Another School idols diary 作:藤原久四郎
えっ、どうでもいい話題(ry
というか名前不定の人が既に二人……そして店長これで三人目だ。
いい加減名前で呼ばなきゃ(届かぬ思い
「じゃあ俺帰りますね」
「ありがとね陽月くん」
「今日は本当に助かった。また来てくれ」
俺は店長特製のオムライスを平らげた後、あまり長居する必要も無いので店長とことりさんに挨拶をしてから店を出た。
忘れていると思われそうなので一応言っておくが、今日のここに来た目的の一つであることりさんの送迎はことりさんは今日遅くなるから大丈夫だと言っていた。
むしろそっちの方が心配だし、俺も終わるまで待つと言ったのだが
「今日は店長さんと一緒に帰るから大丈夫♪」
と、言われたので俺も安心して帰ることが出来たというわけだ。確かにあの店長なら普通に大丈夫だろう、それにことりさんもかなり信頼してるみたいだし。それなら最初から俺ここに来なくて良かったんじゃないか? とも思ったが、色々と収穫もあったので±0という事にしておこう。割と現金な自分が少しだけ嫌である。
「じゃあ、行くか」
俺は、家とは反対方向の繁華街に向けて足を進めた。
「こんにちはー」
「おや陽月くん、いらっしゃい」
今日は時間もあるのでバイトの申請に関した事も相まって、喫茶店『勿忘草』までやってきた。まだバイトの許可は貰っていないが、それよりもこっちの店長の許可が得られないとまずスタート地点にも立てないのだから、とりあえずこちらから解決していくわけだ。
「お、陽月じゃねぇか。さっきぶりだな」
「げっ、おっさん」
店に入ってカウンターの方まで行くと、何やら先程までメイド喫茶の方にも居た本田のおっさんが何故かコップを二つ並べてカウンター席に座っていた。折角店長と話そうと思ったのに、なんでいるんだよ。
「げっ、とはなんだ。この店は一応俺のいきつけなんだぞ?」
「そうですか、どうでもいいです。というかなんでコップ二つも並べてるんですか? 妄想彼女ですか?」
「なんか最近当たり強いなお前……おっさん悲しい」
「ふん、根に持たれても当たり前だと思ってくださいね」
「へぇへぇ、そう怒るなよ。それにこれはさっきまで友達が居たんだよ。用事があるって帰っちまったがな」
そう言ってふっ、と鼻を鳴らし少し寂しげにそのコップをおっさんは見つめていた。ちょっとくらいからかっても、今までの仕打ちを考えたら罰は当たらないかな。ちょっと責めてみよう。
「なんだ、友達居たんですね」
「…………俺だってそろそろ根に持つぞゴラァ」
「お互い根に持ちあう陰気な関係ですか。俺も友達がいたらそんな風にはなりたくないですね」
「お前なぁ、子供っぽいときと妙に年寄りぶった感じやめろよな。なんかわからなくなってくるぜ」
「すみません冗談です。それより隣、いいですか?」
「ったく、どうぞどうぞ」
「ふぅ……すみません店長、今日のコーヒーください」
「ふふふっ、かしこまりました」
店長は俺とおっさんのやり取りを見て大人の微笑みをしながら、慣れた手つきでコーヒーを淹れはじめた。
その間は暇なので、少し気になっていた事をおっさんに質問してみよう
「にしても、おっさんはミナリンスキーさんをどこで知って好きになったんですか?」
「はぁ? 前言ったじゃねぇか。一目惚れだよ一目惚れ」
「それは知ってますけど、なんでわざわざメイド喫茶に行ったのかなーって」
「まぁ今の時代なら皆の口コミってのが普通だがな。俺の場合はさっきも言ったが、ここにいた友達に聞いたんだよ」
「へぇ~じゃあその友達のお蔭でまんまと沼にはまったと」
「言いかたが気になるがまぁそうだな。先に知ってたアイツは、多分大袈裟にも言ってたと思うが、自分は彼女に救われただとかも言ってたから気になってたんだよな」
「なんとまぁ……流石カリスマメイドってわけだ」
「まぁアイツはそん時仕事でミスっただとかで落ち込んでたみたいだし、そんなときに優しくされてコロっといっちまったんじゃないか? 俺もだけどな」
そう言って友人の事を話すおっさんはどこか嬉しそうで、まるで自分の事の様に話を続けてきていた。俺はその友達の事を知らないけど、きっといい関係なのだろう。
「ふっ、お待たせしました」
店長は俺とおっさんの丁度会話が途切れたタイミングで、湯気のたちこめるコーヒーの入ったカップを俺の前に出してくれた。
「おほ~やっぱマスターの入れるコーヒーは匂いまで最高だな」
「ふふふ、ありがとうございます」
「じゃあ冷めない内に飲みますかね」
俺はアツアツのカップを優しく持ち、中の黒茶色のコーヒーをほんの少し口に含む。冷たいのならもう少しガッツリ飲んでもいいのだが、いかんせん熱すぎる。
「……うん、美味しい」
「陽月くんに褒められると、私も嬉しくなるよ」
「そんな、大袈裟ですよ店長」
「なんだぁ陽月、お前もう気にいられてるじゃないか。俺だって話せるようになったの最近だってのに」
「いや知らねぇよ……これが人望の差ってことなんじゃないですか?」
「お前……すっかり慣れてやがるな」
「ふふふ、貴方たちお二人を見てると飽きませんね」
「良かったですねおっさん、褒められましたよ」
「きっと馬鹿にされてるぞ」
俺は少しずつ飲みやすくなるコーヒーを啜りながら、この温度と同じように温かい空間で会話を繰り返していった。
「ふぅ、じゃあ俺はそろそろ帰るぞ。なんか陽月がマスターに用があるみたいだしな」
と、丁度半分くらい飲み終えた所でおっさんが座っていた椅子から立ち上がり、会計を店長にお願いしていた。というかなんでこの人も俺の心読んでるんだよ。周りにエスパーしかいない青年はきっと世界中探しても俺だけだろう。
「じゃあマスター、よろしくお願いしますね」
「はい、確かに承りました」
「じゃあな陽月。また暇なときはグループのトークも見とけよ?」
「一応見てはおきますよ」
おっさんの言っているグループとは、前誘われた『トー君』のアプリ内での話だろう。ちなみに内容は同好会メンバーのみなので、勿論ながらミナリンスキーさん関連の事ばかりだ。俺はと言えば別に話すこともないし、話すとすぐボロを出すので話さない、所謂聞き専の立ち位置である。それでも同好会メンバーのミナリンスキー談義は中々面白く、文からでもそれぞれの『愛』が感じられるのだ。それ故たまに喧嘩もしているが。
そしておっさんは店長に挨拶を交わしてから、店から出ていった。そして店の中には俺と店長だけが残り、少しの間俺のコーヒーを啜る音と、店長が雑務をこなす気持ちのいい日常のBGMだけが店に音を鳴らしていた。
「ふぅ……ごちそうさまでした」
「ありがとうございます」
そして程なく全てのコーヒーを飲みきり、体に溜まった熱と幸福感を噛みしめるように俺は大きく息を吐いた。今日のコーヒーも相変わらず美味しく、可能な事なら毎日でも飲みたいと思える程には素晴らしい。そうは問屋が、財布のひもが許してはくれないのだが。
勿論今日のコーヒー代も、実は無職学院生にはギリギリのカツカツである。だからと言ってやめられない止まらない、危ないお薬の様なキャッチフレーズが浮かぶくらいには俺はここのコーヒーに惚れてしまっていた。
「じゃあ用事もありますけど、先に会計を……」
「それには及ばないよ、本田さんが君の分も払っていたからね」
「な、なんですと?」
「きっと君の経済事情を知っていたんだろう。ふふふ、私も君があまり余裕がないのは表情からわかっていたがね」
「……恥ずかしっ!」
なんと俺の財布事情は、店長だけでなくおっさんにすら見破られていた。どんだけ顔に出てたんだよ。
「ぐぬぅ……これは後で何か起こりそうな予感が……」
「人の好意は素直に受け取っておいた方がいいと思いますよ?」
「うぬぅ……そう言われたらもう、仕方ないから後で連絡入れておきますか……」
「それはいいことです、正直なのは美徳ですよ」
微笑を浮かべながら店長が諭してくるものだから、俺は何も言わず甘んじて本田のおっさんの好意に甘えることにするしかないではないか。こういう無駄な所であの人に変な借りを作ると、「ミナリンスキーさんの事教えてくれ!」とか言われそうだから嫌なんだがな……。
……一応前言撤回、あのおっさんも中々カッコいい人だ。ほんの少しだけな。
「じゃあ忘れかけてましたが本題を……俺のバイトの採用の方はどうですか?」
一応ここに来た本来の目的であるバイトの用件を店長に尋ねる。
「ふむ、そうだな。一応色々考えたんだがね」
「……ゴクリ」
店長は先程までの笑顔を一度崩して真面目な表情になり、逡巡するしぐさを見せる。そして、少しの間が空いてから口を開いた。
「いいでしょう。採用です」
「ま、マジですか……!」
「むしろ君が良ければ、という感じですがね」
「い、いえ……元々採ってもらえると思ってなかったので……」
「ふふふ、今となっては君の財布事情を知ってしまったので無碍に返せませんよ」
またしても一転、店長は笑顔を顔に浮かべて俺に微笑み返してくれた。微妙に同情が入ってるような気もするが……とにかく、これで目下解決すべき事が一つ解決した事になる。解決という程大袈裟な事でもないけどな。
「そうだな……細かい事はまた次回来た時にでも話そうか。君の事情もあるだろうし、多少遅くなっても構わないから」
「あっ……そうだった……」
実質採用してもらえたという事は、またしてもあの悪魔の巣、もとい生徒会室にバイトの許可を貰いに行かねばならないという事か。これからの事考えたら頭痛くなってきた。
「……ふむ、その様子だと一ヶ月くらいは時間がかかるかな? 私としても用意があるから、あまり気にしないのだけれどどうだい?」
「そうですね……今割と忙しいので、一ヶ月くらいかかっちゃうかもしれないですね」
どうやら俺が考えている事は筒抜けな様で、一ヶ月も待ってくれると店長は言ってくれていた。
よく考えたら、バイトの許可を貰いにいくのはすぐだとしても、海未さんとの放課後の特訓、それに肝心なことりさんのストーカー対策の方も一切終わっていない。それらを終わらしてからじゃないと流石にバイトにも集中できなさそうだ。主に俺の苦労面だけど。
「じゃあ一応これがウチの連絡先だ。都合が付いたら電話でも構わないから連絡してくれるとありがたい。もちろん来てくれても全然大丈夫だから」
そう言って店長は一枚の名刺、店名の勿忘草と、店長の名前……
「わかりました。じゃあまた来ますね。それでその……」
「ん、何かな?」
「よ、よろしくお願いします!」
「……っ。ふふふ、こちらこそよろしく頼むよ陽月くん」
「は、はい!」
もう一度店長に立って礼をしてから、喜びを噛みしめつつそのまま俺は店を後にした。
「ふぅ……」
陽月が去った後、店長である桜庭銀二は静寂に包まれた店内で一つ溜息を漏らしていた。その溜息はどちらかと言えば、安心感から来る方のものであった。
「これで、よかったのか」
誰も返事の返すことが無い店内で、店長は声を漏らす。ただその瞳は、天井を越えて更にその上を見つめているようにも見える。
「勿忘草……か」
この店の名前を付けた人の事を思い、彼はまた息を漏らす。そして一枚の少し掠れた写真を懐から取り出す。
「……忘れるわけないから、安心してくれ」
そこには揃って笑顔の三人がおり、そこにいるのは彼と同じくらいの左手に指輪をはめた女性と……もう一人、先程までここに居た陽月によく似た青年が眩しい笑顔で写っていた。
もう一人のおっさんがいるって? クレープ屋、さて何のことやら(ちゃんと出します
正直、そろそろラブライブ関係ないじゃんって言われそうですが……引かぬ媚びぬ省みぬの精神でやっていきます。
勿論そんな作品でもいいと言う方は、これからもよろしくお願いします。
あと感想誤字指摘等々はいつでもウェルカムです