スーパーロボット大戦Z Another Chronicle 作:レゴシティの猫
祝え!!デビルークの王女、その美貌に心を奪われる事のない王子のお目覚めである。
不意に起こる、吐き気……
イチゴの体内時計では、ズボシメシに言われたショックで吐いて間もないためまたかと思い、流石に嫌気が差してくる。
いてもたってもいられない気分になり、跳ね起きた。
「ここは」
いつの間にか夜になっていたが、それより重要な事がある。見覚えがある天井……だが、それは見慣れたと言うわけでなく、既視感があるかなというぐらいで……おそらく、勘が正しければ志葉家の屋敷からは結構遠い場所に移されている。
そして、裸になって寝そべっているノノがいた。
「スースー」
何故こうなったかの疑問より先に、怒りが湧いた。
お前、オレに何をやった………!?
家族の前で、してはいけない表情になっていっていくのが分かる。
不意に、ズボシメシの言葉が、頭を反芻していく。
『兄弟同士で産まれた○』
個人の選択として割り切るには、両親は有名過ぎた……
ダメだ……抑えろ……抑えろ……デビルークに、王妃に、たくさんの人に迷惑がかかる……抑えねば、抑えねば、感情が邪魔なら、蓋をしてでも……
数十秒深呼吸をして落ち着きを取り戻し、周りを見渡してみる。
病人扱いなのか、腕に管が突き刺さっていた。
即刻退避せねば……特に性感帯の尻尾周辺から……デビルーク人の尻尾は、ビームを出せるぐらいだからそれだけデリケートな部位で……まさぐられると喘いだりするらしい。寝相の問題でそうなられる前に……
腕に付いた管が邪魔だと思い、とりあえず全て一瞬の内に引っこ抜いた。
そして、一気に飛び上がって、ベッドから距離を取る。デビルークの人間じゃないが、うまくいった。
「ん……変な薬を飲んで痙攣……から快復まで13時間か……流石のノノも寝ちまったよ」
聞き覚えのある声がした。
「久しぶりだな、イチゴ」
暗いから、声のみで判断するしかないが、ガーランド・ルナティーク……金色の闇……ヤミの息子。
「兄さん……」
「お……今日は落ち着いてるな……お前が今思っている事はだいたい分かる、だがそれをこいつに晒すのだけはやめてくれ。お前を好きになろうとしてるのだけは本当らしいからな」
「ここはどこ?」
「御門先生の家だ」
「ノノはどうしたの?」
「お前の看病疲れで就寝中です、起こさないであげてね……」
ただ寝てるだけだと知り、少しホッとした。
「寝てるだけなら、せめてパジャマぐらい着るように言ってくれない?」
心臓に悪い上に、冷える。
「お前の異変を聞いて密航したから用意してなかったんだと……俺も、自分の分しか持ってきてなくてね……アンの分は向こうが持ってって先生の分は着れる程手足が伸びてる訳じゃない」
アン……字で書くと
「……………」
イチゴは、ノノの体にイチゴのかぶっていた毛布をかぶせた。
「じゃあ、お前が起きるまで起きなきゃならなかったんで……おやすみ……言いたい事あったら明日聞いてやっから、今日は何もすんなよ」
ガーランドはそう言って、眠りに就いた。
朝までやる事がない……ガーランドに追従する形で寝ようか?
だが、寝すぎて寝つけなくなってしまったか、目も冴えている。
仕方ないので、そこら辺をうろつく事にした。
アルバムのようなものが、カルテの隣で自己主張していたのでそれを手に取った。
ある1ページが相当長い期間をかけて開かれていたのか、その1ページにするのが容易で……
そこにはティアーユ・ルナティークの水着写真が飾られていた。
ガーランドの、実質的な祖母か伯母のような存在だ。バナナの色のように鮮やかな金髪を持っているのはこの人由来だろう、多分。
写真に映っている彼女は、日光に当たり慣れていない色白の柔肌を、恥ずかしげな表情と共に晒し、三角形の布地で胸を覆うタイプの青い水着を身に纏っている。
海が背景みたいだが、入る前に撮ったのか肌はそこまで濡れてはいない。何がとは言わないが、柔らかそうだった。
おそらくヤミと他の誰かが隣に立っているが足だけで途切れ……おそらく……意図的に切り抜いている。
「ハレンチな!!(小声&言ってみたかっただけ)、親戚の水着写真のコレクションとか絶許、処分処分」
写真をアルバムから取り出して、テーブルに投げ込んだ。
懐かしい……いつからか、こういうハレンチな物と、その辺の草花の写真とが、同価値に思う時があった、嫌……今もたまにある。だが、かっこつけて言っている訳じゃない、そういう時に限って、プリンも食べる気が起きないのだ。少々死活問題かもしれない。
ノノの顔を見ても、彼女を欲しいとは思えない……
ノノにとっては自分の美貌、それで誰かが変貌する事が呪いだろう。
ガーランドにとっては、ヤミの子供である事は言ってしまえば呪いかもしれない。ヤミの……殺し屋の息子というだけで、知らない人から見に覚えのない恨みを向けられる事もあるそうだ。
イチゴにとっての呪いは…………
『だからさ……やっちまえよ』
自分に似た声がして、思わずイチゴは振り返る。ガーランド達以外誰もいない。嫌違う、景色として切り捨てかけた鏡には、何かが映っている。明かりも付いていない夜だが、不思議とそれだけはくっきりと見えた。
『そしてオレは完成するんだ』
鏡に映ったそれは、イチゴにそっくりで、目の本来白くあるべき部分が真っ黒に染まり、瞳も化け物のように変わっていた。爪も、マニキュアも目じゃない程に長く鋭くなっている。
『そいつをこう、サクっ!!としてね』
鏡に映った何かは、おそらくノノに襲いかかれと指示しているようだ。
手を見ていると、鏡に映ったのと同じぐらい爪が長くなっていた。これでひっかけという事だろうか?
『そしてオレを否定してくる奴らを、その手で!!』
フッと、イチゴは冷笑した。
「オレの選択は一つだよ」
イチゴは、自分の手首にその長くなった爪を近づけた。
イチゴと違って、ノノはデビルークの正統な王女だ……チャーム人の能力とデビルーク人特有の尻尾という、王妃の子供として疑いようのない特徴もある。対してイチゴは、本来王族でもない純粋な異星人もとい地球人、しかもズボシメシに言われたような言葉も付く……どちらの方が価値があるかは明白。
傷つくべきは、自分だ!!
力を入れて、爪を自分に押し付けた。
『…………………………………………………!!』
鏡に映り込んだそれは、イチゴがそうすると、一切何も語らなくなった。
力を入れすぎて、ダラリと何かが零れ落ちていく。
『やめてください!!(小声)』
するとカイが目覚め、バトルフォームの要領でイチゴを覆ってきた。そして、強烈な力で動きを矯正してきた。
体の自由を奪う気だ……
「うう………!!」
拘束される不快感から、自由の効く爪の伸びた方の手で窓ガラスを引き裂き、そこからイチゴはその勢いのまま窓から飛び降りた。
その間にカイはイチゴを包み込むのを完了させていた。
『落ち着いてください、落ち着いてください!!落ち着いたら絆創膏でも貼るので、空気の良い所に行ってそう……スーハーと行きましょう、深呼吸深呼吸』
翼の部分をバタバタと動かし、地面へと着地した。
もう逃げ切れる事はない、観念したイチゴはとりあえず動き回る事にした。
「んじゃあ、走ろっか!!」
御門邸を出て、道路を走る傍ら、何か違和感を感じていた………
遠くから美柑の気配を感じる………多分、彼女は地球に来た。いつの間に感覚が鋭くなっているのかと変な気分が込み上げてくる。
いかがでしたか?面白いと思っていただければ嬉しいです。イチゴ君の吐き気はクスハ汁一瓶分飲まされた影響です。
その衝動は、心臓の鼓動の如く我が身を責めたてる