スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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第28話 Second wave 〜恐れを添えて〜 Bパート

 〜志葉家 屋敷〜

 

 竹刀の素振り稽古をしながら、小狼(シャオラン)は呟いた。

 

 「これで……良かったんでしょうか?」

 

 政府づてに、今回の戦いに関しての通知があったのだ。

 黒鋼も、素振りをしながら答える。

 

 「良いも悪いも、俺達がどうこうできる問題じゃねえだろうが」

 

 前回のアンノウンとの応戦は仕方ないが、それ以上の行動はしないようにと。敵の懐まで打って出るというのはやめようという話だった。

 ニンニンジャー達にも似たり寄ったりの話が来ているだろう。

 

 「サクラちゃんの羽根とは関係なさそうだし、オレ達があれ以上関わる理由もないしね〜これからの状況次第ってやつかも?」

 

 「でもさ……襲ってきた敵の正体を探る事もしねえなんて、拍子抜けだよな」

 

 「モコナ達の話だと、トランスフォーマーっぽい感じだったね」

 

 「あいつらか、ホットショットどうしてっかな」

 

 千明達も話に入る。

 ホットショットは、ダイテンクウの件で千明の相談に乗った事があるのだ。

 

 「トランスフォーマー……あの御方達の事も、気になるな」

 

 稽古の休憩中だった流ノ介も、ポツリと呟く。

 

 「あの御方達?」

 

 茉子は怪訝そうな表情を浮かべつつも流ノ介を見る。

 

 「アイアンハイド殿とショックウェーブ殿だ、以前会った事があるだろう」

 

 初陣時、怪獣と戦った時、舵木折神の件と色々あった……(この世界では)ショックウェーブとシンケンオーの合体した姿を基にテンクウシンケンオーが産まれている。

 

 「あいつらか……」

 

 「流ノ介の好きな(やつ)()よね」

 

 「え……流さん、トランスフォーマー好きやったん?」

 

 ことはからの質問に、流ノ介は照れるでもなく意気揚々と答えた。

 

 「ああ、少し行動を共にしていて感じるものがあった。いかに彼らが忠義に篤き方々であったか……彼らを見ているとこう……自分ももっと頑張らねば!!と思うのだ」

 

 流ノ介は燃えていた。

 モヂカラは水だが、燃えていた。

 

 「流ノ介、お前の言う忠義でそいつらが敵になったら……戦えるか?」

 

 「く、黒鋼殿……痛い所を突きますね……ですが、それ程のお覚悟と認めてこちらも相対せねば、そうでなければ向こうにも失礼というもの」

 

 「そうか」

 

 「丈瑠は、この話についてどう思う?」

 

 茉子は汗を拭いている丈瑠に聞いた。

 

 「……こういう話題ですぐに首を突っ込みたがる奴がいるな」

 

 誰の事かは言わないが、皆すぐに思い当たる人間の顔を思い浮かべる。

 

 「あ〜っ…………」

 

 侍ではない、なので戦う宿命に身を置く必要はないが、それでも戦おうとする奴……

 

 〜ストレイジ 基地内部〜

 

 ユカはテーブルに顔を埋めながら拗ねていた。

 

 「あ〜あのロボ解剖したかった……」

 

 そんなユカに、ヘビクラは水入りのコップを持ってきた。

 

 「まあ、跡形もなく壊れりゃ仕方ねえわな。ほい」

 

 「ありがとうございます、隊長……」

 

 デビルークのロボと忍者達、トランスフォーマー達の援軍で敵を一掃する事には成功した……が、倒した敵の全機とも爆破で残骸すら残らなかった。回収して研究するのも難しい。

 

 「あ〜次があったら絶対体ボディー残すよう呼びかけてやるんだから〜」

 

 ユカはテーブルに座っている状態で地団駄を踏んだ。

 

 「エネルゴンをエネルギーにする件は没になったし、次は来ねえだろって見立てらしいが……」

 

 「そうなんですよ……すっげえチャンス逃しちゃった……って気分です、あ〜どこかからあいつら生えてこないかな〜」

 

 ユカの言葉にヘビクラは苦笑いを浮かべた。

 

 〜ルナティーク号 内部〜

 

 ガーランドは、ルナティーク号のモニターを操作していた。

 

 「ガーランド、何してるの?」

 

 アンは何をしているのか、ガーランドに問う。

 航行中にガーランドが何かしなければならない操作はない。

 

 「いや~暇だから、芽亜おばさんの案でカイの見てる映像みんなで見てみようって話になってな」

 

 「やめてあげて……って言ったんだけど……」

 

 「イチゴのプライバシー侵害」

 

 「別にイチゴが中で何をやろうとしてるか見てる訳じゃないから良いだろ?」

 

 「………ちゃんと許可は取ってるんですか?」

 

 「一応カイに聞いてみた、なんか今すぐ見てくれって感じにノータイムで承認来たから大丈夫だとは思うが……」

 

 「…………ダメでも見る気だったんですね?」

 

 ガーランドはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 「全く……」

 

 「この調子なら、止めても間に合っちゃうね」

 

 ガーランドのパネルを動かすスピードを見て、芽亜は言った。

 

 「できたぜ」

 

 ガーランドは仕上げのボタンを押す。

 

 「ワクワクするね」

 

 「うん!!」

 

 やがてモニターの一部に、カイの見ているものが映りだす………

 

 「!!」

 

 街一つない森の中……それはいい、道中にはそんな所もあるだろう……

 特異なのは、立ち塞がる形で目の前に黒い犬型のメカがいる事だ。

 それはすぐに変形し、二足歩行のロボになった。

 

 「何……これ?」

 

 「あっはっは、何あれ変形ロボじゃん。素敵!!」

 

 「見た事ないやつ!?」

 

 「サイズ感はトランスフォーマーじゃなさそう」

 

 周辺の木々を参考にすれば20m程の大きさだった。

 トランスフォーマーは、基のビークル次第だが10m前後だった筈だ。

 

 「あれは多分、以前報告にあったクコチヒコってやつだな」

 

 「妖怪っていう……あれ?」

 

 そう言い合っている間に……ついてこうとすると思わず吐き気を催すような高速移動で戦っている。

 

 「これって話の流れだとカイが困ってるって事だよね……」

 

 「ガーランドは別画面で発信位置の特定。ルナティーク号は示された場所まで飛んでください」

 

 「了解」

 

 〜某山 山中〜

 

 イチゴと謎の少年は、出会い頭に刃を交わす。

 

 「はぁ!!」

 

 「せいやぁ!!」

 

 向こうがどうかは知らないが、イチゴは少年に対してこう思っていた。

 否定……嫌悪……

 

 「こいつだけは、認めちゃいけない」

 

 そういう感情で、体中が埋め尽くされていく。

 カイから咎められる。

 

 『なんでそう血の気が多い振る舞いをするんですか?私はあいつに聞きたい事があるのですが』

 

 『武器を納め、情報を共有するのが先ではないのか?我もあやつに聞くべき事があるのだが……』

 

 「カイ、そんなの」

 

 「その事なんだけどさ……」

 

 イチゴがカイに持たせた万能工具(ツール)とクコチヒコの槍が交差し、火花が散る。

 

 「「こうしながらでもできるだろ!!」」

 

 見た目が一緒だけならまだしも、言っている言葉まで一緒……カイ達はどちらかが示し合わせる事もなく説得を諦め、各々で問いかける事にした。

 

 『仕方ないですね、あなたは……イチゴ様の何なんですか!?何故、あなたを私のセンサーは、イチゴ様と認識するのですか?』

 

 イチゴはカイの張り手でクコチヒコに攻撃する。

 

 「ちょっと自我強すぎじゃない?"そういうもんだ"ってあるがままを受け入れるってのも大事だと思うけどね」

 

 『?』

 

 クコチヒコは跳躍後、かかと落としを繰り出す。

 

 『次は我の番か、妖巫女……すずに子供はいるのか?』

 

 カイは両手を×の字に組んで防御する。

 イチゴはすずが連れてた2人の子供を思い浮かべて言った。

 

 「いるよ……女の子と男の子」

 

 そのまま組んだ両手を回し、カイはクコチヒコを放り出す。

 

 『!!年は幾つだ?』

 

 着地したクコチヒコは時計回りに走り始める。

 

 「女の子が小学生で、男の子は園児……あ……両方5〜6歳ぐらいって考えとけばいいよ」

 

 妙に子供の話題にくらいつく……と思いながらイチゴは答えた、だがしかし、小学生などの言葉が元々弥生時代の人間だったものに通じる筈もないと思い直し、訂正する。

 

 『………………そうか、運命は避けられんか』

 

 クコチヒコは速度を緩めつつも、カイから足を遠のかせる。

 

 「?」

 

 クコチヒコが、何を言っているのか分からなかった……

 

 「そんなので良かったらオレが言ったよ」

 

 『貴様よりはあやつの方が信に値するのでな』

 

 「…………ええ……」

 

 イチゴは、風圧がクコチヒコに当たるようカイの翼を高速で動かしてもらった。

 

 「なんでそんな事聞くの?そういえばあんた、すずさんを喰おうとしてたけど……」

 

 クコチヒコは、すずと接触してから食物的な意味で喰おうとしていた。

 

 『ああ』

 

 クコチヒコは諦め気味に声を落としながら、槍を回し風を中和する。

 

 「……どうしてそんな事を?それまでは友好的だったって」

 

 イチゴはたまらず、聞いてみた。

 

 『一つ問おう……貴様にとって王とはなんだ?』

 

 クコチヒコからの返答は、ただ質問で返されるのみ。

 

 「は?」

 

 『神とは?太陽とは?』

 

 クコチヒコは振り回した槍を順手に持ち、突きを連続で繰り出す。

 

 「答えになってないだろ!!」

 

 イチゴはカイが後ろに下がる事で避けようとすると思ったので、手動で見切りつつ動くよう促す。

 

 『必要な問いだ、己が身の答えを示せ』

 

 カイは体を反らして攻撃を避けつつ、万能工具(ツール)で切り払う。

 音の響く間に、考えを練り、言った。

 

 「………民を導き、支え、恵みを与えるもの……それらは断じて、苦しめたり不安を与えるものであってはならない」

 

 そう言うと……わざとらしく拍手の音が聞こえてきた。クコチヒコの動きではないのが、腹が立ってきそうだった。

 

 『ふむ……では、その機能さえ果たせるなら(・・・・・・・・・・・・)同一でなくとも構わん(・・・・・・・・・・)か?』

 

 「!?」

 

 向こうが何を言いたいのか、理解が追いつかなかった。

 

 「それは……」

 

 『身近なものではないのだぞ?人の上に立つものなど人の多い今の時代では雲の上の存在でしかなかろう』

 

 「オレの父さんは王様だよ」

 

 イチゴがそう言った途端、クコチヒコは驚く。

 

 『そうか!?それは……すまなんだ……おい……あやつまさか、(しょう)(ふく)ですらないのか?尊敬の念が何一つ籠もってないぞ(小声)』

 

 「まあ、だからこそっていうか……あはは(小声)」

 

 謝罪の後、小声でボソボソ何を言ってるのか分からなくなったがイチゴは続けた。

 

 「そうでなくたって……人には愛着ってものがある。同一である必要は無くても、あって欲しいものだと思うよ」

 

 『愛着……か………』

 

 クコチヒコは笑みを浮かべた……ロボのフェイスで浮かべられると、こっちもニヤリときそうだ。

 

 「あんたはどうなの?元々人間だったんでしょ?」

 

 『無いとは言わん、だが全て……過ぎ去ったものを偲ぶものでしかない。仕えるべき王への敬意も、死線をくぐり抜けて育んだ臣下との信頼も、読み進めた書物も』

 

 かつて垣間見たある巫女への慕情も

 

 『全て、この1800年で形あるものは何も残っておらんわ!!死せる我が身に宿るもののみでは泡沫に等しい』

 

 クコチヒコは手に持つ槍を投げてきた。

 

 「!!そんな……」

 

 カイは飛び上がり、翼を動かして左右に高速移動して避ける。

 

 『気に病む必要はない、流転とはそういうものだ。過去から未来へ繋いでいくとは、そういうものなのだ……』

 

 クコチヒコは槍を拾いに行く。

 

 「……………」

 

 『覚えておけ、その時はいずれ来る』

 

 「その時?」

 

 『そうだ、例えば妖み……』

 

 クコチヒコが何か言おうとしている時、空から人が降ってきた。

 

 『よーし、来ましたね』

 

 時は遡る……

 

 〜ルナティーク号 内部〜

 

 ヤミは、外に出る準備をしていた。

 

 「イチゴの所に行くの?」

 

 芽亜は聞いてきた。

 

 「これのテストもしておかなきゃですしね、みんなを頼みます」

 

 ヤミは一つスプレー缶をバッグに詰めていた。

 

 「カイがあるし、放っといてもいいと思うけどね〜」

 

 「そういう訳にもいかないでしょう……」

 

 「ヤミお姉ちゃんったら、甘いんだから〜」

 

 「なんとでも言ってください」

 

 ヤミは部屋を移動した。

 

 「じゃあ、イヴ……行ってらっしゃい」

 

 「ええ……行ってきます」

 

 「気を付けて行ってくれよ」

 

 「ママなら勝てると思うけど」

 

 『無事に帰ってきてくれよ、マスター』

 

 ヤミはルナティーク号から飛び降りた。

 

 〜某山 山中〜

 

 「!?」

 

 ヤミが上空から現れた。

 

 「助けに来ましたよ、イチゴ」

 

 彼女は能力で天使のような翼を生やし、飛んでいる。変身(トランス)能力(のうりょく)という、体をつくりを自由に変えられる能力らしい。

 

 「敵の位置を教えてください」

 

 「え?あ……あっち」

 

 (あやかし)をヤミがまともに見る事はできない、筈……とりあえず、イチゴはクコチヒコのいる位置をカイに指差してもらう。

 

 「カイで10歩ぐらい?」

 

 『今、少し右にズレています』

 

 「十分です」

 

 ヤミは指定した場所に近づくと懐からスプレー缶を取り出し、噴射する。

 

 『む?』

 

 クコチヒコは煙たがるように噴射されたものを払いのけようとする。

 

 「そこです!!」

 

 ヤミは髪の一部を刃物に変形させ、すかさずクコチヒコの左腕を斬り裂く。

 

 「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

 斬り裂いた直後、ヤミは変身を解除し、地面に着地する。

 中にいた少年はクコチヒコから弾き出され、転んでダメージを負う。

 

 「おばさん、あれが見えるの?」

 

 見えてなければああはできないといえるような素晴らしい間合い、タイミングだった。

 

 「ええ。王妃が試作した『みえみえスプレーくん』が役に立ちました」

 

 自分達には視えないが、カイのモニターにははっきりくっきり映っていた存在達……イチゴが襲われた点から今後の事を考えて、彼らに接触できるようにしたい。だが、どうするか?視えていないものは存在していないものと同義、いると仮定できるようになったところで急に視えるようになれる訳ではない。そもそも直接視えた試しがない。

 そういう存在に似たような、目に見えないエネルギーがあるのでは?と、地球の本には書いてあったが……未だ解明はされてない。

 なのでララは、見えるように付着物を被せてどうにかできないか考えた。存在しているのなら、こちら側の見えている物質で作った粒子を吹きかければ反応がある筈だ……と。

 

 「それで試しに作ったようです」

 

 前段階で身近な幽霊であるお静にその粒子を浴びてもらったところ、幽霊時の姿がくっきり見えるようになった……ただし服は髪飾り以外全て消えたが。

 

 「ええ……(困惑)」

 

 『あれにはそういう変化はないみたいですね』

 

 「あれが裸みたいなものと思えば違和感はないよね」

 

 「中身には関係ないようですが」

 

 「とっかかりさえあればその領域を暴ける、流石ララ様……といった所か。なんと可憐でいて……恐ろしい御方だ」

 

 などと言いつつ、少年は立ち上がる。

 少年のイチゴと似た顔を見て、ヤミは息を呑む。

 

 「イチゴがもう1人……という話は本当のようですね」

 

 さっき会った時の服装と違う点から、ほぼ別人とは思うが……カイのデータから、身長、顔、声まで一緒という……ただの他人の空似とは片付けられない、話を聞いてみたい。

 

 「だが、金色の闇……一つ誤算がある」

 

 しかし金色の闇という言葉を投げかけられた瞬間、即座にヤミは自分の髪を拳に変化させた。イチゴがヤミを呼ぶ時は「お姉ちゃん」か最近だと「おばさん」だった、どんなにグレようが……殺し屋時代の呼び名で呼ぶ事はなかったのだ。「おばさん」と呼ぶ方が王妃の作ったロボットに乗っている以上、どう転ぼうと向こうは倒すべき相手になる。

 

 「(あやかし)は認識されればされる程強くなるんだ。想像が作り上げた怪物だから、それを考えてくれる人の数だけより強固な存在になれる」

 

 「裏を返せば、実在しないという意見が大多数の昨今では全体的に弱く儚い……という訳ですかね。私や家族がそれらを認識したところで数人分の力しか集まりませんよ?」

 

 少年は、さらに口角を上げて笑う。

 

 「人間に干渉されたクコチヒコは……今、人の世界に踏み込んだ(・・・・・・・・・・)。くっつけ!!」

 

 「応!!」

 

 クコチヒコの腕がひとりでに浮いて動き、斬られた箇所に元通りくっついた。

 

 「!!」

 

 クコチヒコの装甲値、運動性、照準値が上昇。

 

 「よ〜し」

 

 少年は、再びクコチヒコに搭乗する。

 

 「イチゴと言ったな……すまんが、此奴が我を必要としたように、我にも此奴が必要なのでな……我は生きねばならん。来たるべきその時の、その先まで」

 

 クコチヒコは槍を構える。

 

 「オレはどうしようか?」

 

 「見ているだけで良い、どこまでできるか試しておきたい」

 

 「イチゴ、下がってて構いませんよ」

 

 ヤミは、自分の髪を変形させたまま前に出た。

 

 『ヤミ様のお言葉に甘え下がりましょう、イチゴ様』

 

 「オレにそっくりなやつが中にいるんだ……オレがなんとかしなきゃ」

 

 イチゴもカイを動かし、前に出た。

 

 「仕方ありませんね、ただし……危なくないようにしてください」

 

 「うん」

 

 「いくぞ!!」

 

 クコチヒコが駆け出す。

 さっき一対一で戦った時より早くなっている。

 

 「さっきより速い!?」

 

 「ハァッ!!」

 

 クコチヒコは、何かを投げ込んできた。

 

 「私が行きます」

 

 ヤミは髪を変身させた拳で握り潰して対処する。

 そのまま握り潰したものを落とした。

 それは爪だった。

 

 「はあ!!」

 

 クコチヒコは槍を片手に、突きを繰り出してきた。

 

 「させません」

 

 ヤミは両腕、髪を刃に変形させ、防御に入る。

 刃が擦れ合うような金属音が響く。

 

 「そこです!!」

 

 ヤミは髪の刃でクコチヒコの腕に攻撃する。

 だが、両断とはいかなかった。

 

 「さっきより、硬い!?」

 

 「確かに、今までとは桁違いの力を感じる……これが、世界に受け入れられるという事か」

 

 「おばさん」

 

 ヤミはカイの近くに戻ってきた。

 

 「イチゴ、カイの手を前にお願いします」

 

 「うん」

 

 『こうですか?』

 

 カイは手を前に出した。

 

 「充分です」

 

 カイの手を台にし、ヤミは飛び上がった。

 そのまま足を突出し、勢いのままクコチヒコの顔に一撃加える。

 

 「くっ!?」

 

 「畳み掛けます!!」

 

 ヤミは髪を拳に変え、ラッシュを繰り出して追撃する。

 

 「うおおおおお!!」

 

 クコチヒコは顔を殴られた影響で見えて居ないのか、強引に手で払いのけようとする。

 ヤミは宙返りをして避けた。

 

 「仕方ない……」

 

 クコチヒコは槍を構える。

 

 「この感じ……何か来る?気を付けて、おばさん」

 

 「闇矢槍・影撃ち」

 

 クコチヒコの槍が、姿を消す。

 

 「消えた?」

 

 「そこだ」

 

 見えない斬撃が、空気を斬り裂いた。

 

 「!?」

 

 『ええっ!?』

 

 ヤミの衣服の、胸の金具より下の部分に切れ目が入る。

 衝撃で変身が解け、翼を失ったヤミは地面に落下した。

 

 「なんて早業なんだ!!」

 

 『私にも見えませんでした……』

 

 「退くが良い、こちらとて好き好んで女子(おなご)の衣を裂く趣味なぞないのでな……」

 

 ヤミは、胸の部分を押さえて言う。

 

 「この程度……辱めの内には入りません」

 

 「おばさん……」

 

 イチゴは、ヤミが今以上に服をやられ、舐め回された事があったという昔話を思い出した。

 

 「ならば、少しばかり肉をいただくぞ」

 

 クコチヒコはもう一度槍を構える。

 

 「くっ!?」

 

 「させるか!!」

 

 イチゴの乗るカイは、前に出た。

 

 「イチゴ!?」

 

 『ヤミ様にも、手出しはさせません』

 

 「貴様には耐えられるか?」

 

 クコチヒコは、人間相手でない分遠慮なしと言わんばかりの鋭い突きを連続で繰り出してきた。

 それはカイの腕の部分で受ける。

 

 「闇矢槍・影撃ち」

 

 そしてクコチヒコは、ヤミを狙った攻撃と同じものを繰り出す。

 カイの腹に、火花が散る。

 

 『くっ!?』

 

 「カイ、怪我は?」

 

 『大丈夫です』

 

 『おい、聞こえてるか?イチゴ』

 

 カイと話していると、ガーランドがカイの通信画面に割り込んでくる。

 

 「兄さん、今忙しい」

 

 『そう言うな、こいつを見ろ』

 

 2回攻撃されたデータを編集したものだった。

 

 『ママとカイの影、よく見てみな』

 

 ガーランドが、見てくれと言わんばかりに一部部をクローズアップする。

 

 「あ」

 

 ヤミとカイの影の部分が、槍の形をした影に貫かれている。

 

 「射抜いたのは、影って事か……」

 

 『だいたい分かりました』

 

 「……これって、おばさんに言えば良かったんじゃない?」

 

 『ママは今シームレスに通信できるとは思えねえからな……そういう余裕があるのはながら運転でもサポートしてくれるようなもんに乗ってる俺達とイチゴだけだ』

 

 「そう……」

 

 『俺達がいるからってあぐらかいてんじゃねえぜ?』

 

 ルナティーク号の人格部分も話に入ってきた。

 

 『分かってるさ』

 

 「話は終わったか?」

 

 クコチヒコは同じ攻撃を繰り出す。

 

 「ここだ!!」

 

 『はい!!』

 

 カイはウルトラマンが地球を飛び去るように勢いよく空を飛ぶ。

 

 「!?」

 

 そのままカイは急降下、クコチヒコの犬の顔のある部分より下の腹の部分を蹴る。

 クコチヒコが一歩引いた事により、間が開いた。

 

 「カァー!!」

 

 クコチヒコは、胸にある犬型のフェイス部分から咆哮を放つ。

 

 「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 イチゴは万能工具(ツール)を縦に振り下ろし、咆哮を割って威力を削いだ。

 

 「何!?」

 

 「イチゴ……」

 

 ヤミは思った。

 カイ由来なのか、イチゴ由来なのか……それはともかく……地球人としては過剰な程、力が強まっている。一ヶ月より少し前……彩南高校の卒業式の日に会った時にこれほどのものは感じられなかった。

 

 「苦戦してるね」

 

 「貴様……あやつはともかく……女子の方がどれだけ強いか知ってて黙っておったな」

 

 「口で言うより早いでしょ?あの女性は金色の闇っていって、デビルーク王室の楽園(ハーレム)入りした凄腕の殺し屋だよ」

 

 「何ぃ!?あの女子、暗殺者だというのか!!」

 

 「昔の話です」

 

 「して、どう対応する?……その態度だ、手はあるのだろう」

 

 「どうだかね……まあ、オレがなんとかしよう」

 

 「頼む」

 

 その瞬間、クコチヒコの体勢が変わった。

 

 「はああああああああ」

 

 少年の呼吸と共に、クコチヒコを中心に円形の黒い影が構築されていく。

 ヤミ、そしてイチゴの乗るカイがその範囲内に入った。

 イチゴを除き、何か違和感を感じ始める。

 それらはすぐに何かが起こるという予感に変じる……

 

 『こ……これは?』

 

 「何が起こるんです?」

 

 「?」

 

 やがてイチゴも、一際大きな脈動の動きを感じ始めた。

 

 『マスター!!』

 

 ルナティーク号がその範囲内に割り込みだす。

 

 「ルナティーク号、離れてください」

 

 「遅いよ、(まが)()()(しん)(えん)

 

 周囲の恐れを汲み取り、それらを映して顕現させる妖術。範囲はある程度自由、脳内だろうと、外界だろうと……本人の妖力が保つ限り。

 その対象は……

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