Another School idols diary 作:藤原久四郎
ライブに向けた体調調整も兼ねてゆっくりしております。
1/31にSSAにいくので、意外と誰かに会えるかもという淡い期待があったりなかったり
「さて、陽月よ」
「はい……」
「覚悟は出来てるか?」
「できるかぁぁぁぁ!」
現在時刻はそろそろ日が暮れる頃だろうか、俺はメイド喫茶を出たお天道様の下、むさくるしい男たち約百名近くに囲まれていた。辺りを通っていく人たちはこちらを何かと見るが、すぐさま目を逸らして早足に逃げていく。それ程までに、この光景は異常である。その中心部にいる俺はもっと異常であるのだが。まぁ、勿論あっちが本気ならもう逃げ出しているのだが、そうしないのはそう言う事である。実際、ミナリンスキーと知り合いの俺に興味があるだけなのだろう……そう思いたい。
「えー被告人、泰原陽月は――」
「ちょっとまて」
色々とツッコミどころはあるが、ミナリンスキーの熱心なおっかけの名前の知らないおっさんの言葉を遮る。いい加減名前聞くべきか。
「なんだ、テンポ悪くなるからさっさと終わらせたいんだが」
「そういうのいいから……で、なんで俺の苗字まで知ってんの?」
「なんだそんな事か」
人のプライバシーに関してそんな事とはなんだ。
「ほら、片山君。挨拶挨拶」
そう言っておっさんは手招きして、周囲を囲んでいる男たちの一人を呼び寄せる。
「うす、俺片山と申します。最近、親が鬱陶しいです」
「ん、最後はいらん情報だぞ片山君」
「……この片山君? が、どうかしたんですか」
片山、と呼ばれた彼は俺より身長が一回り小さいくらい……150後半くらいだろうか。それでいて横には広い体型である。顔は言ってはなんだが、如何にもオタクと言った風貌であった。丸眼鏡にバンダナ、それにぼさぼさの髪、そして一際自己主張の激しい太眉。まるでアニメにでも出てきそうな中々に濃いキャラである。
「俺の特技、インターネット。情報集め、ハッキング、なんでもできる」
「まぁそう言う事だ。こうしてお前の情報も集めてもらった」
「……警察呼べばいいの?」
「ん、今回はあくまで合法的だ。うん、合法的だ」
そんな言い聞かせる様に言われてもなぁ……。
「そして、片山君の自己紹介も終わったし、そろそろ裁判初めていいか?」
「あ、その前にそろそろ名前教えてくださいよ。いい加減気になるんで」
「あ? 俺の名前はミナリンスキーのおっかけのしがないおっさんだ。本名は本田一だ。数字の一ではじめだ」
「はい、じゃあ続けてください」
「このくだり必要だったか?」
「えぇ、一応」
実際のところ話題逸らしができれば、とか考えていたが、普通に無理だとわかり結局話を再開させることになる。もう嫌な予感しかしないから帰りたい。
「えー判決からいきます」
「急すぎでしょ……」
「いや、尺がさ」
「誰のだよ……」
「いや、周りのさ。仕事放り出して来てくれた奴もいるんだぞ?」
「どうなんだよ人として!」
周りからはやれやれ、と言う雰囲気が漂っている。なんだ、俺が間違ってるのか。どうやら彼らにとってミナリンスキーの事は仕事では到底越えられないようだ。本当どうなんだよ社会人として……。
「えーでは仕切りなおして、判決死刑」
「早ッ! ちょ、周りも殺気立つのやめて!」
「なんだ、文句あるのか」
「大ありだわ! 大の大人が子供囲んで何してんだよ!」
「今更だな。ちなみにメイド喫茶くる奴の事を子供と世間は認識してくれないからな」
「暴論だよ!」
俺が必死に否定する間にも、周りの男たちはじりじりと距離を詰めていた。指を鳴らす音、首を鳴らす音……しかも全員揃って目が血走ってやがる。前言撤回、この人達怖い。
「ま、待ってくれ……俺はどうしたらいいんだよ」
「え、死刑を甘んじて受け入れるとか」
「それ以外!」
「うーん……そうだな。ミナリンスキーさんとお前って知り合いだったよな」
「え? あ、はい……」
あっ、しまった。これ言ったらいけないやつじゃ。
「だそうだ、片山君」
「写真出ました。ん? な、何ぃぃぃぃ!?」
「ど、どうした片山君!」
またしても声をかけられた片山君は、ノートパソコンをいつの間にか首にかけるように操作しており、何かを見つけたようで、驚愕の声を上げていた。……こればれたな。
「み、見てください! 音ノ木坂のスクールアイドルに……ミ、ミナリンスキーさんが!」
「な、なんだってぇぇぇぇぇぇ!?」
今度は本田のおっさんだけでなく、全員が驚愕の声を上げていた。あ、全員じゃなくて今更? みたいな顔してるやつもいるわ。
「お、俺実はμ’s知ってたんだけど……なんで気が付かなかったんだ……」
「どう言う事なんですか? ……いや、待ってください。ミナリンスキーさんとこのμ'sの……南ことりさんの写真見比べてみてください!」
「何だというのだ……え、これトサカの位置逆じゃね?」
何それ初耳なんだけど。というかトサカって共通認識なのね。
「本田さん、それでも本当にファンやってたんですか?」
「う、うるさい! だってトサカの位置違うんだぞ!? んなもんわかるか!」
「えぇ……」
明らかにやけくそで半ギレの本田のおっさん。そんなおっさん同様、周りも所々衝撃を受けているもの、半ば呆れ気味の者と半々であった。よく一枚岩じゃないのに集まったなこの人数と、俺も呆れ気味にそう思った。
「えー事情が変わりました。被告人陽月はミナリンスキーさん……南ことりさんの情報を開示することで執行猶予がつきます」
「俺に人を売らすなよ……というか、それこそ片山君が調べれば済むんじゃ」
「馬鹿野郎! そうやってすぐ検索検索って……昔はエロ本一冊で一喜一憂してたんだぞ!」
おっさんは、昔を懐かしむように叫びを上げた。というか話題が関係ない方向に言っている。
「まぁ兎に角だ。調べてもでない情報……というかお前からみたことりさんをだな」
「……まぁそれくらいならいいですけど」
「代わりにこっちはミナリンスキーさんの情報をやろう」
「別にいらねぇ……」
これ本当に大丈夫なんだろうか……。
三十分後。
「はははは! お前わかってるじゃねぇか陽月!」
「おっさんこそ! それに皆も面白い!」
「よ、陽月くんも……ウチの親父の百倍面白い」
「無駄に重い話はやめてっ!」
すっかり俺は皆と仲良くなっていた。話せば話すほど、皆の人の良さというかミナリンスキーの事が本当に好きなんだなぁっていう気持ちがひしひしと伝わってきた。どうやらこの百人近いメンバーは『ミナリンスキー同好会』なるものらしく、おっさんはそのグループの発起人らしい。意外と凄い人だった。
ミナリンスキー同好会は、あくまで昔の様なアイドルの追っかけみたいなものらしい。おニャ○子クラブの時みたいなものだとも言っていた。俺にはお○ャン子クラブ自体がわからなかったのだが。
「お、そうだ。陽月もミナリンスキー同好会に入らないか?」
「えっ、いいんですか?」
「むしろ入ってくれよ。貴重な私生活知っているヤツなんだし。俺の連絡先、ついでに片山君のもいれるから携帯貸せ」
そう言って俺の携帯をおっさんは持って行き素早く連絡先を入力、次に片山君も俺の携帯を操作し、連絡先を入れてくれた。慣れてないのか、片山君は何やら落ち着かない様子であったが、パソコン慣れてるのに携帯慣れてない事なんてあるのか、ってちょっと面白かった。
「あ、ありがとう。っても同好会って何するんです?」
「まぁ基本はたまに集まってお話だな。ミナリンスキーさんが来た時はすぐ連絡して、集まる様にはなっている」
意外と健全かつ、普通のグループだったようだ。
「あぁ、あと集まってないとき用の会話するグループがあるから、それも招待しておくぞ。いれてるだろ? 『トー君』」
おっさんの言っている『トー君』とは、所謂ソーシャルネットワーキングサービス、SNSの会話専用アプリの事だ。最近のスマホの普及に合わせて、皆と繋がることをコンセプトにしたものだ。もちろん俺もインストール自体はしていたが、μ'sはおろか、親ですら入ってない始末である。単に使うのが面倒だったというのが一番の理由である。
「じゃあ、また連絡してください。というかそろそろ皆ヤバいんじゃないですか? 会社の人とか特に」
俺の一言を皮切りに、周りの社会人らしき人達は顔を真っ青にする者、半ばあきらめ気味の者、休憩中だったのか余裕ありありの人とバラバラだったが、とりあえず全員解散という事になった。ホントなんでこの人達集まってきたんだよ、と今更ながら苦笑いである。
「そうだなぁ、俺たちも帰るか。片山君、今日はどこか行こうか」
「あれ、おっさん仕事は?」
「ん? 俺は夢を追う実業家だ。じゃあな」
「ま、またね陽月くん」
超胡散臭いとか思ったが、おっさんの信用問題に直結するので、俺は敢えて何も言わず笑顔でおっさんと片山君を見送った。
少々疲れたが、皆意外といい人たちだったな。人としてどうかと思う人間は多数いたが。
さて、では店の裏に回ってことりさんを待つことにするか。三十分もたったし、そろそろ出てきてくれるだろう。むしろ待たせてたら申し訳ないというものだ。
俺は店の前から路地裏に回り、裏口前で待機する事にした。路地裏はゴミが無造作に置かれていたり、どこか陰鬱とした雰囲気をたたえており、華やかな街の裏の汚れた一面を垣間見せる。あまりこんな所に長居はしたくないな。
「あっ陽月くんお待たせ~ごめんね、着替えに手間取っちゃって」
路地裏の裏口で待機すること五分。申し訳なさそうに裏口からことりさんがいつもの制服姿で現れた。どうやら学校からそのまま直で来ていたようだ。
俺は大丈夫ですよ、と手振りをしながらおっさんたちいなかったらここで三十分も待たされたんだなーと実に甲斐性のない事を考えていた。
「じゃあ、遅くなって悪いんだけど早速行こう? 歩きながら話すから」
「ん、わかりました。じゃあ、いきますか」
俺とことりさんは揃って暗い路地裏から、煌びやかな繁華街へと繰り出した。まだ用件聞いてないけど、そんな俺なんかに話すほどの事なのだろうかと、ふとそう思った。
「ありがとうございましたー」
陽月とことりが去った同時刻、一人の男がメイド喫茶から店員の挨拶を背に出てきていた。彼は些か不満げな表情か、それとも満足げな表情のどちらとも取れない表情を浮かべており、彼が気難しい人物である事をその佇まいから察せさせる。
「ふ、ふふふっ……」
笑っているのか悲しんでいるのか、どちらかわからない不気味な表情を浮かべているその男は、身長が170cm程に見え、そして服の上からでもわかる体格の良さからもう一回り大きく見える。そして先程から不敵な笑みを浮かべるその相貌は、体に見合った大人じみた顔である。彫りの深い造形と読み取りづらい表情は見る者に石像を思わせる事だろう。
「……面白いじゃないか」
また一際歪んだ笑みを浮かべ、彼は繁華街の雑踏に飲み込まれていった。
意外と地の文おおめでござる。
最近はエロゲテイストなのか、小説よりの書き方なのかあやふや。
小説にしては背景描写やら時刻描写がなさすぎる。
エロゲテイストはまず無理。
無駄に葛藤している筆者でございます。