Another School idols diary 作:藤原久四郎
「う~~~~ん…………」
皆さんこんにちは! 高坂穂乃果です!
今、私の頭の中は大変な事になってるの!
「最近、ことりちゃんと海未ちゃんの様子が変だよ!」
思わず私は席から立ち上がり、人もまばらになっている教室で叫んでしまった。
「どうしたの~穂乃果?」
「そっとしておいてあげなよ、穂乃果にもきっと色々あるんだよ」
「そうだねぇ、幼馴染だから私たちが思っている以上に……」
「んも~三人とも酷いよ! 穂乃果だって真面目に考えてるのに!」
「ん、そう? はい、パン」
「わんわん!」
「穂乃果は犬か……」
「私的には海未の方が犬っぽいけどなぁ~」
「じゃあことりは?」
「うーん、思い付きなら鳥」
「あぁ~トサカね、わかっちゃうのが悔しいなぁ」
ヒデコ、フミコ、ミカと穂乃果は、海未とことりの不在中に何やら談義をしている様だ。
「ん……もぐもぐ、そうじゃなくて! 最近海未ちゃんとことりちゃんの様子が変なの!」
「わかった、わかったから。おかわりいる?」
「いるいる! ってそうじゃないよ!」
「ははは、最近はノリツッコミが来てるね~」
「ヒデコもフミコもちゃんと聞いてあげようよ~」
どうやら、二人の行動は傍目から見ても怪しくなっている様だ。勿論原因は、アイツである。
「へっくし! んぁ~風邪かぁ?」
最近どうも記憶が怪しいと考えている事数時間、なんともあっという間に学院の授業が全部終わっていた。
「んー……今日はどうすっかなぁ」
本日は特にいつも通り予定がなく、帰りのSTも終わってざわつく教室で一人語り掛けるわけでもなく呟く。
「陽月くん、今日はずっとぼんやりしてたね」
「あぁ、花陽。どうも最近記憶がよく飛ぶんだよ」
そんなぼやっとしていた俺に隣の席に座っているクラスメイト、小泉花陽が苦笑いを浮かべながら話しかけてきた。
「陽月くーん。今日は部活だけどくるのかにゃ?」
「どうしよ、今日暇だし行くのはいいんだけどな」
「いいんだけど?」
「三年生組が怖い」
「うっ、トラウマを刺激しないで欲しいにゃ~」
いつの間にやら隣に来ていた凛もどうやら俺と同じく、悪魔の三年生組……もとい絵里さんと希さんにさんざんこねくり回され、ではなく弄られたのが効いている様だ。まぁ、凛は俺からの飛び火で完全に被害者だが。
そして凛がこちらに来たのに付随するように、真姫も俺の席の前に立っていた。
「陽月、そういえばまたにこちゃんが怒ってたわよ? また何かしたんでしょ」
「って、真姫。なんで『にこちゃん』なんだ。それに俺が矢澤先輩怒らしたのなんで知ってるんだ?」
「あれ、ホントだにゃ」
「前は先輩呼びじゃなかった?」
「べ、別にいいでしょそんなこと!」
なんと俺の、俺たちの預かり知らぬところで真姫と矢澤先輩の関係は発展していたようだ。詳しく聞きたくなる衝動に襲われるが、俺の第六感が嫌に警告を発しているものだから追及はしないでおく。
「まぁ真姫の矢澤先輩との関係発展の事はさておき、部室行くか」
「べ、別に何もないんだから!」
「真姫ちゃん顔赤いにゃ~」
「ま、まさか二人は……」
「違うって言ってるじゃない!!」
「こんちわー」
「こんにちはにゃー」
「こんにちは~」
「……ふん」
部室に来るまで嫌に言い訳を続けていた真姫は、とうとう部室に来る前にふてくされてしまっていた。だからと言って俺たちの疑念は晴れることなく、むしろ真姫があまりにも必死な物だから疑念は確証まで上り詰めていたりしたのだが。
そんな状態で部室に入ると、もちろんいつも通りに矢澤先輩がパソコンに向かってこれまたいつも通りにパソコンで何やら作業をしていた。
「あら、今日は早かったわね。余計なのも一人いるけど」
「だってよ真姫」
「そ、そんな……」
「陽月に決まってるでしょ」
「よ、よかった……」
「なんでや!」
真姫はさっきまでの言い訳の連続に相当参っていたようで、俺の適当に放ったブーメランがクリティカルヒットしていた。ちょっとやりすぎてしまったかもしれない。だが俺の放ったブーメランは見事に自分にも突き刺さっていた。
「まぁ真姫、元気出せよ。生きてりゃいい事あるって。ほら、飴やるよ」
俺は適当に学ランのポケットをガサガサと漁り、ヴェルタ○スオリジナルと書かれた飴を一つ差し出す。
「う、うるさい! もう大丈夫なんだから!」
「ちぇっ、人が珍しく励ますとこれだこと。……うんうまい、パパの味だ」
「それミルキ○じゃないかにゃ?」
「ママの味じゃないかな……」
「アンタら来て早々煩いわね……」
「うっす、大人しく座ってます」
悪ふざけも大概にして、俺たちは適当に椅子に腰かけた。
そしてふと思い立った、というか気になった事があったので机を挟んで向かいに座っている花陽たちに向かって小声で話し始める。
「毎回思うけどさ」
「どうしたの? 陽月くん」
「なんでいっつも矢澤先輩先にいるんだろう」
「確かに気になるにゃ」
「あれでしょ、ST終わったらすぐ飛んできてるんでしょ」
「にしては早くない? しかも三年生四階だろ」
「もしかしたらロープでシャーって来てるかもしれないにゃ!」
「それは危ないと思うよ凛ちゃん」
「もしかしたら授業抜け出して来てるんじゃ……」
「流石にないでしょ」
「いや、矢澤先輩なら……それでも矢澤先輩なら……ッ!」
「私がなんだって?」
「授業全部ほっぽり出してきているかもしれない!」
俺は熱弁するが如くガタッと椅子から立ち上がり、高らかに宣言していた。そしていつの間にか、背後には話題の中心にいた矢澤先輩が猛烈なオーラを出しながら立っていると思われた。
「……陽月、ちょっと集合」
「……マジすんませんってちょっと調子乗っただけでホント他意はないって言うかマジ矢澤先輩リスペクトっていうかホントその申し訳ない」
「はい、別室ね」
「真姫貴様裏切るのかァ!?」
「ふん、さっきのお返しよ」
「あぇ……」
とんでもないしっぺ返しである。俺はなすすべなくズルズルと、部室内から続く隣の物置部屋に引っ張られていった。
「クソっ、腰が九十度に曲がって手首もブラブラして頭は天に向かって垂直だ……」
「普通じゃないの」
「イエスその通り」
とりあえず甘んじて説教を受けた後、俺と矢澤先輩は物置部屋の扉を開けて部室に戻る。
「あ、おかえりなさいにこ先輩~」
と、そこには先程まではいなかった二年生達、穂乃果さんに海未さん、それにことりさんが一年生三人と向き合うように座って俺たちを出迎えてくれた。
「ん、じゃあ後はあの二人ね」
「あぁ、矢澤先輩とは似ても似つかないスタ――」
「はい、別室」
「なんでだぁぁぁぁ!」
またしても出戻り、不用意な発言により別室送りである。
「い、一体どういうことなの……説明して海未ちゃん!」
「わ、私に聞かれても」
「な、仲がいいんじゃないかな~あはは……」
「馬鹿みたい」
「ちょっと駄目すぎじゃないかにゃ?」
「……誰か助けて~」
「……今度は顔の骨格が変わってしまった」
「なんで私殺人拳の使い手みたいになってるのよ」
またしても既視感のあるやりとりをしながら、俺と矢澤先輩は物置部屋の扉を開けて部室に戻る。
「あれ、にこっちどうしたん? そんな陽月くんと物置部屋で」
「そうよにこ。不純異性交遊は生徒会としても――」
「あ、やっぱりそう見えま――痛い! 足踏まないで痛い!」
「アンタも乗っかるんじゃないの……!」
久々にツッコミ役がいる事に安堵し、いつになくボケ倒す俺だが、別に頭を打ったわけでも人格が変わったとかそういうわけではない。ほら、人によって態度変わる人いるじゃない? アレの別バージョンみたいな。
ボケも程ほどにし、俺と矢澤先輩も席に付いた所でいつも通りのμ'sの練習ではない、不定期のミーティングが始まった。
「じゃあ、全員集まった所で今日のミーティングよ」
「はーい!」
最近では生徒会長という立場も相まってか、こういった皆のまとめ役が絵里さんになっていた。
「それでなんだけれど、前回のライブ……というよりオープンキャンパスからそろそろ一ヶ月が経つわ。μ'sのライブ動画の更新頻度としては約二か月に一度から二度程ね。なのでそろそろ新しい曲に関してそろそろ本格的に動き始めないといけない頃よ」
絵里さんは俺の思っていた以上に管理気質だったようで、こういったμ'sの今まで雑になりがちだった所を上手くカバーしてくれていた。まぁ、俺はよくて撮影だからこうしてここに来て共にミーティングを受ける必要あるのか? というのもあるが、一応部員である手前来ているだけでもある。故に時折人数合わせ……もとい雑用ないし力仕事も任せられたりするのだが。
「でも絵里先輩、まだ海未ちゃんの方が――」
「……あっ」
「……あぁっ」
その、海未さんに向けられた進捗の報告を求める視線が俺を除く全員から集められた瞬間、俺と海未さんはきっと同じことを同時に考え付いた事だろう。
(そういえば作詞のことすっぽかしてた!!)
ここ一週間は俺も海未さんも本気で特訓にのめりこんでいた為に、二人とも作詞のさの字も口には出していなかった。かくいう俺もあの後は結局フレーズの一つも思い浮かばず、あのノートも机の上に放置されたままである。
「……あの、申し訳ないですがまだ……」
「そっかぁ~海未ちゃんも今までポンポン作れてた方が凄いもん。ここは皆でまた考えるしかないんやね」
「すみません……」
「ホントすみません……」
「ってなんで陽月くんが謝るん?」
「あっ、いえ何でもないです」
「……? 変な陽月くんやわぁ」
首を傾げて俺の失言にはてなを浮かべる希さん。そういえば特訓もといことりさんの事はメンバーに言ってないんだった。あぶないあぶない、やっぱり口が滑りやすいな。
「いつも通りだにゃー」
「ホントね」
「……ははは」
「ここぞとばかりに弄るのやめろ!」
一年組も、最近の俺に対する扱いは酷いものである。
「それじゃあ今日は海未の作詞の手伝いを全員でしましょうか。それでいいかしら?」
「あ、あの~ちょっといいですか?」
「ん、どうかした? ことり」
絵里さんが今日の指標を打ち出したところで、ことりさんがおずおずと手を上げていた。
「あの……今日その、デパートで衣装に使える布のセールがやるみたいなんです。なので私抜けても大丈夫ですか?」
「そうなの……そうね、仮に曲も歌も出来ても衣装がないんじゃ意味がないわね。じゃあお願いできるかしら」
「そうやね、ウチらが行っても多分わからないと思うし、ここはことりちゃんに頼むしかなさそうやね」
「でも、一人でことりを行かせるのは荷物的にもアレじゃない?」
「そうね、荷物ね……そうだ陽月、貴方も一緒についていってあげてくれない?」
「え、俺ですか?」
突然の指名に思わず驚きの声を上げる。俺は海未さんの作詞を手伝えなかった後ろめたさもあり、今日はここでお手伝いをするつもりだったのだが……よく考えたらことりさんを一人で今おいそれとは歩かせられないな。まだストーカーの危機が去ったとも考えづらいし。
「……駄目かな、陽月くん」
「駄目って事は無いですけど……」
「陽月さん、ことりについていってあげてください。私の方は私でなんとかしますから」
「海未さん……」
「え、え? 何、この穂乃果だけ外にいる感じ!?」
今回は海未さんには申し訳ないが、ことりさんの傍にいることにしようか。
「じゃあ決まりね、今日はことりと陽月が買出し、それで残った皆で作詞ね」
方針も決まった所で絵里さんが一まとめにし、それに全員が返事を返す。
「じゃあ、俺たち行ってきますね」
「海未ちゃん頑張ってね、皆行ってきます~」
「じゃあ行きますか、ことりさん」
「うん、いこっか。陽月くん」
と、俺とことりさんは鞄を持って部室を後にするのだった。
二人が部室を出ていった後、アイドル研究部は騒然としていた。何やらわいわいきゃぴきゃぴしてるようにも、今にも殺陣に向かう武士たちの様な緊迫感の様にも感じられる異様な雰囲気が漂っていた。
そして、勢いよく扉が開け放たる――
「さぁ、いくわよ皆!」
「おーっ!」
「面白そうだから凛もいっくにゃー!」
「……すみませんことり!」
「馬鹿みたい……ホント意味わかんない……」
「うふふ、やっぱり陽月くんはおもろいやん!」
「陽月……アイツどんだけ手出しまくってんのよ、もう許さないわ!」
「もう誰でもいいから助けてー!」
どうやら作詞は、まだまだ進まないようだった。
ははは、え、話が進んでいない? 進んでますからホント……
また感想、誤字脱字批評などおまちしております。
もうホント面白いつまらない(これはどこがかもおしえてほしいですが)でもなんでもいいんで、喜ぶんで。
では、この回はまだ続きますので……頑張って書いていきます