スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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第15話 "災い"の貴公子と妖巫女 Bパート

 〜とある城の本丸内部〜

 

 十六夜九衛門は外へ出ようとしていた。

 

 「九兵衛、どこへいく」

 

 引き留めたのは、(つごもり)正影(まさかげ)。能の翁の面を切り分けた顔面、軍師にも通じる姿が特徴的な牙鬼幻月の家臣である。

 

 「正影様……恐れの力の調達をば………しかし、ただ人間を襲うだけではニンニンジャーその他諸々に阻まれるがオチというもの」

 

 「ほう……当てはあるのかえ?」

 

 「今回は、(あやかし)巫女(みこ)を探します」

 

 「妖巫女……とな?」

 

 「は、その昔……九尾の妖孤、天照大御神、精霊などなど、格別に神力の強い存在の依代として選ばれた巫女共がございまして……その中でも後を継ぐ者の定まらぬまま命を終えた者は転生して、在るべき神輿から降りてもその力を宿し続けているのです……何も知らない人間の中で」

 

 「なるほど……自分達と違う……得体の知れぬ者に抱く恐れを一身に受けているに相違ないか、それなら例外的に牙鬼幻月様の復活にも役立つやもしれぬ」

 

 「既にある田舎町の近辺で3つ程確認できております」

 

 「良かろう……ゆけい!!」

 

 「(風聞を元にすれば……生きているのはまだ我ら好みではないかもしれないが、遺物なら可能性はある)」

 

 〜小美呼市〜

 

 せっかく自由の身になれた。

 しばらく、ブラブラするのも良いかもしれない……

 図書館にでも行こうか?

 その様子を、別の窓からヒカルに見られていた。

 

 「イチゴ様?」

 

 ヒカルは窓の外から、イチゴにそっくりな人影を見かけ、よく見定めようとする。

 

 「何言ってるの?イチゴは隣で美柑ちゃん、ララちゃんの娘が看てるでしょ」

 

 だが、ルンに嗜められる。

 

 「そうでしたね」

 

 美柑とノノが張り切っててやれる事がないのでチェスをしているルン「しっかりしなさいよ、私達の護衛を任されたのが親の七光りだなんて言われないように」

 

 護衛という名目の力仕事担当である事を察しているヒカル「しかと胸に刻みたいと思います」

 

 ルンとチェスをしているガーランド「(ジョーンズ博士……俺、いなくても良かったのでは?)」

 

 〜図書館〜

 

 「ありがとうございました」

 

 図書館で色々と借りた。

 この地の昔の事件について漁ってみるとしよう。

 文明開化の前、何か事件がなかったかを知りたい。人がごっそり減った何か……があれば、おふざけが7割とはいえかなでに見られたものも与太話ではなくなる。

 祓忍に検閲はされているかもしれないが……

 

 「何を読んでいるのかな?」

 

 「この辺りの文献……特に幕末らへんの情報が欲しいんだよね」

 

 「へー」

 

 声の主は、向かい合う形で座った。

 長身痩躯、作務衣から上着を羽織って芸術家のそれらしいベレー帽を被り、眼鏡を掛けた優男。

 

 「聞かせてもらいたいなあ」

 

 借りた本を急遽全て返して、川が見える場所に出た……

 

 「命依から話は聞いた」

 

 「そういうあなたは……」

 

 「歌川画楽さ」

 

 話に聞いた比良坂命依の友達……男女の仲かはともかく友達だそうだ。

 

 「肉体の組成に関わる最低限の分しかいただいてない、返すとなると胃液じゃ済まない」

 

 「そこはいいさ、でも、あることないこと色々と吹き込んだ事については……」

 

 「起こり得るありとあらゆる行動、その結果を想定するのは生きる上で当然の事じゃない?だから人は彼女を恐れたけど」

 

 そしておそらく、忌み嫌われて死ぬという運命を繰り返してきたせいか、自分が消えて喜ぶであろう人間に触れすぎたせいか、自分が死んだ後に誰かが泣くという概念が欠如しているのかもしれない。原初が女王であった以上、自分が死んだ後のゴタゴタは想定しておいて欲しい所だが。

 

 「なるほどね……」

 

 歌川は、スケッチブックと筆を用意する。

 

 「君の力が知りたくなった」

 

 節々から感じる気迫……おそらく、かなり名うての存在の様子、桃太郎とどっちが上なのか……?

 

 「あんた相手にまともに戦う程自信家じゃないんでね」

 

 歌川のスケッチブックから1枚もらい、プリンの絵を描く。

 

 「これで勘弁して欲しいな………なんて」

 

 「!?」

 

 出来栄えについては、自信はある。自分が書いておいて食べたくなるぐらいには……

 

 「絵筆の付喪神である俺相手に、絵で挑んでくるとは……」

 

 歌川は眼鏡を外した。

 

 「無碍にはできないじゃないか」

 

 そして……その流れのままに絵画バトル、開始。

 

 「さっきもらったばかりだから……見ててくれ」

 

 「なんて早さだ……一瞬で紙があいつの筆に支配されていく」

 

 そればかりではない、音速のように筆を動かしていながら、その動きが当然であるかのように表情は冷え切っている。

 瞬く間に、絵が完成した。

 

 「はい、旅先で見つけた大きな鯉だよ」

 

 「ハハハ、こんなのいるわけないよ」

 

 比較対象として若かりし頃の彼を添えられているが、それをそのまま比較すると、その鯉は人を丸呑みできる、まるで当時の黒船か何かのような大きさだった。

 

 「それがいたんだ、幕末頃にね、しかも実体があった」

 

 「なん……だと」

 

 「次は君の番だ」

 

 「行くぜ!!」

 

 既に書くイメージは決まっている。

 迷うな、迷いは精彩を失わせる。

 絵筆の妖怪に絵を書き上げる速度、精度で張り合おうなんて無謀極まりないミッションはいらない。

 頬から顎の輪郭を描いて、唇、髪は艶っぽく、鼻は……マンガ風でいい、目は重要、エメラルドも負ける程にしなければ……

 

 「できた!!オレ達の星の敬愛すべき王妃、ララ・サタリン・デビルークだ」

 

 「おお、良い題材だ……君が、嫌……君達がどれだけこの女性を愛しているのか分かる………これには俺の宝で対抗しなければいけない気がするが……はてさて」

 

 「画家の宝だ、映してこそだろう……あなたが大事にすればするほど、描かれたそれは輝く」

 

 腕を組んで考えた後、歌川は首を横に振る。

 

 「やめておこう、どれだけ書こうとこれは俺だけのものだ、代わりに昔見たとっておきを披露しよう」

 

 シンケンオー!!

 

 「これは……」

 

 敵を蹴散らし、大見得を切っている図。活躍をなんとなく見たから分かる、迫力が十二分以上に発揮されている。

 

 「なら……」

 

 レイアース、セレス、ウィンダム!!(三銃士風)

 

 「やるな!!次はこれでどうだ!!」

 

 猫、大行進!!

 

 「ッッ!!」

 

 体を舐めてる図、前を向いて吠えてる図、餌を必死に食べてる図、二頭が向かい合ってじゃれてる図、一頭一頭、動きに違いが現れている……よく観察し、それを目に焼き付けておかなければできない傑作だった。

 

 「そうくるなら!!」

 

 さっきの比良坂命依の分身のコスを猫風味に仕立てあげて……(肉球付きのモフモフの手袋がミソ)、まるで「ニャア」と言わんばかりのポーズを取らせて……

 

 かわいい子見かけたんで、混ぜてください!!

 

 「!!」

 

 歌川は、吹っ飛ぶ。

 

 『我が芸術の全てを懸けて、勝負だ!!歌川画楽!!』

 

 『おじちゃん、見てみて〜あたし、お花書いたの!!』

 

 「(楽しい……こういうのは、50年振りか……命依に会うために、たくさん絵を描いて力を付けてきた、だけどそうしていく内に段々、人間は俺の絵を見てかしこまるばかり、求めるばかりになってしまった、俺に絵を与える事はしなくなっていった……望んでやった事だ、寂しかったとは思わないけれど、今、とても興奮している)」

 

 時間が経ったのか、いつの間に比良坂命依の分身(多分)が来ていた。

 死に際に遺した怨念、幽霊のようなものだが、構成されている魄の量が幽霊のそれとは次元レベルで違う……だから足もある。自我もそれだけ濃い。

 

 「画楽君が行って時間経ったから探したんだけど」

 

 「危ない危ない、満ちたり過ぎて祓われる所だったな〜〜〜」

 

 「しっかりしてよ!!」

 

 命依は歌川に対して怒っていた、だが、非難より、心配の気が強い。ラブなのか?

 

 「しかし……よく思いつくね」

 

 「絵筆の妖でしょ、元来筆で描かれるのは筆自身によるものでなく操者の意思によるもの……だから自分で書くのは好きだし、自分でない誰かの絵に触れるのには喜びを感じる」

 

 「そこを突いてきたか、怖いね〜」

 

 「……私の絵?」

 

 「オレが書いた」

 

 「ふーん、それなりにうまいじゃん」

 

 「まあ、漫画家の孫って設定だし」

 

 「…………意味わかんない」

 

 「先入観やレッテルも、すべからく力に組み込まれるからね……オレ達」

 

 「だいたい分かった……ありがとう、いや~世界は広いな〜」

 

 「人妖じゃないの?」

 

 「あんな残留思念の煮凝りと一緒にされちゃあ困るね」

 

 交わりすぎて誰のものだったか、何に対して抱かれたものなのか検討もつかなくなった負念、それらと違ってもっと純度の高いものでできているという自負はある。

 そういうのと違って妖力もリアルタイムで集まり続けている自覚もある、嫌……あった。妖力を集める器から離れた弊害だろう、今は感じられない。

 

 「ところでだけどさ」

 

 歌川が、質問してきた。

 

 「君はどうすれば比良坂命依は人間に認められてたと思う?」

 

 「認めるのがどういう定義になるかによるけど……難しいよ、人は自分と違う部分のある存在を対等に見る事はできない。上に見るか……難癖を付けて下に見るかだ、それでもっていうなら……彼女は、戦っている所を誰かに見てもらうべきだった……かな」

 

 「そうか」

 

 「…………………参考にはなったけど……活かせる場面がないか」

 

 「ごめんね」

 

 「嫌……良い、そういうものか……」

 

 「そういうものだよ………!?」

 

 突然、川から狐の面が浮かぶ。

 違う、川から飛んできた。

 

 「誰だ!!」

 

 狐の面をした虎とでも言おうか?どう見ても虎の顔を模した肩、その上から尻尾や面など、狐のアクセントを付けたような……そんな意匠の、怪人が現れた。

 

 「初めまして……かな?僕の名は十六夜九衛門」

 

 どんな丁寧な口調、態度を取ろうとも、腹の底ではこちらを見下してそうに見える。気を許してはならない……

 

 「……妖?人?」

 

 「それは、そちらもじゃないかな?近づいてようく分かった」

 

 「残念、今は妖だけ」

 

 「確かにそうみたいだね……」

 

 「で……こんな所にまで何の用?能動的にこんな所に来るのは余程の自信家か、馬鹿だよ」

 

 「これを見るがいい」

 

 「!!」

 

 九衛門がかざすのは……一つのしゃれこうべ、だが……ため息を吐きたくなる程に清々しい光を放って在るそれは、一目でただの人骨ではないと分かる……妖巫女と同等の力を持つ。

 なんだろうと思って見ていると、命依は先程と比べようがないほどの憤怒の表情を見せる。

 

 「返せ………」

 

 命依は九衛門に近づく。

 

 「それは私のよ!!」

 

 「なるほど……比良坂命依という人間から産まれたものが君という訳か、哀れな亡霊よ……僕達の糧となるがいい」

 

 「そうか………それは比良坂命依の遺物か!!」

 

 「御名答」

 

 正直、探せばあるかもしれないとは思った。

 すず……その前世も天照を宿しているとする、それ故に生命力を大量に持ち合わせており、妖も虫の如く集る……ならば、その生命力を宿す肉体は、ひたすらに頑健だったに違いない。だから……多分骨も丈夫。

 

 「フフフ……」

 

 画現術・蟒蛇(うわばみ)!!

 祓忍法・竜巻(たつまき)の術!!

 歌川のカンバスから出た長い蛇が命依に絡み、後退させる。

 

 「きゃあん、ちょっと!?」

 

 若干喘ぎながらあたふたしているのを見ていると癖になる気がしなくもない。

 その直後、巨大な竜巻が吹く。直前に命依を蛇が巻き付かなければ、ダメージを受けていた。

 

 「熱くなりすぎだ、気持ちは俺も同じだが……」

 

 それでは力負けする。

 

 「それぐらいの強敵とみてくれ」

 

 「優しい古道具に感謝するんだねぇ」

 

 「こいつ……忍術を使った……祓忍なの!?」

 

 妖力を纏っていない、純粋な忍術。

 

 「そうと見て間違いないかな」

 

 「ていうか……五行仙もそうだけど妖が祓忍の忍術使うってアリなの!?」

 

 「五行仙?何かは知らないけど、アリでしょ……彼らの忍術は精神力を練って発動する。源はここでしょ?(自分の胸部分を親指で押す)オレ達だってそう……魄しかないけど、人間のように多岐にとはいかないけど、そこで思考する事はできる。それができれば、後は感覚を覚えてればいいし……」

 

 「長話ご苦労……だが、転生の経験も禄に活かせなかった小娘の亡霊が、この僕をあのクソジジイ共と一緒にしないでくれないか?」

 

 「こいつ……ボコス……君、手伝ってくれたら、さっきの事はチャラにするからお願い」

 

 「仕方ないね」

 

 デビルーク人の尻尾を模ったムチ(フォーク型の先端)を持ち出し、九衛門に投げる。

 命依も折紙を手裏剣に変化させ……飛ばし、攻撃。

 

 「さっきの風をもうお忘れかい?」

 

 先程と同じ術が出て、全て弾かれた。

 

 「これでいい……」

 

 歌川が龍の絵を描き、爪で九衛門に攻撃する。

 

 「仏の顔もなんとやら……だ」

 

 忍者の如き……嫌、そのものの動きで疾く避ける。

 

 「その骨を渡せ」

 

 「3対1でも良いが……」

 

 九衛門は手に持っている小槌を振るう。

 

 「十六夜流忍法・召喚の術」

 

 道路から何か箱状のものがエレベーターの如く上り、襖を中にある巨大なロボが動かす。狐のなど面九衛門が自分をモチーフに作り上げたと言わんばかりにデザインに面影がある。

 

 「来い」

 

 プロトタイプ・キュウビ!!

 

 「ロボか!?」

 

 「これが最優先なんだよ!!」

 

 九衛門はそれに乗り、帰ろうとする。

 

 「すずを呼んでダイダラボッチを使ってもらおう」

 

 「カイ〜ヘルプミー〜」

 

 呼んでも来ない、嫌……よく考えればカイが守るべき対象は別の地点にいる。自分が当然のように王妃の傑作に動いてもらうようねだるのはあまりにも罪深い。

 起きて呼ぶのを待つか?それでは間に合わない可能性が高い。

 

 「でっかい紙があれば、僕の画現術で対抗できるものを描けそうなんだがね〜」

 

 このままでは、シンケンジャーが来るかもしれない。今ののっぴきならない事態を知られるのは困る。

 

 「仕方ないか」

 

 その辺の木の棒を拾って、レーダー代わりに使う。

 

 「……何をしようっていうの?」

 

 「イメージして、君が最も恐れているものを」

 

 「……………?」

 

 この辺り一帯の思念を探る。

 

 「見つけた!!」

 

 妖怪達がイメージしているものを実体化させる。特に記憶に新しい、降って湧いたような死と恐怖の象徴……

 

 「織り成せ、イミテーション・カイ」

 

 影を招集させ、黒く丸い巨人の姿を形作る。

 シルエットだけになっているようだが構わない。

 

 「せいや!!」

 

 早速そのイメージと融合する。

 

 「丁度いい……そら」

 

 歌川は刀を描き、投げ渡してきた。デカくなったせいで、つまようじを投げ渡された気分だ。

 

 「これは!?」

 

 「日本で村正と呼ばれる刀……君にはピッタリだろう……素晴らしい戦いへの礼だよ」

 

 「画楽君……テンションが過去一でおかしいよ」

 

 「こうか……」

 

 早速鞘から刀を抜き放つ。

 この刀、イメージで伸縮を変えれるらしい。

 

 「とう!!」

 

 カイに元々あった翼を使ってバッサバッサと飛べる、だからすぐに追いついた。

 

 「イミテーション・カイでアタック!!」

 

 急降下して、両足で蹴りを入れる。

 

 「邪魔をするなら、ついでに君を狩っておこうか!!」

 

 「違うね、今から始めるのは……狐狩りだ!!」

 

 〜一方その頃〜

 

 「なんだあれ……」

 

 ガーランド達は、九衛門の乗るロボを見ていた。

 

 「狐のロボだな」

 

 「分かんないわね……(チラッ)」

 

 ルンは二ノ曲に視線を送る。

 

 「初めて見る……というより、俺達の管轄ではない……嫌、それより」

 

 「敵かもしれないのね……行ってきなさい、ガーランド」

 

 「え?」

 

 「ララは今いないし、ヒカルは武器がある訳じゃないし、頼れるのはガーランドだけなのよ……お願い」

 

 「……………へーいへい………」

 

 ガーランドは自分のバイクに設置してあるデバイスを取り出し、いじくる。

 そして最後の大きなボタンを押して叫ぶ。

 

 「サイドウェイズ・トランスフォーム!!」

 

 ガーランドは、自分のバイクをロボットへと変形させた。

 

 「二十代前半の男が叫ぶのきついな」

 

 「ひどい……」

 

 そのロボットは専用のデバイスを使って遠隔操作で動かす事ができる。

 

 「後に引かない程度の温度と勢いで弾幕撃っときゃいいか」

 

 威嚇の意味も込めて、ビルの上に登らせて謎のロボットの前に姿を現す。だが、バイクの延長線に当たる大きさとビル並の大きさとでは向き合った時点での敗北感が強い。

 

 「何かいる……見物のつもりか?まあ僕も今は事を荒立てる気がないし、見逃してあげよう」

 

 「ハハッ来ねえな……撃ってくる気配もない、なら俺から何かする必要もない」

 

 「それよりこっちなんだよね」

 

 九衛門が振り返った途端、カイを模した黒いシルエットは村正を振るう。

 

 「フッ」

 

 プロトタイプ・キュウビも刀を抜き、応戦する。

 

 「なんだ?あのロボット、空に刀を振るっている?」

 

 「ああ……そうだな、何と戦っているんだ?」

 

 少なくとも、ダメージを受けているよう見える分、幻と戦っている訳ではないのは分かる。

 

 「なんというデカい(あやかし)だ……祓忍組合の知らせもない、突然発生したのか?今警報が出たか……似ているな、結城イチゴの乗っていたロボに」

 

 「(あやかし)?インフェルノの言ってたのか……」

 

 ガーランドはインフェルノの言葉を思い出した。

 

 『ガーランド、お前は(あやかし)というのを見た事はあるか?』

 

 インフェルノは地球に初めて来た時に見たそうだ。

 ロボット生命体だというのに、オカルト系の質問をしてきた、そのギャップが印象的で、ずっと覚えている。

 

 「俺達には分かりませんね……」

 

 〜一方その頃〜

 

 「はぁっ」

 

 村正を振るうも、プロトタイプ・キュウビは後退して避ける。

 

 「埒が明かないか」

 

 プロトタイプ・キュウビは指をこちらに向ける。

 

 「十六夜流忍法・子狐砲」

 

 プロトタイプ・キュウビは、背中に潜ませている子機からビーム砲を放つ。

 

 「これは……そうだ」

 

 刀を車輪のように振り回すと、ビームを弾く事ができた。

 

 「へえ……すごいな」

 

 「そろそろ君の動きに慣れてきたかな……」

 

 「ああ……こっちもそろそろ慣れてきた……(まが)()()(しん)(えん)

 

 そうあれと、そうなると、考え、纏まって、産み出されてきたもの

 そのような存在だからこそ行使できるものがある

 権能

 龍が火を吹くように

 鳥が腕を動かし飛ぶように

 サンタがソリと氷を繰るように

 そういうものであるならば

 できて当然と思われる現象

 

 「増えろ」

 

 比良坂命依にとって災い、怖いと思うもの、「大勢から敵意を向けられる」状況を利用する。

 具体的には……自分の数を増やす。増やして倒す。

 

 「……十六夜流忍法・分身の術!!」

 

 プロトタイプ・キュウビも頭数が増えた。

 

 「んじゃあもっと行くよ」

 

 その数に比例してシルエットも数を増やす、あくまで相手を葬るための大勢なのだから、必然九衛門に対して大勢でなければならない。

 

 「その力は……まさか」

 

 「はぁ!!」

 

 プロトタイプ・キュウビに向かって真っ直ぐ振り下ろす。

 

 「縦・一文字斬り!!」

 

 ×こちらの人数分!!

 

 「なんという量、なんという鮮度、素晴らしい!!」

 

 そう言う残してプロトタイプ・キュウビは爆発する。

 

 「これにて……一件落着……なーんてね」

 

 増えた分を元に戻す。

 戦利品の如く、しゃれこうべが地面へ落ちていく。

 

 「よっと」

 

 すぐさま、シルエットから離れてキャッチした。

 "恐れ"を感じる、あまりにも一方的な、高じて憎しみに変貌する事すら容易な程の……

 とてもいい、恐れの感情をエネルギーにしている存在にとって良い遺物になる。

 桃太郎に切り払われた分の補填になる。

 

 「はい」

 

 取れるものは取って、歌川に渡した。

 

 「ありがとう……」

 

 心からの礼である事は分かる、だが……この後二人に襲われそうな、そんな考えが頭をよぎる。いささか思念を吸いすぎたか……比良坂命依を怖いと思う気持ちが、そのまま乗り移ってきた。

 

 「後は供養なりなんなり、よろしく」

 

 利用されないように……

 

 「これからどうするのかな?」

 

 「一旦戻るよ」

 

 自由なのは良いが、安心感が足りない。

 不便ではあるが、それでも構わない。

 

 「それはまた……どうして?」

 

 「歌川画楽って、何を指す?って言えば……分かってもらえると思うけど」

 

 歌川は、考えこんだ後、合点がいったように手を叩いた。

 

 「…………なるほど、そういう事か……難儀だな」

 

 「じゃ」

 

 その場を後にした。

 

 「自分の遺骨を供養するって、変な感じ……すずも呼ぼうかな」

 

 「それが終わったら僕は行くよ」

 

 「どこへ?」

 

 「結城イチゴ君の所、多分祓忍の所かな〜?」

 

 「ならあっちを追いかけた方が……」

 

 「何、心配はいらない」

 

 二ノ曲がやってくる。

 

 「おい、強大な妖力を持ったものがこっちにいたようだが……」

 

 「去ったよ、もう出てこないかもしれないね〜」

 

 〜風巻邸〜

 

 すずがおやつを食べに外へ行っていたため気が付かなかったが、結界が張られていた。帰れない。

 

 「ちゃっかりガードを固められてる……二ノ曲って奴か……嫌、さっきはなかった変な匂いもする」

 

 要として、魔除けの香を染み込ませた札が貼られている……力づくで剥がせそうだが、触れた瞬間向こうに伝わる可能性はある………対処はできない事はない……が、戦って得られる利益と生じる危険を天秤にかけると、危険の方が遥かに大きい。危険は、存在の全てが知れ渡る事、三〜四、狐面含め五人程くっきりした存在を知られたが、彼らは情報共有という面で祓忍本職よりは劣るだろう。仮に自分の事を伝えられてもフワっとした事しか言えない筈だ……利益と言っても単なる力の誇示、引き返して去るのが一番だ。

 

 「まあいいや、自由時間が長くなったと思えば」

 

 そう考えると、やってみたい事が色々と浮かんだ。

 

 『化け猫か!?お前とも縁ができたな!!』

 

 『離れろ!!貴様、王同士でこういう事をするのは領土の侵略になるぞ!?』

 

 ニヤリと、笑みがこぼれる。

 

 〜川岸〜

 

 九衛門は、プロトタイプ・キュウビを撃ち落とされ、川の中にダイブイン、泳いでなんとか帰路についた。

 立って待っていたのは……晦正影。

 

 「見物だけとは……御人が悪うございますぞ」

 

 「ホッホッホッまさか意気揚々と言って、やっている事が死体集めとは思わなんでのう……」

 

 「これを見て、そう申せましょうか」

 

 比良坂命依の、残りの骨を見せた……人体模型の如く、キレイなままの骨を……誰かの気配を感じ、一旦分割させていたのだった。

 

 「ほう……これは!?」

 

 「生命尽き果て幾百年を経てして尚枯れぬ生命力、そしてこの恐れ、素晴らしいとは思いませぬか?過去のものであるため、一息に摂取する事しか叶いませぬが」

 

 「なんという、人間の浅ましさを詰め込んだかのごとき恐れの力、でかした、九衛門!!」

 

 「もっとも……これは十割私の手柄なので、手伝ってくれなかった正影様の分はありませんがね」

 

 「ええい、ひどいぞ、八衛門!!あんなものまで隠しておいて……」

 

 「あんなもので驚いてもらっては困ります……改良を重ねた、とっておきをいつかご覧にいれましょう」




いかがでしたか?面白いと思っていただければ嬉しいです。
そんな必要はないけど、もし命依以外に歌川先生を祓えるのがいたらその人はキラメイジャーの熱田とかクランチュラみたいな方と思います。
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