Another School idols diary 作:藤原久四郎
毎回書いていると、気が付いたら文体がコロコロしてるんです。別にゴーストライターを雇っているわけでは)ないです。
俺の作詞センスは良いのか悪いのかわからないのか、結局わからないまま次の日になり現在生徒会室にやってきていた。目的は勿論バイト申請の事であるので長引くことはないと思うが、一応ことりさんは待たせてしまうと悪いので先に家に送ってからここには来ている。
俺もこういう時があるので、その時は穂乃果さんと帰ればいいのではないか、と聞いてみたりもしたのだが。
「なんか穂乃果ちゃん店番一週間の間は、ずっと学院終わってからすぐ店のお手伝いなんだって。なんでも新作メニュー出す前に平らげて大目玉だったんだって」
と、至って穂乃果さんらしい理由で本当にすぐに飛ぶ勢いで帰っていくらしい。ことりさんも最初はついていこうとしたが、普通に振り切られたそうだ。
「こんにちはー」
「おや、陽月じゃないか。どうだ、体調は」
「あ、井ノ原さん。お蔭様でばっちり回復しました」
と、どうやら生徒会には一週間の内に見慣れた長机の前に座っている井ノ原書記のみがいるようで、軽く挨拶を交わしてから中に入る。という事は悪魔のあの二人はまだ来てないんだろうか、今顔合わせたらとりあえず追求したい事をガンガン言いそうになると思うし、いや……逆にボコボコに言われそうだ。ということで今日はそういう用事ではないからもう少し来るのは待ってほしいものだ。
「あの、井ノ原さん。この学院ってバイトとかの申請って必要だったりしますか?」
「ん? あぁ、生徒会の方に書類出してくれれば基本OKだぞ。だが夜の仕事、は駄目だがな」
夜の仕事、というのをキッチリ強調してくるあたり一応の念押しだろうか、まぁ俺は後ろめたい事も何もないからギャグとして受け取り、軽く笑っておく。
「なんだ陽月、君はどこかでバイトでもするつもりなのか?」
「あ、えぇ一応。他にやることもないので」
「何をいうか、学生の本分は――」
「勉強はいいんです」
「じゃあ……部か――」
「部活は事実上無理ですから」
「……君は人の話を遮ってはいけないと親に言われなかったのかね」
はぁ、と溜息を漏らす井ノ原さんだが、事実その通りなんです。と一言言っておいた。それに勉強に関しては日頃から真姫に言われているし、凛からは何度か部活、ではないが色々運動事に誘われていて既に飽食気味なのだ。こんなところでまで、口をすっぱくして言われたくないというのが本音である。
「まぁ……そう言う事なら特に言うつもりはないが、ちなみにどこでバイトするつもりなんだ?」
「あーでもまだ決まりきってはないんですよ。一応できるかも、というかするつもりなんで聞きに来ただけで」
「随分と君は早漏なのだな」
「そそそそそ、早漏ちゃうわ!」
何の話やねん。
「まぁ、なんでもいいのだがな。ちなみにどこを狙ってるんだね? あぁ、秋葉原にある一部のカフェはやめておけよ、物凄い強靭なお姉さま達がいるからな」
もしかしてあのムキムキの男たちと化粧ベタ塗りのあの……思い出すだけで身震いしそうになる。なんでそんな事知ってるんですか、という質問は思い出したくも聞きたくもないので、一応しないでおこう。
「えっと、繁華街から離れた所にある『勿忘草』っていうところなんですけど」
勿忘草、という名前を出すと井ノ原さんが一瞬眉をひそめたように見えたが、すぐにいつも通りの井ノ原さんになっていた。
「勿忘草……マスターはなんと言っていたんだ」
「マスター? 店長の事ですかね。少し考えさせてくれと言ってましたよ」
「…………希さんが確か行っていたところだったな」
「え、何か言いました?」
「ん、なんでもない。あそこのマスターはいい人だからまぁ大丈夫だろうな」
井ノ原さんは何やら心ここにあらずという感じで、少し俯いて何かに思いを巡らしているように見える。もしかしてここの生徒会メンバーの行きつけの店だったりするのか? そしてそこでは実は学院では公にできない会話がされていて……あの隠れ家的店はもしやそういう用途で使われているのか?!
「君の考えている事は、まず違うから安心してくれ」
「なんで井ノ原さんまで心読んでるんですか!」
もうやだこのエスパー学院。というかそろそろ行かないと海未さんの所にもいけなくなるし、長居したらしたであの悪魔二人がそろそろくるのでは、という不安が首をもたげはじめている。
なぜここまで恐れるかと言えば、先程案じていた事とは違い、端的に言えば虫の知らせだ。物凄くここは危険だと脳が告げている。自分でも不思議なくらい物凄くだ。
「というか結局問題ないって事でいいですか? この後も行くところあって早めに帰りたいんですね」
「随分つれないじゃないか。それにどうした、嘘はついていないようだが妙に焦っているな」
「え? そ、そんなことナイヨ」
「片言になってるぞ」
なんでこの人普通に人の心読んでるんだ。色々怖いんだよここ。できれば今すぐにでも帰りたい。
「こんにちは。あら、陽月」
「こんにちはー……って陽月くんやん?」
ほら来たよ。俺の逃げようとしていた背後の扉から、生徒会長である絢瀬会長、それに副会長の希さんがやってきていた。二人は俺がいる事にもさして驚いた様子を見せず、むしろ絢瀬会長は笑顔で、隣の希さんは少し意味合いの違う笑みを浮かべている。
もう嫌な予感の八割くらいここで避けられないじゃないか。もうなんとなく駄目な雰囲気漂ってるし……って俺、今更だけど絢瀬会長から呼び捨てにされてないか?
「こ、コンニチハー。じゃあ俺これで」
「まぁ待ちたまえよ陽月。お茶でも出すからゆっくりしていきたまえ」
「なっ、いつの間に後ろに?!」
先程まで少し離れた位置に座っていたはずの井ノ原さんが、俺の後ろに瞬間移動したとしか思えないスピードで急接近しており、更になぜか襟元をわしづかみにされていた。
「えーっと、帰れないんですか俺」
「何を言っている陽月。君はバイトの申請に来たのだろう」
まだやってないんですが、と言いかけた所物凄くいやーに笑っている絢瀬会長の顔が見えてしまい、思わず口を噤んでしまった。
「実はだなぁ、バイトをする前にその事に関して生徒会からお話を聞かないといけないんだよ。そうでしたよね、会長、副会長」
「ん、そうね」
「確かに……ぶふっ、そ、そうやんな」
「何笑ってるんですかァ!」
これ不当拘束だろ、訴えたら勝てないのか?
「まぁ、そう言う事だ。後は頼みます、私はこの後部活の定期審査にいきますので」
そういって井ノ原さんは俺に対してしていた簡易的な拘束をとき、生徒会室をそのまま退室していき、残ったのは悪魔二匹と善良な市民の俺だけが残された。
「あ、あのー……」
ここは素早く逃げねば。もうホント嫌だこの二人、怖すぎるんだよ色々。
「陽月。今から貴方はここで私たちの話を聞いていかないといけないのよ? まさか……逃げたりしないわよね」
絢瀬会長のアイスブルーの瞳から送られる視線、そしてそれがその色以上の冷たさを帯びて俺を射抜いてくる。なんでこんなに恨まれてるんだよ。だがしかし負けてはいけない。このままでは海未さんとの稽古もいけなくなる恐れも出てくる。
「ひ、一ついいですか? な、なんで俺呼び捨てになってるんですか……?」
実際ここが一番怖いのだ。今までは一応『くん』が付いていた。年下と後輩につけるものであったそれがある日突然とれていたのだ。……やっぱ根に持たれてるのか。思い返せば割とボロクソ言ってた気もしなくもないから、なぁ……。
「ん? 陽月は陽月でしょ。何か異論はあるかしら」
「な、ないです……」
うん、そろそろ絢瀬会長の不満を解消しないと、今後も何かにつけて難癖をつけられるな!
「じゃあ、少しだけお話、しましょうか?」
「は、はい」
「う、ふふふ……陽月くん面白すぎやん……」
「希さんに対してそろそろ先輩として接する気が失せてました」
もうこの人一々先輩扱いするの嫌だよ。物凄く楽しみながら俺をいじってくるもの。
「…………それ、いいわね」
「あ、絢瀬会長?」
何やら絢瀬会長が俯きながらボソリと一言いった様だが、小声だったのか聞き取れなかった。なんにしても、今の状況は何が起きても怖いものである。
「陽月、私の事絢瀬会長って言うの呼びづらくない?」
「……はい?」
「お、お腹痛くなってきたわ……」
ずっと鉄仮面のような表情の絢瀬会長の隣にいる希さんが一々目に留まるが、それを無視して会長の提案を聞いているが、突然の問いかけには少し思考が停止する。
「そうね、私の事は絵里でいいわ。絵里ってよんでちょうだい」
「な、なんでまた」
「必要な事よ」
「え、でも――」
「ひ、つ、よ、う、な、の」
「えぇ……」
何この提案、嫌な予感はこれか?
「呼ぶのはいいんですけど……それでペナルティとかあります?」
「なんでそんな罰ゲーム感覚なのよ」
「すんません」
ふざけたつもりないのに、何故かまた無表情で怒られてしまった。
「じゃ、じゃあ呼びますよ……本当にいいんですね?」
「いいから、早く呼びなさい」
確認行動ですら何故か怒られる。理不尽すぎるだろ。
「え……絵里?」
「……意外と違和感ないわね。これなら…………」
俺の戸惑いながらの名前呼びは、どうやら怒りの琴線には触れなかった様だが、絢瀬会長……じゃなくて絵里は何やら考え出してしまった。
「え、絵里ちにしては……ぶっ……お、おもろいな。ウチの事も呼んでみてくれん? 希副会長って」
「え、なんか言いました希?」
「それ絵里ちの真似?」
「違います」
「ちぇっ、つまらんわぁ陽月くん」
どさくさに紛れて希さんの事を呼び捨てにしたが、これはどうにも言いにくいな。これからも希さんでいいかな。なんかその方がしっくりくる。
「……陽月、今日はもう帰っていいわよ。色々満足したから」
「なんですかその怖い発言」
と、希さんと茶番をしていると、考え事が終わったのか幸いにも俺の解放命令がでた。少し恐ろしいのはもう触れない方がいいと諦めよう。
「あれ? 絵里ち陽月くんもういじ……じゃなくて返しちゃってええの? まだお話してないやん」
「希も井ノ原書記の嘘に悪乗りしすぎよ。生徒会のお話なんて本当はないじゃない」
だろうな……そんなものあってもらってもこっちが困るだけだ……あ、それが理由だ。と、今になって自分で思い切り納得してしまった。今度井ノ原さんにあったらどうしてやろうか……でも、毎回こういう時って報復考えるけど大抵返り討ちにあうのでやめておこう。
「そうかぁ、じゃあね陽月くん。どっか行くはずやったんやろ? 引き留めてごめんなぁ」
「ちなみに言うと、今更謝っても遅いですよ」
「あ、ばれた?」
「当たり前ですよ……」
「まぁ、そう言う事で。帰るなら止めないわ、じゃあね陽月」
どうやらもうここに引き留められることはないようなので、悪魔二匹の気が変わらない内に退散することにしよう。
「じゃあ帰りますね。じゃあまた今度、希さん。絢瀬会――」
「……ん?」
「……絵里さん」
物凄く睨まれた。呼び捨てはやっぱり嫌なので、さんは最低限つけておこう。
「まぁ、それでいいわ。またね陽月」
「またなぁ陽月くん」
俺は、生徒会室にでると目にも止まらぬ速さで駆け出した。……あの二人の俺に対する接し方が早く軟化することを祈りながら。
まぁ、呼び方のチェンジをさせたかったのと、先輩禁止への先取りみたいな感じになっちゃいましたね。
というか絵里怖すぎぃ!もっと可愛く書かないと……(使命感