スーパーロボット大戦Z Another Chronicle 作:レゴシティの猫
「ほう……」
九衛門は三途の川に送った式神から封印の文字を聞き出す。
「狐よ、外道と手を結ぶのか?」
「手を結ぶとまではいかなさそうですが……御家老はアヤカシ共がお嫌いで?」
「我が牙鬼軍は御館様の治世を敷く前外道の者達に世話になった事があってのう……まあ、お主には分からんだろうが」
「で、ありますか。封印の文字……もし、志葉家の当主が使えるようになれば手の加えようによって御館様の身にも危険が及ぶかもしれませぬ故」
「……一理はあるか」
「そういう訳で蛾眉殿、次の日に出向をお願いしたいのですが」
「……………………」
蛾眉雷蔵は寝た振りを決め込んでいた。
九衛門の頼みを聞く気はないらしい。
「蛾眉殿!!」
苛立つ九衛門を、正影は制止する。
「まあ狐よ、見ておるがいい……交渉には相手を知るのが一番というもの、その点で言えば長年の付き合いのある分お前より儂のが
正影は、蛾眉雷蔵に近寄る。
「のう……蛾眉雷蔵……聞いての通りよ、いずれ来たる御館様の世に仇なす者の首を刈り取るのだ」
「軍師殿……俺ぁ、その手の戦なんざ気が進まねえよ。封印の文字だぁ?完成して向こうが攻めてきた時に叩き潰しゃ良いじゃねえか!!」
「そう言うと思っとったわ、貴様は……何、大将首を一つ、武将首をぞろぞろ……と数えれば良いのだ。いつもの如く攻めれば良い。そして手柄は早い内が良い、外道の者達が狙って間もない今が好機ぞ!!」
「チッ軍師殿には叶わねえな。乗った!!」
蛾眉雷蔵は出陣の用意を始める。
「結構なお手前にて、感服致しました」
「ホッホッホ」
〜翌日〜
5人で隙間センサーの鳴った場所に向かった。
家臣達だけと行動していると、外道衆を倒さねばなるまいと改めて丈瑠の気が引き締まりそうだった。モコナ達が、大分その場の雰囲気を緩めてくれていたのが身にしみて感じる。
「来たな」
比較的高所な所にアヤカシが立っている。
筋骨隆々の鎧武者といった出で立ちで、頭から肩にかけて口を開けた鬼の如き意匠が入っている。
「返すぜ、そら」
隙間センサーを手に持っていて、投げ落とされた。
「こいつ……!!」
「呼び鈴代わりって訳かよ、ふざけやがって」
「俺の名はウシロブシ……志葉家当主、恨みはないがお前が封印の文字を使えるようになると面倒らしいんでな……ここで死んでもらう」
「やれるならやってみろ!!」
丈瑠はショドウフォンを構え、変身する。
「待てーい!!」
蛾眉雷蔵が、単騎で突撃してきた。
「誰だ?」
ウシロブシは首を傾げた。
「我こそは牙鬼軍団一番槍を務める者、蛾眉雷蔵なり!!その戦、俺様も混ぜてもらおうか」
「…………………」
「俺は、後回しで構わんがね……さっさと始めて、さっさと殺し合っててくれ。その方が話が早い」
ウシロブシは数歩下がる。
「どうせならまとめて戦っても良かったんだが……勝負だ!!」
「……………」
多少拍子抜けしたものの、戦う事に変わりなく……丈瑠はシンケンマルを構えた。
「そらっ」
蛾眉雷蔵は太刀を振り下ろし、丈瑠はシンケンマルで攻撃を防ぐ。
「貴様、何度か戦ったな」
「そうだな……」
「問おう、貴様があの軍の棟梁か?」
多分、シンケンジャーのリーダーかと聞いている。
「…………ああ」
「やはり、赤いのはそうでなくてはな」
蛾眉雷蔵は小声で呟いた後、丈瑠のシンケンマルを打ち払い、距離を取る。
「……シンケンレッド、貴様に戦を申し込む」
「ああ……」
「殿!!」
「来るな!!」
丈瑠は流ノ介達の行動を制止した。
「こいつは一対一を望んでいる奴だ、俺一人でやる」
「よく分かってるじゃねえか」
自分の望む状況に持ち込める格好の相手で、不思議と相手に嫌悪感などはない。
それでも近づこうとすると、牙鬼軍団の足軽が現れた。
「オメェ達が三下でないならこの程度、凌いでみせろ」
「仕方ない、さっさと倒して、殿に加勢するぞ!!」
「「「「一筆奏上!!」」」」
流ノ介達は全員変身し、ヒトカラゲと応戦する。
「今日の丈瑠……いつもと様子が違う」
遠巻きに戦いながら丈瑠の動きを観察した茉子は呟く。
明らかに、意識して距離を取っている。
そして、何度も戦ってその強さも身に沁みてきている蛾眉雷蔵と、実力未知数の今日のアヤカシ。その組み合わせに、一抹の不安を覚えた。
「殿様……」
丈瑠は蛾眉雷蔵が振るう太刀をシンケンマルで防ぎ、脇差がきた時蹴りを入れて後退する。
素早い動きが求められる、二刀流という戦法による、手数の多さをものともしないぐらいの……
「!!」
左右どちらから攻撃するにしても、片方で止め、もう片方で攻撃する事が可能のようだ。
「オラオラ、どうした!!」
これでは防戦一方だ。
「はぁっ!!」
蛾眉雷蔵は太刀を振り下ろす。
「今だ」
丈瑠は屈んで回り、受け身を取る。
「!?」
「はぁっ!!」
そしてすかさず太刀と脇差のカバーしきれない部分……腹の部分を斬り上げた。
シンケンマルの一閃が蛾眉雷蔵の腹部を襲う。
「よしっ」
「杞憂だった……のかな?」
「やるな〜ならば!!」
蛾眉雷蔵は両手の刀を二振りとも空に掲げた。そしてどんどん、体が青く発光する。
「!!」
「俺の時にやろうとしてたやつか!!」
何が起きるかは知らないが丈瑠もディスクをセットし、迎撃に入る。相手が奥義を放つなら、こちらも奥義で迎え撃つ方が被害も抑えられる。
「牙凌道・雷幻斬り」
蛾眉雷蔵の刀二振りから雷が放たれる。
「シンケンマル・火炎の舞」
火炎を纏った一撃を放ち、迎撃した。
互いの技が衝突し、爆ぜる。
そして爆ぜたエネルギーは、エネルギーの根源たる両者を呑み込んだ。
「ぐふっ」
「がぁっ」
両方、衝撃でその場に留まれず。
丈瑠は地面にシンケンマルを突き刺し、蛾眉雷蔵はそもそもの甲冑の重さで、遠くまで飛ばされるのは免れた。
「やるな、総大将ともなればそうこなくては」
「随分、軽口だな……余裕のつもりか?」
そして立ち上がり、攻撃を続けた。
「そうじゃねえ、性分みてえなもんさ……オメェ程の腕を持つ奴相手なら尚更な」
「後がつかえている、お前にこれ以上構ってる暇はない」
「なんなら俺様が倒してやるよ、お前という首級を挙げてからな」
その光景を見物していたウシロブシは不敵に笑う。
「そろそろ良い塩梅になってきた頃か」
必殺技まで交わし、息をついている……今が好機。
「千明、牙鬼軍の兵士達はどうだ!!」
「全員倒したぜ、な?姐さん」
一人二人、グレードアップした見た目で、相応にパワーアップしたのがいたから手こずった……
「それじゃああのアヤカシだね」
「マズイわ、茉子ちゃん!!」
ウシロブシが動き始めた。
狙いは、当然丈瑠………
「させるか!!」
四人はウシロブシに向かった。
「邪魔だ!!」
一刀の元、薙ぎ払われる。
「うわー!!」
「お前達!?」
丈瑠が驚く間に、丈瑠自身も攻撃される。
「ぐはっ」
「野郎……!!」
蛾眉雷蔵も巻き込まれたようで、怒り心頭のようだった。
「いつ戦いに加わろうが俺の勝手……最終的に全てをかっさらった方の勝ち、手柄とはそういうものではないか」
「チッ」
蛾眉雷蔵は舌打ちする。
攻撃を受けて丈瑠は確信した……今回のアヤカシは、強い。
例え割り込んでいたとしても、丈瑠が流ノ介達と一緒に戦っていたとしても、互角以上に相手取れるぐらいの実力はある。
「チャンスは逃さん」
今度は強制的にウシロブシ対丈瑠となった。
「くっ」
ウシロブシは武器を振り下ろし、丈瑠はシンケンマルで受け止める。
だが、捌ききれずに押される。
蛾眉雷蔵相手に、力を使いすぎたか……丈瑠の動きに精彩が欠けている。
「終わりだ」
明らかに必殺技と言えそうな構えを取る。
丈瑠はシンケンマルで防御の態勢を取るも、衝撃波で崩されシンケンマルを落とす。
「っ!?」
その刹那、ウシロブシが突っ込んできて、強力な一撃を浴びせる。
鬼 刀 二
/ 段 斬 り
「ああああああ!!」
丈瑠は膝を着いた。
ウシロブシは、そんな丈瑠に近づいてトドメを刺そうとし始めた。
「(ここまでか……)」
南無三……シンケンレッドになった日から覚悟は既に、出来ている。
そう思い、少し目を閉じていたその時……
「殿様!!」
「殿をやらせはしない!!」
次の瞬間、声を聞いた瞬間に丈瑠が見たものは……自分を庇って攻撃を受ける二人。
変身が解け……そして二人は倒れた。
「流ノ介!!ことは!!」
丈瑠は二人の方を向く。
「余所見とは、いい度胸だ」
ウシロブシは、トドメと言わんばかりに刃を振り下ろそうとする。
だが、蛾眉雷蔵が阻止する。
今のうちにと、丈瑠は二人の容態を診た。
倒れはしたが、息はしている……最悪の事態には至ってない。
「ほう……」
「こいつ達の首は俺様の物だ!!外道にはもったいねえ」
「その姿形、お前に言えた事かw」
確かに……般若の面と異形の顔がスリットのようになり、陣羽織では誤魔化しきれない怪人感は傍から見れば外道と変わらない……嫌、人を襲ってる時点で倒すべき敵であるという点においては一緒である。
「違うな……この姿は、御館様への忠誠の証であると共に」
蛾眉雷蔵の攻勢が増す。
「死出の道を越え、その先を拓く栄誉を与えられた、そこに至るまでに挙げた武勲を示す、誇りなんだよぉ!!」
そして、両の刀を振り下ろす。
「誇りか、確かに俺達には縁のない言葉だよ……そんなもの、犬にでもくれてやれと思ってる」
さっきと同じ攻撃がきた。
衝撃波が飛び、蛾眉雷蔵の武器両方を飛ばす。
「しゃらくせえ!!」
すかさず蛾眉雷蔵は鞘両方を取り出し、ウシロブシの攻撃を防ぐ。
「ほう!?」
そしてウシロブシの攻撃を防いだ蛾眉雷蔵は落とした武器を拾う。
ひょんなことから始まった、敵同士の一進一退の攻防をよそに、近づいてくるものあり。
「やはりな!!猪武者ではこうなると思っとったわ!!」
翁の面の欠片をはめた怪人が現れ、武器を持ち出して丈瑠を突き刺そうとする。
「させるかよ!!」
「やらせない!!」
今度は千明と茉子が前に出る。
「二人共、やめろ!!」
次の瞬間……晦正影は左右に真っ二つにされ、倒れる。
「え?」
真っ二つにされた正影から見えたのは、以前見た放浪者だった。
「あんたは」
「あの時の」
ウシロブシが戦いの手を止め、問う。
「十臓……何のつもりだ」
「え」
ウシロブシの言葉から察するに、アヤカシと知り合いのようだ。
「こいつは俺と裏正の獲物だ」
そう言って、男は姿を変える。
それは以前会った……何世代か前のシンケンジャーと戦ったアヤカシだった。
「何なんだよ、あんた……外道衆なのか?」
「そいつぁ……人間だ」
さっきまでウシロブシと斬り結んでいた蛾眉雷蔵が、説明を始める。
「どういう意味?」
「人間があんな風になれるってのかよ!?」
「時代と人間によっちゃぁいるんだよ、人の道ってのからどうしても外れてしまうような輩が。そして、そういう奴は外れた道に相応しい
「俺達は、人の世に生きられなくなった者として「はぐれもの」と呼ぶ……お前達が俺達を外道衆と呼ぶなら……さしずめ「はぐれ外道」かな」
「話す手間が省けた、礼を言う」
「そうかい」
蛾眉雷蔵と十臓と呼ばれた男は、握手でもするように爽やかさを保ったまま向き合い、刀を抜き、刃を交わした。
「産まれる時代を間違えたってぇ、剣が語ってるぜ!!」
「それが、乱世の英雄の剣か」
一撃、二撃、互いに探り合うように刀を振るう。
「この剣気……認めてやるよ、オメェ程悪鬼と呼ぶに相応しい男はいないってな」
「面白いな。幾多の命を斬って尚、外道には至らずとは……乱れた世に、道など非ずか」
二人が争う間に、丈瑠にウシロブシが近づく。
「そこで見ていろ、十臓……俺は注文を果たす」
傷ついた流ノ介達を放っておく訳にもいかない。
だが、蛾眉雷蔵と十臓は斬り合いながら割り込む。
「シンケンレッドは俺が戦う相手でな……悪いがここで手を引いてもらう。もしできないのであれば……」
「引く手数多みたいだな……さっさと首を取らせろや」
千明達は攻撃を防ごうとする。
「どけ!!牙凌道・雷幻斬り」
蛾眉雷蔵の刀から雷が出て、茉子達を攻撃する。
「きゃああああああ!!」
「うわああああああ!!」
「多少は強くなったみてえだが、まだまだってこった」
ビームが数発、蛾眉雷蔵に命中する。
「………………?」
『うぉぉぉぉぉぉぉ!!』
大きめの車がやってきて、千明達に近づく。
「誰?」
茉子の問いに答えるかのように、大きめの車の上の部分が開閉、ロボットの顔が出てくる。
『自分は……迷子のトランスフォーマーであります!!』
そしてそのロボットの顔部分を畳んだ。
『地球人はひ弱で小さく……そんな奴らが傷つくこの状況を放って置くわけにはいかんと思って……俺が安全な所まで運ぶ!!さあ、乗ってくれ!!』
多少上から目線であるものの、一縷の望みに変わりはない。
「頼めるか?」
『……………このめっちゃ期待されてる感じ、面映ゆいな』
「千明、茉子……二人を乗せて、離脱しろ」
「おい、まだあいつ倒せてねえんだぞ……」
そう言って咎める千明の息も絶え絶えだった。
「頼む」
そう言う丈瑠の声色が悲痛なものに感じられ、千明も黙ってるしかなくなった。
「丈瑠の言う通りにしよう」
倒れた二人を、ロードバスターの中に入れ、そして残った千明達も乗り込もうとした……が、蛾眉雷蔵が阻もうとする。
「撤退戦なんかさせねえよ……今、ここで◯ねば討死だ。それは侍の栄誉だ!!」
「そんな価値観は、もはや時代錯誤だ!!」
丈瑠は今一度奮起する。そして落ちていた流ノ介達のシンケンマルを一振り借りる。
そして、二振りのシンケンマルを掲げ、丈瑠は突っ込んだ。
「はぁっ!!」
蛾眉雷蔵は刀二つで防ぐ。
だが丈瑠は、脇差の方を力押しで振り切り、蛾眉雷蔵を後退させる。
『じゃあ、あんたも無事でいろよ!!』
ロードバスターは流ノ介達を連れ、去っていった。
「来たか……」
そのままウシロブシと十臓も含めて、乱戦となる。
数分後…………
時に、一人一人とかわりばんこに刃を交え
時に、相手と相手が戦う状況を利用し
時に、三人同時に狙いを定めて攻撃し
その果てに
「…………………」
ウシロブシの首に裏正が
「…………………」
十臓の首にシンケンマルが
「…………………」
丈瑠の首に蛾眉雷蔵の太刀が
「…………………」
蛾眉雷蔵の首にウシロブシの武器が
四人が四人、少しでも動けば自分の急所をブスリと行きかねない状況に持ち込んだ。
もはや全員、動けない……やがて風に散る砂煙のみが、時間の経過を知らせるという風になっていった。
ウシロブシは、自分の腕を見る。
水切れが近いのか、後ろに引いて裂け目へ帰るようだ。
「十臓、ドウコクが怒るぞ」
ウシロブシは隙間の向こうへと退散した。
「……もう一人の赤いの、俺様がお前の首を取るまで、死ぬんじゃねえぞ」
蛾眉雷蔵も、帰りの準備に入る。
「御家老、遊び心はどうしたよ」
『御館様の身に関わるなら、遊んではおられぬよ……だが肝が冷えた。もうせんぞこんな事は』
「………………帰るぜ」
蛾眉雷蔵は、真っ二つに割られた晦正影を持って帰る。
残ったのは、丈瑠と十臓……
「さっきは何故」
自分を、嫌、千明達を助けようとしたのかを聞こうとした矢先に
「これでもう、邪魔をする者もいなくなった」
と十臓は剣を向けてきた。
「………!!」
おそらく最初からそのつもりだった、とっさに丈瑠は防御に入る。
だが、防ぎきる事はできない。
「弱いな……力を使い果たしたとは、言ってくれるなよ」
十臓は刃を返し、衝撃波を放つ。
その攻撃は丈瑠の横を逸れ、近くの大岩を真っ二つにする。
「この刀、逆刃こそが本性でな……次はこの斬れ味を味わってもらう」
ショドウフォンが鳴った。
「茉子か!?」
『戦ってる最中だったら悪いけど手短に話すね、無事に逃げきったよ』
「そうか………すまん」
電話を切った丈瑠はそのままショドウフォンを構えた。
「折神大変化」
獅子折神を巨大化させる。
「追わないのか?」
同じ型の折神を用意できるのだ、追おうと思えば追える。
「今回はその時ではないようだ、お前の刃が折れない限り、その時は必ず訪れる」
それを聞いて丈瑠の駆る獅子折神は去ろうとする。
「腑破十臓……いずれ、お前と心ゆくまで刃を交わす外道の名前だ」
丈瑠の去り際に、男は自身の名前を告げた。
「………………」
丈瑠は獅子折神でその場を離れる。
いかがでしたか?面白いと思っていただければ嬉しいです。