Another School idols diary   作:藤原久四郎

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こんばんは、雪やばいですよ!

寒さに凍えながら書いておりましたが、幾度となく打ち間違いをするほどに手が凍っております。暖房仕事してくれ!


絢瀬絵里
二つの動き


 陽月が生徒会室を出る少し前、一つの人影が日が暮れ始めた故のオレンジの光を受けながら、音ノ木坂の校舎から足取り重く出てきた。辺りに他の学院生らしい人影は見られず、彼女……園田海未は色の変わってしまった青い空よりも、深い青色の髪を揺らしながら溜息を吐いていた。

 

「私としたことが、まさかノートを置いてきてしまうだなんて」

 

 彼女は先程までクラスメイトであり幼いときからの友人である高坂穂乃果と一緒にいたのだが、ふとした拍子に忘れ物を思いだしたためにこうして一人で音ノ木坂まで戻ってきたのだ。その彼女と一緒にいた穂乃果だが、普段なら一緒に来るところなのだが本日は店番であったがために血相を変えて飛んで帰ったという。

 

「にしても、最近は暗くなるのが遅くなりました……ん?」

 

 相変わらず変わり映えのしない音ノ木坂の風景を見ながら一人呟いていた所に、普段では見たことのない景色……ではなく、ここの学院生ではない制服を身に纏っていると思われる、校門に寄り添うように佇む人影を見つけた。

 

「~♪」

 

 普段ならば気にも留めないというより、目にも止まらないはずの人影だが今日は何故か気にかかり、海未は通り過ぎざまに何の気なしにその人影の方を思わず見てしまっていた。

 

「あっ……」

「うん? あっ、貴女は!」

 

 海未が声を漏らすのと同時に、人影……見た所女の子、らしい女子中学生だろうかもまた声を漏らしていた。すこし薄めの金髪を風に靡かせ、耳にはイヤホンで何か聞いている様だったが、こちらを見ると同時に音楽プレーヤーと海未の顔を交互に見返していた。

 

「も、もしかしてそれ――」

「もしかして園田海未さんですか!?」

 

 海未の言葉は、無邪気な好奇心に差し止められていた。海未の疑問もまた、その画面に向けたものだったのだが。

 

「わっ、わっ! 本物の園田海未さんだぁ! 私μ'sのファンなんです!」

「え、えぇ!?」

 

 海未は眼前に迫る無邪気な輝く瞳に圧倒され、普段の落ち着いた雰囲気がすっかり取り払われ、どこにでもいる女子高生の様にも見られた。

 ファン? 誰の? 私の……私たちの? それに誰でしょうかこの子は……。誰かに似ているというか、見たことがあるような?

 

「あ、お姉ちゃーん!」

「……え?」

 

 と、目の前の女の子は突然海未の歩いてきた方向、音ノ木坂の校舎に向けて一層明るい笑みを向けながら自分の居場所を示すかのように手を勢いよく振っていた。そして海未の疑問の声は、その姉が音ノ木坂にいるといことよりも、その姉と呼ばれた人に向けたものだった。

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 やってしまった。生徒会室を後味悪く飛び出した後、一人歩く廊下で寂しく悔やんでいた。確かに絢瀬会長の口ぶりも俺の激昂を誘うには十分だったとはいえ、あのような態度を取ってしまった事を激しく後悔している。絢瀬会長は最後、どこか悲しげで必死そうで……とてもではないが、責める事のできる悪人ではなかった。それにあの申請書類、不自然に濡れていたが、それもまるで水を垂らしたかのようだったのだ。それはなんだったのか、よく考えずともわかるではないか……それは――

 

「あら、陽月くん? こんな時間まで校内でどうかしたん?」

「あっ……の、希さん」

 

 思考に呑まれながらも昇降口に着いたタイミングで、先程の生徒会室に普段いる生徒会副会長の希さんが不思議そうな目でこちらを見ている事に気が付いた。声をかけられて初めて気が付くだなんて、よっぽど気を取られていたのだろうか。

 

「陽月くん、確か今日清掃してるんだっけ? 校内見回りしてたから何度か見かけたんだけどね」

「そ、そうです。今日は清掃してました」

「んん? どうしてそんなに焦ってるん?」

「いえ、別に……」

「なんか……あった?」

「……あ、えぇ」

 

 希さんには隠し事ができない事を、今も前もそう思った瞬間だった。とりあえず、今は気になる事の真相を知ろう。でないと、きっと納得ができないから。

 

 

 

「へぇ……絵里ちが、ね」

 

 昇降口で靴を履き替えた後、いつもの帰り道とは違う道を遠回り気味に帰りつつ、先程の出来事をできるだけ簡潔に伝える。希さんは聞いている間、何も言わずにただただ耳を傾けていてくれたために、言いたいことを少しだけ吐き出せた。お蔭で気持ちもほんの少し軽くすることができたのだが、やはり胸の奥では疑問と不満が相変わらず渦を巻いていた。

 

「絵里ちも不器用やね……隠さなくたっていいのに」

「隠す……ですか? 何かあったんですか」

「うーん……言うのはいいんだけれど、陽月くんは聞いてどうする? 絵里ちは頑固だから何言っても聞かないと思うよ」

 

 確かに、俺が書類の事を問いただしてからは始終寄せ付けない雰囲気というか、他を拒絶する……そんな雰囲気を感じ取れたのだ。それでもその感想を抱いていても、あの湿った書類と絢瀬会長の最後の台詞の違和感は俺を困惑させるには十分すぎる。だから、聞かなくてはいけない。それがどんな結末を呼ぼうとも。

 

「プライベートな話だし、一応覚悟はある?」

「もうここまで来たら、覚悟は出来てます」

 

 一度踏み込んだ足はもう戻らず、ただひたすらに深く深く進んでいくか、後悔にまみれて沈んでいくかのどちらかにしかならない。俺は……自分の心に従って、前者を選ぶんだ。

 

「少し長くなるから、ここ入ろうか」

 

 と、話が始まると思いきや希さんが指さした先には、一件の喫茶店が指さされていた。気が付かない内に繁華街の方へ向かっていたようで、見たことのない『勿忘草』と書かれた落ち着いた雰囲気のお店がそこにはあった。

 

「いらっしゃいませ」

 

 店内には店長だろうか、一人の男性がカウンター席の向こうで食器の手入れをしていた。パッと見たとこその店長らしき男性は、四十代だろうか。佇まいや雰囲気、それに顔の皺などからそう感じられた。希さんはその男性に会釈し、店内を進んでいった。

 店内は外観から受けた印象のまま、内観も落ち着いた雰囲気であった。木張りの床に木の椅子と木の机。店内にはクラシックだろうか、落ち着いた雰囲気の音楽も流れおり、まるで我が家の様な安心感を感じた。

 

俺は希さんに案内されるがままに中に通され、店内は人もまばらだったので手頃な席に二人で腰かける。希さんは慣れているのか、まるで特等席であるかのように窓際の席に案内してくれた。

 

「ご注文はお決まりでしょうか」

「えっと、いつもの……じゃなくて店長のオススメの紅茶一つお願いします。陽月くんはどうする?」

「あーっと、今日のオススメのコーヒーとかありますか」

「はい。本日のオススメの方はイエメンモカとなっております」

「あ、じゃあそれで」

「かしこまりました」

 

 予想通り店長であっていたのと、これは予想通りではない渋い声に、俺は少しだけ呆気にとられていた。

 か、かっこいい……。去り際の歩き姿まで渋い、クールだぜ。俺もこういう年の取り方をしたいものだ。と、ほれぼれしながら店長の後姿を見ていると、希さんがニコニコと笑顔でこちらを見ていた。

 

「陽月くんってコーヒー飲むんやね。ちょっと意外かも」

「えっと、最近親父が飲んでばっかで……俺もよく付き合って飲んでるんです」

「へぇ~お父さんが。陽月くんのお父さんかぁ……きっとかっこいいんだろうね」

「親父はただのしがないサラリーマンですよ。よっぽどここの店長の方がかっこいいです」

「ふふっ、身内の評価って意識しなくても低いもんよ? その内見れるといいなぁお父さん」

「そんな見る機会なんて、あるわけないですよー」

 

 何故か希さんは楽しそうな、それでいて影のある表情を浮かべていた。もしかして年上好きなのだろうか? どうでもいいがこの年頃の学生って無駄に年上に憧れてたりするんだよな。大学生とか。そんなもん遊ばれてるって決まってんのに……って決めつけはよくないな。それにこれだと勝手に希さんの趣味を決めつけて、勝手に否定してるみたいだ。

 

「おまたせしました。本日のコーヒーと、同じく紅茶になります」

 

 雑談が十分程続いた頃だろうか、店長がこちらに向かってきて注文の品を運んできてくれた。俺の下に差し出されたコーヒーは出来たてであることを主張するように、ゆらゆらと湯気を立ち昇らせていた。向かいに座る希さんの方にも紅茶が出されており、希さんも慣れているのかお辞儀をしていた。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

 完璧な立ち振る舞いで立ち去る店長。もはや一挙一動ですら完璧さをその身で体現するかのようで、見ているだけで飽きる事はないだろうとの感想を抱かざるを得なかった。

 ……やっぱかっこいいなぁ。

 

「にしても、同時に注文の品がでるなんて……まるでガ○トですよ」

「ん~。でもガス○と違って……ほら、全然冷めてないでしょ?」

 

 差し出された紅茶のカップは、事前にカップを温められていたのだろうか、普段飲むときのカップとは違って未だに熱を帯びていた。

 

「おぉ~コーヒーも出来立てみたいだし、コーヒーは冷めるとまずいしこれは嬉しいですね」

「そうやね。店長は大量のオーダーでもしっかり出来立てで、最高の味を提供してくれるから毎日大盛況みたいよ?」

「ほぇ~凄いんですね、ここの店長」

 

 やっぱり『大人』って感じの男の人っていいね。男の俺でも思わず惚れそうになってしまう、そんな圧倒的な魅力を感じる。

 

 

 

お互い出されたモノを飲みながら、一息つく。さて、一段落着いたところでそろそろ本題に入ろう。ここに来たのも、そのためなのだから。

そんな俺の意思を察したのか、希さんはふっと深呼吸をしてから、いつになく真面目な表情で口を開いた。

 

「じゃあ、話してあげる。堅物生徒会長の、絵里ちの事を」

「絢瀬会長の……」

 

 

 

 一方音ノ木坂では……

 

 

 

「生徒会長……?」

「貴方……」

「あれ? お姉ちゃん?」

 

 戸惑う海未の目の前には、見知らぬ女の子に『姉』と呼ばれる、生徒会長……絢瀬絵里の姿があった。

 




新しいお店がでました。勿忘草の名前ですが花言葉とか諸々を考えながらつけております(ノリだなんて言えない

オリジナルキャラクターもこれで三人目ですが、全員男。女の子の方はまだ名前だけですし……僕はやっぱりホモですね、間違いない。

オリジナルキャラクターの方は評判がいかがなものかわかりませんが、何度かこれからも出てくる予定です!
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