Another School idols diary   作:藤原久四郎

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さて、新章が始まりましたが、プロットを練った結果、あまり明るくない事に驚愕。
……これ大丈夫かなぁ、という不安が早速しております。

内容重複があったので修正!


メイド喫茶にて

 

「ご、ご注文がお決まりになりましっ……したら、お呼びください……」

「う、ういっす」

 

 半ば放心状態のまま、俺はまだ冷静さをそこまで書いていないメイド……ことりさんに案内され、奥の席に通された。その間、周りの客の視線がどうにも痛かったのだが。

 ……なんでここまで動揺するのだろうか。ここにいるはずのないことりさんがいたからか、それとも単にミナリンスキーさんがことりさんだったからか? 正直両方の理由で驚いてはいるが、と言うかバイトしてたのねことりさん。

 

「……とりあえず注文しないと」

 

 一応お店に来ているのだから、という事で注文を取ろうと思い、『めにゅ~一覧!』と書かれた些かふざけたメニュー表を手に取り、ペラペラとめくっていく。タイトルから嫌な予感しかしんぞ。

 

「何々……お、意外と普通だ」

 

 『お食事』と、何故か無駄に良い感じに料亭とかのメニューみたいに書かれているそのページには、どうやら出せるものが書かれているようだった。オムライスチャーハンパフェドリンク……カタカナばかりで目が痛い。

 

「お、これいいんじゃないか……って高ッ!」

 

 『はっぴぃせっとぉ!』とまたしてもふざけて書かれているソレは、本日のメインメニューに同じく本日のサイドメニュー、それにドリンクと何やら店員からの気まぐれサービスと書かれたものだった。気まぐれってなんや気まぐれって。あれか、常連(金落とし)にはやけに行われるサービスか。それよりも値段である。なに千円ってアホくさ! 俺別にこんな所に金落としに来たわけじゃないんだよなぁ……ここは無難に安いドリンクバーオンリーでいこう。

 

「あのーすみませーん」

「はぁ~い」

 

 再びこちらにやってくるミナリンスキー……ことりさんはすっかり調子を取り戻したのか、いつも通りのことりさんになっていた。つまり嫌な予感がするという事。

 

「えーっと、このドリンク――」

「私ぃご主人様の良い所見て見た~いなぁ〜」

「はっぴぃせっと、一つで」

「かしこまりましたぁ!」

「ハッ!? 俺は何を!」

「えへへ~、厨房さーんはっぴぃせっと一つお願いしまーす!」

 

 ドリンクバーと言ったはずの口は、ふざけたメニュー『はっぴぃせっと』を選んでいた。どういうことなの……。

 

「で、でた……ミナリンスキーさんの販促ボイス……あの声を聞いたものは思わずはっぴぃせっとを頼むという……新入り、お前はまだまだだが、これから頑張れよ」

「あ、貴方は……?」

「ふん、俺はしがないミナリンスキーさんのおっかけよ。俺ほどの男になれば、あの程度耐えられるようになるぞ」

「で……その豪勢な料理は?」

「ん? はっぴぃせっとだ」

「耐えられてないやん!」

 

 な、なんと言う事だ。伝説の名は伊達ではないという事か。カリスマメイド恐るべし。

 

 

 

「おまたせしましたぁ~はっぴぃせっとです!」

「……あ、ありがとうございます」

「サービスの方はお食事が終わり次第ですので、またおよびつけください!」

「は、はい」

 

 もう動揺の欠片も見られないことりさんは、むしろこちらをからかうような甘々な声音と仕草をしながらこちらへ料理を運んできた。まずいな、明らかにこちらの動揺を楽しんでいる。流石に俺の見立て通りのS具合である。ちなみに俺はソフトMだったりする。

 ちなみに料理だが、オムライスにサラダだった。普通にお食事処じゃないかこれ。

 

「ミ、ミナリンスキーさん! サービスお願いします!」

「あっはぁ~い。少々お待ちください、ご主人様♪」

 

 

 おっさんはご飯を食べ終えたのか、ことりさんに例のサービスの依頼をしていた。それを聞いたことりさんは笑顔を一度こちらに向けてから、小走りで厨房の方の裏口へ向かっていった。にしても、思ったよりメイド姿似合ってるな。μ'sの皆も全員この恰好でライブとかしたら意外といいんじゃないか? 普通に似合いそうだ。なにしろ今のμ'sのレベルはかなり高い。希さんに絢瀬会長の二人の加入によって色々なバランスが取れだしたのだから。主に胸だが。

 

「なぁ新入り、お前やけにミナリンスキーさんに対して慣れてる感じがするな」

「えっ? そ、そうですか……思い切り動揺しまくってるんですけど」

「いいや、俺が初めて来たときとは大違いだ」

「え、何かあったんですか?」

「……いいだろう、特別だゾ」

 

 どこか遠くを眺めるように、となりの自称おっかけは語りだした。

 

「それは、雪の降る日だった……」

「特にいらない情報ですね」

 

『いらっしゃいませ、ご主人様♪』

『こ、これがミナリンスキーさんブハッ!』

『だ、大丈夫ですかぁ?! は、鼻血出してる!』

 

「と、言うわけだ」

「えっ何それ怖い」

「まさか俺も初対面で鼻血ぶっ放して倒れるとは思わなんだ」

「どんだけ興奮してんですか」

「そう、それだよ。お前にはその新鮮な興奮が見られない。仮にも伝説だぜ伝説」

「いやぁ、伝説って言ったって実感わかないじゃないですか」

 

 それが一応気になっていた所である。なぜ伝説になっているのか。確かに魅力はかなりのものだと思う。身内贔屓なしで。でもそれだけで伝説になれるだけ、甘くはないと思うのだ。というかおっさん興奮しすぎやろ。

 

「まぁじきにそれもわかるだろう。あぁ、あと伝説の理由の大部分は出没率の低さだ」

「え、しょぼくないですか?」

「しょぼいとはなんだ。なにせ月に二、三回いればいい方だぞ? しかも私生活は秘密とされている」

「…………これはまずいな」

「ん、何か言ったか?」

 

 これって皆にもナイショって事だよな。それに最近アイドル活動してるから、いい加減ミナリンスキーさんが音ノ木坂のスクールアイドルってばれるんじゃないか? これだけ人気となると、スクールアイドルの人気も重なって悪い予感もする。

 

「そうですねぇ。まぁ、バイト掛け持ちとかなんじゃないですか? だからあまりいないとか」

 

 俺は、いらない気を回しているとわかってはいたが、どうしても言ってしまった。一応浅くはない関係だ。これくらいはしてもいいだろう。多少のフォローになればいいのだが。

 

「だがどうだろう。彼女程の美人となると他でバイトしてたらわかるんじゃないか?」

「清掃とか、皆にばれにくい所とかじゃないですか?」

「むぅ……何故かお前の言う事は説得力があるな。というかなんでお前そんなに詳しい感じするんだろう」

「ききき……気のせいでっしょーう」

「あからさまに変だぞ」

 

 これは、逆に何もしない方がいいのかもしれない。

 

「お待たせしました~ご主人様! では、どうぞ~!」

 

 と、まるで見ていたかのようにタイミングよく、ことりさんが現れた。小脇には何やらよくわからないボックスを抱えており、それをみた隣のおっかけのおっさんは見るからにテンションが上がっていた。

 

「よっしゃ……今日こそサイン、あわよくば生写真をッ!」

「煩悩まみれかよ」

 

 おっさんの言葉から鑑みるに、どうやらあの箱の中身はくじか何かだろう。こういうのって大抵中身ハズレ確率限りなく100%のアレだよな。

 

「さぁ、どうぞ♪」

「くおおお! 神よ仏よ邪神様よぉぉぉぉ!」

 

 おっさんが勢いよく箱に手を突っ込み、そして勢いよく一枚の紙を引っ張り出す。そこには――

 

「残念、ティッシュですぅ」

「うわあぁぁぁぁ! これで何回目だぁぁぁぁ!」

 

 どうやら追っかけと言うのは本当らしい。にしても、本気であの箱、当たり入ってないんじゃないのか? 周りのお客さんもまたか、という表情を浮かべているし。

 

「陽月くん? ちゃんと当たりあるから安心してね?」

「あ、はい……そっか、俺も引けるんだっけ」

 

 そういえば、という感じで俺もあのハズレ課金ガチャを引けることを思い出す。まぁ、よくてティッシュだろ。

 

「おいまて」

 

 と、隣から尋常ではない負のオーラを感じながら、物凄い力で肩を掴まれた。普通に痛いんですが。

 

「な、何をするんですか。暴力変態ナスカボチャという格言を知らんのですか」

「お前、陽月って言うのか?」

「? え、えぇそうですけど――っていてててて! 何をするだ―ッ!」

 

 肩にかけられていた握力が更に増し、明らかに殺しに来てる勢いで掴まれていた。おっさんの目は妙に血走っているし、それに周りからも明らかに殺伐とした雰囲気が漂っている。

 

「なんで、お前……ミナリンスキーさんから名前で呼ばれてんねや!」

「口調変わってる! というかそんなこと――あいててえぇぇぇぇ!」

「そ、ん、な、こ、と? 俺たちはどこまで行ってもご主人様だぞ? なのにお前と来たらぁぁぁぁぁぁ!」

「き、気のせいでしょ! きっとこと――じゃねぇ、ミナリンスキーさんも間違えただけでしょ!」

「そ、そうなんですかミナリンスキーさん!」

 

 視線の矛先が俺からミナリンスキー……ことりさんに移動する。おっさんだけでなく、周りの客も真相が知りたいのか、一斉にこちらへ視線を向けていた。恐るべし……これが伝説のカリスマメイドの力か……じゃなくて、早く誤解を解いてくれ、ことりさん!

 

「は、はい……その、陽月じゃなくて、You Getって言ったんですよぉ……」

「なんじゃそれは!」

「あ、そうなんですか。疑って済みません」

「アンタもそれでいいのかぁぁぁぁ!」

 

 周りの客も、あぁ成程と言った様子で納得したのか、さっきと変わらない普通のお店の雰囲気に戻ってしまった。お前ら絶対ふざけてからかっただろ……。

 

「じゃ、じゃあ気を取り直して……はい!」

「……よし引きますよ」

 

 例の箱に手を突っ込み、ガサガサと中身を漁る。正直どれでも同じだろ……と思った矢先、そこの方に不自然に丸まっている物を発見する。最初はゴミかと思ったが、別にそれならそれでいいかと、それを引っ張り出してみる。

 

「あれ? なんでそれそんなくるくるなんですか?」

「知らないですけど……一応これもいいんですよね。開けてみますか」

 

 どうやらことりさんも知らないようで、そのとても小さいサイズに丸められていた紙を広げていく。その間、隣を見ると真っ白になったおっさんが放心していた。ちょっと、落ち込みすぎではないだろうか。

 

「よし、何々……?」

 

 おっさんを一瞥した後、広げきった紙に表記されている文字を見る。そこには、『生写真』と書かれていた。

 

「な、生写真……?」

「え、えぇぇぇ! そ、それ初めて出ましたぁ!」

「な、なんだってぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 ことりさんの驚愕の声が店内に響き渡ると共に、周りの喧騒はより一層騒がしくなってく。無論、隣のおっさんも例外なく叫びを上げていた。

 それもそのはず、生写真である。しかもその紙をもう少しよくみて見ると、ツーショットとまで書かれていた。

 

「こ、これ……一応目玉なんだけど……今まで出なかったのって丸まっていたからなの……?」

「おいおい……これどうするん――どわぁっ!」

「おいおいおいおい陽月陽月陽月陽月! それよこせよ頼むよぉ!」

「お、落ち着けっておっさん! 目こわっ! 血走っとる!」

「お、落ち着いてください~!」

 

 店の喧騒は、秋葉原に負けないくらいのものとなっていった。俺、今日生きて帰れるのかな……。

 

 

 

「はい、チーズ!」

「はいっ」

「あ、あはははは」

 

 パシャリと取られたそれは、カメラによってすぐさま現像され写真を撮ってくれた別のメイドさんによって俺に手渡された。ことりさんは相変わらず笑顔、俺は引き攣った明らかに笑顔と呼ぶのは不可能な表情を浮かべていた。だが、それも仕方がないだろう。だってずっと周りから殺意の波動飛んでるんだもの。

 まるで戦場帰りであるかのように披露した俺は、もう耐えきれず帰ろうと歩き出そうとした瞬間、ことりさんが耳元に軽く囁いてきた。

 

「…………この後店の裏で待っててほしいな」

「え?」

「…………お願い」

「……わ、わかりました」

 

 何やら妙に畏まってことりさんはそう囁いてきた。耳にかかる吐息が気持ちよかったとか思ったけど、これは内緒だ。というか視線が痛い。とにかく痛い。

 

「じゃあ、これで写真撮影は終わりです!」

「あ、ありがとうございます」

 

 ことりさんが終わりを撮影会の終わりを告げ厨房に戻っていった。一瞬、店には沈黙が訪れた。俺は尋常ではない気まずさを感じながら、荷物も置いてある席に戻る。

 

「なぁ、陽月。少し、すこーしだけ話をしないか?」

 

 ほら、来たよ。地獄への招待。

 

「きょ、拒否権は?」

「どう思う皆?」

「ない!」

「ない!」

「ない!」

「死すべし!」

「最後物騒だぞ!」

 

 この後、どこから現れたのかわからないが百人近い男連中が俺を取り囲み、律儀に会計を終えてから外に連行された。……明日はいい日になるといいなぁ、最近はこんなのばっかりだ。

 

 これが、全ての始まりになった。

 

 

 

 陽月が去った後の店は、そこにいた客を含め、後から何故か集まってきた客が外に言ったため、やけに閑散としていた。だが、そこには一人の男が我関せずと言った様子でパソコンを操作していた。

 そしてその男の操作しているパソコンの画面には、μ’sのPVが流されておりその途中で突然停止ボタンが押された。

 停止された画面には、愛らしく笑う女の子が移されている。

 

「南……ことり」

 

 その男はただ一言、知るはずのないミナリンスキーの本名を呟いた。

 




という事で早速嫌な予感がしますね、間違いない。
まぁでも常にハッピーエンド。はっきりわかんだね。

誤字の指摘、疑問点などはいつでもウェルカムお願いいたします。
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