スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちはもしくはこんばんは


第17話 おもちゃ屋へGO!! Cパート

 イチゴはシミュレーターにて絡繰機人・測型なるものを用い模擬戦を行った。

 敵も全て同じ型、色だったが量産機で戦ってると思えばやりやすい。

 近づいて、ゆっくりめになるが左右のラッシュを叩き込む。一機撃墜。

 

 「お見事、ですが前に出すぎです、囲んできますよ」

 

 四方を絡繰機人に囲まれ、徐々に距離を詰められた。

 

 「なら……」

 

 イチゴは腹部の手裏剣を射出。

 床に数発ばら撒き、こけさせる。

 一機身動きが取れなくなったところ、すかさず近づき、ラッシュして撃墜。

 その瞬間、ロケットパンチが数発、飛んでくる。

 一発直撃。

 その攻撃に乗じ、ロケットパンチの勢いに身を任せ後退……距離を取る。

 

 「攻撃後に反応……やはり、祓忍として修行を受けてきた人程の反応速度はないみたいですね」

 

 「……………あの人達と同じ括りにしないで?」

 

 距離を取ってから時計回りして、機会を探る。

 恋緒が動かしてる訳ではないらしい、同じ軌道を描いて追いかけるか、手裏剣を撃ってくるのみ。

 早く済ませたい。

 手裏剣を拾って持ち、斬りつけて撃墜。

 

 「おお……これは」

 

 残り一体……

 

 「最後だし……えーい」

 

 アッパーカットで絡繰機人を吹っ飛ばす。

 すぐさまロケットパンチを射出、飛んでいく絡繰機人を掴む。

 同じタイミングで足を使ってジャンプ、敵の絡繰機人に乗っかる。

 地面とイチゴの操る絡繰機人の二重の重みによって、絡繰機人に大ダメージ、そのまま撃墜。

 イズナ落とし(もどき)、極まった。

 

 「終わったよ」

 

 桃太郎と戦ってきたためか、量産型の絡繰は最初から敵ではなかった。

 それでも「集中」してなければ危なかったが……

 

 「これ反応速度が合わなくて祭里達には不評なんだよね……『遅すぎ』って」

 

 確かにずんぐりむっくりな体型の問題か、機体の敏捷性の問題か……敵味方両方動きがUFOキャッチャー並みにゆっくりで、高速戦闘にはついていけない気もする。忍としての戦闘に慣れていればどうしても『見えているのに対応できない』状態になる。

 

 「今回の成績は、後でフィードバックしておきますね〜〜〜あ、テストは合格です」

 

 「おめでとう」

 

 「息子が思ってた数十倍上手かった件について」

 

 「最後の攻撃が良い感じでしたね……運動性能のアップに期待が持てそうです」

 

 称賛を聞いていると、少しだけ自分を良いものに感じられた。

 イチゴは少し嬉しくなった。

 

 「………」

 

 ヒカルはともかく、ノノが何か言ってきそうだと思ったが何もない。

 違和感を感じ、イチゴは声をかけようとした。

 

 「みんな……終わった……」

 

 「うう……」

 

 ヒカルが泣いていた、滝のように流れるその様を見て男泣きとはこういうものかとなんとなく思った。

 ついでにノノもその勢いではないが涙ぐんでいる。

 

 「どうしたの?」

 

 「イチゴ……様、御二人の話を聞いていると……ついですね」

 

 「幾年(いくとせ)に渡る想い、お話を聞いて感じ入りました」

 

 「?」

 

 「お兄様もお聞きになってください」

 

 ついでにイチゴも、歌川画楽と、比良坂命依の身の上話を教えてもらった。

 そこに美柑も加わる……

 要約すると……彼にとっては悲恋、彼女にとっては悪霊に至るまでの出来事。

 来世の肉体を狙って、祭里達と敵対した事。

 そしてなんだかんだで、今に至る……という話をしてもらった。

 

 「悲しい話ですね」

 

 美柑はそう言う……

 

 「人間を滅ぼすという事は……私達もですか?」

 

 「ノノ様……もしそうであれば、私の後ろへお逃げください……グス、復讐を掲げる者の一念を前に、我らなぞ無力……なれど、その炎にノノ様を巻き込む訳には」

 

 「今はしないよ、ていうか話聞いてそんな風になってる君達を襲えないじゃん」

 

 「うふふ……」

 

 すずはその言葉を聞いて、嬉しそうに笑った。

 

 「何か」

 

 「命依、変わったなって……」

 

 イチゴからしてみれば、顔色とか、雰囲気とか、言われなければ幽霊の類と気付かないような……生きてる人間みたいにしか見えない。変わるほどの何かがあるようには思えなかった。

 だが……当事者がそう言うなら、そうかもしれない。

 

 「そうなんですね」

 

 「イチゴ……仏頂面のまんまでいないで、感想言ったら?」

 

 「では……また同じような事があっても大丈夫(・・・・・・・・・・・・・・・・)ですね」

 

 「!?」

 

 「え?」

 

 名声を手に入れた、それに比例して力を増した。

 力が無いから、水害の人柱として沈められる好きな女の子を助けられなかった。

 であれば、今なら?今同じシチュエーション………人柱として死ぬ運命の誰かを前にすれば?

 どうする?歌川

 

 「オレが歌川先生であるなら、転生後の命依さんの力になる事と……その力で同じような悲劇に遭う誰かを救う事に同じぐらいの意義を感じるのではと思いました。少なくとも、体はそう動く筈です」

 

 それが、後悔を身に刻むという事だろう……

 

 「……………」

 

 投げかけた言葉が予想外だったのか、目を大きく開け……俯く。

 

 「画楽君……」

 

 だがしかし、すぐさま顔を上げて笑顔で両手を叩く。

 

 「あっはっは!!さすがだ、さすがだよ……」

 

 何が流石なのか……イチゴは不気味に思った。

 

 「でも、そういう状況はあの時以来見ていない」

 

 「そうですか」

 

 「それで良いんだよ……あんな事はない方が一番だ……人が人を贄にする事、大勢で一人の人間が死ぬよう見守る事、誰かの大事な人がまた一人消えていく事なんてね」

 

 「……………」

 

 イチゴの言葉が引き起こしたのか、湿っぽくなってしまった。

 言葉が過ぎたと、反省するしかない。

 

 「……………ヒカル君、何か書けた?」

 

 すずがその空気を壊してくれたのは感謝しかない。

 

 「どうぞ」

 

 彼が描いたのは、下半身が魚となり……人魚と成った比良坂命依。

 

 「題目は人魚姫……お話を聞いてつい……インスピが加速して」

 

 たゆたう水の中で悠々と泳ぐ彼女の姿、そこには人柱として沈められた彼女を知る誰かにとって、どんな存在でいても無事であって欲しいという希望が込められている。

 逆を言えば、これは彼女にいなくなって欲しいと願った誰かにとっては絶望そのものだろう……彼女は不滅となったという認識を、否応なく刻みつけられる事になる。彼女が沈められた川、当時の文明レベルならまだたくさん利用するだろうし。

 

 「画楽君」

 

 何かを期待する目線を放っていた。

 

 「待っていてくれ……ヒカル君への返礼をしてからにしたい」

 

 水の中、そして魚の大群を描いている。

 

 「それは……」

 

 「昔見た情景さ、これを君に渡したい」

 

 「身に余る光栄、ありがとうございます」

 

 「ヒカル君、今回はもうこれでおしまいでいいかな?」

 

 「分かりました……キングへの道は遠い」

 

 ヒカルは、戦いを終えて疲れ切ったかのように椅子にもたれた。

 

 「はい、お待ちどう様………」

 

 恋緒から万能工具を返された。

 

 「イチゴ君の武器に我々の武器によく使う術式を施しておきました……前より切れるようになったと思います」

 

 早く終わったようにイチゴは感じた、喫茶店でパスタを頼むのと同じほどの時間しかかかってない気がした。

 

 「どれどれ……」

 

 イチゴが試し切りの台を探すと恋緒は禍々しい色の負念の塊をだしてきた。

 

 「異魂です、どうぞ」

 

 「ありがとう」

 

 イチゴは万能工具を振り下ろした。

 すぐ異魂とやらは真っ二つになる。

 勢いのまま、みじん切りにした。

 もう形は保てないだろう……

 確かによく切れる。

 

 「おお……ありがとうございます」

 

 「では、伊賀崎家の件、よろしくお願いしますね〜」

 

 恋緒はそう言ってイチゴにピースマークを向けた。

 

 「……………」

 

 イチゴもピースマークで返す。

 特に意味はなく、おはようと言われておはようと返すのと変わりはない。

 

 「………」

 

 「ノノちゃん?」

 

 「おば様……私とていつかあれ以上に成長するので、見ててください」

 

 「うん……分かった」

 

 成長したところで、イチゴがノノの事をどう思うかには関係ないだろうが。

 

 買い物も終わり、おもちゃ屋を出る。

 

 「またのお越しを、お待ちしております」

 

 〜帰り道〜

 

 「キングにはなれなかったが見てくれ、直筆のサイン入りの絵をたっぷりもらったんだ、父様に、母様に、妹に、爺様に、他の人達にも土産ができた」

 

 絵画素人には分からないが、価値あるもの揃いなのだろう。

 

 「大丈夫?事実上タダで手に入ったみたいだけど」

 

 沙姫の父にまで会った事はないが、そういういかにも美術的価値の高そうな逸品は高い金を出して手に入れる事に意義を感じていそうなイメージはある。

 

 「…………ありのままを話し、納得してもらう他なく…………」

 

 ヒカルが満足して渡すのが一番だろう、決して価値がない訳ではないし……

 

 「一枚ミミお姉様へのお土産にしてはいかがです?」

 

 ミミ……王と王妃の娘なので、ノノの姉になる。

 

 「なんだよノノ藪から棒に」

 

 「実はミミお姉様と婚約者候補なんですよ、ヒカル」

 

 「そうなの?」

 

 あり得るだろう……

 顔馴染みではあるし、イケメンである。

 王族ではないが大企業の御曹司なので地球の中では地位のある方、デビルークの親衛隊隊長の息子という事もあって実力もある(と思う)、少なくともナナシ連中は生身で倒せる。

 身体の型が同じなのも良い。

 ララの婚約者候補の中には、宇宙人だからかすごい見た目の奴が多いと聞く。

 例えば、アリの姿をしたリア星の王子とか………がいるかもしれないとイチゴは恐怖した時もあった。

 もし、イチゴ達の父親でなく、イチゴの想像したような婚約者と結婚して子供が産まれたら、そいつはデビルーク人とアリのハーフになる。アリまでならトゥーン化して脳内で処理できるがハーフになるとどうなるか想像もつかなく恐怖しかない。多様性もへったくれもない。

 

 「実はそうなんです、イチゴ様」

 

 「へー、姉さんをよろしくね」

 

 「……あはは…………」

 

 ヒカルは苦笑いしつつも、話を変えるようこう付け加えた。

 

 「実は先程聞いた伊賀崎家といえば話すタイミングを逃していた事があるのですが」

 

 「?」

 

 ヒカルの言うには、小狼(シャオラン)達の探している羽根の手がかりが見つかったそうだ。

 

 「本当?」

 

 「伊賀崎家の人が何かを知っているらしく、モコナがめきょっとなっていたようで、その線でいけばもう俺達がでる幕はなさそうです」

 

 何故かは分からないが、モコナはサクラの羽根が近いとめきょっとなるそうだ……ゴールは近い。

 

 「今までも充分よくしてくれたって彼らなら言うよ、オレからも……ありがとう」

 

 志葉家とは別に、天条院家は無関係の人間の相談に乗ってくれた。

 世界で四人、そしてモコナ……強くはあるけど、世界の中で生きるにはそんな人数では不安だらけだろう……

 

 「母様にも、イチゴ様がそう仰った旨、伝えておきます」

 

 伊賀崎家の人に会う事になったし、モコナにまた会えるのではとイチゴは思った。もう羽根を見つけて別の世界に行ってたら叶わないだろうが……

 

 「イチゴ……」

 

 美柑に呼び止められた。

 

 「?」

 

 「聞いてみたかったんだけどさ……」

 

 美柑の声が、うわずっている。

 シリアスな質問がくるという確信を得るには充分すぎる程だった。

 

 「何?」

 

 「イチゴさ……何言われたの?」

 

 ズボシメシの一件の事を言っている。

 聞かれないで済んだら、どんなに楽だったか………母さんのせいだと、言えたらどんなに楽だった事か……

 

 「あ……それ私も聞きたかったです」

 

 ノノまで話に入ってきた。

 黙って逃げ切る事はできなさそうだ。

 

 「……………………」

 

 「教えてくれなきゃ、分かんないよ」

 

 「母さんが想像してる通りだよ」

 

 やっとの思いで、口に出せたのはその一言。

 

 「?」

 

 ノノには分からなかったようだが、美柑には察しがついたらしい。

 

 「………………ごめん」

 

 心外な程に沈痛な表情で美柑は謝る。

 

 「気にしないで」

 

 そう、美柑は昔からの望みを叶えただけ。

 イチゴがそれに賛同できずにいる……言ってしまえばそれだけの事なのだ。

 

 「だから、放っといてよ」

 

 どうしようもなく……認められない。そんなイチゴがいたところで、美柑の……みんなの重荷になるだけだろう。

 

 「…………」

 

 「ダメだよ、イチゴ君……そんな風に言わないで、お母さんなんでしょ?」

 

 何も知らない人がそれを言うなと、美柑のやった事を添えて言ってやろうかという考えが浮かぶ。

 その女は、血の繋がった兄と…………

 そこで、頭の中で反芻したきり……口の先から出てこない。

 

 「どうしたの?」

 

 「すずさん、イチゴ様は実は反抗期を患っておいでなのです……しかも完治する見込みはない、分かってやってください(小声)」

 

 「あ、ごめん」

 

 微妙に誤解を招く発言だが、補足する気力もない……

 

 「イチゴ!!」

 

 昔から聞き慣れた声に、動悸がした。

 

 「お父様!!」

 

 リトがやってきた。

 この星の、この田舎町でも問題なく過ごせるようなスーツ姿で。

 ノノ、ララ、美柑とくればそう来ても別におかしくはない。

 

 「体はもう大丈夫なのか?」

 

 「うん」

 

 「そうか……良かった……急に倒れて、いなくなって、心配したんだぞ」

 

 自分にそこまで心配される価値があるのか、イチゴには分からない。

 

 「ごめんなさい」

 

 「いい、いいんだ……それより話したい事があるんだけど」

 

 「話す事はないよ」

 

 「数年ぶりに会ったんだし、こっちも聞いてみたい事が」

 

 「ないんだ」

 

 冷淡に言ったつもりだが、その分感情が出てしまった……

 

 「頼まれ事があるんだ……早く行かないと」

 

 「イチゴ……」

 

 「オレがいない方が良いでしょ……お互いに」

 

 「そんな事ない!!」

 

 リトはイチゴを抱きしめる。

 

 「イチゴだって大切なんだ、いない方がいいなんて思ってない!!俺が王様だからこうなるっていうなら……俺は……」

 

 「やめてよ!!」

 

 イチゴはそれをふりほどく。

 

 「そうなるからオレがいない方がいいんだってなるんじゃないか!!」

 

 「お兄様!!」

 

 思う事はある、だが……リトが王をやめれば解決する話じゃない……イチゴだってリトとその彼女達がずっと平和に暮らして欲しいと思っている。だがそこに自分がいるべきじゃない。イチゴのために、リトの王様としての云々に支障をきたす事、それが嫌だった。近くにいられると……そればかりを気にしてしまう。

 

 「こい、カイ!!」

 

 カイを呼んだ。

 一目散にカイの中に隠れる。

 

 『皆様揃い踏みですね……会いたか』

 

 「そうだ、だからこれ以上オレをここにいさせるな……(小声)」

 

 一人だけならまだ当たり障りなく応対できる、だが両方来た今……精神がもたない。

 

 『みんな降りてこいとそれぞれ言っておりますが』

 

 「自分の使命を最優先して、今がその時なんだ」

 

 カイはおそらく、『イチゴを守る』ために作られている。だから、今イチゴの削られていく精神を守ってもらう。

 

 『しかし……』

 

 カイは尚もイチゴの要望を渋る、確かに眼の前にいるのは優しい人達ばかり……だがイチゴには約3名、受け入れられない人間がいる。

 

 「ならオレが動かす!!」

 

 レバーを握った途端、すずを追いかけてきたであろう命依達が身構える態勢を取る。

 何がそうさせるのかはイチゴですら知る由もない……が、退散だ。

 

 『マジです?』

 

 「マジだ」

 

 「イチゴ!!」

 

 リトとモニター越しに目が合う……

 彼を見ていると、自己嫌悪で心が侵食されていくのをはっきりと感じる。

 

 「イチゴ……」

 

 美柑とも目が合う……

 これ以上ここにいると、何を言うか分からなくなる。

 

 「では……お元気で」

 

 カイに乗って、東京へ出発した。

 

 「お兄様……」

 

 「イチゴ君……」

 

 「あんなにバッサリいかれるとは、思ってなかったな」

 

 「うん……」

 

 「年月で済む問題じゃないって事でしょう、陛下」

 

 「………………そうだな……嫌がれるので……逃げるので済んだだけ成長した……のか?」

 

 「え……あれで?」

 

 「何よ?あのロボ……プレッシャーだけなら五行仙達より上じゃん、ねえ……画楽く……」

 

 「………………」

 

 歌川は冷や汗をかいていた。

 

 「大丈夫?」

 

 命依は現代に蘇って以降、まともに彼が汗をかく場を見たことのない。それだけヤバいのか……

 

 「ああ……」

 

 そして、こう付け加える。

 

 「想定以上だな」

 

 「イチゴ君……心配だね、ノノちゃん」

 

 「大丈夫です、お兄様が向かう場所は既にホームページで見つけました……折を見て突りにいきます」

 

 ノノはすずにスマホを見せてきた。確かにアロハシャツと麦わら帽子を被った年寄りの男がホームページを開いている。

 

 「あ、本当だ」

 

 「それより、お父様……お兄様と何があったのですか?」

 

 「………………」

 

 言われてリトは黙り込む。

 

 「アハハ、なんて言おうか、出てこないな……」

 

 美柑に目配せをしても、同じような反応ばかり……

 

 「?……二人共……変ですよ?」

 

 「ノノ様、人は口が重くなり語れない事があるのです」

 

 「………そうですか」

 

 「…………………」

 

 「どうしたの?すず」

 

 命依がすずに聞いた。

 

 「イチゴ君そっくりのあの子……どこ行ったのかなって」

 

 「知らない、前に会ってから音沙汰ないし」

 

 「え?どういう事です?あ……すいません、自己紹介が遅れました、結城リトと申します……息子と娘の件、感謝します」

 

 リトはすずに挨拶を交わす。

 

 「あ、どうも……」

 

 「それで……そいつの話を聞かせてください」

 

 命依は、イチゴにそっくりな妖の話をした。

 妖に関わりのある家系ではなさそうだった、だからその能力の話は省いた。

 代わりに、品定めするような……なめまわすようないやらしい目つきで見られた恨みつらみが主流になったが。

 

 「俺も……いえ、私も歩いているところを見ました……歌川先生と絵を描いたのもその方なのでしょう」

 

 「さっきも思ったけどそれ……多分イチゴとは関係ないと思う……ヒカル君は忘れてるかもしれないけどイチゴは絵を描くのが苦手なんだよ、だから率先して絵を描かないの」

 

 「なんだって!?」

 

 歌川のメガネがヒビ割れた。

 

 「それは……克服させねば……」

 

 「女の子をそんな風に見るのができるぐらいなら、俺達はもっと一緒にいられたんだ……」

 

 「陛下………!?」

 

 電子音がした。ヒカルは、スマホを手に取る。

 

 「父様経由か……そろそろ戻ってこいと大臣の人が」

 

 「……マジか、早いな……ノノ、帰ろう」

 

 ノノは、一旦帰った方が良さそうと思い、リトの言葉を承諾する。

 

 「仕方ないですね」

 

 〜日本 某所〜

 

 辿り着いたそこは、かつて国があったとされる場所……

 もはやその面影もなく、ただの道路と化している場所……

 

 「さてと」

 

 それっぽい名前を彫った木彫りの像を掲げた。

 すずという妖巫女の存在は、様々な知識を与えてくれた。

 折神という、命のパッケージを。

 折って形を与える事で、込める命にどういうものという方向性を加えていた。

 妖という存在からしてみれば当たり前だが方向性を定めれば、何にでも化けられるかもしれない。

 邪馬台国、その治世の当事者である視点。

 神の位に当たるものは記憶の持ち越しという形で命の枠を飛び越える、奇跡だ……そんなものを、信仰次第で生み出せるという。

 強力な手足が欲しい、なれば強い妖を捕まえねばなるまい。

 強い妖は、現代からは現れないが……現代まで生きている。

 必然、有名どころの存在を探すしかない。何百年先まで語り継がれるような………

 いるいないは問題じゃない、信仰とは共通認識が生み出す力、いると思われていればそう思う人間達の手で基型は既にできている。

 後は器を作ってかき集めれば良い。

 テストケースにするものは……すずの原点である壱与と同じ時代にいたとされる

 

 「集え……かの国と争った、クナ国の王……クコチヒコ!!」

 

 〜翌朝 東京〜

 

 「待ち合わせ場所はここかな?」

 

 イチゴは多少ふらふらしつつも、伊賀崎家の人との待ち合わせ場に着いた。

 衝動的に飛ばしたせいか、いつの間にか夜が終わって朝焼けが見えている。

 

 『なんでリト様と一緒にいただけでそんな風になるんですか』

 

 カイはステルス状態を続けながらも、イチゴに質問してきた。

 

 「聞いてない?」

 

 『その辺あまり』

 

 「……教えない」

 

 『えー!!今の、教える流れでしたよね!?』

 

 「…………………仕方ないな……………子供ってのはさ………親が道を選んで、選んで、選びまくったその先にいるんだよね……」

 

 選べなかったのもいるかもしれないが、それを言い出すとキリがないので省略。

 

 「反対を言えば、親がそれまで選んだ道を、子供は辿れない」

 

 何を思って、今に至るのか……

 どんな望みを抱けば、それができてしまうのか………どんな挫折を経て、どんな達成感を経て、どんな葛藤があって……

 そこがすっぽり抜け落ちて、結果だけ享受させられる。

 

 「辿れないから分かりっこないんだ……それを選ばせた親の激情なんて……嫌、ついていけないの間違いかな?」

 

 『意味が分かりません』

 

 「だよね」

 

 『今の話で分かったのは、イチゴ様がワガママでララ様達を困らせてるという事です』

 

 「……そうかも」

 

 『しかしご安心を、私はそんなイチゴ様をお守りするために作られたのですから、あんまりな命令以外ならいくらでも付き合います……感謝してくださいね』

 

 「……………ありがとう」

 

 一通り話しきると、紙飛行機がイチゴに向かってきた。

 そのままイチゴに衝突、はらりと紙飛行機は地面に落ちる。

 イチゴは紙飛行機を拾った。

 幼稚園児がイチゴの方へ向かっていく、おそらくこの子が投げたんだろうと察する事ができた。

 イチゴは屈み、紙飛行機を手渡す。

 

 「お兄ちゃんが邪魔しちゃった、ごめんね」

 

 「ありがとう」

 

 その幼稚園児は、先生の所へ向かう。

 イチゴはその子を見守るように、目線を子供に向け続ける。

 先生と思しき人物の隣に、丈瑠がいた。

 

 「殿様」

 

 「イチゴ」




いかがでしたか?
面白いと思っていただければ嬉しいです。
イチゴ君はその……思春期の入り始めぐらいに両親の関係知って拗らせたキャラという事でそこの所よろしくお願いします。
ラストニンジャルートを歩まねば(使命感)
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