Another School idols diary 作:藤原久四郎
陽月くんは意外と多方面に手を出しており、器用貧乏と言った感じです。
「えー、では続・リーダー争奪、リーダー決定戦を行いたいと思いまーす」
「アンタ心なしかテンション下がってるわね」
「まぁそういう日もあります」
「意味わかんないわよ……」
場所はカラオケから移動しゲームセンター。今度はここでアイドルのパフォーマンスとしても重要であるダンスの競い合いを行うらしい。そして使うのは最近できた最新式のダンスゲーム、レッツ・ダンス・エボリューションだ。
余談だが前の機種のレボリューションでは実装当時今までのダンスゲームの常識であった8パネルを覆す、斜めの量を更に増やした16パネルだったのだ。ゲームマニアの中では情報が出てからは今までの難易度に物足りなさを感じていたのか、実装が大変待ち望まれていた事でも有名だ。
だがそれ以上に有名になったのは理由がある。そして皆が待ちに待ったゲームセンターに登場したその日に他社製品のゲームデータを許可なく使用していたことが発覚し、即回収、そして二度と日の目を浴びることが無かったという。結局ゲーム界に文字通りの革命を起こすことはなく、実装一日で回収といういかなるクソゲーでも見せないあまりのクソっぷりはクソゲー界に革命を巻き起こすことになったのだった。
何故俺がそんなに詳しいかと言えば、昔はダンスをかじっていたこともあったし、実装を心待ちにしていた一人だったからだ。それにその哀愁漂う回収の現場にも居合わせたからだ。そして俺はショックのあまりダンスゲームを引退した。
そしてこのエボリューションは元の会社が倒産に当たり、別会社が権利の買取りを行いった結果出された新作というわけだ。クオリティも中々高く、少なからず俺の様に離れていったダンスゲームファンも着実に戻ってきているらしい。
「……ってあれ、皆どこ行ったんだ?」
そんな苦い経験を思い出していと皆がさっきまでいた位置に居なくなっている事に気が付き、急いで辺りを見渡してみる。すると穂乃果さんを囲むように数人でクレーンゲームで盛り上がっていたり、何故か大量のメダルをもってうろついているのも見えたり、人だかりができる程の中で格ゲーをやっていたりともうわけのわからない状況になっていた。しかも格ゲーの方は黄色いモヒカンの少佐がしゃがんだままの状態で戦っている。あれはいけない。よく見ると二つに結んだ黒髪が楽しそうに揺れているのを確認。正直に言って呆れた。
「……一人で踊ってるか」
俺は一人、筐体に百円硬貨を投入した。
「ほっ……ほっ……、よっしゃパーフェクト!」
気が付けばコインを連投、久々のダンスゲームに心躍りながら俺は何度目かもわからない最高難易度の曲を総なめにしていた。満足感に浸りながら筐体から降りると、後ろにはいつ戻ってきたのかわからないが七人とも全員揃っていた。
そして一番近くに居た穂乃果さんと海未さんとことりさんが駆け寄り、俺に賞賛の言葉を投げかけてきた。
「すごいすごいすっごーい! 陽月くんダンス得意だったの!?」
「い、いや……ゲームですし……」
「それでも凄いよ! 陽月くんなら皆にダンス教えれるんじゃないの?」
「考えておきます……」
あっさり乗せられる自分のちょろさに恥ずかしくなりながら、またダンスも練習しておこうと決めた瞬間だった。
「やはり陽月さんは運動神経がいいのですね……これはトレーニングメニューを改める必要がありそうです……」
「海未さんキツイのやめてっていったじゃないですか!」
「いえ、私は一切妥協はしません! 請け負ったからには全力です!」
「ひぇぇぇ……」
この純粋さをもっと別の方面へ向けてもらいたいと心から思いながらも、自分の実力を認めてもらえるってのも悪くないと思った。
「ほぇ~陽月くんちょっとカッコイイかも♪」
「素直に照れますね……」
「あ、顔赤くなってるよ?」
「違います、疲れただけです!」
半分怒ったように見せかけながらことりさんのからかいを受け流す。本気で言っているのか冗談で言っているのかわかりづらいのがことりさんの掴み所のなさを作っているのだろうと身に染みて思っていた。
二年生の皆様からお褒めの言葉をいただき、ただ踊っていただけなのに何故かこっぱずかしくなってくる。昔取った杵柄がまさかこんな時に使うことになるとは……いやゲームセンターの事なんだから当たり前だ。
「って、アンタが楽しんでどうするのよ。私たちの採点しないといけないんだから」
そんな気分のいい時に水を差すように矢澤先輩が割り込んでくる。そういえばさっきのリアルファイトに発展しかねない事をしていたのは矢澤先輩だった事を思い出す。
「格ゲーでしゃがみモヒカン張って無双してた鬼畜先輩に言われたくないです!」
「何よ別に好きなキャラぐらいいいじゃないの! 大体ああいうのは運営の調整ミスなのよ! それに――」
「はいはい! この話題は終わり!」
自分から切り出しておきながらこれ以上は泥沼の戦いになることが容易に読めたため、一度仕切りなおす。
「じゃあ今度こそ採点しますから。順番にやっていってください」
「なんかもう……まぁいいわ。じゃあ今度こそやりましょうか」
という事で今度はカラオケの時の順番とは逆の順で一人ずつレッツ・ダンス・エボリューションをプレイしていく。俺はその様子を観察し、メモにペンを走らせていく。
先程のカラオケ対決の時、最高点を出した海未さん、何故か運動神経は良いはずなのにそこまで腕を振るえなかった様で、クリアノルマギリギリだった。終わった後どうしたのかと聞こうと思ったがダンス中合間を縫ってスカートを抑えている所を鑑みるにきっと恥ずかしかったのだろうと思い、評価は厳しめに付けておいた。アイドルに恥じらいがあっては……いやそういうのもありかもしれない。
次に真姫、初めてだったのか戸惑っている場面も見られたが後半になるにつれて慣れて来たのかほぼミスなしでプレイしきっていた。決して運動神経が悪いわけではないと思うのでトレーニング次第では化けそうだ。
続いて花陽。やはりというかなんというかミス連発でノルマクリアには一歩届かなかった。歌ではポイントが高かったものの運動系は苦手なのだとこれで把握することが出来た。基礎練習からしていった方がいいかもしれない。
そしてことりさん。可もなく不可もなくといったところか、踊りも歌もそつなくこなせる万能型なのだろうか。驚かされたのはゲーム終了の瞬間に足をもつれさせ尻餅をついたことだ。ゲームは終了していたので良かったのだが、問題はそこではなくこちらに向かって尻餅をついたため―――――。(何やら消した後と少し血の滲んだような跡がある)
穂乃果さんは初めてとは思えないくらいの高得点を出していた。慣れればフルコンボも容易な勢いであり、驚かされた。
矢澤先輩も穂乃果さんに肉薄する程の点数を出しており、流石伊達に三年間アイドルを研究していなかったわけではないようだ。終わった後の気の抜けようはカラオケの時と同じだったのでまた放置しておいた。
そして一番点数が高く完璧だったのは凛。始める前にはやったことがないと言っていたのだが持ち前の運動神経で完璧なパフォーマンスを披露。なんと俺と同じ難易度を初見でフルコンボして見せたのだ。
「どう? 凛凄いでしょ!」
ゲーム終了後、凛が嬉しそうにこちらへ駆け寄ってきた。正直、驚いた。センスだけでここまでやる奴を。そして火が付いた。俺の中のダンス魂が。
「凛、勝負だ。実はこのゲームには裏難易度という物があってだな」
俺は喋りながら筐体の上へ、そして曲選択の画面の時に素早くステップを踏む。↑↑↓↓←→←→。この コマンドは本来エキスパートまでしかない難易度を更に一つ上のレジェンドを出現させることが出来る。
難易度はエキスパートの軽く倍以上はあると言われており、俺も何度か挑戦したが未だにクリアしきったことはない。だが今なら最高のコンディションに最高のライバルがいる。
「さぁ一緒に踊ろう。そして果てを見に行こうじゃないか」
「なんだかよくわからないけどやってやるにゃー!」
曲を選択、選ぶのはこのゲーム最高難易度。
今、伝説が始まる――。
最後はネタです。あまり気にしないでください。
そしてお気に入りが200を超えていました!嬉しさのあまり飛んで跳ねております。
これからもこの作品と陽月くんをどうかよろしくお願いします。
誤字がやはり多いようなのでお指摘はどんどんお願いします!感想もお待ちしてます!