Another School idols diary   作:藤原久四郎

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ん? 話が進んでない? 平常運転です。


早朝

 早朝、お日様がようやく顔を見せ、少しずつ町に活気が戻り始めるそんな朝の気持ちの良い時間。新聞配達のお兄さんがせっせと新聞を配達する中、リズムのよい息遣いをしながら街の中を走る影が一つ。その影は明らかに新品同様の上下セットの白を基調としたジャージを装備し、そしてそのジャージが新品であるのを一目でわからせるのと同じくらい明らかに眠そうな表情で道を駆けていた。

 

「……なんで朝からこんなことしてるんだろう」

 

それは海未さんから貰ったトレーニングメニューのせいだと、ツッコミをしてくれる人もいないので、ただの独り言になってしまったが……

 

 万年寝坊予備軍の泰原陽月は、律儀に早速柄にもなく朝からランニングにいそしんでいたのだった。

 

 

 

「にしても、よく起きれたな俺」

 

 休憩も兼ねて公園のベンチで一息つきながら、まだ少し薄暗い空を眺めながら軽くため息をつく。ふぅ、と息を整えながら空を仰ぐ俺の片手にはスポーツドリンクのペットボトルと、少し気取って始めて飲むブラックコーヒーの缶が、逆の手に握られていた。

 ちなみにこの公園は、学院や神田大明神からもそれなりに近い、というか中間あたりに位置している公園である。初めてきたので名前は知らん。

 

 

「こういう時に誰かいるといいんだけどなぁ……ん?」

 

 とりあえず落ち着いてきたため、次は缶コーヒーに手をつけながら辺りを見ていると、俺と同じくランニングに精を出す、ここからでもわかる程の目立ち具合をしているオレンジ色の髪を揺らしながら走る影が、遠目からだが確認できた。

 

「どうみても穂乃果さんだよな、あれ」

 

 コーヒーの缶をぐいっとあおりながら、別にわざわざ話しかける必要もないなぁ、という思春期特有の照れから、明らかに特徴的な穂乃果さんらしい影がどこにいくかを黙って見ていたが、

 

「このコーヒーまっず!」

「え?」

 

 思わぬところでツッコミ症が出てきてしまったために、思い切り声を上げてしまった。それも、静かな朝の時間にやったものだから、遠くに居た穂乃果さんにも気が付かれてしまったに違いない。このコーヒーまずすぎだろ……勿忘草で飲んだコーヒーのせいで舌が肥えてるのか?

 あと前も言っていたが、いい加減ボケに回らないと都合よくツッコミだけさせられる役になりそうだなと危惧していたが、その時は近いなぁ、と先程の反射的な行動からそう考えていると、どうやらあちらも俺に気が付いた様で、こちらに穂乃果さんが走ってきていた。

 

「あれ? 陽月くんおはよう。どうしたの? こんなところで」

「おはようございます。その質問はしようとしてましたけど、俺はランニングです」

「そうなんだ、陽月くんもランニングするんだぁ」

「まぁ、今日からですけど」

「なら一緒にランニングしない? 一人より二人の方が楽しいし!」

 

 と、穂乃果さんが眩しい笑顔でキラキラしながら提案をしてくる。その笑顔は、面倒だからいいですだとか、恥ずかしいからいいです、という俺の逃げの答えを完封するには十分すぎる破壊力であったので、やむなく好意的な返事をだすしかなかった。

 

「そうですね。じゃあいきますか」

 

 休憩は……それなりにとったし呼吸も整った。今すぐ行くのも問題ないな。

 

「じゃあついてきてねー! このまま神田大明神までいくから!」

「わかりましたよっと」

 

 穂乃果さんが宣言してすぐさま走り出すと同時に、俺もその背中を捉えながら一緒に走りだす。ちゃんと出て行くときに一応飲みきったコーヒーの空き缶を『缶』と書かれたゴミ箱に捨てておく。やっぱりマナーは守らないとな、うん。

 スポーツドリンクの入ったペットボトルはまだ中身があるので、そのまま持って行こう。

 

「にしても、陽月くんどうしたのいきなり? ランニングだなんて」

 

 着実に神田大明神の方に近づきながら、至極当然の疑問を穂乃果さんはぶつけてきた。

 

「話せば、長くなるんですけどね~。単に最近体鈍ってる気がしたからってことで」

「そうなんだぁ、じゃあこれからもまた会うかもしれないんだね。その時はまた一緒に走らない?」

「えぇ、勿論です」

 

 少し話している間に、神田大明神とかかれた木の板の見受けられる、石段までやってきていた。まぁ、距離もそんなに離れていないとはわかっていたので、さして驚きはしないが。

 

「よーっし! 階段、駆け上がり勝負だー!」

 

 穂乃果さんは突然気合をいれた声を上げたかと思えば、石段を全速力で駆け出していく。突然の事に驚きながらも、俺は少し遅れてその背中を追いかける。

 

「勝負ならっ……ちゃんと同時にスタートしてくださいよ!」

「あはははは! 先に着いたもの勝ちだよーっ!」

「ま、負けるかッ!」

 

一段また一段と結構な長さを誇る石段を、穂乃果さんは手慣れた様子でどんどんと駆け上がる。負けじと俺も必死に一段一段と長い道のりを駆け上がっていく。だが、先に飛び出されたことによる差は、一番上で穂乃果さんが止まるまでは埋まることはなかった。

 

「あははは~、一番のり~!」

「そ、そりゃ……そうに決まってますよ!」

 

 石段上りきる頃には、俺は無駄に飛ばしたせいで息が完全に上がっていた。そんな俺とは真逆に、穂乃果さんは涼しげな表情で無邪気に勝利に酔いしれている。というか……普通に穂乃果さん早いやん。全然追いつけなかったし。

 

「と、というかなんでこんな急に……はぁっ、走ったりしたんですか?」

 

 ぜぇぜぇと繰り返す呼吸を会話しながら整えつつ、純粋に気になった点を問いかける。いくらなんでも、突然すぎりダッシュは流石に驚いた。まぁ穂乃果さんらしいといえばらしいのだが。

 

「だってほら、みて?」

 

 そう言って神田大明神について、階段を上りきった先からもと来た方向に穂乃果さんが指をさす。俺はそれにつられて石段の高さ分少し高くなっている視線から町の方向を向いた。

 

「う、わぁ……」

 

 指さした方向には、朝焼けに包まれつつある、それでいてまだ静かな普段とは一味も二味も違った街を一望できた。手で掴めそうな程小さい町の全体はぼんやりとかかる朝もやに、少し幻想的な雰囲気を感じさせながら、そこに優しく差し込む朝の少し弱い日差しは神秘的な光の橋を思わせ、なんでもない町がまるでジオラマやプラモデルを神様が付くって遊んでいる、そんな非現実性を俺の目に美しく映し出していた。

 

「ね? 綺麗でしょ」

「あ、はい……とっても、綺麗だ」

「でしょでしょ! ここは穂乃果だけの場所なの!」

 

 「でも、もう俺が教えてもらったから二人の場所ですけど」と面白半分に笑いながら言うと穂乃果さんも「その通りだね!」と俺につられて笑い出した。

 俺の隣で朝の日差しを一身に受けながら笑う穂乃果さんは、少しだけ大人びて見え、その無邪気さは、この景色にも引けを取らない程綺麗に見えた。

 

「よっし、じゃあ続き行こうか! あと5kmは走るぞー!」

「ま、マジ? そ、その半分なら付き合います……」

「駄目だよ~? 穂乃果の秘密知っちゃったんだから、付き合ってもらうから!」

 

 そう言って穂乃果さんは俺の腕を掴んだかと思えば、俺の返答を聞くこともなく走り出してしまった。も、もう俺かなり走ってきたんだけど! もう正直帰るつもり満々だったのに! と、言いかけた言葉は、手から伝わる穂乃果さんの熱い体温と、引っ張られながら進むことへの安心感からか、気が付けば言おうとした事は気が付けば消え去って、ただただ笑って穂乃果さんの後を走っていた。

 

 途中で穂乃果さんが俺の飲みかけをなんの躊躇いもなく飲んだり、その逆の事が起こったりと、実はいろいろあったのだが。結局最後は、俺も穂乃果さんも一緒に笑っていた。

 

「よーっし! 今日も一日、頑張るぞぉー!」

「俺も、頑張るぞー!」

 

 俺と、穂乃果さんは人の活気が戻りつつある町を、二人で兄弟の様に仲良く時間も忘れて走り抜けていく。穂乃果さんと遊びながら走っている間は疲れも忘れて、無邪気な子供の様に笑いながら時間が危なくなるまでは心を空にして何も考えずにただその時間を楽しんでいた。

 

 

 

 そして、あっという間に時間は過ぎ去っていき。

 

「そっ、そろそろ学院に行く時間だよ陽月くん!」

「で、ですね。じゃあそろそろ帰りますか」

「そうしよっか。じゃあまたね陽月くん!」

「はい、さよならです穂乃果さん!」

 

 二人して忘れかけていたが、そろそろ学院に行く時間になっていたので、ギリギリのところで穂乃果さんと別れて一度家に帰った後、慌てて学院に行ったのだが――

 

「ぐーっ……穂乃果さんそんな激しくしたら……」

 

「な、何があったの陽月くん……」

「陽月くん、最低だにゃー」

「学院で寝るなんて馬鹿みたいね」

 

「すーっ……もう無理だよ陽月くん……」

「よ、陽月さん?! ほ、穂乃果に何をしたんですか!?」

「か、勘違いだと思うよ海未ちゃん~……多分」

 

 やはり、早く起きれた分、別のところで寝てしまうようだった。それも、寝言付きで。後々凛や花陽、真姫からわけもわからぬまま追及を受けたことは、言わなくてもわかる事だろう。

 




というか単に、さっさと終わらしていくのが性に合わないってだけかもしれないですね。
いきなり話が進むんなら苦労しません(ガンギマリ
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