スーパーロボット大戦Z Another Chronicle 作:レゴシティの猫
黄色いスポーツカーで歴戦のお兄さんが登場します。
「ふーっ」
蛾眉雷蔵は帰るやいなや、酒を煽った。
「どうした、帰るなりそのように荒れおって。戦勝もしておらんではないか」
晦正影は問う、足軽達を除いて特に話しかける相手がいないからとか、決してそういう訳ではないが……ないが……
「緑の奴……戦場に出た甥っ子があんな感じだったのを思い出してなあ……」
「ほう……そなたの親類であれば牙鬼の勇士となるか……して、其奴はどうなった?」
「◯んだよ、手柄を急ぎすぎてな……身内に俺がいたから、焦ったのかもしれん」
「そうか……不躾な事を聞いたな」
「何、戦に出て日も浅い者が敗れただけの話……そういう人間程、身の丈を見極められず、どう強くなれば良いかも分からず、苦悩し、果てていくのよ……」
そう言って、蛾眉雷蔵は飲む勢いを強めていった。何かの思いを押し流そうとするように、強く、大きく……
「お主……其奴の先を見てみたかったのか?」
「ぷふーさあて、どうだか……」
〜一方その頃〜
一旦、屋敷に帰る……
「この、大馬鹿者が!!」
その日は屋敷中に、ひどい落雷が起こった。
落とされる対象が千明だけとはいえ、屋敷中にまで響き渡る怒声は、聞くだけの側にもダメージがいく。
「近頃は修行も真面目にこなし、少しは侍としての自覚が芽生えたと思った矢先にこれよ」
「彦馬さん……あの時は茉子さんが使おうとして妨害されたので、その時動けた千明さんがなんとかしようとしたのは間違いではなかったと思います」
だが、その言葉は火に油を注ぐ結果となる。
「それで使えなければ意味がないではないか!!千明、年下の子供になぞ庇われて、お前は恥ずかしくないのか!?」
「………………」
「こんな事を言わねばならんとは……全く、お前が侍になるには早すぎたかもしれんな!!」
なんと、その言葉に続いて千明は謹慎を言い渡されてしまった。
千明は渋々といった風に歩み寄る。
「どうせ……」
千明はショドウフォンを構える。
「どうせ俺のモヂカラなんてこんなラクガキぐらいしかできませーんもんねー」
千明は、ショドウフォンで彦馬の頬にバッテンを描いた。
「おい!!」
半ば、取っ組み合いのケンカに発展する。
「止せ!!」
「ケンカはダメだよー!!」
止めに入ろうと近づいた者は全て、千明のショドウフォンの錆となった(頬に◯か×を描かれた)。
「────────」
ショドウフォンを置いた千明は、キレながらその場を去る。
「千明!!」
誰かが呼び止めたものの、足音はみんなを置いて、遠ざかって掻き消えていく。
仕方ないので……残された全員、ショドウフォンでイタズラをされた分の対処にあたるしかなかった。
不幸中の幸いといってはなんだが、筆で顔に◯や×などを書かれただけであり、拭けばなんとかなりそうだった。
「たく……爺さんも加減ってもんを知らねえのか」
黒鋼も拭きながら愚痴を吐く。
思えば、ダイテンクウの話になってからずっと千明の心を抉る言動、場面ばかりだった。
「ふたりとも、子供みたいなんだから」
「そうはいうが、千明にはああ言った方が伸びるのは黒鋼殿も分かっておるのでは?」
「限度ってもんがあるだろうが……叱った後は目一杯褒めるべきだと俺は父上やその臣下達から教わったぞ」
確かに、怒られてばかりでは……萎縮が勝つ。
「むう……言い過ぎたか……しかしあの程度なら……そこまで……」
「それと侍として自覚がある奴の行動っつったら、もっと強くなって、もっと前に出て、もっと名を上げて……認められて……だろ。あいつぐらいの年頃で……戦い始めて少し経った今の時期は特にな」
「ああ……確かに」
「そう言われれば、千明の気持ちも分からなくはないか……」
「ですがそれは、人と人が争う時代にあってこそですぞ……黒鋼殿」
「魔物相手でも言うほど変わんねえぞ正直」
侍の在り方は時代と共に変わっていくかもしれない……が、そこにある使命……そして願いはいつも同じという事か?
「どっちにしろ、ディスクを使えないままじゃこのままだ」
丈瑠の言う通り……この状況を打開する一番の手は、千明に自信を付けてもらう事、具体的には兜折神のディスクを使えるようになってもらうのが一番効く。
「でも……今の千明のモヂカラなら、扱えない事はないんじゃないかな」
モヂカラ素人の
「そうやったん?なら……なんで」
「ちょっとしたきっかけ次第って所かも」
「きっかけか……問題は、何がきっかけなのかだが……」
「ならば更に厳しく鍛えさせねばなるまい、向こうが目指すは殿であるなら尚の事……一人前の侍に育てあげるのがワシの使命と存じ上げております」
「分かるけどな……千明は俺じゃないぞ」
「む………」
ではどうすればよいのかと彦馬が悶々としている所……貸し与えられたスマホに、天晴達からの連絡が来た。
「む、誰ぞ連絡でもしてきたか」
「天晴さん達からの特訓の誘いですね、おれと黒鋼さんが呼ばれてます」
だが、モコナの言語の自動翻訳の関係上、ファイ達も行く事になる。
「しゃあねえ、行くか」
「暗くなる前に帰るのだぞ」
「はい!!彦馬さん」
〜伊賀崎道場〜
二人は、練習用に装束の予備をもらい、稽古に励んだ。
小一時間体を動かして、休憩に入る。
休憩の際、千明の話題になった。
「俺達が戦う前後でそんな事があったのか」
「ええ……千明さん、今までにないぐらいショックを受けてました……あんなに取り乱してたのは初めて見ます」
「会ったのは数回だが……千明って奴が、他の奴らに劣ってるとは思えなかったけどな」
天晴は、茉子と似たような事を言う。
であれば何故、使えないのか?
「モヂカラ……だったっけ?彼らの戦う力」
風花が聞いてきた。
「はい」
確か……文字を描いて、具現化する力で……戦闘時によく使用しているのを見る。
「忍タリティとは違うみたいだしね……」
「なんですか?それ」
「僕らの忍者としての心構えとか、いわゆる精神力みたいなものだね」
「だったらモヂカラとは違うな……あいつらが文字を書く時、体力の方を消耗していたように見えた」
黒鋼は常々無愛想に振る舞うが、見ている所は見ているようだ。
「特に前線で戦う5人は、各々が一族由来の文字を有していると聞きますね」
「火」「水」「天」「木」「土」とそれぞれが担当する文字を描いて、シンケンジャーは変身するのをよく見る。
「だから字を書いて変身してんだな」
「一つの属性しか使えないのか……魔法の方がよくないか?」
「またやっくん魔法ageしてるよ」
「やっくん、昔巷で噂になってた五色の魔法使いって確か……一人一つの属性しか使えてないらしいですよ?」
八雲の顔が、青くなった。
「だから協力する必要があるんじゃないのかな?」
「そうだぜ、おでんみたいにな」
「一応ディスクがあれば、他の属性でもいけるみたいだけどね〜」
その辺にいたキンジが話に入った。
「それはさておき、モヂカラって文字でございやすね……何かを思い浮かべて書くんじゃないんでやす?」
何故か、目から鱗が出るようだった。
「…………!!」
「ラブレターとか……好きな人を思って書く訳でございやしょう?あっしはやった事ないからよく分かんないんでやすけど……果し状とかもそうでやすね、これから倒したい相手の事を考えてから」
「あれか、込めるイメージがないとモヂカラの力を発揮しきれない」
「キンさん……そういえば、今どういう用件でここにいるのかな?」
「ここにいる全員を倒して、あっしは好天様に弟子として認められる……そういう約束でございやす!!」
意外な言葉に、
「そうなんです?」
「後おじいちゃん倒せたら弟子にするんだって」
その条件にだけは言い切れぬ違和感を感じた。
「ようし、キンちゃんの相手は俺達がしとくから……お前らは帰んな、千明って奴の所によ」
「……分かりました」
「良いのか?」
「まあ……良いでしょ」
「またね〜」
「お疲れ様です」
「
「ええ……」
「この前ので、相当評価もらってるようだな」
この前、伊賀崎流忍術道場に向かった際、ラストニンジャの好天と戦った。結果は、
今回の稽古も、最初の内は最大限警戒されているようだった。
「今日の話は、彦馬さん達にも共有しておきましょう」
「そうだね、それが良いよ」
〜一方その頃〜
千明は憂さ晴らしに、久しぶりにゲームセンターで対戦ゲームを行っていた。
しかし、うまく立ち回れず……結果、NPC相手に敗退した。昔なら、苦戦しつつも勝てていた難易度だったのに。
修行ばかりでゲームに対してブランクがあるからとか、そういう問題ではない……と千明自身は薄々察する。
晴れないのだ、心のモヤモヤが……そして、そのモヤモヤが、動きを鈍くしている。これでは憂さ晴らしどころではない、「遊んでくれてありがとうございました」を言われる画面のところで千明はゲームセンターを出た。
実戦での醜態、彦馬の叱責を受けたからとは言えるものの、仲間達に対して八つ当たり同然の暴走を繰り広げた事、そして今の負け……振り返ると、ため息が出てきた。続いて、慟哭にはならないまでも、思い続けてる言葉が一つ。
「はあ……俺ってカッコ悪ぃ」
丈瑠は少ない期間でモヂカラを上げる事に成功させ、虎折神さえぶっつけ本番で降してみせた。
流ノ介は真面目な分実力も高いし、何より舵木折神を自力で釣り上げた。
茉子はモヂカラのセンスを認められている、それによく気がつくというか、面倒見が良いのはよく分かる。
ことはは、ズボシメシの悪口に戦い終わるまで見事耐えきった精神力と、剣の腕も折り紙付き。
千明自身には………何もない気がした。
他のみんなと比べて、強みが思いつかない。
ここに来て、しばらく吸収してきた結果がこれだ。
そんな自分が、兜折神のディスクが転がってきた時、これを使えれば、認められると思ったのが間違いだったのかもしれない。謹慎と言われても、仕方ないのではと自虐的に思えてきて。
そんな自分が今からどうするかを考えてみた。
屋敷に帰って、謝るか……それでは、家出して帰ってくる子供そのものだ。
友達にでも連絡して、悩みを打ち明けるか……友達を戦いに巻き込みかねない。
『どうしたどうした、そんなに悩んでる顔して』
男性の声がした……他に人がいる気配はなかったので、千明は自分が声をかけられている事に気がつく。
「初対面の方にそんな馴れ馴れしい事聞かれたくないんですけど」
振り返ると黄色いスポーツカーがあり、窓を覗くと誰もいない。
「……?誰もいねえし」
『トランスフォーム!!』
黄色いスポーツカーはロボットへと変形する。
「トランスフォーマーかよ!?あ……見た事あるかも、俺はシンケンジャーの谷千明って言うんだけど」
『シンケンジャー……この前、外宇宙から飛来してきた怪獣相手に一緒に戦った……』
「そう、それ」
『なら一緒に戦った仲だ、ドライビングがてら話は聞くぞ』
言葉に甘え、千明はスポーツカーの姿に戻ったホットショットの助手席に座った。
セイバートロン星のトランスフォーマーは人類に友好的ともっぱらの噂だ。
悪い事はしないだろう。
「しっかし、よくこんな所まで来るよな」
聞くところによると、トランスフォーマーの活動拠点は、アメリカ辺りの海のど真ん中らしい。そこに科学者達の住居と研究施設を兼ねた街を作り、行動を共にしている。以前屋敷に来たガーランドという人間も、そこで活動してる一人だと千明はアヤに聞いた。
『なあに、たまたま通りがかっただけだ……ここは地球の中でも思ったより物騒な所だからな、俺達も微力ながら協力させてもらってる』
宇宙犯罪者のアリエナイザー、外道衆、牙鬼軍団、怪獣とくればそうなるのも無理はない。
『ところで、何を悩んでるんだ』
「あんたに言って分かるんですかね」
千明を乗せているトランスフォーマーは、真面目で、強くて、人当たりの良さそうで、丈瑠や流ノ介、茉子、ことは側に思えた。
『分からないかもしれない……だが言われなければ、絶対に分からない』
「仕方ねえ……」
千明は、今悩んでる事を話した。
シンケンジャーとして戦い始めて、しばらく経つ、その間稽古もしてるものの、実力的に伸び悩んでいる事。そして今回、失敗をやらかした事、それでこっぴどく怒られた事。叱られたというには、怒声が強すぎたためかそう思えない、思いたくないのが勝つ。
「それにしても、爺さん厳しすぎんだよな」
強くなれてないのはともかく、今の一言で叱責が来るような気がした……だが、返答は意外なものだった。
『……分かる、分かるぞ』
「え?分かんのかよ」
『俺もまあ、ラチェットのとっつぁんにさんざんどやされまくったっけな……デバスターの師匠にもか』
千明には誰の事か見当もつかないが、不思議と
「俺のイメージと全然ちげーもっとこう……あんたってこう……丈瑠とか、流ノ介みたいな奴だなって」
『そいつらが誰かはよく知らんが、買いかぶられてるな……逆を言えば、お前が俺のようになれる日が来るかもしれない』
「想像できねえや」
『やはり、話を聞いて良かった……自分の短慮で失敗して、みんなに当たって、一人じゃ謝って切り替える事もできなくて……そんな自分も、何もできなかった自分の無力さにも腹が立ってるって状況……俺も経験がない訳じゃない……仲間達の叱咤激励があって今ここにいるがね』
多少状況に違いがあるかもしれないとはいえ、このトランスフォーマーは、紆余曲折を経て成長してここに来たというのはよく分かった。
「マジか、んじゃあさあ、俺が今よりもっと強くなる方法って……分かるか?」
答えはすぐに帰ってきた。
『それは知らん』
「はぁ!?ここまで来てそれかよ!!」
『だが、今のまま強くなるっていうなら方法もない訳じゃない』
「マジで?じゃあ、教えてくれよ」
『そうだな……自分のスパークを見つめろ、て所だな』
「スパーク……どういう事だ」
『どうなりたいかをきっちり決めとけよって話だ、目標がアバウト過ぎると、どう自分を伸ばせば良いか分からなくなる。強くなりたいと言ったな……だが、どう強くなるんだ?肉体か?心か?』
どう強くなりたいか?どれも強くなりたい……が、一番は……
「強くなりたいのはモヂカラ………嫌、待てよ」
モヂカラを増やす……兜ディスクを扱えるぐらいに、ただ……修行すれば、勝手に増えると思っていた。
丈瑠は修行して、増やしていた。
それだけじゃないという事か?
だがこれで……どうすればいいか分からない、どん詰まりの状況からは、脱する事ができそうだった。
「なんか、ちょっとだけ見えるようになった気がする……ありがとさん」
『そいつぁ良かった』
どこで調べたのかは知らないが、志葉家の屋敷が近い所まで来た。
『この辺か……下ろすぞ』
「サンキューあんた、名前は?」
『ホットショット』
「そっか……またな、ホットショット」
『ああ……目一杯落ち込むのもいい……が、相棒にまで見限られないよう、ほどほどにしとけよ』
そう言い残してホットショットは去っていった。
去っていって数分経ってから千明は、熊折神を展開し、頭を撫でた。熊折神は気持ちよさそうにくつろぐ。
「お前にまで見限られないように……か、あいつ、俺より荒れてたんだろうな」
少なくとも……まだ熊折神は、千明の今の行動に応えてくれた。
だから、とりあえず屋敷に戻る事にした。まだ側にいてくれる熊折神の信頼に応えなければならないのもそうだし、彦馬にもそうだが、何よりことは達に謝っておかなければならない
いかがでしたか?面白いと思っていただけたら嬉しいです。
…………蛾眉雷蔵に甥っ子なんていない?戦国時代の御方だしいると思いました。