Another School idols diary   作:藤原久四郎

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さてクリスマスです。クリスマス回でもやろうかしら……

今回はコロコロ視点が変わったり一人称視点から三人称視点になったりと、困惑されるかもしれないです(予防線


わからない真意

「まずはそうやね、絵里ちが何してたかって所から話そうかね」

 

 改まった様子で、希さんは話し始める。

 

「絢瀬会長は昔何かやっていたんですか? という事はμ'sの踊りを遊びと言い切る……ダンスか何かですかね」

「ん、半分正解。絵里ちは小さいときにバレエをやってたんよ」

「会長が……バレエ? それに小さいときって」

「そうや、陽月くんの予想通りで今はやってないんよ。いかんせん今は学院の事もあるし、それに――」

「それに?」

「……そんないきなり核心話したらおもろないやろ? 折角の喫茶店なんやし、ほら飲も?」

「……はぁ」

 

 肩すかしを食らった気分だが、確かにまだ新しい情報が多すぎて脳の処理が追いついていない。なまじピースが揃っている事によって、余計に混乱をしている感じがする。希さんの勧めを受けて、渋々目の前に置かれている未だに湯気のたちこめるコーヒーに手を伸ばす。

 

「んっ……美味しい」

「はぁっ……こっちも美味しいわぁ」

 

 確か……イエメンモカといっただろうか、飲む前の匂いの香ばしさと、口に含んだ際のほんのりとした甘味。インスタントコーヒーによく見られる変な薄みや苦みを感じさせない、純粋なコーヒー。それに飲み終えた後の思わず零れる溜息、後味の良さも抜群だ。そんな上質なコーヒーのお蔭か、ほんの少し気分が落ち着いた。

 

「……ふっ」

 

 と、俺の満足そうな表情を見ていたのか、またカウンター席の前にいる店長がほんの少しだけ表情を変えて、こちらから見ると満足げで嬉しそうに見えた。ふとした時に見せる笑顔、やっぱりカッコいいぜ。それに茶目っ気もあって親しみが湧くというものだ。

 

「よし、落ち着いたみたいね。じゃあぼちぼち話してこか~」

「はい、お願いします」

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 どうしてこうなったのでしょうか……。あの後何故か絢瀬会長と、その妹さんに連れられる形で公園までやってきてしまいました。会長は何か話したいようでしたし、何かあるのかと思いましたが、妹さんが『飲み物買ってくる!』と何処かに行ったっきり、会長は何か考えるように黙り込んでしまいました……。

 

「お姉ちゃーん! おまたせ!」

「ん、ありがとう亜里沙」

「はい! 海未さんもどうぞ!」

「あ、ありがとうございます」

 

 亜里沙と呼ばれた、絢瀬会長の妹さんからなにやら自動販売機で買ってきたと思われる缶を受け取る海未。ほんのり暖かく、少し肌寒く感じる夕方のこの時間には丁度いい飲み物だと思われたが、違和感は妙な重さで感じ取ることが出来た。

 

「お、おでん……?」

 

 なんともいえぬ重みはこれであった。亜里沙はどうやらこれを飲み物と思って買ってきたようだ。ただ単に抜けているだけなのか、天然なのか、素なのかは判断が付かない所であるが、彼女が純粋なる好意を持ってこれらを買ってきたという事だけは、天真爛漫な笑みから誰だってそう思う事だろう。

 

「亜里沙? これはおでん、って言って飲み物じゃないのよ?」

「お、でん? 飲み物じゃない……?」

 

 亜里沙はおでん缶と書かれたソレを、手元でクルクルと回したり軽く振ってみたりと何やら探るように色々な行動をしていた。やがて中身の固形物の跳ね返りを感じたのか、一連の行動をやめて一言。

 

「ハ、ハラショー!」

 

 海未はそれらの行動を眺めながら、亜里沙の放ったロシア圏の言葉で素晴らしいという意味の言葉を受けて初めて亜里沙がロシア人、ないしハーフであるかを察した。

 亜里沙ちゃんはロシアに住んでいたのでしょうか、日本人離れした綺麗な髪に、碧眼。これらの特徴から、亜里沙ちゃんが少なくとも日本生まれでない事だけはわかります。ではその亜里沙ちゃんからお姉ちゃん、と呼ばれる会長ももしかして――

 

「亜里沙、悪いのだけれど別のモノを買ってきてもらえないかしら?」

「うん! もう一回行ってくるね!」

 

 もう一度先程と同じように公園を出ていく亜里沙ちゃん。私はそれを見送った後、隣に座る会長の方を見てみました。ですが会長は相変わらず何か考えているようで、一向に口を開こうとしていませんでした。会長は私に何の用があるのでしょうか?

 

「ごめんなさいね、あの子最近日本に来たの。それで少し日本に慣れてない所があるから」

「あ……そ、そうですか」

「それに突然こんなところまで連れてきてごめんなさい。迷惑……に決まってるわよね」

「い、いえ! この後の用事はないので……それよりも、何か用がおありだったのでしょうか?」

「そうね……μ'sの一員である貴方に、その中でも比較的賢明だと思う貴方とは一度話しておきたかったのよ」

「μ’s……もしかして、μ'sの活動について何か……?」

「えぇ、まぁそうなるわね」

 

 も、もしかして活動の停止でも言い渡されるのでしょうか!? 会長は以前から私たちのアイドル活動にあまりいい反応をしていませんでしたし……ですがもし、そう言われたとしても私にだってプライドはあります。

 海未は固唾を飲んで会長の二の句を待つが、この覚悟は結論から言えば不要であったとしか言いようがない。

 

「……μ'sの活動はどう? 皆楽しくやっているかしら」

「え……?」

 

 海未が戸惑うのも当然である。μ'sの活動をとやかく言われる事は覚悟していたし、この場についてきたのもそれが理由の一つである。会長の真意を聞くこと。それがよもや活動の安否の問いかけだとは……動揺するのも仕方がないといえよう。

 

「いや、そのね? 亜里沙が貴方たちのファンでね……よく聞かれるのよ。μ'sの皆はどう? だとか、可愛いだとか綺麗だとか……」

「は、はぁ……」

「その証拠に、貴方を一目見て随分とはしゃいでいたでしょう? そう言う事よ」

「私としては、μ'sの活動について何か言われると思っていたのですが……本当はそうではないのですか?」

「私だって、別に貴方たちの活動に関してはいいと思うわよ。前も行ったかもしれないけれど、私はただ皆に廃校までの残された時間を、音ノ木坂の生徒として満喫してもらえればそれでいいの」

「会長……」

「でもね? 貴方たちの行っている活動は、音ノ木坂の看板を背負っているという事をわかっているかしら」

 

 少し、絵里の声のトーンが落ちる。これから、本題に入るのだろう、それを海未も雰囲気から察したのか、背筋をいつも以上にぴっちりと伸ばしている。

 

「私は、言っておくと音ノ木坂を廃校にするつもりはないわ。それに廃校にしないためにも活動している。貴方たちもそう言うつもりらしいわね」

「はい。私たちの活動は廃校を阻止するためのモノです」

「でも、貴方たちが例えば……何か問題を起こしたとすればどう? インターネットを介して配信をしている今、かなりの認知度があると思うの。その意味が分かる?」

 

 よく考えれば会長の言っている事は正しいです。私たちは『音ノ木坂学院のスクールアイドル』として活動をしているのですから。ですが……その事を今更問うのもよくわかりません。私たちとてそれを理解して活動しているのですから。……まだスカート丈は気になりますが。

 

「だからね、気を付けてほしいの。音ノ木坂のためにも……貴方たちのためにも」

「私たちの……?」

「人気を得るというのは、表に出るというのはそう言う事よ。これは会長としてじゃなくて、私個人としての忠告よ」

「会長……」

 

 ますますわからなくなってきました。会長は私たちの活動を快く思っていないはずでは……? それなのに私たちを案じるような発言。まるで真意がわかりません。ですが、私個人と言った意味は一体?

 

「お姉ちゃん! はい、今度は別のだよ!」

 

 海未の思考は、再び帰ってきた亜里沙の底抜けに明るい透き通った声によって中止された。亜里沙の手に握られた缶には……お汁粉と書かれていた。

 

「ありがとう亜里沙。じゃあ帰りましょうか」

「あれ? お姉ちゃんもうお話終わったの?」

「えぇ、もう終わったの。だから帰りましょう?」

「うん! じゃあ海未さん、これをどうぞ……また会いましょう!」

「は、はい。さようなら絢瀬会長、亜里沙ちゃん」

 

 海未を一人残し、絵里と亜里沙は公園を後にする。海未には少しの複雑な疑問と、両手に握られた少し温くなったおでん缶と、まだ仄かに温かいお汁粉だけが残された。だが、疑問を解決するだけのピースは海未の手元には残されていなかった。

 

「これ……どうしましょう……」

 

 その独白も、一人の彼女には解決するべき事のひとつであった。




クリスマス回のアンケート取ろうかなーって思います。
活動報告の方に作っておきますのでよければ。(仮に投票ゼロでもやりますが

クリスマスなんざ家族と祝うもんでしょうがあああああああああああ!
皆さんよき聖夜をお過ごしになられますようにお祈り申し上げます。(爆発しろ
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