Another School idols diary 作:藤原久四郎
まず初めに10万UAを、なんと迎える事ができました!
やったぜ! 次は……目標がない!
ありがとうございます! お礼に何でもします!(虚偽
感謝を述べるとともに、これからも精進を続けていきたいと、そう考えておりますので、どうかこれからもよろしくお願いします!
「おばあ様おばあ様! ちゃんと! コンクール! 見に来てくださいよ?!」
「えぇ、えぇ……わかってますからエリー。そう何度も言わなくても」
「しっかり言っておかないと駄目なんですよ! おばあ様、気が付いたらいなくなってるんだもの」
「そう言われてもねぇ。でも、可愛いエリーの頼みですもの、ちゃんと見に行きますよ」
「絶対よ! 約束よ!」
「ふふふ、はいはい」
コンクールの前日。いつも通りの練習……ではなく、軽い通しと調整をしていた私を見に来てくれていたおばあ様と、今日ずっと言っている事を延々と繰り返しながら帰り道を共にしていた。辛い練習を乗り越え、ここまでやってきたのだ。明日のコンクールはそれに見合った結果を出さなくては、と思う。
「にしても……エリーもだいぶ成長しましたね」
「えっ?」
突然のおばあ様の発言に、思わず驚きながらその顔を見てしまう。
「私はエリーが生まれた時からずっと、ずっと見ていますからねぇ……少し身長が伸びただけでも気が付きますよ?」
「え、えぇっ……どうしたんですか? 突然そんな事」
「身長、また伸びたでしょう? それに、体つきも女性らしくなってきました」
「あ、えっ……そ、その通りです」
身長伸びたのほんの数ミリなのに……気が付くものなのかしら。も、もしかして叔母様は私の事を監視しているんじゃ!? そ、それはそれでいいのだけど。
「ふふふ、貴方の考えている事と違って、普通に気が付くだけよエリー?」
「わ、私は別に叔母様が監視してるだなんて思ってないです!」
「おやおや、自分から言ってるではないですか」
「あっ! い、今のはなしです間違いです!」
「エリーも、まだまだですね」
「か、からかいましたねおばあ様ぁ~」
まただ、おばあ様は二人の時は決まって私の事をからかってくる。それをわかっていて乗せられている私も私だけど……で、でも……いつかおばあ様をからかってあげられるくらいの人になってみせるんだから!
笑い声が絶え間なく続く帰り道。決まってその幸せな時間が終わるのは、ここである。
「あっ、着いちゃった」
「ですね。お帰りなさいエリー。そしてさようならです」
「た、たまにはお家にいらっしゃってくださいおばあ様。いつだって歓迎するのに」
そう、いつもこの場所で二人の時間は終わりを告げるのだ。絵里はこの家で親と暮らしているが、祖母は彼女らとは暮さず電車で数駅ほど離れた場所に住んでいるのだ。更に言えば、叔母は決まって見送りをする際には絵里の家によっては行かない。
「ごめんなさいね。今日も、用事があってですね」
「いつもそう! おばあ様そうやっていつも帰っちゃうんだもん……それに何の用事かも教えてくれないし……」
「でもわかってちょうだいエリー。別に貴方に隠し事をしているわけではないのよ」
「じゃあ教えてください! 隠し事なんてしないでください!」
「そ、それは……」
押し黙るおばあ様。いい加減、教えてくれたっていいではないか。最近家にも来てくれない事、こうやって隠し事をしている事。
「っ……」
「えっ……?」
おばあ様の言葉を待って俯いていると、突然体を抱きしめられた。それも、振りほどけない程度の強さではなく、子供の私でも簡単に振り払える強さで。
「ごめんなさい……エリー、今はただ聞かないでほしいの……」
「お、おばあ様?」
「必ず、必ずコンクールには行くから……ごめんなさい……」
その後、結局私は何も言えずおばあ様とお別れしてお家への門をくぐった。でも、少しだけ戸惑っていた。
「おばあ様……痩せたのかしら」
背中に回された腕は、記憶の腕とはかけ離れたか細い腕になっていたのだから。
「はっ……はっ……」
視界が靄がかかったように定まらず、足元もおぼつかない。この国の寒さからではなく、体の異変から来るものである。少し暗くなっている住宅街を歩く彼女は、誰もいないこの道をただただ長く感じながら一人の待ち人のところへ進んでいっていた。
「おやおや、随分と辛そうですねマダム」
「……そう言うあなたは、随分と気楽そうですね」
ぼやける視界に明確に映った、しわがれた声の老人は年を感じさせない元気さと、年相応の落ち着きを放っていた。その老人は、彼女の待ち人であり大切な人だ。
「本当に気分が悪そうだ。どこかお休みできるところまでお連れいたしましょうか?」
「是非ともお願いしますわ。ちょっと体が言う事を聞かなくてねぇ」
老人は傍に止めてあった車を指さし、後部座席のドアをあけてやり、彼女を座らせてやった。そして自分もまた運転席に乗り込み、車のエンジンをかける。
「では、どこまで?」
「そうねぇ……私がいま必要だと思っている場所に」
「はて、この辺にホテルはあったかの」
「冗談は顔だけにしてくださいませ」
「ほほほ、年ですかな。では、発進しますので揺れにはお気をつけを」
「お願いしますねぇ。申し訳ないですが、少し眠らせてもらいます」
「わかりました。目的に着き次第お起こしいたしますよ」
エンジンが付いたのか、車は徐々にスピードを出しながら彼女の目的地へ進み始めた。老人も、冗談を言ってはいたものの目的地をわかっているようで、何も聞くことなく車を進めている。
眠るといった彼女は、徐々に瞼を閉じていき、最終的に暗い空間に一人になった。そこに浮かんだのは愛するエリーの姿であった。その時の彼女は、輝くステージでバレエ服に身を包み、表彰を受けている光景であった。その光景に安心して眠りに落ちようかという所で、映っていた光景が変わり、今度は愛するエリーが悔しそうに輝くステージを眺めている姿だ。この光景は何故か妙にリアルに映り、何やらエリーが彼女に向けて言葉を次々ぶつけていた。その声は聞こえないものの、ただただ悲しみの声であることだけはわかった。
その光景は、彼女の不安と希望が見せた幻なのか、それとも正夢になるのかはわからないが、どちらもあり得る光景である事は、彼女自身理解していた。そして、その光景が見られなくなるかもしれないという事も。
「ありがとうございました! 次は十七番の方です!」
よ、呼ばれた……私の出番だ。いつもならここにはおばあ様と先生がいるのに、今日はおばあ様の姿が一向に見られなかった。
「大丈夫? エリー」
「え、あ……はい」
「本当に? そんなんじゃまともな演技できないわよ?」
「わ、わかってます……」
でも、でもだって私のコンクールや演技の際には、いつだって傍に居てくれたおばあ様が今日は姿を見せてくれない。平静を装ってはいるものの、先生には筒抜けなのかずっと心配そうにこっちを眺めている。
「エリー? そろそろ時間よ」
「は、はい!」
「頑張ってね。貴方の実力はきっと通用すると思うから」
相変わらず心配そうだったが、先生は笑顔で舞台袖まで送り出してくれた。後はもう一人きりだ。大勢の人を前に、孤独に踊りきるのだ。大丈夫、大丈夫……こんな緊張はある意味いつも通りじゃない。おばあ様だって、用事があったのかもしれないし、いつも来てくれていたこと自体が逆におかしな話ではないか。そろそろ、一人立ちの時なのかもしれない、とは思うもののやはり不安感はぬぐえないままだ。
そういえば、おばあ様の観客席は舞台から一番近い列の隅だったはず。もしかしたら、今日はずっと観客席で見てくれているのかもしれない。そうだきっとそうだ。きっと私の一人立ちを促そうとしているんだ。じゃなかったら、いないわけがない。おばあ様は来るって言ってくれたんだから。おばあ様は嘘はつかないはずだよね。
私は希望を抱きながら、不安を感じたまま、ある意味最悪のコンディションのまま、舞台に立つ。大丈夫、練習は誰にも負けないくらい頑張った。後はその成果をそのまま結果として、踊りに昇華するだけ。未だに光も希望も通さぬ幕の前で、私は終わらないジレンマと戦いながらその時を待った。
「では、次の方です!」
幕が、開く。
「とまぁ、そんなわけで」
「って……肝心な結果聞いてないですよ!? それに絢瀬会長ただのおばあちゃんっ子じゃないですか!」
「んー……だってそのまんまやしなぁ」
「えぇ……」
なんでも、絢瀬会長はバレエのコンクールでいい結果がおさめられなかったようだ。その挫折はどうにも経験したことが無かった事らしく、幼い心には傷が大きすぎたとの事。微妙にわかりづらいのは、希さんが途中途中で「あれ?」「こんなんだったかなぁ」と、不安をぬぐえない事をずっと言っていた為である。これでいいんだろうか……。
『希、聞いてる?』
『ん、あぁごめん。聞いてるよ絵里ち。確か今は……絵里ちの恥ずかしい勘違いと挫折経験だっけ』
『酷い言い様ね……まぁ大体あってるけど』
『で、結局どうなったん? おばあさんとの仲とかその他諸々』
『そうね……おばあ様とは仲直りしたわよ? でも、おばあ様はもうそんなに長くないらしいわ』
『……ごめんな、こんな事軽々しく聞いて』
『いいのよ、もう過ぎたこと。あとコンクールだけどね、成果で言えば準優勝。あの状態からしたら完璧でも勝てなかったわね』
『というと?』
『なんでも、優勝者は以前私が優勝した時の準優勝者だったらしいの。それで悔しさをバネにして、挫折も乗り越えて優勝したらしいの。しかもコンクール対象年齢ギリギリで、ね』
『それはまた……凄い話やね』
『それでこの話は終わり。じゃあ帰りましょ?』
『…………じゃあ絵里ちはその挫折を乗り越えたん?』
『ん、何か言った希?』
『ううん、何でもないわ』
「…………これは言わなくてもいいかな」
「うーん……結局絢瀬会長は学校を存続させたいだけなのか? おばあさんの為に……? ならμ'sを否定するだけの理由はないはずじゃ……」
「じゃあこの話は終わりなぁ。もう遅いし、今日は帰ろうか?」
「……うーん。わかりました」
俺と希さんは、残りの飲み物をグイッと飲みほした。
「また来ます、ありがとうございました」
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
会計をし、店長にお礼のあいさつを告げてから、今度は店長に来店のお礼を受けながら『勿忘草』を後にする。外に出ると、暗くなり始めている空は、すっかり夜である事を告げていた。なんだかんだ一時間くらいはいたのではないだろうか。
「じゃあ、希さんもさようなら。確か方向逆でしたよね」
「んーそうやね。でも何? 陽月くんはこんな女子高生を夜道に一人で放り出すつもり?」
「そうですかそうですか女子学院生の先輩。送り狼になってもいいのでしたら」
「とうとう陽月くんも冗談言うようになったかぁ。誰のせいやろな」
「さぁ、誰のせいでしょうか」
と、軽く会話を交わしてから、今度こそ希さんと道を別にし、家路に着く。それにしても、今日は結局何が何やらと言った感じだったな。会長、それにその過去。それに挫折。
『最低最低! ヨウ君なんて!』
『もうお前しかいないんだよヨウ……』
「つっ……」
不意にする頭痛。それに伴い思い出す靄のかかった記憶の片鱗。でも、わからない。ただ苛まされる、最低の言葉。
「……さっさと帰ろ」
人生はパズルのように容易にいかないものだと、昔誰かに言われたこともある気が、多分だがそんな気がしていた。
「……さむっ」
今日は少し話しすぎてしまった。肝心な所は言ってないけど、陽月くんなら多分わかっちゃうだろうなぁ。似てる、様な気がするから。依存することも挫折も。
「それいったらウチも大概、かなぁ……」
μ's、女神。それに絵里ち……陽月くん。ウチも、まだまだやんな。
「それに今日は、収穫もあったし」
陽月くんも、ウチの予想を遥かに超える事してるんやなぁ。きっと、ミスリードやろうけど。
「凛ちゃんの匂い……ふふふ、またネタが一つっと」
夜空を嘲笑うかの様な希の顔は、月の光を浴びて神々しく映るも、時折垣間見せる影が、その美貌を覆い隠してもいた。
オープンキャンパスまで、あと少し。
ぬわぁぁぁああん過去編は難しいんもおおおおおおおん!
馬鹿野郎俺は適当だぞ勝つぞ俺は!(妄言
オープンキャンパスまであと少し、といいますが時系列表記してないのでこうなってます。ただの管理不足です。
もうそろそろエリーチカ編も終わりかなって、思ってます。
頑張ってやっていきます!