Another School idols diary 作:藤原久四郎
最近はどっちの文が自分らしいのかもわかんなくなりましたがw
「クソ、どこにいったんだ絢瀬会長」
よくよく考えれば、どこに行くかなんてわかりもしないし、あてもない。とりあえず生徒会室にでも行けば、と安易な考えで現在階段を下りていた。
「……? あれ、希さん?」
「あ、陽月くん」
結果として運が良かったのか、絢瀬会長に一番詳しい希さんが廊下の隅で立ち尽くしていた。それにしても元気が無いように見えるが。
「その……つかぬ事をお伺いしますが、絢瀬会長どこ行ったか知りません?」
「ん、今さっき行っちゃったよ」
「えっ、ど、どこにいったんですか?!」
思いがけず足取りが掴めそうな言葉が、希さんから伝えられた。でも、今さっきって。という事はさっきまで一緒に居たって事か?
「そうだ、陽月くん。一つ頼み事していい? 重要な事」
「っ、な、なんですか?」
「絵里ちを、追いかけて?」
「そ、それは……今はそのつもりですけど。何があったんですか?」
「今ね、きっと絵里ち揺れてる。本音も、聞いちゃった」
「……本音?」
「絵里ちの、やりたい事」
突然の、かけていたピースが埋まりそうな言葉。絢瀬会長の、やりたい事。μ'sを否定してでもしたい事。
「絵里ちね、やっぱりどこまでも生徒会長だった。でもそれは、本当にしたい事を隠すためで……本当にしたかったことは、アイドル……」
「ア、 アイドル……? 絢瀬会長が?」
アイドル、アイドルだと? 今度はハマりかけたピースが無茶苦茶に壊されたみたいだ。いや、まて……逆だ。俺の考えてハメていたピースが間違っていたんだ。生徒会長で廃校を阻止したいとかそういうのは関係なく……じゃなくて、本当はもっとシンプルな行動理由が底にあったんだ。わからなかった、絢瀬会長のしたい事。見えなかった所。結局、答えは最初から出てたじゃないか。
『まぁ結局なぁ、絵里ちは人と全力でぶつかっちゃうから勘違いも起きちゃうんよ』
本当に、全力だったんだ。廃校を阻止したいのも、μ'sの活動を認めなかったのも。俺の勘違いだったのだ。全力すぎる会長のせいで。結局はどちらも本音で、どちらも正解で……でもどれも間違っていたんだ。廃校を阻止するのは、祖母のためで。μ'sの活動を認めないのは……自分の経験から。
そして、その正解たちを集めた本当の正解が『アイドルになりたい』っていうごくごく簡単な、絢瀬絵里という人間の本音だったわけだ。それが、『生徒会長』という肩書の全力を破って今まさに希さんに話されていた。その理由は、同じく全力だったμ'sの……その絵里さんのすべきことへの回答だった。そして、希さんの全力にまた揺れていた。
なら、自分のやりたい事がわかってるのなら……決して遅い事なんてないから、今から始めればいいんだ。アイドルを。それがきっと、絢瀬会長にとっても、希さんにとっても、μ'sにとっても、最高の結末なんだ。ならば、俺はその少しだけずれている道をただしてやればいいんだ。
俺みたいに、間違ってしまう前に。
「……ッ! 俺、ちょっと行ってきます!」
「……ごめんね、お願い。ウチじゃ本音を聞くことしかできないから、後は陽月くんと、μ'sに頼むしかないんや……皆の、ウチの夢の為に……」
もう言う事は決まった。すべきことも決まった。ただ伝えるだけだ。俺の様になってほしくもないんだ。どこまでも純粋な、真面目でいつだって本気の、誰にでも受け入れてもらえる絢瀬会長には。
それに、希さん。あの口ぶりだと、以前言っていたμ’sに関する望み……時期が違うと言っていたが、その時期が今なのだろうか。手伝ってもらうとも、言っていた。という事は、μ'sの完成形……九人が今揃おうとしているのか。
『お前は、最高の友達……いや、親友だったよ』
『なんでそんな、私の言ってほしいことだけ言うの? なんで言えるの?』
『お前って、残酷だな』
『怖いよ、陽月くんが』
でも、今は関係が無い。今はただ、皆の為に。
頭を殴られるような衝撃が、酸素の足りていない脳味噌を襲っている。走っているからだろうか、それとも別の理由だろうか。いつか、前もこうして走っていたのかもしれない。そして、ようやく理解を伴ってわかった事が一つ。
俺はどこまでも最低だ。だから言えるはずだ。『絢瀬会長の言ってほしい事』が。
見つけた。教室に入ろうとしてる……一度見れば忘れない太陽をも眩ませる金色のポニーテール。頭は、スッキリしてる。自分でも冷めた思考。さっきまでの動揺が嘘の様だ。
あぁ、今の気分は……最悪だ。
「絢瀬会長!」
「っ……! よ、陽月くん」
離れていた距離を縮め、言いたい事の言える距離だ。よし、やろう。すべきことを。頼まれた事を。逃げずに思い出す事を。
「……アイドル、したいんですか?」
「な、なに? 突然……」
「それに見ました。企画書。なんにでも本気なんですよね、絢瀬会長は」
「な、何の事よ……」
「ならなんで、認めないんですかやらないんですか。自分のしたい事。その真剣さを本気さを一途さを真面目さをもっと自分のしたい事に向ければいいのに」
「う、うるさいわね……あなたには関係ないでしょう」
これは、きっと癪に障る事だろう。大して仲良くもない奴にいきなり核心をつかれるんだから。でも、これでいい。
「それに今更ですけど、μ'sの申請用紙、濡れてました。あれってもしかして絢瀬会長の涙なんじゃないですか? 間違ってたら素直に謝ります。違わないなら続けます」
「…………」
これは完全に当てずっぽうであった。単に、濡れる原因も理由もわからないが、とりあえず可能性のあることを言ってみただけだが、どうやら正解だったようだ。という事は……
「絢瀬会長は昔コンクールで優勝できなかったらしいですね。もしかして、その……トラウマか何か、まだ乗り越えてないんじゃないですか?」
「…………」
「でもいい加減、やめませんか? 自分のしたい事に正直になりましょうよ。希さんも、μ'sの皆も心配して――」
皆が心配している……なんて癪に障る響きだろうな。今の俺にとっては特に……。
「もういいわよ! 私はもう誰も頼らないの! 信じてもきっと最後には結果にすら裏切られて……辛い思いをするくらいなら、挫折を味わうくらいならもう……誰も私に関わってほしくないわよ!」
とうとう出た、俺の聞きたかった本音だ。これを言ってくれたという事は、きっと本気で俺にぶつかっている証拠だ。なら俺も『本気の様に』ぶつかろう。
「ふざけんなよ! ならなんで……なんで希さんとずっと一緒にいるんだよ! μ'sを手伝ったりしたんだよ!」
「――っ!」
こんなの勿論、嘘の言葉だ。俺に、こんな気の利いたは事言えない。
皆の、希さんの助けがあって辿り着いた言葉だ。希さんは自分では無理だと言った。なら、『他人よりも近い他人』の俺がそのメッセンジャーとなろうじゃないか。それがきっと俺に出来る、μ'sへの、希さんへの……絵里さんへの為の恩返しになると信じて。じゃないと、こんな言葉、絶対に言えない。
「うわべだけ口だけそんな繕ったって無理なんだよ! だって、あって一年もたたないただのクラスメイトでも無い奴にだって見破られる……そんな虚勢、わかるに決まってるだろ!」
「なら……ならなんで! 私はもう誰もそばにいてほしくないのに、希も貴方もこうやって私に踏み込んでくるのよ!」
よかった、悟られてないみたいだ。俺が距離を置いて接している事を。よかった、信用してくれていて。踏み込んでなんかいない事を知られずに済むから。臆病な自分を、最低な自分を、醜い自分を。
「心配だからに決まってるだろ!」
「~~~っ!」
だから止まることなく言葉が生まれる。最低だから、相手の望んでいる事をなんの罪悪感もなく吐きつづける。それが真摯に受け答えしてくれている、そんな相手に対する裏切りである事を知りながらも。
「完璧気取って、実は内心弱くて、そんな不器用で素直すぎる……どこまでも本気の人が、皆心配で心配でたまらないんだよ!」
「でも……貴方には、貴方には関係ないでしょ!」
それは正解です。俺には、関係ない。でも、続きを言うんだ。
「確かに……俺には関係が無いかもしれない! でも、俺じゃなくてμ’sの皆には、関係がある! だからこうやって『他人』の貴方をこうして説得しようとする! 心配だってしてる! いい加減にわかってくれ! 俺にじゃなくて、μ'sに貴方が必要だって事を!」
これで、これで良いんだ。自分はもう傷もつかないくらいに、過去の罪にズタズタに切り裂かれているから。今の被る傷は、何の痛みも感じない。マヒしているのか、それ以上の事を過去にしたからなのかは、今の俺にはわからないけど、時折思い出す罪の記憶がそう告げているのだ。
「だから……少しだけ頑張りましょうよ。もう挫折なんてしないって、しても支えてくれる人が傍にいるんですから。それに、自分一人で抱え込まずに、頼ればいいんですよ。俺なら、いつだって一緒に背負いますから。頼りないかもしれませんが、必ず役に立ちますから」
「……貴方、どういうつもりなのよ。……でももう貴方にも希にも言ってしまったし……もう認めるわ、私はアイドルをしたいμ'sと一緒に活動したい。これが私の本当にしたい事よ」
俺は希さんから聞いただけだが、絢瀬会長は気が付いていないんだろうか。まぁでもそっちの方が『都合がいい』んだけどな。
「ようやく認めましたね堅物会長さん。案外、自分のしたい事ってそうやって手軽に始められるんですから」
「そうね……素直になるだけだものね。じゃあ、逆に聞くわ。貴方、何がしたいの? 私なんか説得して、結果として成功してるから何とも言えないけど」
何がしたいの、か。思ったよりも難しい問題だな。結局俺って、何がしたいんだろうな。こうやって別にしなくても、他の誰かが解決しそうな事をわざわざ自分からしてる。絢瀬会長に色々言う割には、結局自分が一番そういう人間であるようだ。
目的もなく、ただ流されて、目の前の事に頼まれたから必要以上に介入する。
それって結局、自分はどこにもないって事じゃないのか?
「俺は、皆の為に出来る事をしたいだけですよ」
自分が無いから、この場にいる絢瀬会長が満足する答えをだす。きっとこの思考も、気が付けば、いつも通りの日常に戻れば忘れられるのかもしれない。でもこうやってふとした時に思い知らされるんだろうな。どこまでも、何もない自分と言うのを。
「そう……貴方、案外寂しい人なのね」
「それは、そのままそっくり返しますよ」
「ふふふ、ごめんなさい。私用事ができたから、行くわね?」
「奇遇ですね。俺も用事があったんですよ」
「…………ありがとね」
「いえいえ……こちらこそありがとうございます」
ありがとうございます。俺はまた少し思い出しましたよ。俺の時間は、人にいった癖に止まっているってこと。
「じゃあ、また今度……きっとすぐ会う事になると思うわ」
「そうですね、俺もそう思います」
でも、一度気持ちの整理が必要だ。このままだと、怪しまれかねない。また、いつも通りの『泰原陽月』に戻る必要がある。ただの馬鹿の俺に。なあに簡単だ、気持ちを切り替えるだけなんだから。きっと今までも、そうしてきたんだろう。
「じゃあ、さようなら」
「はい……さようならです」
さようならだ、忘れていた自分に。そして今の自分に。少しの間だけ。
またいつか、記憶が、俺を苛ませている『瑠衣子』と『太』に会うまで。
だから、今だけは少し泣いてもいいだろうか。もういいだろう。いくら自分が最低の人間でも、今は普通の……普通でいたいって、少なくともそう思ってる俺なんだから。
瞳から、一筋の軌跡が頬を伝って床に落ち、俺の心の痛みの様に床に染みわたっていった。
思い出す事は……辛い事なんだな。あぁでも……不思議と気分は、悪くない。これが、きっと俺に課せられている、忘れられない罪の痛みなんだろうな。
でも、今はまだ忘れたままでいさせてほしい。まだ優しいだけの、皆が知っていてくれている自分のままで、皆の輪の中に加わっていたいと思うから。
これで前回消した分を加筆修正し終えました。
あとは後日談……絵里と希がどう加わっていくか、これはすぐ終わると思いますがね。
そして次はワンダーゾーン……ですがこれはなくてもいいかなーとか思ってます。
どうするかは、また検討しますが……
ようやく話も山を登り始めたので、これからもよろしくお願いします!