Another School idols diary   作:藤原久四郎

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滑り込む誕生祝い。
ホント今日バイトだったんすよ……これギリギリでできるくらい暇なかったんすよ(大嘘

そして番外編ありがちな未来設定。


番外編 ~海未の誕生日~

「いやぁもうやめたくなりますよ~生徒会~」

「それ何度目ですか陽月さん……ん?」

「……っ! あ、あの……これっ!」

 

 俺と海未さんがいつも通り生徒会の仕事を終えて生徒会室から出た所、突然目の前に二年生と思わしき女生徒が一つの小包を俺につきだしていた。

 

「そ、その……だ。あの……だ、だいすき、です……」

「お、俺……?」

「あぁ、今日バレンタインデーでしたね」

 

 何が言いたいかわからねぇと思うが、俺もわからねぇ安心してくれ。

 そして何が何やらわからぬままとりあえずその小包を俺が受け取ると、彼女は恥ずかしそうに顔を覆いながらそのままどこかへ消えていってしまった。

 

 唐突に始まる、そんな二月十四日。

 

「なんじゃこりゃああああ!!!!」

「チョコでは?」

「そうじゃなくて! なんでWhat!?」

「ちょっと落ち着いてくださいよ……」

「そうだ深呼吸深呼吸、ひっひふー」

「そうじゃなくて腹式呼吸です。それは妊婦さんがやるほうです」

「う、産まれる!」

「はぁ……もういいです」

「これでも大真面目なんですよ!」

 

 そうだ、俺の手元には丁寧にラッピングされた小包。特に詮索するまでもなくアレだ。

 

「そうですね。陽月さんにも春がやってきたというわけです」

「まままま、マジかッ!」

「ちなみに私は沢山貰っています」

「本当にいらない報告だ!?」

 

 我が世の春……今は冬だがとうとう来てしまったか……。

 

「これで初ゲットだやっほぅ!」

「花陽たちからは貰っていないのですか?」

「アイツらは俺を裏切った!」

 

 そう、貰っていない。真姫、凛、花陽は三人でなにやら楽しそうに交換を行っていたし、これ見よがしにこちらをチラチラ見ていたから意地でも目を合わせないでやった。

 

「ですが確かあの子……」

「とにかくなんだっていい! 俺はやったぞぉぉぉぉ!」

「ちょっと陽月さん、いきなり走り出さないでください!」

 

 俺の咆哮は学院中に響き渡り、俺の駆け出した足は今の逸る気持ちと同じく止まる事は無かった……なんてことはなく、その後すぐ職員室から出てきた安田先生に見つかり蹴り飛ばされた。

 

 そして一月後。

 

 後から海未さんに話を聞いたところ、先程の女の子は海未さんのクラスに在籍しており、あまり話すことこそないものの、関係自体が悪いわけではないので色々と話を聞いたりもした。

 

「陽月さーん、呼んできましたよー!」

「き、来たっ」

「え、えっと……な、なんでしょうか」

 

その場にも居た海未さんにホワイトデーのお返しを一緒に選んでもらったり、渡す時のイメージだとか練習だとかを手伝ってもらう事かれこれ一ヶ月。俺の努力がとうとう実を結ぶ時がやってきた。

 

 その一ヶ月がここにきて走馬灯のように――

 

『陽月さん……それはちょっと……』

『女の子にあげるのに髑髏とかドラゴンはその……』

『うっ……なんですか、これ……優しく言って泥ですよ……』

『やはり、諦めて私が選びます』

 

 

 なんか罵倒ばっかじゃねーか!

 

 ってそんなトラウマほじくり返してる場合じゃなかった。今は目の前の海未さんの連れてきてくれた女の子に、とりあえず海未さんのチョイスした女の子らしいプレゼントを渡さなくては!

 

「こ、これ……お返しです!」

 

 俺はキッチリ一ヶ月この日のために努力し、海未さんに例の名も知らぬ女の子を呼んできてもらい、そしてこうして完璧に行動に起こせた…………はずだった。

 

「あ、あの時の……そ、その……バレンタインの……園田さんに……です」

「…………え?」

「…………え?」

 

 俺の一ヶ月を無にする、そんな一言が目の前の女の子のおずおずと開く口から投げかけられたのだった。

 

 きっと俺のその時の表情は説明するまでも無かった事だろう。

 

「………………あばばばば」

「こんな時どんな顔をすれば……」

「と、とりあえず……これ海未さんが選んだものなんで」

「ほ、ほんとですか?」

 

 俺はもはやただ残された希望と呼べる、俺にとっての絶望の象徴を目の前の女の子に半ば投げやりに渡してやる。こうすれば俺の傷も最小限に……なってくれれば……。

 

「あ、ありがとうございます! その……園田さん、また明日!」

「あ、はい……」

 

 無邪気な笑顔を浮かべた彼女は足取り軽くスキップし、俺と海未さんの目の前から去っていったのだった。

 

 という事で俺のホワイトデーは苦しみのままに終わった、そんな三月十四日。

 

 

 

 そしてそんなどうでもいい日から一日が過ぎ、これまた別のイベントが発生した。それは……

 

「海未さん、誕生日おめでとう……はぁ、死のう」

「陽月さん! 早まらないでください!」

 

 俺と海未さんは、昨日の反省会という名目の下喫茶店勿忘草へ二人で集まっていた。一応海未さんの誕生日が今日であるという事でお祝いをしようと思っていたのだが、予想以上に俺の心はブレイクハートで、現在進行形で首に縄が巻かれている。

 

「その、私も彼女から話を聞かなかったのは悪かったですから、その……元気出してください」

「でも……わざわざ一ヶ月も付き合ってもらって……こんなアホみたいな結末ですよ? こっちが申し訳なさ過ぎてもうやっぱ首つって――」

「わぁぁぁ、大丈夫大丈夫ですから!」

 

 

 

「おやおや、若い子達は盛んですね。そうは思いませんか本田さん」

「いや、あれ普通に修羅場っぽい感じじゃ?」

 

 

 

「オホン、そんな落ち込むことないですよ陽月さ――」

「海未さんは良いですね……異性からだけではなく同性からも人気があって……」

「異性から好かれているような事は無いと思いますが……それよりも陽月さんは男性から好かれたいと思う方なのでしょうか」

「えっ、そんなの嫌にきま――」

 

 

「話は聞かせてもらった」

 

 突然目の前にツナギを纏ったムキムキのキン肉マンが俺の前に立っていた。

 

「な、なんですかアンタ!」

「俺は通りすがりの配管工だ。お前男が好きなんだって? 俺と一緒に近場の穴でも掘りに行かないか?」

「ちょ、俺別にホモじゃ……」

「まぁいいじゃないか、穴の一つや二つ減らない減らない」

 

 生理的に受け付けない無駄にカッコいい面でに笑顔を浮かべながら、そのツナギは俺のケツをさわさわとさってきた。

 

「ちょ何ケツ触ってんだオラァァァァ!」

「おっと、君はどうやらノンケなようだな。すまなかった、ではまた機会があれば」

「おいふざけんな! 俺のメルヘンとブレイクハートを返せ!」

 

 謎のツナギマンは俺の魂の叫びを片手間であしらいながら、キッチリカウンターで律儀に会計をしてから出ていった。

 

「な、なんじゃ今のは……」

「もう一度聞きます、陽月さんは同性に好かれたいですか?」

「ホントナマいってすんませんでした……」

「わかればいいのです」

 

 どうやら海未さんは同性に好かれる事で、少なからず苦労をしている様だ。

 

「じゃあ今の俺の記憶から抹消された出来事のお蔭で、俺のミスなんてちっぽけだってこともわかりましたし、海未さんの誕生日祝いの続きでもしますか」

「め、面向かって言われると少し照れますね。というか早速黒歴史扱いですか……」

「よし、じゃあケーキカモン!」

 

 俺が高らかに手を上げ、指パッチンを無駄にかっこつけた動作をしながら行う。だが音はならない。

 

「くっ……」

「お、おまたせしました……ぶふっ」

「ありがとうござ――っておっさん何してんだ! しかも笑ってやがるし!」

「す、すまん……マスターもほら……」

「……すまない陽月くん」

「て、店長ォォォォ!?」

 

 なんと店長まで俺の痛々しい失敗をみて、普段ならたまにしか見せない笑いを見せていた。それもこちらに対して見えないように逆の壁に向かって。変に気を遣わないで欲しい!

 

「よ、陽月さん……ふふっ……だ、大丈夫……お、お腹痛い……」

「たかだか一回のミスぐらい笑わないで!!」

 

 

 店内の三人が笑いを堪え切るのにかかった時間、プライスレス。その価値は主に俺の心に大ダメージ。

 

 

「……はい、仕切りなおしてケーキです」

「す、すみませんはしたない所をお見せしました……」

 

 持ってきてもらった一人分の小さいケーキ、苦学生にとってはホールケーキは流石に無理があったので、ショートケーキにしてもらったのである。前払いのお蔭で財布はスポンジの様にスカスカにはなったが。

 

「では……いただきます」

「どーぞどーぞ」

 

 海未さんが目の前に差し出されているショートケーキをフォークで女の子らしく小さく切り、白いクリームに彩られた黄色のスポンジ部分を大切そうに口に運ぶ。

 

「ふあぁ……このクリーム口に入れたと思ったらほんのり甘くてくどくなくて……スポンジ部分もふわふわで美味しいです……」

「ほほほ、喜んで貰えれば満足ですじゃ」

「ちょ、おっさんまだいたのかよ!」

「久しぶりにケーキを食べましたが……これはいいものですね」

「それはよかった……また食べに来ましょう」

「ふふふ、まだ半分以上も残ってますよ? 気が早すぎますよ、陽月さんは」

「お、陽月お前やっぱり――」

「はよ帰れ!」

 

 俺が執拗に迫るおっさんとギチギチと組み合うなか、海未さんは頬っぺたが落ちるのを抑えるかのようにショートケーキを味わって食べていた。こんなに嬉しそうに、それでいて年頃の女の子らしい海未さんを見るのは何時ぶりだろうか……

 

『穂乃果! 書類はまだですか!?』

『ことり、穂乃果を甘やかしてはいけません!』

『もう穂乃果は……』

『ことりも、しっかりしてください』

 

 うう、思い出したら穂乃果さんやことりさんの事ばっかりだった。同性に好かれるって言ってたけど、自分が同性にこうやって近づいていくから周りも勘違いしているんじゃ……?

 

「あぁっ、もう残り一口に」

 

 どうやら俺がおっさんを辛うじて追い払ったところで海未さんもケーキをほぼ食べ終えてしまっていたようで、名残惜しそうに掠れた声を出していた。

 

「……あの、そういえば陽月さんは食べないのですか?」

「今日は海未さんの誕生日ですから」

「そうですが……ならなんでさっきからもの欲しそうにケーキを……?」

「はっ!? いかんいかん、それは海未さんの海未さんの海未さんの俺の俺の……」

「お、落ち着いてください! 目が血走ってますよ!?」

「はっ!? いかんいかん、落ち着け俺……ノウマク・サンマンダ・ケーキヲ・パク」

「煩悩丸出し?!」

 

 俺の腹は実に欲望に正直なようだ。

 

「落ち着きましたか?」

「ま、まさか我を見失うとは……ケーキ恐るべし」

「良かった……では、これ」

 

 海未さんは軽い溜息を吐いた後、俺に向かって白いクリームのついた黄色のスポンジをスッと差し出して来た。それもフォークに突き刺し、その下を手で付かず離れずの距離で支えながら。

 

「い、いいんですか?」

「はい、もうあんな捨て犬の様な目で見られては私も食べられませんし……早くしないと落ちてしまいますから」

「う、うぅ……ありがとうございます神様! 南無三!」

「も、もう大袈裟ですよ?」

 

 俺は全ての食物と自分の食欲に感謝しながら差し出されたケーキをパクリ。

 

「うっ!?」

「ど、どうしました陽月さん!」

「う、うぅっ……」

「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか陽月さん!」

「うまい!」

 

 俺は全身で喜びを表すべく体を一度丸め、その後大きく立ち上がり指を立ててその感動を一つの体で表した。

 

「び、ビックリしました……もしかしたらフォークが刺さったのかと……」

「ははは、そんなわけ……って口から血が出てる!?」

「ま、まさか本当に?!」

「あ、これイチゴの汁だ」

「間違えないでください!」

 

 

 

 茶番もさておき、実はこれで誕生日祝いは終わりでなかったりする。

 

「さて、じゃあ行きますか」

「はい、ケーキも美味しかったですし……もう満足です」

「ふっふっふ……この後はμ'sの皆と合流してまたサプライズパーティーですよ!」

「サプライズなら言ってはいけないのでは?」

「し、しまった! し、知らない体でお願いします……」

「ふふふ、楽しみにしておきますよ」

 

 という事で早速ミスが飛び出したが、二次会もといサプライズパーティー会場に向かうべく、俺と海未さんは喫茶店勿忘草を出ていったのだった。

 

 

「なぁマスター」

「ふふふ、なんでしょう」

「あれさぁ、なんていうかさ」

「わかっていますよ」

「「カップル」」

「ですよね」

「その通りです」

 




ははは、茶番最高!
海未たそも作者は好きだよ!
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