Another School idols diary   作:藤原久四郎

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いやぁテスト、テストですよ。
まぁ諦めてこうして書いているんですけど。


二人

「なぁ凛」

「なに陽月くん」

「……俺たちって馬鹿なのかな?」

「今更かにゃー」

 

 屋上にて矢澤にアイドルがなんたるかを小一時間程説かれた後、満足げに部室に戻っていった矢澤先輩。その後を追って、俺たちも今部室に向かっているというわけだ。なにせ今日はミーティングの日である。

 

「ってか凛、いつの間にか矢澤先輩と仲良くなってるな」

「そうかにゃ? 色々共通点あるからかも」

「共通点? おいおいやっぱり――」

「な、に、か、な?」

「何でもないッス」

 

 俺の下に降りた視線に気が付いたのか、野獣の如き眼光をギラリと飛ばして来た。自分で自覚あるのね……。

 

「まぁ……共通点って言ってもそんなになくね?」

「そう思う? やっぱり陽月くんは陽月くんってことだにゃ」

「はい? それ関係ないと思うんだけど」

「わからないんなら、そう言う事にゃ」

「……なんじゃそら」

 

 女の子は時折よくわからない。というか常にわからん。部室までの道を歩きながら、ずっと考えさせられる羽目になった。

 

「あとさ、絢瀬会長と希さんってどうやってμ'sに入ったんだ?」

 

 そういえばと、屋上から部室までは階段を下りていくだけなので、部室に着くまでに聞いておきたかった事を聞いておく事にした。

 

「というかなんで知ってるのにゃ」

「まぁまぁ、そんな事はいいからさ」

「むー……簡単に言うとね、絵里先輩が飛び出してったことを謝って、希先輩も一緒に謝って……」

「という事は、二人同時に来たって事か」

 

 つまり、二人はまた仲直り……別に仲たがいではないと思うが、いつもの関係に戻ったという事だろうか。

 

「そうにゃ。って……なんでそんな事わかるのにゃ」

「まぁまぁまぁ。それより続きは?」

 

 階段を降りる時の音を少し大きくし、誤魔化しながら続きの催促をする。

 

「でもその後はね、先輩二人のやりたい事がμ'sだから入らせて~って事だったにゃ」

「ふーんそっかー」

「なんでそんな適当なのにゃ」

 

 適当に返事をしながら、その実内心ほっとしていた。むしろその喜びを外に出さないための適当な返しである。よかった、俺のしたことは結果として間違ってなかったという事だ。つま。余計なお世話でも無かったよう……間違えずに済んだ、という事だ。

 やっぱり二人とも、本当はやりたかったんじゃないか。結局、何をするにしてもきっかけが必要だったって事か。

 

「もー今日の陽月くん変にゃー」

「はははは、いつも通りだろ?」

 

 そう、俺はいつも通りでいられているだろうか。二人の為に気が付いてしまった傷を思い出して尚、いつも通りでいられているだろうか。

 

「確かにそうだけど……いつもより変!」

「それも含めていつも通りだって」

 

 それでもやっぱり変わってしまったものは戻らないようで、凛にも変と言われてしまっている。その変が、どういう含みなのかはわからないが。

 

「そんなもんかにゃ?」

「そんなもんだ」

 

 それでも、俺は戻れたと思っていたい。μ'sという輪の中に。

 

「あ、ついたにゃ」

「ん、そら着くに決まってら」

「余計なツッコミはいらないにゃ!」

「俺らしくない? そう思わない?」

「やっぱ変だよ!」

 

 ちょっと、ふざけすぎかもしれない。

 

 

 

 

「ちわーっす」

「こんにちはにゃー」

「あ、陽月くんもう大丈夫なの? 穂乃果たち心配したんだよ!」

 

 部室に入ると、もうみんな集まっていたようで、穂乃果さん達は俺たちの来た方向を一斉に見た。まだあの二人はいないようだが、逆に今は心の準備をする時間に出来て丁度いいかもしれない。とりあえず今は、皆に大丈夫だった報告をしないと。自分に言い聞かせるためにも。

 

「すみません……肝心なオープンキャンパスの日、見に行けなくて」

「それはいいのですが……本当に大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です」

 

 何故か詰め寄る海未さん。意外と鋭い面もあるので、俺の異変に気が付くかもしれない。できるだけ平静を装う必要がありそうだ。

 

「本当? まだ調子悪いなら看病してあげようか?」

「うぅ……頭が痛いよことりさん……」

 

 俺の冷静さは、甘言にいともたやすく乱されていた! いやいや、そりゃしてもらいたいでしょ。だってことりさんだよ。普通に可愛いし、声も脳に響く感じの甘い声だし……花陽といいペアになれそうな気がするな。って気持ち悪いなおい。

 

「アンタ本当気持ち悪いわね」

「最近矢澤先輩からの扱いが酷いんですが」

 

 何故か俺の心を読み取る矢澤先輩。この人も鋭いから気を付けないと……というか本当に最近扱い酷いから悲しい。

 

「自業自得ね」

「真姫も酷い!」

 

 悪い先輩の影響か、真姫も俺に対して最近辛辣気味である。もう俺の味方はいないんだろうか。

 

「大丈夫だよ陽月くん。花陽は陽月くんの事……そんなひどい人だと思って……ないよ?」

「なんで疑問形なんだよぉ!」

 

 アカン、もう味方おらんやん。ま、まだだ。凛、凛なら。

 

「陽月くんはもう駄目にゃー」

「とうとう味方ゼロじゃねーか!」

 

 いつの間にか、俺の味方はいなくなっていたようだ。というか女子高で男が人権を確保する方が難しいのでは?

 

「こんにちはやーん」

「こんにちは」

 

 と、俺が約半数から支援が得られない事を悟っていると、とうとう俺の中の一番の問題であった絢瀬会長と希さんが姿を現した。きっと、二人とも生徒会の仕事だったのだろう。

 

「あら、陽月くん。こんにちは、今日は楽しそうね」

「え、えぇ……」

 

 何故だろうか、今しがた来たばかりの絢瀬会長からのそこはかとない……なんとも言い表しづらい違和感は。というより、何かしでかしそうな、そんな雰囲気。そしてその隣では、何故か希さんがずっと笑いを堪えているかの様な顔をしている。

 

「この前はありがとね? お蔭で助かったわ」

「いや……こちらこそ……」

 

 生徒会の事なのか、それとも例の事なのか。どちらかはわからないものの、嫌な予感だけが募っていくような、そんな会話が続いていく。それを聞いているμ'sの皆は何が何やらな様で頭にはてなマークを浮かべている。

 

「あぁそう言えば……この前、陽月くんから凛の……そう、凛の匂いがしたのだけれど」

「いっ?!」

「にゃっ?!」

 

 絢瀬会長は何やら凄く楽しそうな笑みを浮かべながら、突然意味深な発言をしだした。周りの皆は勿論、話に上がった俺と凛は素っ頓狂な声を上げてしまう。希さんは相変わらず笑いを堪えており、絶対に吹き込んだのこの人だろという確信が湧き上がる。

というか凄い昔の話じゃないかこれ……絶対ばれてないだろうとか今後いじられるはずもないとか思ってたのに。いろんな意味で絶対忘れてると思った。

 

「気になるのよねぇ……生徒会長としても、μ'sの一員としても……仲間の関係は把握しておきたいというか」

「えーっとぉ……な、何のことやら~なぁ凛? お前も何とか言えよ」

「……凛は別に何もしてない一緒に寝てなんかいない……ブツブツ…………」

「おい馬鹿何とか言えよ!」

「皆も気にならない? それに、本当は気が付いてたんじゃない?」

 

 と、また絢瀬会長の全員に問いかけるような発言。それを受けた皆は、それぞれ反応は違えども、揃って全員がこちらに好奇の視線を向けている。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……べ、別に俺は家に泊まっただけで――」

「え、ええぇぇぇ?! 陽月くん凛ちゃんの家に泊まったの?!」

 

 げ、今のも失言か!

 

「な、なななな! は、破廉恥ですよ陽月さん!」

「まままま待ってください! 別にやましい意味はなくて一緒に遊んだりし――」

「遊ぶってぇ何をしたの?」

「なんで楽しそうなんですかことりさんんんんん!」

「ぶふっ……陽月くん墓穴掘ってるやん……」

「そこぉぉぉぉ! 何吹き込んでやがりますかぁぁぁぁ!」

 

 絶対希さんだ! あの人絶対面白がってやりやがった!

 

「……陽月、せめて職につくまでは……」

「真姫もいらん心配するな!」

「あら? 違ったのかしら。でも、皆気になるわよね?」

「……あのさぁ」

 

 またしても問いかける絢瀬会長。もちろん、と言わんばかりに全員が首を縦に振っていた。相変わらず凛は壊れたおもちゃの様にブツブツと何か言っているし、花陽も下手に何も言えないのか、乾いた笑いを漏らしている。

 

「だ、そうよ陽月くん?」

「えーっと……黙秘権ってありますか?」

「ないやん?」

「なら逃げるんだよぉぉぉぉ!」

 

 こうなったらとりあえず逃げるしかねぇだろ! 次希さんと絢瀬会長にはじっくり話を聞かないといけないけどな!

 

「あ、待ってよ陽月くん! しっかり教えて~!」

「そうよ待ちなさい! たとえ皆が許しても私が許さないわよ!」

「あ、待ってください穂乃果!」

「にこ先輩もまってください~!」

「陽月くんが余計なこと言う前に助けるにゃー!」

「ま、まって凛ちゃん!」

 

 全員、この場で盛り上がっていた答えを持っている陽月を追いかけ、部室を出ていってしまった。結果として残されたのは二人だけとなったのだが。

 

「あちゃー今日ミーティングちゃうん?」

「これくらいいいじゃない。陽月には少し仕返ししないと、って提案したの希よ?」

「あれそうやっけ? それに、絵里ち呼び方。くん、とれとるよ?」

「いいの。陽月は陽月よ。私に散々言ってくれたんだもの。これくらいは許可してもらわないと」

「うーん、絵里ちって思ったより根に持つタイプ?」

「そうね、いつも隣にいる人に散々振り回されてるから」

「おぉ~それは酷いなぁ」

 

 部室に残っている二人……絢瀬絵里と東條希は、いつも通りの会話をしながら、二人そろって一人の男の話をしていた。

 この展開自体は、二人が画策したのだが、予想以上の結果で二人とも正直驚きを隠せていなかった。

 

「でもまぁ、あの子のお蔭でこうして皆一緒に、九人でμ'sをやっていられてるんよね」

「それもそうね。でも、結局たきつけたのは希じゃないの?」

 

 実のところ、陽月自体は希が出したヒントや言葉によって動き、絵里を説得しに行ったのだ。その疑問も最もではある。

 

「確かにちょっとはしたけど……でもな? 本当は賭けてたんよ」

「賭け?」

「そうや。ウチの知っとる……話に聞いとる陽月くんなら、きっとそうしてくれるって……絵里ちを説得して、μ'sを繋いでくれるって」

「……ちょっとまって、希。貴方、陽月の事知ってたの?」

「んーどうやろ。知ってるって言ったら知ってるし、知らないって言ったら知らないんや」

「何よそれ……相変わらず隠し事が多いのね」

「それはお互い様やん? それとも、絵里ちも陽月くんに関して何か知ってるの?」

「……知らないわよ。陽月は『そう言う人』って事しか。あと、強いて言うなら、希の家のプリンが減ってるって事だけは隠してたわ」

「あぁぁぁ! なんか減り早いなぁって思ったら絵里ち食べてたん?! 酷いわ!」

「だから、お互い様よ?」

 

 希は、さっきまでのつかみどころのない表情から、年相応の可愛らしい怒りの感情を露わにしながら、絵里にポンポンと優しく追及の手を当てていた。

 実のところ絵里は、陽月が隠し事をしている事に結果として気が付いてしまった。隠し事……というより、何かある。というザックリとした疑念だが。それもその筈、あの説得の時に彼は言ってしまっていたのだから。心配しているのに、他人だと言い切ること。そして自分には関係がないといった。

なら何故、そんな事を言う彼が、何故自分を説得しに来たのか。答えは簡単で、それはそう言う人間だという事だ。自分より、他人を優先しているという事。そして何故それがわかるのかと言えば、それはもっと簡単であり、自分がそういう人間だからである。

 

「陽月も結局、めんどくさい人なのね」

 

 それが、絵里なりの陽月に対する評価であった。でもそれは、彼女なりの精一杯の好意の表しでもある。

 

「……珍しいやん、ウチも絵里ちと同意見」

 

 そして、希もまた少なからず彼と言う人間を知っているためそう言った。最も希の場合、絵里とは少し意味合いの違う、めんどくさいだが。それでも絵里と同じで、希なりの精一杯の好意の表れでもあった。

 

「さ、私たちも行きましょうか。あんまり虐めると可哀想じゃない?」

「自分からけしかけたのに、絵里ちはSやなぁ」

「いいのよ。だからこれは、ちょっとしたお返しなんだから」

「ふふふ、絵里ちもめんどくさい人間やな?」

「それも、お互い様よ」

 

 二人とも、顔を見合ってクスクスと笑いあい、早くしないと話題の彼が大変だと二人仲良く話しながら、部室を出た。

 




これにて絵里編完結ゥ!

結局ネタ回じゃないか。
そろそろ陽月君の過去話、もといμ'sそっちのけで進む回ができそう。

そして、これからも頑張って書いていくので、皆さんよろしくお願いします!
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