スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちはもしくはこんばんは。
新キャラ出ます、ルイーナとかラマリスとかそっち系ですけど……
イチゴが坂田金時、カール大帝であれば新キャラは金太郎、シャルルマーニュみたいなイメージです。


第15話 "災い"の貴公子と妖巫女 Aパート

 大きな丸いロボットに向かって一隻の宇宙船が近づいてきた。降りて出てきたのは、いずれも美男美女。

 

 「キレイな人達」

 

 ピンクの髪の少女はイチゴの元へ駆けていく。

 

 「あ、お兄様!!」

 

 すずを見てペコリと頭を下げつつも、イチゴに駆け寄っていく。

 

 「そっちは大丈夫そうだね……カイ、カーイー!!」

 

 『ララ様……』

 

 「ボロボロだけど、大丈夫?」

 

 『エネルギーはすこぶる快調なのですが……ああ、ララ様の御顔を拝見してると……色々とどっと来て』

 

 カイはショートする。

 

 「カイ!?」

 

 ピンクの髪の女性……少女とは多分親子……はカイに近づく。

 

 「カイは一旦持って帰るね、どう見ても修理しなきゃいけないし、胸の変な物体も解析しなきゃ」

 

 ララと呼ばれた女性はそう言いながら、スマホを取り出す。

 

 「もしもし……ナナ、ちょっとカイ運ぶから手伝って…………うん、リトのお家、今いる場所の座標は送るね、ありがとーじゃあ」

 

 よく見れば、彼女のコスチュームは目の前の巨大なロボットに少し似ている。

 産みの親だろうか?

 

 「それにしても、いつの間にこんな田舎に来たのかしら……」

 

 見覚えがある……映画にも出場した事のあるアイドル、RUN。

 

 「ルンちゃん……夫のおじいちゃんが見てるのとそっくりだ……本物、もーれつ感動……」

 

 「あら、私もファンに会えて感激!!(でも今はちょっとそれどころじゃないのよね〜一番の問題児がいるし)」

 

 「そいつを診るなら、場所を指定させていただきたい」

 

 二ノ曲は、装束を脱いで私服に変わっている。装束を着ると普通の人には見えないようになっているからだ。

 

 「あなたは………」

 

 「祓忍、二ノ曲宗牙」

 

 「……話は聞いた事があるけど、なんで?」

 

 「祓忍組合は未だそいつへの警戒が解けている訳ではないからです」

 

 偉い人相手なのか、彼が普段聞き慣れない敬語になっているところにおかしみを感じる。

 

 「オカルト関係の話はお静ちゃんだけでいっぱいいっぱいなんだけど、ヒカル……運ぶのよろしく」

 

 「分かりました、ルン様」

 

 「あ……ちょっと待って」

 

 女性の一人が、ヒカルと呼ばれた男性を呼び止める。

 なんと、彼女がイチゴを背負おうとする。

 

 「んしょ……重……ちゃんとご飯食べてたんだ……良かった」

 

 「美柑様!?」

 

 「ありがとう……イチゴをよろしく」

 

 再びヒカルに背負われ、イチゴが運ばれていった。

 

 「一件落着……なのかな?」

 

 違和感……

 

 「あれ?」

 

 イチゴのいた場所に、黒い炎を纏った、いわゆる人魂が残っている。

 

 「これは……なんだろう?」

 

 「すごい、削ぎ落とされたものだけのはずなのにすごい存在感がある……何が出てくるか分からない」

 

 だがその人魂も、消えかけていた。

 

 「でもこのままじゃ、消えてしまう……癒やさないと」

 

 「消えるなら……もうそれで良くない?祓われても仕方ない奴だよ」

 

 「どうしたの?幼心ちゃん……さっきから変」

 

 「私の主人格、すずは天照……そして私も……だから分かる、イチゴ君にこれ以上関わっちゃいけない……見たでしょ?あのロボットが出す光線を、あんなものをもし向けられたら祭里との今も、消し飛ぶかも……」

 

 「幼心ちゃん……私、思うんだ。ここでイチゴ君の中から出てきたものを見殺しにしたら、比良坂命依を生贄にした奴らと一緒になるって」

 

 「!!」

 

 「絶対良くないよ、自分にとって都合が悪かったら、一方的に排除するなんて」

 

 「……ごめん」

 

 「あれ、効かない」

 

 「………………方法はあるよ、一時的にすずの体内にしまい込むの、その間は妖力の消耗は抑えられる……はず」

 

 「イチゴ君……かは分からないけど、少し私の中で安静にしてて」

 

 近くで観ている誰かがいた。

 

 「えーっと、何しようとしてるのかな?」

 

 〜????〜

 

 「………………」

 

 目が覚めると、緑が生い茂った山々の中、神社の鳥居が、三角にくっついたような社がそびえ立っている。

 

 「………………」

 

 ついさっき桃太郎がロボまで引っ提げてきて、それでボコボコにされたのを思い出した。

 ここはあの世だろうか?……それはそうとつくづく思う、桃太郎のロボ……カッコ良かった。鎧武者を想起させる勇ましい造形美、サルの長い腕をそのまま使用する発想。

 

 「気がついた?」

 

 すずに似ている長髪の女の子が、こちらを見下ろしている。あの世の遣い……天使?

 

 「ここは?」

 

 「精神世界と呼ぶべきかしら?私の……というか、さっき見かけた時より体が全体的に小さくなってる気がする、大丈夫?」

 

 言われてみれば確かに手足が、異常に縮んでいる。まるで子供に戻ったようだ。

 精神世界か……

 

 「うん」

 

 森がクッションになっているからか、降り注ぐ日光が柔らかく感じる。

 森は良い。

 光が辺りを照らせば、そこは聖域となる。

 闇が辺りを包むなら、そこは魔境となる。

 神秘、恐怖、人智の及ばぬものを漂わす、絶好の舞台。

 

 「思ったより話せそう……イチゴ君の体から出てきたから、イチゴ君だよね?私の主人格も心配してるよ」

 

 「主人格、じゃあ君は……」

 

 多重人格的な何かか?

 

 「私の事はかなでと呼んで」

 

 「……かなでちゃん、なんでオレはここにいる?」

 

 「派手に桃太郎にやられて、消えかけていた君を主人格が救助したからだよ」

 

 「命の恩人って訳……ありがとう」

 

 どういたしましてと無愛想に言うかなで、唐突に彼女が天照と関係ある事を思い出した。

 

 「天照なんだって?君」

 

 「ああ……うん」

 

 歯切れが悪そうに、かなではポツリと言う。

 

 「思ったより人間っぽいね」

 

 「そうだね、でもこれが私だよ」

 

 「急に身についたやつなの?」

 

 「…………話すと長いかな」

 

 「よーし、じゃあこうしよう」

 

 ディスプレイを設置。

 

 「何それ」

 

 ハトポッポの豆(見様見真似)と、ミルクティーの注がれたコップをセットしたチェアを用意した。

 

 「精神世界なら、こっちの方が早いよ……食う?」

 

 ハトポッポの豆を差し出す。

 

 「ありがとう……これに投影するのか……やってみる」

 

 3……2……1……

 

 ザザーン(波の音)

 

 『妖巫女について(日本版)』

 

 髪が白く、大剣を持つ戦士の隣に、一人の少女がいる。

 ヒミコの後継者として名高いあの壱与らしい。

 

 「…………でっかい茹で釜に手を突っ込んでも無事なあの壱与か」

 

 「え?何それ……私知らない……なんでそんな事するの?……怖」

 

 「でも、それじゃあまだ主人格呼びの理由には行き着かないね?」

 

 目の前の女の子はすずを主人格と呼ぶ、そういうからには人格が分裂している筈だ。人格が別れるなんて、よっぽどの事がない限りあり得ない。

 うーんと考えた後、かなでは質問する。

 

 「あなたは……(あやかし)について、どう思う?」

 

 「どう思う、ねえ………」

 

 かわいい奴は愛でる。

 カッコいい奴は崇める。

 ヤバそうなのは倒す、利用する。

 それだけだ。

 

 「友達になれる人がいたら……どう思う?」

 

 「すごい……かな?」

 

 視えるだけでもすごいと言えばすごい、友達になれるなら尚の事……祖父と呼ぶべき人物は、それを尊いものとしてマンガに描写していた事を思いだす。

 

 「そっか……否定しなかった……良かった(小声)」

 

 だが、それを尊いものと思うには、当たり前だとは思えない事情がある訳で……

 まず……視えないから、視えない奴らにとってはいないのと同じ事で、そいつ等が大多数だから、視える人間が視える前提の話をすれば夢物語と片付けるだろう……もしくは、視える奴は気狂い、視えてない自分こそが正常だ……と。周りが視える人達ばかりの中、視えない人間なんて逆もあり得るから、なんとも言い難いが。

 結城才倍も、改めて聞けばいないと答えるだろうか?いると、答えるだろうか?

 

 「じゃあ、いくよ」

 

 答えが良かったのか、ある程度気を許したかなでが見せたのは……

 壱与から転生していった先の話……

 その記憶と力は、転生後も備わっていた。

 だが転生先にまで持ち越されるその力、一般の家にそぐわなかったようだ。

 平安貴族、戦国大名、百性など、何度も転生しても……「異端」である事を突きつけられ、はたまた強力な妖怪に狙われ巻き込まれるなどして、人に疎まれ、忌まれながら死んでいく生涯に変わりなく……

 彼女の忌まれ様は、もう人の世は巫女王など、神秘によって人を統べる者を必要としていないと思い知らせてくれる。

 いいや、違う。古今東西、そういったものでの導きを求める人間はいたし、そういうものと繋がる人間は数多くいただろう。それでも扱いに差は存在した。

 そこはさておき……

 前世の記憶らしい……オリジン、今生以外で、最も記憶に新しい一生……

 名前を、比良坂命依……

 享年15〜6歳。

 当時としては成人は過ぎて……もう少し生きていれば、嫁入りするかしないかぐらいの年だろうか?

 それまでの比良坂命依の一生、その一部始終を見せてもらった。彼女の視点から見ているため、主観的にはなるが。

 産まれたのは幕末辺り……だが、幕末での主な出来事は彼女の周りでは対岸……程ではないが、若干遠めの場所の火事。そのぐらいの田舎の神職の家に産まれたようだ。普段着はその影響でしつらえたとか。

 神職の家系に産まれた、それでも忌まれた。八百万の神と繋がる娘を忌み嫌った。神を信奉する奴のやる事だろうか?

 

 「?」

 

 「ああ……気にしないで、続けて」

 

 先述の通り、力故に妖が視え、仲良くなれる故に気味悪がられる幼少時代を送った、そして、その関係性のまま成長していく事が後に彼女にとっての悲劇に繋がる……

 今回は、今回の生は、その力を活かせるよう修行し、人にちょっかいをかける妖共を諫める旅に出ていた。

 そんな事をしても褒めてくれる人はいないだろうというのが正直な気持ち……

 だって向こうは見てないから。

 彼女も見えるように動いてないから。

 お互い既にそっぽを向いている、奴らにとって比良坂命依は「異端」であり、「向こう側」の存在だ。それは彼女にとっても同じこと……だからおそらく、精神的にも、物理的にも、お互いに距離ができている……そんな状態で比良坂命依が動いても、何も響きやしない。例えマッチポンプ気味でも、被害が出た後になんとかしてやるというスタンスでなければ認めるも何もないだろう。せめて彼女が誰かの見てる前で戦ってれば違う見方もできようが。

 レッテルを貼られている人間が、影でみんなのために動くのは話としては小気味よいが、認知されない分、モヤモヤが残る。

 色々あって日照り神、縊れ鬼、塵塚怪王と、それなりに名のある妖を封印していき……(ともだち)も増えていった。歌川画楽という、後に高名な絵師となる絵筆の付喪神とも仲良くなる……

 結城家のコレクションにも絵師・歌川画楽の絵があるが付喪神とは知らなかった。魄のブレンド具合から見て、人の成分も混じっている気がするが、気がするだけかもしれない。

 こう言ってはあれだが……人に迷惑をかけてなんぼの妖だ、名前も有名であればある程、存在もそちらに引っ張られる。善性も、悪性も、強く、濃ゆくなっていく。封印して解けるまでの間に変わってもらう……そのやり方では、到底妖の在り方は変えられない。

 そして、運命の刻が訪れる。

 その地で、水害が起こった。

 水害を抑えるために、人柱として妖と繋がる事のできる彼女が選ばれた……というのは建前で、恐慌状態に陥った人々が水害は妖と繋がる事のできる彼女のせいと考えた、消せば納まるとでも考えたみたいだ。

 水害という有事がなければ距離ができるだけで、わざわざ死なせようとしなかったのは僥倖か、どうか……

 妖と友達だから水害は比良坂命依の仕業であるなら、彼女を死なせれば友達がどうしてくるのかは考えなかったのだろうか?水害を起こせる妖がいるのなら、もし彼女ができるのなら、通り越して村を丸呑みぐらいはできて当然のように思うが。

 ともあれ、逃げるなどの抵抗をしたようだが空しく、彼女は人柱にされた。その時

 

 「人の世なんて、終わってしまえ」

 

 と石に自身の分身……人の世への呪いを宿らせた模様……妖達を封印した術式によるものだから、実質封印になるのか。

 

 「…………」

 

 「そうして、すずへと受け継がれていったの」

 

 比良坂命依の時の記憶が離れず、しばらく笑えずにいたそうだ。

 

 「親が良い人だったから、人を滅ぼそうかどうか迷った時もあったっけ」

 

 「やるとして、できると思う?」

 

 「え?」

 

 「オレは無理だと思うな、天照の力、その源流は滅ぼそうとしてる人の想念だ、しかも、この地球の数割にも満たないちっぽけな島国のね……滅ぼそうとしている間に君の力は枯れる」

 

 「………………貴重なご意見ありがとう、でももういいの、私は祭里と生きてる今があるから」

 

 その祭里という人は、「視える」彼女を受け入れてくれた人間らしい。彼と交流していく内に、恨み募る心は……洗われていった。

 そいつが代々怪異に立ち向かう家の産まれだと知るのは後の話……

 だとすれば小さい頃に出会ったのも大きいだろう、もう少し分別も、認識も育てば、屈託なく彼女そして妖と接するのも難しかった。

 彼との会話の中で人格を切り離していったらしい。祭里との未来に、その記憶は不要だと……外付けストレージ(ボソッ)

 表に出ず、裏でじっとしてる方が主人格と思ってたが、違うケースもあるようだ。

 

 「ふう……これで満足した?」

 

 天照……祭り……

 

 「そういう事か……」

 

 祭りは、天照大神がかの天岩戸事件を引き起こした時、大勢の神様と巫女神様が踊ったり馬鹿騒ぎして天照大神の気を引こうとしたのが起源らしい。そして、ついには天照大神の沈んだ心をほぐし、外に出させるという結果に至ったのだ……

 いずれにせよ、祭里という人が救ったから……祭里という人は、目の前の女の子にとって運命の人という事になるのかもしれない。

 

 「教えてくれてありがとう」

 

 しかし、現世で視える側の人間に救われたのは良いが、前世の場合はなんだったのか?有名なレベルの妖を封じて回っていたのなら、そっち方面の耳に入っている筈だが……巡り合わせが悪かったのか?

 

 「ところで比良坂命依については、どう思う?」

 

 「もう良いんだ……誰かに守って欲しかったって、分かったから」

 

 良くない、彼女を死なせた奴らはどうなる?まるっきり情報がない、まさか、諸悪の根源をみんなでやっつけて万々歳……みんな平和に暮らしましたで終わったのか?全くめでたくない。

 

 「力があるならそっちで抵抗すれば良かったのに……」

 

 力で忌み嫌われるなら、その力で自分に害を為そうとすればどうなるのかを分からせるしかない……

 分身を使えば、多少デコイとして使えるし、殴れば一定以上のダメージは入れられるかもしれない。

 

 「妖と友達だって事が、どういう事だか、きっちりと見せつけなきゃ」

 

 妖だっていた、友達なら、助けを求めれば応じてくれただろう。

 

 「え?」

 

 「友達いたんなら頼れば良かったって話だよ、人の世滅びろなんて呪うくらいなら……ね」

 

 「友達を巻き込みたくなかったから……私のせいで友達と人間が争うのは、嫌だったから……」

 

 だが巻き込む、巻き込まない以前の問題だ。

 突然友達が死んだら、悲しい。

 それまで当たり前にいたはずの存在がいなくなれば、苦しい。

 誰かのせいであるなら、怒りが湧く。

 これはもう、渦のようなものだ。気がつけば絡まれ、思いを馳せざるをえない。

 巻き込みたくないという思い一つで、それをなかった事にできない。

 とはいえ善性の固まり、つまりいい子なのはよーく分かった。

 怨念なんか石に宿らせてないで即解き放てばいいのに、他の妖を封印した時の術式を用いて未来に先送りした件、意味を考えるならこうだろう……彼女自身、どこかでまだ人を呪う事をためらった。憎んでも、それをどこかで飲み込もうとしていた。

 そんな心優しい娘を死なせた奴ら、塚なりなんなりして彼女の死後、供養はしたのだろうか?生贄にしろ、恐ろしい妖怪を退治したにしろ、祀る事で怒りを鎮めてもらうものだとこの島国のやり方だと習ったが、一人の少女相手にあんなに恐ろしい剣幕になっていたから、していないかもしれない。していないなら、もう祟るしかない。人を呪わば穴二つだそうだが、そいつ達は彼女を大勢で呪った、死ぬ事を望んだ。その分の穴を掘るだけだと思えばいい。

 ふと、思いついた。

 塵塚怪王はともかく、日照り神、縊れ鬼、死んだ彼女の分身……復讐の手段としてうってつけなのでは?

 日照り神で雨……水害の素となるものを封じ(水害を抑えるために人柱になったのだから、勢いを強めて)、コンタクトを取れる奴らだけでいい、縊れ鬼で命を彼女を死なせた連中を一人ずつ葬り……川に沈める一手間を加え事件性を演出、そこに人柱で死んだはずの命依が現れれば……

 誰がどうみても、命依が祟りにきたと捉える事ができる。

 

 瞬間、閃く……

 

 「これは!?」

 

 〜妖劇場 題して 比良坂命依に愛を込めて〜

 

 ※この私刑は、実際に繰り広げられた訳ではありません……あらかじめご了承ください。

 

 ある日の夜、村に災害(まつり)が起こる。

 

 月の使者『Are you ready guys?』

 

 全員『yeah〜!!』

 

 日照り神『日輪は我にあり!!』

 

 真夏も真っ青、太陽の光が地面すらも焼き焦がす。

 

 笛『ピーロピロピロピロピロー』

 

 セミによる大合唱から産まれた(あやかし)『ミンミンミンミンミンミン(復讐じゃ〜!!)』

 

 突然の耳慣れない音律。

 村人達は跳ね起き、音の正体を確かめにいく。

 すると……

 突如身動きが取れなくなる。

 そして視界に映る小さき者共……

 ネズ吉『仇討ちじゃー!!』

 

 妖達はみな、額に比良坂命依の遺影を貼り付け、村中を練り歩く。

 

 祭りの、始まり始まり……

 

 ウサ文『おい、粥よこせよ』

 

 ウサ美『(泥)船できたから、好きな所連れてってあげる』

 

 塵塚怪王『おまんも芥!!おまんも芥!!収集する価値もなし!!』

 

 ゴミで練った泥団子……否、芥団子を人間共に投げつける。

 

 蟹『柿、食います?子供達にも大評判なんですよ…………』

 

 見えない……故に、答える事はない。

 

 『育てるのを手伝ってくれた娘っ子はもう……うわーん、挟んでやる!!挟んでやる!!』

 

 足首、指と蟹はハサミで挟んだ。血が出る程ではなく、チクチクと、不快になる程度の勢いを保ったまま……

 

 縊れ鬼『おい……笑えよ』

 

 波長が合った人間に話しかける、人間は、助かりたい一心で、恐怖を抱えながら、笑う。

 

 『今、私を笑ったな?どうせ私なんか……』

 

 (首の骨が折れる音)

 

 夜が更けるのを、飽きて終わらせてくれる事を、村人達は待った…………

 

 月の使者『パーリィは終わらねえぜ……you see?』

 

 終わりは来ず、永遠のように絶え間なく続く太陽の煌めきが村人を焼いていく。

 妖からの拘束を振りほどいた村人達は、枷を解きつつ彼女を沈めた場所に向かった。

 ジリジリと、身を焼かれていく痛みに耐えられず反射的に、川へと向かう。

 川の中は干上がってはおらず……嫌、まるで別世界のように冷たく、この日光がまことのお天道様によるものでないと気づかせるのに時間はかからなかった。

 

 そこで彼らを待ち受けているのは……

 

 比良坂命依の分身「許さない……絶対に許さないから……」

 

 おどろおどろしい声と共に、死んだはずの女が現れる。

 その衣服は透け、その顔は蒼白く、指先も人形のように白く、冷水に身を浸した後のように総身(そうみ)を震わせて。

 

 「ギャアアアアアアアアアア!!」

 

 体全体を震わせて、命依は叫ぶ村人達に迫る。

 

 「うらめしや~」

 

                  〜劇終!!〜

 

 「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 ついつい、手を叩く。

 出来栄えとしては下の下だが、復讐ものは考えるだけでスカッとする。

 

 「ストップ、ストップ!!」

 

 なんと、今考えていたものがディスプレイに全部映っていた。

 

 「ダメなの?人間滅ぼそうって考えてた人が止めるんじゃないよ(小声)」

 

 「そんな世紀末みたいなのは絶対やってないから」

 

 「じゃあ、君の前世が死んだ後、仲良しになった妖達がどうしていたか知ってるの?」

 

 知らないしなんとも言い難いが、ある程度早まった行動をしていると考えられる。

 

 「歌川君は、今も画家をやってるけど」

 

 「他は?」

 

 「タヌ衛門は子孫繁栄してるし……」

 

 「もっと」

 

 「…………………」

 

 「数えるだけか……忠臣蔵しかり、恨みっていうのは、当人の専売特許じゃない、むしろその近しい存在からの方が多いと言ってもいい」

 

 「忠臣蔵(ちゅうしんぐら)?」

 

 「知らないなら、後で調べて……君の前世と仲良くなってた、もしくは説得だけで折れてくれた彼ら……そんな彼らがもし、比良坂命依が水害の人柱にされ、疎まれながら亡くなったと知ればどう思う?彼女が仲良くしようね、迷惑かけちゃダメだよと言っていた対象に、彼女は殺されたに等しいんだ」

 

 正義感の強い奴らなら、真っ先に思うのは

 

 『こんな話があるか』

 

 である。

 もしそうでなくても、死人の言う事を、本人がいなくなった後、聞く必要は無くなるのだ。鬼の居ぬ間の洗濯に近い、しかも無期限……

 

 「人に迷惑をかける事に、躊躇する必要ある?彼女が大切なら、してはいけないし、そう思わなくても無くなるんだよ……いなくなった人間の言う事を聞く必要なんてね」

 

 「ゴクリ」

 

 かなでは固唾を呑む。

 

 「今……『恐れ』たね?」

 

 偶然、妖力と魄の波長……方向性が合った。その瞬間を見逃す事はできない。

 

 「!?」

 

 掃除機で吸い込むように周りから取れてしまった、だが……返すという選択肢はとっくに消えている。

 

 「へ〜これが神の力か……いただきまーす」

 

 手ですくって擦り込むように摂取する……指先、つま先に力が漲り、伸びていく。

 

 「みなぎるパワー、オレ復活!!」

 

 突如、先程の話の登場人物と見紛う娘が出てくる。比良坂命依、よくできている。

 

 「何してくれてるのかな」

 

 その娘は拳を振り上げつつこちらへ近づいていく。

 

 「よっと」

 

 手刀でパンチを崩し、もう片方で後ろに回って腕を縛る。

 同じ空間、同じ人の想念でできているもの同士、先手を取る方、勢いの強い方が主導権を握る。

 

 「なんだよ……生命力無限に湧き出るんでしょ?だったら一体分ぐらい、ケチケチしないでよ」

 

 「離してよ!!」

 

 「嫌だよ、乱暴されたくないもの」

 

 改めて比良坂命依を観察してみる。

 化粧とかはしていない分、元の良し悪しが引き立つ。

 一つ一つ歪みのないパーツに、艶っぽい唇。サラサラしていそうな長い黒髪。

 そして衣装からでもよく分かる胸の膨らみ……

 触って分かる手の柔らかさ。

 脚は隠れてるので割愛。

 朱雀が妖巫女についての話題になった時、ムフフとしていたのも、頷ける。

 こいつはいい。

 女としてではなく、怪物と同等としてしか見られていないなんて嘘だろ、村人達の神経恐怖に支配されすぎだろという気持ちと、デリケートな話題になるかもしれないからこれ以上考えるなという気持ちがせめぎ合う。

 

 「黒折神!!」

 

 目の前の女の子は、その名前の通りに黒い折り紙を飛ばしてくる。

 折り紙に命を包むパッケージと見立て、鶴の形を折って動きに指向性を与える……?

 

 「どうせ折り紙なんだよね」

 

 炎を壁にするイメージで……

 

 「燃えろ」

 

 折神を燃やす、自分に被害がかからないように人体の影響はないようにして

 

 「折神だけを燃やす炎!?」

 

 水で打ち落とすのでも良かったが、あからさまにトラウマを刺激するやり方はNG

 

 「でも、えい」

 

 肘打ちをくらい、衝撃のあまり吹っ飛ぶも、すぐに受け身を取る。

 

 「あなたは……何者?」

 

 「君が神なら、オレは悪魔さ……」

 

 そしてスタコラサッサと駆けていく。

 燃料は揃えた、もう出ていっても大丈夫かもしれない。

 

 「あいつ……」

 

 出入り口をイメージする必要はあったが、すんなり出てこられた。

 

 「ん〜♡動いた後のケーキ、最高〜!!二人とも、遠慮しなくていいのに〜」

 

 「…………」

 

 すずと祭里の子達は、一つだけケーキを食べた後ジュースだけを飲んでいた。

 

 「ママみたいに食べてたら、夜ご飯が入らないよ」

 

 「明里(あかり)ったら、規則正しくて偉いね〜」

 

 「確かに3時のおやつにしては高カロリー、動くにしても消費しきれずお腹に溜まるんじゃないかな」

 

 「うわっ背中から生えてきた?」

 

 「へ?イチゴ君!?」

 

 「またママの中の人?今度は男の人……」

 

 すずは驚いている、さっきあった事に気付いてない?

 

 「……ハッハッハ……こんにちは、ボク、お嬢ちゃん……オレは君達のお母さんに助けてもらったんだ〜あ、お世話になりました……では」

 

 それも時間の問題だろう……

 紆余曲折あったがこれで、自分の感覚……視点はあるのに体を動かせない、モヤモヤした気持ちとはおサラバできる。

 

 「まあ、水害の生贄で◯んだ子の復讐といえば一つなんだけど……太陽に引っ張られすぎかな?」




いかがでしたか?面白いと思っていただければ嬉しいです。
すず(あやトラ)が五行仙に狙われたって聞いただけで妖達があんなにヒートアップしてたから、その前世が生贄にされたって前世の友達達が知ったら凶行に走る奴もいるかもって行間に辿り着いた自分をお許しください。
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