Another School idols diary   作:藤原久四郎

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投稿が遅い事遅い事。
でも書き上げるのは小一時間、遊びすぎである。


フリーアルバイター

「はい、オムライスとドリンク! これお願いね!」

「は、はいっ!」

 

 騒然とした調理場、それ以上の繁盛を見せるホール。昼時でもディナーの時間でもないこの夕方にこれほどの賑わいを見せるお店はある意味ここしかないだろう。その理由はただ一つカリスマメイド、ミナリンスキーの所属しているこのメイド喫茶だからが主だった理由で、まさにそれならではの光景だ。

 そして現在、ここの店を切り盛りしているのは、厨房にてせわしなく料理を手掛けている店長。そしてホールにて注文を取り続け、そして会計をしている接待メインのミナリンスキーこと南ことり。現在この店に正規のアルバイトはミナリンスキーだけで、実際二人しかこの店に所属している人間はいなかった。しかしそれだけでは、配給と食事を終えた残りの回収係が居ない。つまりそれをカバーしている人間がいるのだ、それは――

 

「それはこの俺、ミナリンスキー同好会の会長。本田一だっ!」

「何言ってんだおっさん!? あぁもう……忙しいったらありゃしねぇな!」

 

 ……ではなく泰原陽月、音ノ木坂学院開校以来初めての男子生徒であった。

 

 

 

時はすこし巻き戻り、陽月がメイド喫茶に足を運んだところまで遡る。

 

 

「いらっしゃいませ、ご主人様~……って陽月くんかぁこんにちは~」

「俺だからって露骨に態度変えないでくださいよことりさん」

 

 今日は学院での過程を一通り終えてから例のメイド喫茶、つまりミナリンスキーであることりさんがバイトをしている喫茶店にやってきていた。

 依然として身辺警護は俺の一日の数少ない業務の一つなわけで、いつもなら帰ってダラダラするところをこうしてわざわざ出向いているわけである。

 

「ごめんね陽月くん、今お客さん一杯なんだぁ……」

「まぁ……見ればわかりますし、外も何故か行列でしたからね」

 

 本日のメイド喫茶事情は、個人的な客としてはかなり複雑な繁盛具合だった。まずはいる段階でかなり待たされたし、それでもまだ並んでいてとてもではないがことりさんにゆっくり話ができる雰囲気でもない。

 

「ちょっとミナリンスキーちゃん! 悪いんだけど後が詰まってるから早く次のお客さんをお願い!」

「は、はい店長!」

 

 その店長と呼ばれた見たところ40代程のおじさんは、この繁盛具合にやられているのかとても忙しそうにこちらに駆け寄ってきた。

 

「もう、なんだってこんな時に残りのバイト連中休むんだよ……揃いも揃ってインフルエンザだと? 今度会ったらどうなるか覚えてろ……お見舞いにいけない分フルーツのまかないしてやるんだからな……」

 

 何やら店長は愚痴を漏らしてはいたが、とてもとても平和的で仲間思いの優しい愚痴だった。

 

「店長、このままだと厳しくないですか? 明らかにお客さんの捌きが遅くなってます」

「そう言ったってな、俺とミナリンスキーちゃん二人だぞ? おかしいだろ労働法守れってんだ」

 

 店長とことりさんは、俺が目の前にいるのにも関わらずお店の状況を愚痴りだしてしまった。あの、俺一応客なんですけど。

 

「な、なんでそんな人いないんですか……」

「って何だ君? ミナリンスキーちゃんの友達?」

「あ、はい。一応そう言う事でいいです~」

「なにその一応って」

 

 その返事をした瞬間、目の前の店長らしい人物は何やらいい事ひらめいた、みたいな表情を嬉々として浮かべた。

 な、なんだ? 言うまでもなく嫌な予感がするけど。

 

「……そうか。あっ、ところでミナリンスキーちゃん、この子使える?」

「え?」

 

 突然忙しいと言っている筈なのに俺とことりさんと話し始めた店長は、俺を名指して何やら不穏な会話を始めだす。

 

「えっと……あ、そう言う事ですか?」

「ちょ、こと……ミナリンスキーさん何を納得してんですか?」

「ふむ、君名前はなんという?」

 

 店長はまるで聞く様子もなく、さっさと話を進めていく。

 

「え、陽月ですが」

「よし、君に失礼を承知で頼む」

 

 あ、これ面倒な流れだ。何やら後ろではガヤガヤと声が聞こえるが、今の俺には目の前の店長との会話でそんな雑音を聞いている余裕はない。

 

「すまない、少しの間でいい。バイトとして手伝いをしてくれないか」

「…………なんですと?」

 

 どうやら今日も、厄日の様だ。

 

 

 

「はいオーダー、はっぴいせっと二つ! これオーダー聞き直すのも恥ずかしいんですけど!」

 

 俺はこの店の制服を一時的に借り、せわしなくホールと厨房付近の移動を繰り返していた。となれば勿論この店の制服を身に纏っているわけであり、その男の方の制服はなんというか、この店に合わせた茶色を基調としたカラーリングでなおかつシンプルな上下のジーンズとシャツである。それに腰に巻くエプロンの三つで一つの制服である。なんとも動きづらいのは仕方ない。

 そしてそんな慣れない制服で狼狽えながらも俺は、ことりさん一人では厳しかったホールの手伝いもしながら、本来の役目である給仕も兼ねて現在もバタバタと右往左往しながらオーダーを取りに行っている。それでようやくホールの仕事はギリギリ回る程度なのにこの厨房では――

 

「ほれはっぴいせっと二つ。こっちはまだまだ余裕あるぞ。次のオーダー、まだかな?」

「ぐぬぬ。待ってろ、すぐ行ってくる!」

 

 完璧なまでに漏れのない調理が行われていた。

 なんだあの完璧超人レベルの調理は。どう考えても一人では辛い量であるのに、それなのに店長は汗一つかかずただ言われた通り、黙々と料理を制作しているではないか。正直レンジでチン、も疑ったがそんなものあの人の調理場での光景を見ればありえないと一発でわかってしまう程の、思わず見とれてしまいかねない美しく完璧な調理である。

どうして俺の周りにはやけに凄い大人しかいないんだか。あれだろうか、自分と比較するとどうしてもそう見えるだけだろうか? いや、今はそんなことより急がないと。

 

「ははは陽月、キビキビ働けよ?」

「うっさいぞおっさん! てか食ったなら早くどいてくれよ、後がつっかえてるんだ!」

「……お前本当にバイトだったらクビになるぞ?」

 

 いつからいるのかわからないこのおっさん、本田一は俺の仕事っぷりを茶化すばかりの傍から見たらただの鬱陶しいおっさんだった。よし前言撤回、この大人は別に凄くもなんともなかった。一刻も早く迅速かつ俊敏に帰ってもらいたいものだ。

 

 

 

 気が付けば時計の針も一周しており、一人、また一人とお客さんが帰っていく。最後には常連だろうか、ことりさんも笑顔で会話しながら応対をしていたお客さんだけが残った。

 

「お会計、いいかな」

「あ、はい!」

 

 俺は何気なくレジに向かい、伝票を受け取って突貫で教えられたレジ打ちをする。なんだかんだできるのだから、あの二人の教え方は上手かったと今更そう思った。

 

「ふぅ、ごちそうさま」

「ありがとうございましたー」

「またお越しくださいませ、ご主人様♪」

「……あぁ、ありがとう。またくるよ」

 

 と、一時間程みっちり働いた所で無駄にガタイの良い最後のお客さんが退店していった。最後まで気を抜かずにキチンとお見送りをしてから、俺とことりさんはお互いふぅ~、と大きな溜息を吐いたのだった。

 

「つ、疲れた~」

「わ、私も……」

 

 俺もことりさんも緊張の糸が今のでプッツンと切れ、手近にあったテーブルにある、先程までお客さんが座っていた椅子に勢いよく腰を落ち着けた。

 

「ははは、お疲れさん。そしてすまなかったな陽月くん、こんなこと手伝わせてしまって」

「っと……まぁ、大丈夫っすよ。どうせこれからバイト本格的にしようと思ってましたし、丁度いい経験になりました」

 

 そうは言ってみたものの、勿忘草にこれほどまでの繁盛が見られるかどうかは何ともいえない所であるが。どちらにしろ、とても疲れたことは事実である。

 

「いや、本当にすまなかった。店側の都合を君に押し付けてしまった。少ないが、今日のバイト代を受け取ってもらえるかな」

 

 そう言った店長は俺たちのぐでっているテーブルに一つの封筒を差し出して来た。そしてその後ちょっとまっててくれ、とだけ言ってまた厨房に引っこんでいってしまった。

 

「……別にいらないって言いたかったけど、わざわざつき返すのもよくないよな。これはありがたく貰っておこうかな」

 

 ありがとうございます名も知らぬ店長。後でまたお礼言わないとな、と思いながらとりあえず履いていた現在借りている制服のポケットに優しく差し込んだ。

 

「本当陽月くん、お疲れ様。そしてごめんね? 私からも謝らせてほしいなぁ」

「ははは、二人からもお礼言われたらお釣りが来てまた働く羽目になってしまいますよ」

「ふふっ、陽月くんやっぱりいい人だね?」

「そう見えるんなら、頑張った甲斐もありましたよ」

「うん、陽月くんは私にとって一番カッコいい男の子だよ」

「な、なんか照れるな……」

 

 手放しにこうも褒められるとどことなくむずがゆく、あははと笑いながらポリポリと頭を掻いてしまう。なんだろう、久しぶりにこんなにも褒められたからか、不思議と顔も紅潮していないか心配になってきた。

 

「にしてもことりさん、いつもことりさんがいる時ってこんな感じなんですか?」

「うん、そうだよ? よくバイト仲間の子から私が来るとお店が大変なんだからって文句言われちゃうくらいには」

「な、なんと……」

 

 ことりさんとシフトが同じ人、こんなにも大変なのか。

 

「でもね、いつもはもう少し楽なんだよ? お客さんもここまで沢山は来ないから」

「それは、ウチが君なしでは人気がないとでもいいたいのかな?」

「て、店長! ち、違いますよ? 別に嫌味だとかそんなんじゃ……」

「ははは、わかってるとも。ミナリンスキーちゃんにはとっても感謝してるんだから」

 

 いつのまにか厨房から戻ってきていた店長は、ことりさんと軽口を交わしながら何やら両手に持っていたお盆から二つの皿を俺たちの目の前の机に差し出して来た。

 そこには、俺やことりさんが何度も運んだ店長特製のオムライスが置かれていた。

 

「ま、これは君ら二人に対するまかないって事で。じゃあ、ごゆっくり」

 

 俺とことりさんがお礼を言おうとするよりも早く、店長はそのまま厨房にまたしても引っこんでいった。

 

「……いい人ですね」

「うん、とってもいい人だよね」

「じゃあ、冷めない内にいただきましょうか」

「そうしよっか。じゃあ――」

 

「「いただきます!」」

 

 俺とことりさんは、同時に手を合わせて食べ始めたのだった。経験にお礼にまかない、そして素晴らしい仕事。なんだよ、やっぱり俺の周りはカッコいい人ばっかりじゃないか……。

 一口放り込んだオムライスの味はとてもとても美味しく、それでいて料理の域を越えて尚、熱意の感じるものであった。

 




うん、おいしい(小並感

なんていうんですかね。ちゃんと進んでるんですけど、方向を間違えてる感が否めない。
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