スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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皆さん、こんにちはもしくはこんばんは……
あのトゲトゲ星人のトゲトゲ星人である姿が本編より早めに登場しちゃったりするでございますです。


第10話 悪口はヤメテ Aパート

 夕方……みんな仕事から帰る頃になってきた。

 イチゴは小狼(シャオラン)達の羽根探しを手伝うためにいる。ついでに今買い物に行っている。もう少し早く行っておけばこんな絶対混む時間帯で買わなくて良かったと後悔しているのは内緒。

 当番として選ばれた屋敷の備蓄の買い出し。

 特に志葉家の献立は和食が多いから、醤油、みりん、豆腐、塩、砂糖、etc...後どんなものにも言えるが肉や野菜とか生物は新鮮な方が良い。

 それと今週屋敷内の小麦粉の消費量が妙に多い。

 

 「(うーん、どういう事?)」

 

 調理道具を見ても、小麦粉を使用して何かを作った形跡はなし。

 そんなに小麦粉を使用する献立も無かったように思うのだが……

 目くじらを立てるべきではない……が、目についた以上気になって仕方がない。

 後で分かった話だが、使用者は…………ことはだった。用途が特殊すぎて、地球、デビルーク含め共に都会育ちのイチゴには分からない使い方で……小麦粉は料理に使うものであると見ているイチゴには無い発想だった。

 

 ~時は遡る~

 

 まず最初に稽古があった。侍の日課の内でありその日は千明とことはが竹刀で打ち合う。………彦馬達もお褒めの言葉を出すほどことはの方が腕が良く、千明は少し痛む程度だが怪我をした。稽古で体が痛む千明の体に、ことはは湿布を貼ろうと言い出してきた。

 救急箱にある物でも貼ってくれるのかなと軽い気持ちで承諾してみると……

 

 「千明、 お ま た せ」

 

 ことはは、小麦粉を溶いてラップに詰め、湿布のようなものを作り上げてやってきた。

 

 「ファッ」

 

 千明は驚いた、予想外のものが出てきたからだ。

 冷たいのは冷たいのかもしれない、だが………効くのだろうか?眉唾物である。

 そんなこんなで千明に貼ろうとしたその時………

 

 「きゃ」

 

 転んで自分の顔面をビチョビチョに小麦塗れにしてしまった。

 

 「ほんまあほやなぁ、うち」

 

 千明は、少々苛立った。

 そこは笑える所じゃない、現にことは以外は誰も笑っていなかった。

 イチゴは、その日は勤務日では無かったのでその現場を見る事は無かった。

 話は戻るが、和食と言えば客人扱いの小狼(シャオラン)一行のうち、ファイは住んでいた文化圏が箸を持つ所ではないようで、箸を持ってもらった時、箸を2つ重ねて突き刺すものであるかのように扱っていた。

 ここは彼のためにシチューの材料でも買っておくか?スプーンで食べるもの……洋食的なものを久しぶりに作る口実にできるかもしれない……煮物で充分と言われるかもしれないが……また今度献立を決める時期で良さそうだ。彦馬に進言するのは骨が折れそうだが………

 

 「(黒子をヘルプで呼ぶ方が良いかな……)」

 

 思ったより買いすぎた、重い。

 

 「(グググググ……)」

 

 小狼(シャオラン)達はまだだろうか?

 近くの文化館に突撃して一時間は経つ。

 展示物を見て回ってるのだろうか?

 彼らの付き添いも仕事であるのだ、一応、待たなければ……

 そうこうしていると、男と頭巾越しに目が合った。

 その男はストレイジの隊服を着ている。ハルキより若干年を重ねているように見えるがそれだけではない、見た目の年齢以上に雰囲気が、経験豊富な何かを漂わせていた。

 多分、相当な修羅場をくぐり抜けている……

 

 「黒子……大変そうですね」

 

 話しかけられたのでイチゴは男に会釈した。

 左胸のポケットの刺繍には「HEBIKURA」と表記されていたのでヘビクラと読む事にする。

 ヘビクラは今帰りだろうか?

 彼らにも、そういう時間があるんだなと、人間的な親しみを感じる。まあイチゴも黒子なので、似たようなものだが。

 その時、隙間から赤く光が差し込む。

 外道衆が出てくる兆候だ、ほら………出てきた。

 

 「……………」

 

 意匠としては黄色いキノコか、はたまた黄色いタヌキか?確かなのは緑の目と、それと同じ色、形の玉を体中にちりばめているという所。そして千○パズルの目玉のような、大きく開いた眼球の形を持つベルトが印象的だった。だからか、多数の目玉がそこにあるよう思わせる。そんなに目玉を引っさげて、いったい何を見るのだろう?いったい、何をその目で射抜くのだろう?

 思索にふけっていると、ヘビクラが前に出てきた。

 

 「人を守るのも仕事の内なんでな……お前は逃げろ、そして侍でも呼んでこい」

 

 そして、携帯していた拳銃を構えた。

 

 「あいにくこれしかねえが」

 

 対怪獣を想定していたなら、ハルキ達のようにジャケットとヘルメット、そしてライフルを装着していたのだろう。

 男は拳銃を持って、外道衆と相対する。

 

 「それは光の戦士の戦い方じゃない」

 

 「!!」

 

 ヘビクラはその言葉で吹っ飛んでいった。

 今回の外道衆は、言葉で人を吹っ飛ばせるのだろうか?

 

 「………………………!!(こっち!!)」

 

 避難誘導をしようと、黒髪の女子高生に近づいてジェスチャーを仕掛けた……その時

 

 「ぼっち」

 

 「キャー!!」

 

 女子高生は飛ばされていった。

 これでは逃げてもらっても、何かを言われた途端、意味が無くなる。

 

 「!?」

 

 『ラジャー!!』

 

 イチゴは、最近出番が無いので首飾りに変わってもらっていたカイを起動し、救出しに行ってもらった。ヘビクラは少々間に合いそうにないので、防衛軍の隊員の身体能力に賭けるしかない。

 

 『キャッチしました、寝かせます』

 

 「(でかした!!)」

 

 白髪混じりのおじいさんも

 

 「整理整頓!!」

 

 「イヤー!!」

 

 帽子を被った一般人も

 

 「お気に入り0」

 

 「アー!!」

 

 スーツを着たおじさんも

 

 「浮気者!!」

 

 「キャー!!」

 

 イチゴを除いて、その場にいる全員が吹っ飛ばされた。それは幸か不幸か、分析する時間と試行回数を与えてくれた。

 奴は、おそらく人の言われたくない言葉、言われれば傷つくであろう言葉を用いて、相手を吹っ飛ばしている。俗に言うチクチク言葉というものを、相手にぶつけているのだ。

 無論、それが判明した所で、いずれイチゴが狙われる事に変わりない。丈瑠達が来るまで待てるだろうか?

 

 「次はおまんだ」

 

 その時は早く来た。

 幸い、人はいない。だが、今背を向けて逃げれば攻撃される危険性はある。

 

 「………………………」

 

 丈瑠にまた怒られる可能性はあるが仕方ない。

 イチゴは手を前に出して構える。戦えはしないが時間稼ぎができれば、御の字といった所か……

 

 「あんた、何者?」

 

 言葉で能動的に人を傷つける奴が、言葉を無視できる筈はない。思った通りすぐに言葉が返ってきた。

 

 「わしの名前はズボシメシ」

 

 「そう……」

 

 「おまんはそうだな…………」

 

 今日のアヤカシはイチゴに向けて、ある言葉を言い放つ。

 何が来るかの予想はしていた……が、回避は不可能。その一言で、世界が真っ白に変わっていくような衝撃を受けた。

 

 「ああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 自身の叫び声以外は、静寂しか耳に聞こえないような、重苦しさも感じる。

 

 「うぷ……」

 

 イチゴは派手に吹っ飛んだ、そして地面に着地した途端、口から嘔吐する。それが黒子の頭巾に付着し、気持ち悪い感触と臭いが付いた。

 

 「ああ……」

 

 やっと、静寂は消えた、強烈な不快感を残して……

 視界がぼやけている中、イチゴに近づいてくる誰かが見えた。

 ヘビクラだ、特徴的なネズミ色の隊服は、多少ぼんやりしていても分かる。だが少し、さっき見た時より右側の髪が垂れている気がした。

 

 「おい」

 

 「吐いたものが頭巾に付いてるぞ」

 

 ヘビクラは、緊急事態という事もあって、強引にイチゴの頭巾を引っ剥がした。

 

 「あーあ、こりゃあダメだな……もう今日はこれ着けて黒子できねえ」

 

 「1人ものすごいのがいたな、いいぞ、三途の川の足しになるかもだ」

 

 「つか、お前……さっき吹っ飛ぶ前に言われてた言葉……」

 

 聞かれていた!!

 ヘビクラと、ズボシメシの視線をより重たく感じ、いたたまれなさも沸き起こってくる。

 限界を感じ、イチゴは気絶。

 

 「マジかよ……」

 

 ヘビクラは、深めのため息を吐く。

 思ったより、面倒事を抱え込んでいる奴が目の前にいたからだ。

 それからやっと丈瑠達がやってきて、ヘビクラに下がるように言う。

 

 「下がっててください」

 

 ~例のBGM~

 

 「ショドウフォン!!」

 

 「「「「「一筆奏上!!」」」」」

 

 「破ぁ!!」

 

 ショドウフォンで文字を書きそれを反転させ、各々のモヂカラによって形成させたスーツに身を包み、5人はシンケンジャーとなる。

 

 「シンケンレッド、志葉丈瑠」

 

 「同じくブルー、池波流ノ介」

 

 「同じくピンク、白石茉子」

 

 「同じくグリーン、谷千明」

 

 「同じくイエロー、花織ことは」

 

 「天下御免の侍戦隊」

 

 全員「シンケンジャー、参る!!」

 

 「ちょっと待ってください」

 

 ヘビクラはシンケンジャーに留まるよう促した。伝えきっていない事があるからだ。

 

 「あの怪人は、人の心の傷を言葉で抉ってきます。そのショックを物理エネルギーに変えて人を吹き飛ばすようです」

 

 そう言い残して、ヘビクラはその場を去る。

 

 「忠告、感謝する…………てっおい、イチゴ!!」

 

 イチゴは、苦しそうに倒れている。下手をすれば泡を吹きそうな程だった。

 

 「イチゴ、やられてんぞ」

 

 「大丈夫か?イチゴ君」

 

 「そのために早く倒さないと」

 

 五人は、シンケンマルを構えた。

 

 「おい、あいつ……」

 

 小狼(シャオラン)達は、文化館から出てきた……すぐ、そこが戦いの現場になっていた事に気づき、驚いた。

 

 「おれ達も協力して倒しましょう」

 

 「オッケー」

 

 「いけいけゴーゴー」

 

 「頑張って……」

 

 「お前達……言っても無駄か……」

 

 丈瑠は小狼(シャオラン)達に敵の能力を説明した。

 

 「はん、言葉だけで人を吹っ飛ばすとか、さすがにデタラメだろ」

 

 黒鋼は、すぐには信じなかった。

 

 「デタラメではない、自分の心で確かめてみろ」

 

 茉子

 

 「一生独身」

 

 「キャー」

 

 千明

 

 「落ちこぼれ」

 

 「ウワー!!」

 

 丈瑠

 

 「嘘つき、大嘘つき」

 

 「ぐはぁ!!」

 

 流ノ介

 

 「ファザコン」

 

 「グワー!!」

 

 全員瞬く間に、吹っ飛ばされていった。

 

 黒鋼

 

 「マジか………」

 

 黒鋼は実際に言葉で吹っ飛ぶ事に驚きつつも、蒼氷(そうひ)を手に取り、ズボシメシに向かう。

 

 「ロリコン」

 

 「うっ」

 

 一言で黒鋼も吹っ飛ばされる。

 

 「黒鋼さんまで!?」

 

 小狼(シャオラン)は、パニックになりつつ、自らもズボシメシに向かう。

 

 「身分違いの恋」

 

 小狼(シャオラン)もやはり、ズボシメシから、キツい一言を言われた。

 

 「うわぁ」

 

 あまりの衝撃に小狼(シャオラン)も吹っ飛ぶ。

 

 「小狼(シャオラン)くーん!!」

 

 サクラは手を伸ばすも、もう既に届かない距離にあり、彼の手を掴めずにいた。

 

 「やめてください、こんなこと」

 

 無駄とは思うが、サクラは説得を試みた。

 

 「何故止める?わしは言葉を発しているだけだ、勝手に傷つく奴らが悪いだけの事。おまんも言っておこうか」

 

 ズボシメシはサクラに目を付ける。

 

 「サクラー!!」

 

 助けに行きたい、でも、小狼(シャオラン)自身が今まさに遠くまで飛ばされているのだ。はっきり言って、どうしようもない。一刻も早く、飛ばされたサクラを救出する方向で行くのが肝要か。

 

 「こいつ、心に穴ぼこが開いてて読みにくい……後だ後」

 

 今まで、小狼(シャオラン)達が旅をしてきたおかげで大分良くなったが、サクラは記憶を無くしている。しかも、その記憶は心を形成している分の記憶………複雑だが、今回はそれで助かった。小狼(シャオラン)はホッとして、飛ばされた。

 

 「みんな、しっかりせんとあかん…………残ったのはうちだけや、頑張らんと」

 

 「おまんもくらえー」

 

 ズボシメシは、ことはにも口撃を入れようとする。

 

 「おい、やべえって、ことは」

 

 千明はそう勧告するが、ことははそれはしなかった。すぐさまズボシメシの、口撃が始まる。

 

 「ドジ」

 

 ことは、歩みを止めず。

 

 「アホ」

 

 尚、歩みを止めず。

 

 「バカ」

 

 むしろ勢いを増し

 

 「マヌケ」

 

 ズボシメシへと狙いを定める。

 

 「どんくさ女」

 

 連続で受けても、ことはは怯まない、動じない。

 

 「ランドスライサー!!」

 

 そして、シンケンマルを専用武器に替え、ズボシメシに一発、攻撃を当てた。

 

 「クッソー………誰かいないか」

 

 ズボシメシはことはを吹っ飛ばす事を諦め、別の誰かに悪口を言って吹っ飛ばして気を落ち着かせる事にした。

 サクラは時間がかかるので無視。

 モコナは体型が小動物に近い、小動物は吹っ飛ばしても面白くないので無視。

 そこで運悪く通りすがった通行人を狙う事にした。

 

 「そんな……」

 

 「まあまあ、ここはオレに任せといてよ」

 

 そこに颯爽と前に出てきたのはファイ

 

 「ファイさん…………いないと思ったらいつの間に………」

 

 「危険だ、止せ!!」

 

 丈瑠は止めるよう促すが、ファイはズボシメシに向かってゆったりと歩き出す。

 

 「のろ」

 

 そしてズボシメシが言い切るより早く、ニッタリとした笑顔である言葉を口にする。

 

 「短足」

 

 言葉の数が少ないので、ファイの方が早く相手の耳に届いた。

 

 「自分がちょっと長いからってー!!」

 

 言われたズボシメシは、ショックのあまり星になった。

 

 「退却しよう、ことはちゃん……そろそろあいつに取っても水切れ時間じゃないかな?」

 

 外道衆についてある程度は学んだ、奴らは、地上に出ると定期的に水切れを起こす。

 

 「急患もいるし」

 

 倒れているイチゴを見やる。

 

 「やられた人達の搬送もある」

 

 怪我はなさそうではあるが、ずっと寝そべらせるわけにもいかない。

 仕方ないので丈瑠達は、戦いを止めた。

 

 「くそー」

 

 飛ばされたズボシメシは、自身と直撃して破片となった道路を払いのけた。

 

 「悔しいから他の奴らに言って回ろう」

 

 その時、影から一人、怪人が現れた。

 岩のような鎧甲冑を身にまとった姿で、胸にくっきりと赤い三日月の模様がかたどってある。

 手に持つ得物は……研ぎ澄まされ、切れ味の良さそうな日本刀。ただし柄には歯車のようなものがついており、日本刀のようなつくりをしていても、日本刀とは言えないかもしれない。

 

 「おまん……悪口を言われ足りないようだな」

 

 ズボシメシは相手が誰か知っているようだが……

 

 『教えてやるよ……あんまり人の心の傷抉ってると、長生きできないって事をなぁ!!』

 

 禍々しい気が、三日月状の形を持って襲いかかる。

 

 蛇心剣・新月斬波!!

 

 「ヒッ」

 

 威嚇なのか、ズボシメシの隣に逸れて、決まりはしない攻撃だった。だが間違いなく、次は舌を狙われる……そう確信し、恐れをなしたズボシメシは隙間に逃げ込んだ。

 

 『ハンッ次その姿を見た時は容赦しねえからな』

 

 怪人は……姿を変えた、ヘビクラに。

 

 「あーあ、別世界の奴と戦うって大変だねー」

 

 ~志葉屋敷~

 

 その日は作戦会議となった。もっとも……反省会に近いが。

 

 「侍たる者、常に平常心を心がけておかねばな」

 

 彦馬から、そう諫められた。

 

 「でもさあ~彦馬様、あれ殿様もやられたんだからなかなか難しいと思うんだよね~彦馬様も「腰痛」って言ったら吹っ飛ぶかもだし」

 

 腰痛………確かによろしくなさそうなワードである。千明は丈瑠の方を見た。丈瑠の目は事実がどうかはさておき触れるなと雄弁に訴えていたので、千明は何も言わなかった。

 

 「ええい、ほっとけ!!」

 

 案の定、彦馬は声を荒らげる。

 

 「小狼(シャオラン)君って身分違いの恋とかしてたんだ、私てっきり」

 

 茉子は小狼(シャオラン)はサクラの事が好きでイチャイチャするぐらい両想いと言いかけたのを飲み込んだ。

 

 「二人は今台所にいるから、そこはオレが説明するよ~」

 

 ファイは説明を始めた。

 サクラは元いた世界では姫君だったのだ、そして小狼(シャオラン)は幼なじみではあるが一般人の一人だった。よく二人で行動していたそうな。

 

 「ああ、そういう事か……でもあの二人、そんな事些事(さじ)ってぐらいお似合いと思うな」

 

 妬けてしまうぐらい……

 

 「言える時には言ってあげなよ、本人達は恥ずかしがるだろうけど」

 

 「それから黒鋼、あんた……ロリコンって」

 

 黒鋼の方を見た。

 

 「ちげーよ」

 

 「嘘、私聞いた!!ロリコンって言われて吹っ飛んだの」

 

 「ええい、何度も言わせるな、俺はロリコンじゃねえ!!」

 

 だが、ロリコンと言われて飛ばされたのは事実だ。

 

 「そうだ、違うぞ茉子、黒鋼殿は自分が仕えている巫女様の事をお慕いしているのであって断じてそのような……」

 

 黒鋼は、ニヤリと笑いながら今までにない殺気を流ノ介に向けた。おそらく、そっちが本命か?

 

 「すみません!!」

 

 それに気がついた流ノ介はすぐに謝った。

 

 「それよりも、ファザコンって言われて私は」

 

 流ノ介はすぐにメソメソと泣き始めた。

 

 「歌舞伎役者にとって、親子関係は特別なものだから仕方ない」

 

 師匠として、先輩として、壁として、最も近い間柄だ。

 

 「殿……」

 

 流ノ介は、丈瑠のフォローに、フォローしてくれた事に感激する。

 

 「私だって十年あれば相手が見つかるようになる……なれるといいな」

 

 「そやそや、茉子ちゃんやったらいくらでも見つかるわ、なんならうちがもらいたいぐらいやわあ、きれいやし、料理上手やし」

 

 料理の話を聞き、男性陣は全員雷が落ちたように一斉に目を背けた。

 人には大なり小なり欠点がある、丈瑠は嘘つきらしいし、流ノ介が天然とは聞こえの良いもののはっきり言ってうざかったり、千明のイタズラ癖だったり、ことはは不器用な所とか……

 茉子は何か?料理が下手なのだ、彼女が作ったその日は外道衆並みの危機と言われるぐらいには……

 イチゴがそれを味見した日、産まれた中で一番美柑に感謝したそうな。

 

 「母さん、ありがとう。おいしいご飯を作ってくれて

  母さん、ありがとう。おいしいご飯を作れるようにしてくれて」

 

 「今日の敵対策で適当にリスト書いてみたよー」

 

 ファイはズボシメシに効きそうな言葉をリストアップしてきた、情報が少ないからか、どれも外見上の部分を攻めた内容になっている。

 

 「悪口では対抗しないぞ、それじゃあ外道衆と同じになる」

 

 「そう言うと思った。(ゴミ箱にポイ)じゃあ、オレは留守番するよ~イチゴを診る奴、必要でしょ?」

 

 「それはそうだが……」

 

 そのために黒子がいるのだが……というか、ファイ達は本来戦う必要はないのだが……

 

 「ファイってさ……ひょっとして触れられたくない事でもあったりするの?」

 

 茉子がおそるおそる聞いた、言いたくないなら、それで構わないと言いたげにかそけき声で。

 

 「はは~まあ、オレも人間だしね……言われたくない事だってあるよ、だからこそ、あいつに遭う可能性のある内は動きたくないと思う。それに遭う度に飛ばされたらサクラちゃんの羽根探しどころじゃなくない?どうしてもぶった斬りたい黒ろんは行ってもいいけど」

 

 「ああ…………そうだな……」

 

 「うちら頑張るから、ファイさんはじっとせなあかんよ」

 

 「ありがとー、それにしても効かなかったことはちゃんはすごいねえ」

 

 「ああ…………俺も思った。なんかすごい何かでもあんの?」

 

 「うち………慣れてるから、昔からアホとか鈍くさいとか言われてたし……アヤカシに言われた所で、別にホンマの事やし、何とも」

 

 ことはは、また、笑った。

 

 「何笑ってんだよ」

 

 落ちこぼれと言われて、落ち込んでいた事もある

 

 「お前さあ、いつも自分の事あほっていうけど、それで笑ってんの信じられねえよ、なんかむかつく。本気で思ってるなら、マジでバカだよ」

 

 「言い過ぎよ、千明」

 

 すぐに茉子が諫める。

 

 「ごめん」

 

 ことはも、謝りながらその場を去った。

 そして、黒鋼は丈瑠にこう言った。

 

 「殿様、見てられねえレベルになってきたら、隙を見て奴を叩き潰す方向に切り変えるぞ」

 

 「!!」

 

 「今回の敵はの言葉は、一言であの衝撃だ、耐えたことはは確かにつええ、だがその強さは脆い強さだ、自分でも気づかねえ内にいつせきが切れるかも分からねえ強さだ、耐えられるからといって耐えさせるわけにはいかねえ」

 

 「そうだな、お前の言う通りだ」

 

 ~台所~

 

 「小狼(シャオラン)君は好きな人がいるの?」

 

 イチゴに当てるおしぼりの調整中に、サクラが聞いてきた。

 

 「……………!?」

 

 「教えて」

 

 「………いる」

 

 「どんな人?」

 

 「いつも元気で、みんなから好かれていたんだ……俺もそう、でもみんなのそれとは違ってて……」

 

 「身分………違うの?」

 

 「うん、本当ならおれが近づける人じゃないんだ。でもいつも遊んでくれて……嬉しかった、それで、その人の事を考えていると、胸がドキドキしてくるんだ。そんな気持ちになっちゃいけないって分かってはいたけど……」

 

 「……………」

 

 小狼(シャオラン)は、好きな人本人に言ってしまった事による気恥ずかしさで顔を背けた。でも、できれば気づかないで欲しい、気づかれて、深堀をされたくはない。そうなれば……サクラの記憶に、モコナを受け取る際に支払った対価による齟齬に行き着くかもしれない。サクラとは幼なじみだったが、対価………関係性を支払った事で、もうサクラは小狼(シャオラン)の今までの事を忘れてしまっている……小さかった小狼(シャオラン)の事を覚えているサクラは、小狼(シャオラン)自身の事をどう思っていたのだろうか?もう……聞ける望みは薄い。

 サクラは、誰かは分からないがその人物に少しばかりの嫉妬を覚えた。いつも笑ってくれる小狼(シャオラン)、いつも守ってくれる小狼(シャオラン)、サクラの羽根を探すために、一生懸命になっている小狼(シャオラン)、彼の心に棲む、女の子に……

 モコナは、真相を知っているので、にやけながら話を聞いていた。




いかがでしたか?面白いと思っていただければ嬉しいです。
足の長い人の多いあの世界出身の人とズボシメシを比べるのは酷過ぎた……

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