Another School idols diary 作:藤原久四郎
こんにちは、とても寒いですね。風邪をひかない様にしたいですねぇ。
知らぬところで誤解が生まれている中、そんな事は露知らず彼は生徒会室に向かうべく、再び階段を上っていた。よくよく考えれば、先に生徒会室に向かった方が帰りも楽だったのだが、今となってはもう遅いわけで。
「あ! おーい、陽月くーん!」
と、丁度目的地の一つ前の階である三階まで階段を上りきった所で、遠くの方から二つの影がこちらに向かって手を振っていた。タタッとこちらまで走ってきた彼女は、ひまわりの様に、眩しいオレンジ色の髪をサイドアップにしている。そして太陽の様にキラキラと輝く双眸は、直視するのが眩しすぎる程の純粋無垢な心と、しっかりと芯のある強さをたたえている。
二年生であり先程掃除の終えたアイドル研究部の……μ'sのリーダーでもある、高坂穂乃果さんだ。なんだか会うのがとても久しぶりな気がする。
「ちょっと穂乃果、突然走ったりしたら危ないでしょう」
そして穂乃果さんとは違い歩いてこちらまで来たのは、大和撫子を連想させる長く美しい黒髪を腰ほどまで伸ばした、園田海未さんだ。落ち着きをその全身から発するように、一挙一動から育ちの良さが垣間見える。
穂乃果さんが太陽の象徴ならばこの人は月であると思う、と勝手な評価をしていたりする。だが、その月も太陽に近すぎるせいか、かなりの熱を発していたりするのだが。
「こんにちは。穂乃果さん、海未さん」
「こんにちは、陽月さん。今日はどうかしたのですか? わざわざ三階まで」
「そうだよ、陽月くん! ビックリして駆け寄っちゃうくらいに気になるよ!」
「えぇ……そんな大した用事じゃないんですが……」
……口が腐ってもペナルティで掃除してるだなんて言えるわけがない。
「えぇ~用事もないのにわざわざ三階まで来たりしなくない? はっ、実は呼び出し!?」
「なわけないですよ。あるのは先生からのラブコールくらいです」
「陽月さん……先生に手を出すのはどうかと思いますよ」
「海未ちゃん、冗談に決まってるじゃん。というより言い回しの問題だよ」
「ほ、穂乃果さんが海未さんに突っ込んだ……!?」
「ほ、穂乃果だって馬鹿じゃないもん!」
「数学の成績は?」
「数学は……記号って数字じゃないもん!」
「あっ、やっぱりこっちの方が落ち着きますね」
「だから穂乃果は馬鹿じゃないよー!」
廊下に穂乃果さんの否定の声と、海未さんの追及の声が響き渡る。なんとも、平和な光景だ。
「オホン。穂乃果もその程度にしておきましょう? 陽月さんだって、私たちに言うのが憚られる事だってあるのでしょうから」
「むー。教えてくれたっていいのにー」
口を風船のようにプクーッと膨らませる穂乃果さんと、それを戒める海未さん。これだけでも金がとれるのでは? と思うくらいに絵になる二人である。また違う話だけど、音ノ木坂ってレベル高いよな……俺の周りが特殊すぎるのか?
そんな眼福光景を見続けるのもいいが、それでは俺が家に帰れるのがいつになるかわかったものではない。そろそろ行かねば。
「じゃあ、穂乃果さんと海未さんは今から帰りですか? そうでなくてもさよなら、ですけど」
「本当は暇なら一緒に遊びにいこー、って誘えたのにー」
なん……だと……。こんな美少女二人と放課後デートだと? いや、デートじゃない。それでも一緒に遊べる……明日死にかねない幸福だ。だが幸いなのか最悪なのかはわからないが、そのお誘いは断ることになるのが悔しい。まぁ一緒に言っても、何もできないのが目に見えるようだ。主にコミュニケーション能力の方面で。
「穂乃果、別に遊ぶのはいつだってできるでしょう。それに陽月さんはまだ用事があるようなのですし、邪魔しない様に帰りましょう?」
海未さんが俺をいい事フォローしてくれているが、今ばかりはこの優しさも悲しい。もしも、今日の清掃をすっぽかせるものならすっぽかして、この最高クラスのお二人にご同伴したいものだ。だが、もしもそんな事すれば次は顔だけで済むのかわかったものではないだろう。
運命とは実に残酷で、慈悲のないものだ。……その運命を引き寄せたのも自業自得だが。
「すみません、今日はどうしても外せない用事なので。もし暇な時があれば、次こそは是非」
「むーっ、まぁそれなら仕方ないよね。じゃあね、陽月くん!」
「では失礼します。あ、そうだ陽月さん」
穂乃果さんがタタッと、さっきみたいに走り出してから、海未さんが思い出したように立ち止まって口を開いた。
「以前……もうお忘れになられているかもしれませんが、トレーニングメニューの方がだいぶ完成してきました。夏休み程に渡せるかと」
「あ、本当ですか?」
少し前だが、武道場の視察に向かった際のゴタゴタから発生した話題だ。にしてもトレーニングメニュー作るのに一か月にか月経っているって、もしかしてとんでもないモノが出来ているのではないか……?
「えぇ、満足いただけるものがお渡しできるかと」
「……ちゃんと手加減してくださいね?」
「ぜ、善処します!」
い、嫌な予感がビンビンする……。今から少しでも運動しておくべきだろうか。
「もぅ! 海未ちゃん遅いよ!」
「わわっ、穂乃果!?」
「うおっ!」
二人で仲好く……ではなく以前の約束の事を話していると、待つのがくたびれたのか穂乃果さんが再び舞い戻り、海未さんの腕をがっしり掴んでいた。あまりの勢いに、俺も海未さんも驚愕の色を隠せなかった。穂乃果さんの行動は、皆を一様に驚かせなくては気が済まないらしい。
「いーくーよー!」
「ひ、引っ張らないでください~!」
「は、ははは。ではまた今度!」
「よ、陽月さんも何とか言ってください~!」
グイグイと引っ張られる海未さんも、堪え切れずに勢いよく俺の進行方向と逆に滑っていく。そんな仲睦まじい二人を見送り、俺も同タイミングで歩き出した。にしても、海未さんも穂乃果さんの前では、年相応の感じになるんだなぁ、と普段とはまた違った一面を見ながら内心面白く思っていた。
そう思ったのも二人が勢いよく歩いていった時に、なんだかいい匂いがしたのものだから、ちょっとだけ気持ちがいい感じに高揚していたのかもしれない。匂いで興奮とか変態じゃないか、とまたしても自身を戒めねばならない不純な気持ちが見え隠れしている。……流石に学院にも慣れてきたせいか、色々と余裕が出てきたのかなぁ、と前向きに戒める事にした。
すれ違いざまや、同じタイミングで別方向に動くと、時折風が発生したりすることがある。そんなにあることではないし、気に留める事でもない。だが、その風が起こる際は決まって何かをお互いの匂いを運んでくるものだ。
「……この匂い、確か凛の……?」
「んー? 海未ちゃんどうかした?」
「い、いえ……どうもしてませんよ?」
「じゃあーはやくーいこー!」
「だ、だから引っ張らないでください~!」
運命は悪戯好きの、それでいて無邪気な悪意の塊なのかもしれない。
初期の投稿時みたいに、短編形式に戻りつつある感じがします。
あんまり短くて内容薄いのはよくないなぁ、と戒める事にします。
報告として、章管理の方でタイトル変更を行いました。事実話が進んでいないのでw
では、テストも終わったのでガンガン書いていきたいと思います!