませんか?」

 考え終わる頃には口が無意識に言葉を紡いでおり、その言葉に海未さんも呆気にとられた様子で数拍おいてから頬を赤らめ、俺の問いかけに返事をしてきた。

「い、いいですけど……その……あの……」

「あぁ大丈夫ですよ。俺のもあげますから」

「べ、別にそういうわけでは……」

「ならいただきまーす」

 返事を聞く前に海未さんの手に握られているクレープに向かって口を近づけ一口。我ながら大胆行動である。そんな考えも口の中のクレープ達の前にどこかへ飛んでいってしまう。んーこっちは甘さを強めて酸味をへらしてるのか。だが味がくどすぎない所がおじさんの腕の良さを感じさせる。

 その間海未さんは口をパクパクとさせ、何か言おうとしているのだろうが言葉になっておらず、あわわわというつぶやきにしかなっていなかった。

「あぁすみません。はいお返しです」

「……ええぃ、いただきます!」

 何故か決死の覚悟で死地に望むかのような気合の入れ方で俺の差し出したクレープを可愛らしく一口だけ食べる。咀嚼をしている時は目を思い切りつぶり強張った表情をしていたが徐々に目を開きながらその顔には笑顔が灯っていく。

「おいしい……です」

「ですよね。海未さんの方も美味しかったです」

 お互い見合って片手に握られたおじさん特製のクレープの感想を言い合う。すると海未さんがまたしてももじもじしながら意を決したように口を開いた。

「あの、もう一口……いいですか?」

「えぇ勿論! あ、海未さんのも貰いますよ?」

「……はい!」

 

 傍から見たら恋人のそれである事を俺と海未さんは全く意識しておらず、俗に言う食べ合いっこをクレープがなくなるまでし続けていた。

 




海未ちゃんは可愛い、はっきりわかんだね。
そろそろデュエットというか二人くらいからませてみようかな~っと思います。

相変わらず感想と誤字のお指摘等お待ちしております!

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