Another School idols diary 作:藤原久四郎
ですが、そろそろラブライブ本編に戻れるかと(震え
「んん……」
本日二回目の目覚めを体験。実に平日に二度寝するというのは気持ちが良かった。状況としては未だに凛の家であり、早めに起きて一度家に帰って着替えるつもりである。無論、そのために携帯のタイマーも始業三十分前プラス帰宅等々の為に三十分いつもよりも早くセットしていた。時間で言えば七時半くらいだ。
二度寝の時の体の動かしやすさは上々で、ガバっと布団を前に畳むように押し出す。そこでやっと体の自由、というより両手にかかっていたはずの幸せな拘束が解けている事に気が付く。……もっと堪能しとくべきだったろうか。おっと、朝は男にとって危険な時間である。しかも他人の家なので余計に、だ。
「おっはよーにゃー! 陽月くん! おっきてー!」
「……うるせぇ。おはよう、凛」
「うるさいとは何にゃ!」
「いや、うるさいよ。しかもまた」
「ご飯出来てるから起きて! はーやーくぅ!」
「何このテンション……」
「凛はいっつもこんな感じだよ!」
起き抜け一発目のモーニングコールは凛。しかも何故か滅茶苦茶にうるさい。無理矢理元気でいようとしているようにも感じるし、わざと男らしい振る舞いをしているようにも感じる。まぁ話しやすいから俺は気にしないんだけど。
「あ、ご飯って言ったけどさ……カップ麺じゃないよな?」
「って、いつでもカップ麺なわけないにゃ! それに作ったのかよちん!」
「いや、凛昨日の夜――」
「た、ま、た、ま!」
「あ、はい」
「全く……寝ぼけてるようだけど早く降りてきてね!」
扉を勢いよく閉め、まるで暴風の様な彼女は去っていった。再び静けさに包まれる空間に一人取り残されてしまった俺は、去り際の凛の顔が目に焼き付いていて離れずにいた。
「……可愛かった」
別に意識したとかではなく、ただ可愛かった。それ以上に言葉が無いくらいに。照れているような、それを隠そうと必死そうなような。いや……やめよう。頭を振り、一宿一飯の恩人に対する煩悩を消し去る。
「起きるか」
どうやら、必要以上に凛を意識しすぎた様だ。気をつけねばと思いながら、当たり前の事、布団を畳んで部屋を出た。
「おはよー」
「陽月くん、おはよう」
「さっきも言ったけど、おはよう陽月くん」
リビングには既に二人がおり、椅子に座りながら俺を待っていてくれたようだ。その理由は、二人の目の前にある机の上にあるものから察することができた。
朝にしては少々豪華すぎではないか、というくらいの料理が並んでいたのだ。……家の飯より豪華じゃないかこれ……サラダにスクランブルエッグにトースト、何故かピザやホットドッグ……って炭水化物多いな。他にもローストビーフ……ってすげぇ! なんでできるんだよ。他には洋風のモノがいくつも用意されているようで、花陽が用意したという話からてっきりご飯オンリーかと思っていた……あ、炊飯器がキッチンの方に見える。
「なぁ……これって、本当に朝飯か?」
「うん! 花陽、久しぶりの料理だから頑張っちゃった」
「ほんっとにかよちんは料理上手だよねぇ。本当になんでも作っちゃうもん」
「えぇ……なんでもって、ちょっと万能すぎやしませんかね」
「だってラーメンも作れちゃうもんね」
「えっ……凛とは大違いだな。花陽の爪の垢を煎じて飲むべきだゾ」
「凛はかよちんに養ってもらうからいいの!」
「寄生かよ! なら俺も一緒に養ってもらうぜ!」
「二人ともそれくらいにして、冷めないうちに早く食べよ?」
「おっ、そうだな」
最後の疑似結婚の申し込みは、華麗に無視されてしまった。
まだ立っていた俺が二人の対面に座り、三人で手を合わせる。
「「「いただきます(にゃー)」」」
ちょっぴりどころじゃない、豪勢な朝御飯の時間だった。
「ふぅ……結構食べた……」
「凛もちょっと食べ過ぎちゃったかも」
「私はまだメインディッシュが残ってるけどね」
「ってお米かよ」
かれこれ四捨五入してしまえば一時間程だろうか、会話を交えながら楽しく食事をしていた。最近の出来事や他愛のない言伝の話。色々あれども、食事を美味しくするスパイスである。そんな腹も気持ちも満たされる朝の時間だが、一時間過ぎていたのだ。重ねていっているが、一時間たったのだ。
「動きたくないけど、そろそろ学院いかねぇとな。一度帰って着替えもしたいし」
「そうだにゃー。よく考えたら陽月くん着替えないもんね。かよちんは着替え置いてあるからいいけど」
「おいおい着替えまで完備ってどんだけだよ」
「それは幼馴染だし」
「便利な言葉だな、幼馴染」
「うーん……やっぱり凛ちゃんの家の炊飯器もいい炊き具合……ふあぁ幸せぇ……」
既に食事を終えた俺と凛だが、未だに花陽だけはマイペースに白ご飯を頬張っている。その幸せそうな表情は、こちらまで思わず笑顔になってしまいそうだ。実際、俺はそれを見てすっかり笑顔になっている。その笑顔のまま何の気なしに、壁に掛けられている星空家の掛け時計を眺めた。
「……んん?」
「どうしたの陽月くん? そんなにその壁時計気になるの? まぁ凛のお気に入りだもん気になっても仕方ないよね!」
「いや、そうじゃなくて……あの時計おかしくね?」
「にゃっ!? そんな……」
「だってよ、八時十分とか指してんだぜ? おかしくね?」
いつも通りの時間なら、今から用意していくとして遅刻まっしぐらな時間である。はやめに用意したとしても間に合うかどうか。
「んんんっ? でもあの時計この前電池変えて時間合わせたばっかりだよ?」
「おいおい、時間直してこのズレってヤバいだろ。まだよくて八時前だ」
「なんで凛が駄目みたいになってるの!? 他の時計でも確認してみればいいにゃ!」
「おっ、そうだった。スマホの時計は多分くるってないはずだがっと」
「もうお米無くなっちゃった……」
花陽の食事も丁度終えた所で昨日から着替えていない、制服のポケットからスマホを取り出す。何々? 時間はっと……
「八時十一分? あっちの時計って今何時だ、凛」
「八時十一分にゃ」
……ズレてなかった。
「遅刻じゃねぇか! 急げ、間に合わなくなっても知らんゾーッ!」
「もっと早めに気が付いて欲しかったにゃー!」
「ごちそうさまでした……」
それからはもうてんやわんやであった。落ち着いてお茶を飲んでいた花陽をパパッと着替えさせ、俺の着替えはこの際諦めて凛の家から三人ですっ飛んで出ていった。
「おいおい! こっから走って学園までどんなもん時間かかるんだ!」
「大体十分くらいじゃない?! 走ったことないからわかんないにゃー!」
「はぁっ……はぁっ……げ、限界だよぉ……」
「時間はまだ十五分……花陽死ぬなぁ!」
朝からガッツリいい食事を取ってしまったために、足を思い切り動かして走り抜けるたびに食材たちが運動会を繰り広げる。勿論ゴールは口だ。
「クッソ今回遅刻したら校内清掃なんだよぉぉぉぉ!」
「よ、陽月くん何したの?!」
「課題サボりまくった!」
「馬鹿だにゃぁぁぁ!」
お互いを叱咤激励しながら、見慣れぬ道を凛の先導の下に走り抜けていく。十分もたたない内に最近ではすっかり見慣れた通学路の道になっていた。気づかぬうちに、いつもの凛たちと別れる道にたどり着いていたようだ。となれば後は少し!
「よっし、校門見えたぞ! 時間は……あと五分もねぇ! ラストスパートだ!」
「凛は大丈夫だにゃ! かよちんは……」
俺と凛はほぼ同じタイミングで、後ろを振り返る。
「も、もう限界……」
「は、花陽―ッ!」
「かよちんもう少しだから頑張ってにゃー!」
花陽は覚束ない足取りの中で、フラフラと俺たちのペースにギリギリついてきていたようだが、既に限界を越えているのだろう、今にも倒れそうだ。二人で花陽の腕を持って、半ば引きずる形で無理矢理引っ張っていく。もはやここまで来たら一蓮托生だ。死なばもろとも……でも清掃は嫌ッ!
「よし、校門だ! あと少しだゾ!」
「かよちん、大丈夫!?」
「も、もう大丈夫かも!」
疾走する景色の中で、校門には一つの人影が見えたが、きっと投稿指導の先生か誰かだろう。太陽を反射しながら眩しい髪をなびかせている。だが、今はそんなことより走るのだ!
「おはようございまーす!」
「おはよう、陽月くん」
「おはようございますにゃー!」
「はい、おはよう」
「あ……お、おはようございます!」
「ん……急いでね、もう少しでチャイムなるわよ」
高速の中で挨拶を通じているかもわからず交わし、下駄箱までダッシュ。花陽を掴んでいた手を離し、下駄箱から靴を引き出す。
一年の教室は二階、だが階段上って直ぐ……いける!
下駄箱に急いで靴をしまい、二人の事を意識せずに教室に向かって全力疾走。下駄箱すぐにある階段を上り、その先の教室へ向かう。
キーンコーンカーンコーン
と、階段も半ばでチャイムの音がすっかり人のいない廊下に響き渡った。だが、もう射程圏内、ゴール目前、間に合った。
「おっす、おはようございます!」
チャイムが鳴り終える直前、俺は教室の扉に手をかけ、教室内に元気よく朝の挨拶をした。いつもならここで凛と花陽からの挨拶があるが、今回は置いてきたのでなし。だが――
「お、泰原。私の後にきたから、遅刻な」
挨拶の代わりに、絶望が俺の朝を出迎えてくれた。
放課後、清掃活動をすることになったのは言うまでもないだろう。
ギャグ回連発のために、そろそろシリアスかもしれないですねぇ……
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