スーパーロボット大戦Z Another Chronicle 作:レゴシティの猫
〜時は遡る〜
山犬の型を持つ、大きな妖が出来上がった。
ドンオニタイジンをモチーフにしたため少々見た目には気を使っている。
『我を呼んだのはお前か』
「うん……各地に息づいた『クコチヒコ』という誰かのイメージを、ひとまとめにしてできたのがあなたって訳」
『………何が望みだ』
「力が欲しい、とびっきりの力だ」
『お前の力は、既に我を凌駕している。我の力を得ようなどとは、酔狂なものだな』
「まだ足りない……まだ、まだ、まだ、まだ!!あの雲を越えて、星の果てまで飛び、その先へと至るため……もっとたくさんの力がいる」
とあるライオンの精霊にも声をかけてみたが
『ほ〜、暴れるために力貸せってのかい!!悪くねえ誘いだが、すまねえな……知り合いのひよっこが巣立つまで俺ぁ見とかなきゃいけねえんだよ』
秒でフラれた。
『じゃあ仕方ないね、はいこれ』
仕方ないのでお供え物の代わりとしてマンガ肉を投げ込んだ。
『おう、こりゃあ……うめえじゃねえか』
『気に入っていただけてなにより、じゃあ帰るね』
『二度と来んじゃねえぞ』
何も言わなかったが、こちらの目的を察して断ったようだ。
暴れるという行為にも、善悪が存在するらしい……そこはまあひねくれ者だが、それ以前にオトモ忍という事か?作り主の言う事を突っぱねた件も含め、めんどくさい獅子だと言える。
『良いだろう。その前にだ、我の望みを叶えてもらえないだろうか……』
「何が良い?」
『それはだな』
〜小美呼市〜
旋風の言葉で、イチゴ達は小美呼市にやってきた。
この場所に来てからサクラの周りに、魑魅魍魎(無害)がたくさん寄り付いている。天晴達も視えてるようで、道中の3割方お祭り騒ぎだった。
香炉木家の屋敷に向かう。
旋風が道に詳しく、スムーズに来れた。
「なんだ、もう戻ってきたのかー?」
顔見知りの彼らがいた。
忍具のメンテナンス中らしい。
「伊賀崎の師範が行こうって言ったんだから仕方ないでしょう?」
「接触は済んだようだな、よくやった」
それから、自己紹介を始めた。
「どうも、伊賀崎旋風です」
「はじめましてだな、風巻祭里だ」
旋風の心に雷が落ちた。
「………話には聞いてたけどあの人の、息子!?」
「知ってるのか?親父」
「昔、父さんが小さい頃ここに来て……風巻家、二ノ曲家、香炉木家の人達と修行してる時期があったんだ」
「へー父さんにもそういうのいたんだ」
「いたよ、いたいた。こんな冴えないおっさんになっちゃったけど……上の5人いなくなったからあの人今トップだよね?苦労してない?」
「まあ、向こうだと母ちゃんの後を継ぐんだって期待はあるみたいだけど」
「女の人だったんだ……」
「どんな人だったの?お父さん」
「一言で言うと……女傑って感じの人だよ」
「うわ……」
風花は父の声のトーンで碌な目に遭ってない事を察し茶化すのを諦めた。
「君は、武牙さん家のお子さんだろう?」
「ああ、よく分かったな」
「目がそっくりだよ〜歯が見えて怖いのもだけど」
「この顔を見て怖がられる事はあっても懐かしがられるのは初めてだな……」
『主様に優しい声をかけてくれるおじさんがいるなんて……感激ッポ』
「獅子丸さんと、後誰かいたような……いたっけな〜?」
その誰かについては祭里達も知らないみたいだ。
昔話が終わる頃になって二ノ曲は苦無を持ち出す。
「お……なんだ」
「忍達の名家の者達が集い、そして異世界の忍者が来た……なら、やる事は一つだろう」
黒鋼も練習試合用の木刀を用意する。
「面白え、やるか」
「熱いな〜これ、燃えてきたー!!」
天晴達も便乗する。
「手合わせ、お願いします!!」
「その熱、俺の風で散らしてやるぜ」
「easyだな」
「よーし、やるからには負けないぞー!!」
「えー、じゃあやるか」
「お手柔らかに、お願いします」
「イャッハー!!」
「仕方ないな〜黒りんは」
「……オレも?」
「一応俺達側だしな、数合わせで俺達の所で」
「えー」
イチゴも木刀を構えた。
「お父さんついていけなさそう……サクラちゃんとモコナちゃんとで観客やってまーす」
「話は聞いている、座っててくれ」
レディー、ファイト。
〜長くなるので省略〜
「みんな、お疲れ様〜」
すずが子供連れで来ていて、お茶を用意してくれた。
「サンキュー」
「ありがとう」
イチゴもすぐにそのお茶をいただいてへたり込んだ。
二ノ曲の速さにつられ、ギアをあげた天晴達の高速戦闘にはついていけず先にやられてしまった。
殺す気じゃないだけでマキシマムという勢いだったのだ。
「あんた達つええなあー」
「お前達もなかなかだ、活動範囲が違うからこうして手合わせするのがたまにしかできないのが惜しいぐらいにな」
忍者というより、戦闘民族としか思えない人達が会話を始める。
「黒鋼と言ったな……どこで覚えたんだ、あの技」
「親から受け継いだ技って所だな」
「俺達も一族代々で受け継いできた……似ているな」
「だが、俺の親は忍者じゃない。だからこの技は忍者の技って訳じゃねえぞ」
「あ……そすか」
確かに黒鋼の技は忍者というより侍に近い。大振りの刀で技を繰り出し、技は突進や衝撃波に分類される物が多い。
何より、分身の術隠れ身の術等潜入関係は覚えていない。
「まあいい、この世界にいる間は、お前達の力を人の世を守るために使ってくれると嬉しい」
「よーし」
旋風は、祭里の子供達2人に、背を屈めて挨拶をする。
「はじめまして、明里ちゃん、神楽君…………ん?てことはあの人おばあちゃんになったのか……時間が経つのって早いな〜」
「気を付けてくれ、孫以外のおばあちゃん発言は命に関わる……割と
「あ……だろうね、気をつけないと」
関係ない話が続いてきたのでイチゴは体を起こし、門の前に立った。
「イチゴ、どこに行く気だ」
「疲れたからプリン買ってくる」
「俺達の分もよろしくなー」
天晴から自分達の分もよろしくと言われた。
イチゴは嘘だろ……と思いつつ振り返った。
「ええ!?仕方ないな……保冷バッグある?」
「はいどうぞ」
旋風からバッグを渡され、イチゴはスーパーに出かけた。
イチゴが行った後、イチゴの話題になった。
「あいつのこれまでの様子は?」
「話は聞いたし、警戒はしてるけど特には何もないな……」
「そうか……だが、奴の体には異魂……それ以上の何かが憑いているのは確かだ。気をつけてくれ」
「異魂……人から滲み出る負の念が寄り集まってできるものですね……さらに集まっていくと別の形態になるとか」
「いるって分かってるならもう祓ってもおかしくない……祓いきれないぐらい危険って事?」
「少なくとも、一回吸い出して倒せなかったぐらいの力はある」
「そんなにすごいんだ……」
「何が来てもイケイケドンドンだぜ、忍ばずワッショーイ」
その言葉で、場の空気が変わった。「おい、マジかよ」とドン引きしているのが、言葉にしないでも伝わるような……
「……おい、忍者の心得を言ってみろ」
突然の二ノ曲の言葉に驚いたが、天晴は答えた。
「忍者たるもの、恐れるべからず、悩むべからず、侮るべからず。忍びなれども忍ばない」
旋風がうんうんと頷いた。
「なるほどな、俺は良いと思うぜ」
「……やはりな、活動内容は概ね耳にしていたが……それらも大事だが忍者は忍ぶものだ、闇夜に紛れ人の世に仇なす妖を全て祓う……それが我々祓忍としての使命と心得ろ」
「俺は……向かってくる奴は全て斬るって所か」
「相手によっては祓うどころの話じゃない、むしろ穢れを産むようなものだ。バツだバツ」
「けっめんどくせえな……この世界の忍者は」
「それが秩序を護るという事だ」
「忍って、忍ばなきゃいけねえもんなのか?」
「…………当たり前だ、無関係の人間に活動を知られる訳にはいかない。お前達のは物に憑くタイプで誰にでも視えるのを相手してるからまだ姿を隠す必要がないだけでな」
相手が「誰にでも」視えるから、牙鬼軍と戦う事は大目に見てもらってるらしい。
「何故でございやす?人様に言えないような悪行三昧をやってる訳じゃねえでございやしょう?ならもっと堂々としても良いと思いやすが」
「!?それは……」
「祓忍の活動みんなに知られたら、逆説的に妖の存在を証明しちゃうもんね〜〜〜」
部外者の声、しかし、イチゴと同じ声であるため警戒はない。
「お、もう帰ってきたのか」
「財布忘れたの?イチゴさん」
だが天晴達は目にしたものは……
無邪気な笑みを浮かべながら、蠱惑的な眼光を放つ一人の少年。
姿はイチゴそのものだが、全身から放たれる雰囲気もしくはオーラが雄弁に語る。
「人間じゃない」
「こいつは妖だ」
それにさっきとは服装も違う。
イチゴは今日は爆撃機の絵柄の付いた青い半袖シャツ(全部青一色で黒くサンダークラッカーのシルエットが塗られている)だったが、男は無地の黒い長袖のシャツを着ている。
「イチゴ。どうした、妖にでも操られてんのか?」
「なんで妖注意報のアプリの通知がでないの」
「イチゴがいるとな、動かないんだ。何故か」
「それは変ですね……」
「オレはオレだよ、嫌……やっとオレになれたんだ」
「尻尾を出してきたなら、即刻祓うまでだ!!」
二ノ曲は忍装束に着替え苦無を手に、飛びかかろうとした。
すかさず少年は片方の人差し指をクイッと立てる。
すると複数の白い腕が地面から伸び、二ノ曲の脚を掴んだ。
「くっ!?」
「アハハハ!!いくら神速とはいえ繰り出す器が人間じゃあね、起点を縛ればこれこの通り」
イチゴにそっくりな少年は二ノ曲から退きつつ手をかざす。
「くらえ!!」
黒い電撃が少年の手から放たれる。
「ぐわあーっ!!」
二ノ曲は雷の衝撃で倒れた。
「大丈夫か?」
「……気にするな、ケホッケホッかすり傷だ……装束のおかげでな……!?」
装束を格納するアタッチメントにヒビが入る。
「まあこんなもんか」
「イチゴ君……」
「こんにちは、すずさん……健康管理は、大丈夫です?スイーツ三昧も結構ですが、病気になると怖いですよ」
「あ………」
すずは固まった。
「すず……」
「……この前のお兄ちゃんだ」
「ああ、この前の子か……元気?」
「うん」
「そう……悪いけど今日は僕ちゃんのお母さんに用があるんだ」
「2人共……良い?お母さんが今から良いって言うまでこのおじさんの側から離れないでね、不躾だけど旋風さんお願いします」
「うん、任せといて」
旋風は子供達と後方に下がった。
「見ての通りだけど、あの人だよ」
少年は、指鉄砲ですずを狙う仕草を取った。
『ふむ、上出来だ!!』
暴風と言って良い程の風が吹く。
連なるように四つの脚が地面を蹴って疾駆する音が聞こえる。
その音は確実にこちらに近づいていく。
黒い大きな犬が現れた。
ただし、機械のようなメカメカしい見た目の。
「え!?ゾイド?」
モコナが驚いた。
「ゾイド?なんだそれ」
「前にziトピアって世界を旅してた時に遭遇した、機械仕掛けの動物です。兵器として利用してる人達や命として共存しようとしている人達、神秘として崇めている人達もいました」
「なっつかしー、カイト達元気してるかな〜」
「懐かしむのは後にしやがれ!!」
黒鋼は咄嗟に龍の形をした衝撃波を、他のみんなはガマガマ銃による攻撃を試みるものの、その時だけ妖は異様にぬるりとした動きで避けた。
そしてすずの腹部を咥え、妖は森の方へ走り去っていく。
「きゃーっ!!祭里ー!!」
「すず!!」
「ママ!!」
「!!」
祭里はすぐに、追いかけていった。
すぐに天晴達も後を追おうとしたが……
いつの間にか鞘付きの刀を手にした少年に行く手を阻まれる。
「何すんだ」
「すずさんを返してください」
「そうはいかない、あれは少々恥ずかしがり屋らしいから……あんた達にはこっちの相手をしてもらう」
イチゴにそっくりな少年は、手裏剣を掲げた。
「封印の手裏剣!?」
それも……6枚。
イチゴと同じ姿を持つ妖はそれを投げた。
その頃、恋緒は店の中で忍具の手入れをしていた。
「ふんふんふふーん」
忍具を使う祭里を、祭里がこの忍具で魔を祓う情景を想像し、磨き上げていた。自分の作り上げた忍具で祓忍の使命を全うする彼を思うと誇らしくなってくる。
そんな恋緒の目の前で、忍具に手裏剣が突き刺さった。
「え?」
「───────────(聞き取りづらい詠唱)」
それが何かを理解するには、時すでに遅く……
「祭里くん達用に仕立てた祓忍具の予備と、香炉が!?」
祓忍具と香炉は、6体の妖と変化し、その場を去っていった。
「あ、待ってくださーい」
そして天晴達の前にピンクがかったモヤの集まりが現れる。
「名付けるなら、妖怪ヌエ、そして……」
5人の忍者が現れた。
「一忍者」
「二忍者」
「三忍者」
「四忍者」
「五人合わせて……」
「何人じゃ?」
疑問形で答えた方を、隣の忍者は殴った。
気を取り直して……
「五忍者ー!!」
5人の忍者が襲いかかってきた。
「妖か!?しかも我々の装束を悪用するとは……」
「じゃあね〜」
イチゴにそっくりな少年は去る。
多分、すず達の元に向かうようだ。
「待ちやがれ!!」
「追いかければいいじゃない、忍者がいっぱいいるんだし」
そう吐き捨てて、イチゴにそっくりな少年はその場を後にした。
「先に妖を片付けるぞ」
「おっしゃ、行くぜ」
天晴達はニンニンジャーに変身する。
「状況は分かりました。使ってください」
二ノ曲は恋緒から残っていた装束の予備を受け取る。
「ありがたい……着装!!」
「はーい、忍の衣装スクランブルしまーす」
『レスキュー開始……じゃないッポ!!』
その頃、イチゴは……
「ん〜買った買った、人数が人数だったからみんなの分は家族パックにしといたけど良かったかな……」
などと呟きながら帰りの道を歩いていると物騒な話が聞こえてきた。
『妖巫女が攫われたって!!』
『しかも攫ったのはでっかい奴だ』
「なんだって……」
その言葉で妖はイチゴに気がついた。
『うわ出た』
『あ、今日は怖くない』
反応する時間が惜しい。
戦いが既に始まっている。
イチゴは車通りに気をつけつつ駆け足で屋敷に戻った。