スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちはもしくはこんばんは。
冒頭の長文は無視していただいても構いません。ただの無領空処と思っていただければ……


第19話 古き狗の王 Cパート

────────────────

 

 恐れ……(cvGFスタスク)

 生涯において、恐れを抱いた事は四つある。

 一つは己の死というありきたりなものに関してであるからやめておこう。

 まずは一つ、この身に宿る衝動を知った時。

 それは隣国の視察に行った時の事だった。

 特に理由はない、他国の知識、政治形態を修めたいという欲求のためだった。それは引いては国のためとなる。ならなくとも、隣国の情報ぐらいは掴んでおきたい。

 そして隣国についた後に、人の多い場所に向かった。

 大勢が、一つの建物の前で集まり頭を垂れている。恐る恐る……群衆に紛れ込んで目立たないように一際目立つ場に立つ女性を見た。

 一目で、充分だった。

 艷やかな黒髪、どのような勾玉にも勝る瞳、血色の良い肌、そこはかとなく漂う気品。

 初めて、胸が締め付けられる思いをした。

 海から流れつく、数少ない記録、知識を貪るだけしか能のなかった自分には味わい深く、恐ろしかった。彼女の事を考える毎に心が逸り、落ち着きをなくしていく自分が恐ろしかった。その感情がどういうものか、見極めるのにも生涯を懸ける程長くかかった。

 声はかけられなかった、祭祀の真っ只中であり、群衆の最奥であったがためである。そして私は、本国に帰った。

 我が国で巫女王という制度を取り入れようとは露程も思えなかった。真似をするという行為は、越えてやるという意志がなくてはただの猿真似であり、その気持ちを持つには彼女が至上でありすぎたとも言える……

 そして一つ、五十年以上後に彼女の国と争わねばならぬ事態に発展した事。

 自分だけなら、全面的に降伏すれば良かったが王に、民は別にいる。であれば王の判断が第一だ。王が選んだのは交戦……。

 合戦の場で、彼女と相まみえた。

 遠目で見た時、五十年以上も経っていて尚変わらぬ美貌に、震えが止まらなかった。

 素晴らしいとさえ、感激すら覚えた。

 そう考えるのは愚かだったかもしれない……もはや人間ではない事への証明であるのだから。

 何も考えられなくなり、その日は……敗戦に終わった。

 王の叱咤も労いも、上の空であった事には、今更ながら申し訳なく思った。

 最後に一つ、彼女が死んだ事。

 太陽のように、絶対かつ永遠の輝きを放っていた筈の彼女は、暗殺者の手で呆気なく散っていったと聞いた時、自らの視界も太陽が沈むが如く、暗く淀んでいった。

 失望もなくはなかった、太陽のようだと褒めそやされた人間なのだ、殺されれば死ぬという当たり前の結果など彼女なら覆せる……そう、過剰な期待を寄せていた。期待は期待だった、むしろそういう期待で彼女を縛っていたのかもしれない。

 民の言葉で言えばそう……大切な人程長く生きるもの(・・・・・・・・・・・・)と錯覚するようなものである。

 結局どこかの誰かに、我が国の王共々暗殺されるまで、失意の日々は続いた。

 

 『これが終われば、次は邪馬台国の壱与か』

 

 『ああ……ヒミコの後継者の』

 

 その言葉を聞き、心残りが産まれるまで……

 

 ────────────────

 

 「ハッ」

 

 祭里の脳裏に誰かの記憶が浮かぶ。

 多分、ヒミコと繋がりのある誰か……

 

 「(あいつは俺に何を見せたかった?)」

 

 ただ少年の攻撃の効果は十二分にあった、数分にも渡る中、脳がその記憶を飲み込む処理で手一杯となった……しばらく動けなかったのだ。それは戦いの中で致命的だ。

 だが……心配する必要はなさそうだった。

 

 『あっはっは、くすぐるな脇腹はヒー!!』

 

 「ここ、弱いんでしょ?」

 

 クコチヒコは、すずが背中の輪を展開し妖力の引き出しを多く開けた事によって大量発生した手に(まさぐ)られていた。

 

 「せっかくメカな見た目に練り上げたのになんだよその醜態は!!」

 

 『犬系の体の性だ、貴様もこうなれば分かる』

 

 「ていうかそんなにいっぱいの数の手でくすぐったら快感通り越して痛いよ……」

 

 『大丈夫だ、そこは問題ない。こいつツボを心得ている……只者ではない』

 

 「もう、止めにしない?」

 

 すずから、意外な提案が来た。

 

 「あなたが悪い妖じゃないのは、戦ってたら分かる……これ以上争ったって、なんの意味もないよ」

 

 『ふ……ふざけるな……』

 

 クコチヒコは立ち上がる。

 

 『眼前の敵に情けをかける!!それでよく王が務まった!!』

 

 「え………」

 

 『私は、お前の命を狙う……敵なのだぞ!!』

 

 「じゃあ、どうして命を狙うのか、教えてよ……話はそれからでも」

 

 『今更どうこうなる問題ではない!!』

 

 クコチヒコは爪による攻撃を再会する。

 

 「そんな……」

 

 〜一方その頃〜

 

 唐突な雨と雨上がりの中、九衛門は道端を歩いていた。

 ちょうど天気雨という塩梅となっている。

 

 「ヌエは……辞めとくか、あれは僕にも面倒だ」

 

 もし志葉丈瑠、そして小狼(シャオラン)の姿を再現し、それが幻だとしても刀を振るわれれば身に刻まれた恐怖も蘇る。

 封印の手裏剣を1枚いただいてから、九衛門は五忍者を復活させる事にした。

 

 「妖術・肥大蕃息の術」

 

 巨大な忍者が現れた。

 

 「帰ってきた」

 

 そして背中から四人増える。

 

 「「「「「五忍者ー!!」」」」」

 

 忍者達はそう叫び、忍ばずに街中を暴れまくった。

 イチゴは驚いた、話で聞いていたとはいえ、本当に忍者が5人いたのだ。

 電話音がなったので、カイの回線と繋いだ。

 

 『イチゴさん』

 

 「小狼(シャオラン)君?今どこ?」

 

 『小学校です、避難誘導中です』

 

 『イチゴ達見て、みんな驚いてるよ』

 

 『一部『おお、宇宙人と巨大ロボットっす!!』とお祭り騒ぎになってますが、緊急事態である事に変わりはなさそうです』

 

 確かに耳を澄ませると、スマホの撮影音が聞こえてくる。

 

 『けっ危ねえんだから静かにしてろ!!』

 

 『これは一大事っすよ、今世紀の大決戦が始まろうとしてるっす』

 

 そして知らない女性の声がする……

 

 『東京でりゃ日常茶飯事だ、とにかく騒ぐな鬱陶しい』

 

 『あ〜避難誘導で戦えないから黒様荒れてるな』

 

 『では、お願いします』

 

 「うん」

 

 カイはファイティングポーズを取る。

 

 「手裏剣合体」

 

 気圧されそうな程、ニンジャだのソイヤだのワッショイだのの音声を流しながら、シュリケンジンとバイソンキングが出てきた。

 

 「待たせたな」

 

 「今始める所だから、気にしないで」

 

 「前回のあれはやはりあんたか」

 

 「うん」

 

 八雲はそうかと言い、軽く情報共有を行った。

 

 「おそらくあれのうち四体は分身だ」

 

 霞からある提案が来る。

 

 「真ん中から分身出てきたのであれば、真ん中を重点的に狙うのはどうでしょうか?」

 

 「そうはいくか!!」

 

 忍者達は煙幕を使う。

 

 『レーダー、煙幕の範囲だけ途切れてます』

 

 カイから不吉な知らせが来た。

 

 「嘘!!」

 

 「これで本体が誰だか分かんないぞ!!」

 

 五忍者は勝ち誇る。

 

 「これで貴様らは誰が本体だか分かるまい、武器だって持ち替えたんだぞ」

 

 「そうなの?」

 

 イチゴはみんなに質問した。

 

 「よく分かんないけど、信じるしかないね」

 

 「全員叩き潰せば良い、向こうの戦闘力を考慮すれば、easyだ」

 

 「カイ……いける?」

 

 『いけますとも』

 

 「じゃあ、いくよ」

 

 イチゴは景気づけにカイの万能工具(ツール)で忍者の胴体にブスリと刺し爆発させる。そして他の忍者の腕を掴み、回転を始める。

 その様を見て、キンジ達は会話を始めた。

 

 「思ったより……強いでございやすね」

 

 「荷物をよこしたって訳ではなさそうだな」

 

 「ロボの性能か、本人の素養かはさておき、妖怪が大きくなった時に頼りになりますね」

 

 「みんな、前、前」

 

 「何か始めるみたいだから、他のを倒そう」

 

 「よーし、いくぜみんな!!」

 

 「タイミングはオレが決める」

 

 『分かりました』

 

 一際強く感じるすずの気配……

 そして普通より大きく強い妖の気配……

 

 「いけ!!」

 

 『えーい』

 

 めがけてジャイアントスイングで忍者の分身を放り投げた。

 

 「あああああああ!!」

 

 『!!』

 

 「嘘……」

 

 巨大なシルエットである忍者が飛んできたせいで、クコチヒコのすずへの攻撃の手は緩む。ただし、衝撃に巻き込まれそうになった。

 そのまま槍を召喚し、投射して忍者に突き刺す。

 忍者は爆発した。

 

 「うわっ!?」

 

 「すず!!」

 

 「私は大丈夫!!それより」

 

 少年は、カイの繰り出した攻撃に感嘆していた。余所見をしている今が攻撃する絶好の機会。

 

 「さすが王妃特製……やれる事のスケールが違うぜ!!」

 

 祭里は忍者刀に風を纏わせて突撃する。

 

 「螺旋突!!」

 

 少年は刀で受け止めるも……風はドリルのようにうねり、螺旋の回転を放って捌ききれない。

 

 「!!」

 

 少年は手に持っていた刀を、遠くまで吹き飛ばされてしまった。

 

 「しまった!!」

 

 当の少年は、手をしびれさせただけで他にダメージがなさそうだった。

 

 「これで無傷かよ!!」

 

 〜一方その頃〜

 

 「いくぜ、シノビマル」

 

 シノビマルがシュリケンジンから飛び立ち、走って竜巻を作る。

 竜巻に飲み込まれた忍者めがけて……

 

 「シュリケンジン・アッパレ斬り」

 

 急いでシュリケンジンの元に帰ってきたシノビマルと共に、剣で攻撃する。

 

 「分身じゃなくて本当に5人、欲しかったな……」

 

 最後の忍者も爆散。

 分身の術などによる囮もなし。

 

 「倒したでございやす」

 

 「お疲れさ」

 

 言い切る前に刀がイチゴの方に向かってくるのが見えた。

 

 「カイ」

 

 『ラジャー』

 

 カイに命じて、刀をキャッチさせた。

 

 「これ……」

 

 イチゴは刀を見つめた、刀身に村正と彫られている事と、刃物によく見る鈍い光沢が見られないのが特徴……偽物っぽい感覚がする。

 

 「それこそ、僕の描いた村正だ」

 

 歌川が、どこからか現れた。

 

 「どっから出てきた!?」

 

 「そんな事はどうでもいいんだ。それよりイメージしてごらん、君のイメージにそれは力を貸す……そういう風に作った刀だ」

 

 「オレじゃないの?歌川先生」

 

 「君はあの時戻るって言ったじゃないか、言った事を覆したペナルティだよ」

 

 「厳しー」

 

 「画楽、どういうつもりだ?」

 

 「自分じゃない誰かの描いた絵でしか得られない栄養がある……それを久しぶりに味あわせてくれた礼を渡したまでだ、悪く思わないでくれ」

 

 「これで勝ったなんて思わない事だ」

 

 少年はクコチヒコに目で合図する。

 

 『よし、使え』

 

 「来い、クコチヒコ。変形だ!!」

 

 『ん!?』

 

 「ロ・ボ・ッ・ト・モ・ー・ド!!」

 

 脚は全てまっすぐになり、前脚の爪を折り畳んだ後には手が生えてきた。

 そして勇者ロボの如き顔が出てくる。

 クコチヒコは変形し、二足歩行ロボットと化した。

 

 「変形……した」

 

 「え……何あれ」

 

 「……(凪は少しかっこいいと思っている)」

 

 「あっついな〜これ」

 

 「……………………」

 

 急な出来事に二ノ曲達は目を擦り、一部は目を輝かせる。

 ドンオニタイジンがいなければ、状況を飲み込めない所だった。

 つられて鬼火(ボム)型の妖もたくさん出てくる。

 一つ一つが車に見えるぐらいには大きい。

 

 「異魂、進化してるから異妖か……」

 

 『なんだそれは』

 

 「人の負念の集合体……そこから進化の仕方によってこうなる。後最近出るタイプらしい」

 

 『どこの情報だ』

 

 「………あなたには陰陽連って言った方が分かりやすいか」

 

 『妙だな』

 

 「?」

 

 『人の負念で練られたものであるなら、普遍的にそういうものが現れてもおかしくはない。だが、それは最近出るという……何故だ?何故それ以前にはない?』

 

 「さあね……でも、昔はああいうの「鬼」って言ってたんじゃない?形がキレイだっただけでさ」

 

 「!?」

 

 祭里は聞き捨てならない言葉を聞いた気がした。昔から強く恐ろしい存在として伝わってきた鬼と、異魂およびその進化系達……言われてみれば繋がりはある。

 

 「て事はまさか……嫌、現代型は……」

 

 「……まだ始まらないのか?」

 

 イチゴはカメラを下に向けた、クコチヒコの足元に……鏡で何度も見ている顔に気がつく。

 

 「…………」

 

 『ほ……本当にいた』

 

 カイも目の前の少年に驚いていた。

 その声を聞いて、少年はカイ、イチゴを見上げた。

 

 「お前か!?オレの姿をした奴って」

 

 「アハッ!!こうして会えるなんて光栄だよ、結城イチゴォ!!」

 

 イチゴは、カイを操作して、拳を振り上げさせようとする。が、直前にエラーを起こす。

 

 『無理です、イチゴ様』

 

 「…………………ダメか」

 

 「カイにとっては、オレもイチゴなんだね」

 

 イチゴは、混乱していた……少年が喋れば喋る程、自分の声が聞こえてきたからだ。

 

 「お前は……誰だ?」

 

 「見ての通りさ」

 

 「イチゴはオレだ、オレが、結城イチゴだ」

 

 「その言葉……そっくり返してやるよ」

 

 少年はクコチヒコの中に乗り込む。

 それに合わせてクコチヒコの眼は紅く発光した。

 そして槍を展開する。

 

 「ファントムスピアー!!」

 

 その槍を構えてロボ全員に攻撃してきた。

 槍術の心得などないに等しい、ただ振り回すだけの攻撃だが、そもそもの攻撃速度が上なのか見切れない。

 

 「くっ!?」

 

 追従するように、鬼火のような妖も攻撃してくる。

 口から自らをスケールダウンさせた火を吐き出し、体当たりで突っ込ませてきた。

 

 「うわっ」

 

 火に当たり、ダメージをくらったカイ達は火傷を負ったようにあたふたし始める。

 

 「相手が異妖なら、俺達に任せろ」

 

 祭里達も鬼火を祓おうと攻撃を始める……しかし、一撃で妖は消えない。

 

 「…………!!」

 

 「こいつ、散らしきれない」

 

 「なあに、多少耐久力が上がったってだけだ……だろ?先輩」

 

 「ああ……そうだな」

 

 そう言って二人は並び立ち、走る。

 

 「合わせろ!!」

 

 先制して二ノ曲が攻撃。

 

 「よっしゃ!!」

 

 祭里が風を起こし、鬼火に当てる。

 

 「そろそろ行くぞ」

 

 足蹴にし、鬼火を吹っ飛ばす。

 

 「おう」

 

 風で吹っ飛ばす先をコントロール。

 

 「「うおおおおおおおお!!」」

 

 飛び上がり、二人同時に攻撃。

 二人の同時攻撃で鬼火は爆発、しかし分裂するように弱い鬼火が湧き出す。

 

 「増えただと?」

 

 祭里達がアクションを起こそうとしていると銃弾が飛んできた。

 

 「撃ち落とすなら任せておくんなさいやし」

 

 「すまねえ」

 

 キンジは銃で複数を一気に撃ち落とす。

 だが、まだ鬼火の数は多い。

 

 「結構便利だね、こいつ」

 

 少年は鬼火達の後ろからシュリケンジンを攻撃してきた。

 

 「うっ」

 

 攻撃されて、シュリケンジンは後退りする。

 

 「みんな!!」

 

 「僕達は大丈夫」

 

 「……その刀……使うならさっさと使え!!使える手段があるなら、迷わず使うべきだ」

 

 八雲の叱咤により、イチゴは刀を使う事に決めた。

 

 「イメージ……イメージ……イメージ」

 

 イチゴは、美術の時間は苦手だった。

 特に小学校高学年頃の……

 理由はクレヨンを握っても、筆を握っても、いまいち着想が湧き出ない事にある。

 

 『では、シンケンジャーのようにやってみては?』

 

 「そっか」

 

 刀を持って……振る……

 

 『でっかくなりました』

 

 「うん」

 

 イチゴはカイを動かし、空まで飛ぶ。

 

 自分にとって、強いと思った者を思い浮かべる……

 

 『シンケンマル・火炎の舞!!』

 

 それを叩きつける。

 

 「村正・なんかの舞!!」

 

 胸のスフィアが発光、振るった刀は紫の光を帯びる。刀を振り、空を斬る。

 すると謎のビームが発生し、敵全体を攻撃する。

 

 「!?」

 

 「避けろ!!先輩」

 

 祭里達も攻撃範囲に入っていたので退避していた。

 空を飛んでなければ、住宅まで被害に遭う所だった……

 

 〜どこかの世界〜

 

 アサキムは、する事もないので二足歩行型兵器の技術開発に携わっていた。

 スフィアに関わっていても関わっていなくてもいい……なんでもいい、力を育てるのが最重要課題。今まで戦ってきた兵器達に思いを馳せながら、取り組んでいた。

 だが、その時は終わりを告げる。

 

 「感じる……誰かが、力を行使している……数百年振りに、誰かが覚醒した?」

 

 〜一方その頃〜

 

 『この力……マズい!!』

 

 「…………!!」

 

 命光輪を解かなければ……

 不意に、すずの直感が告げた。

 生存のための本能に近く、今それがどういうものかを考えている時間が惜しい。

 すずは命光輪を解いた。

 

 「イチゴ君のロボ……一体?」

 

 「あれが何かは分かんねえが一応分かったぜ、朱雀がイチゴに目を付けた理由」

 

 「………何?」

 

 「神殺し」

 

 「!!」

 

 すずの記憶に新しいのは、祓忍の偉い人が、むかーしむかしの恨みを持ち込んで祭里の肉体と精神に細工をして、呪いを植え付けた件だった。真偽は不明だが、純潔を散らすと発動するようで、操られた彼は何かにつけて誘惑してきた。今は呪いを解除させたのでなんともなかったが……

 

 「壱与がヒミコの跡を継いで妖巫女になったってんなら、ヒミコにも妖巫女に相当する力があった筈だ。そいつを暗殺するのだって、よっぽどの力や才能がないとできないだろ」

 

 『!!』

 

 「……それもそっか」

 

 「今のあいつは妖を見る眼と、それに連動して妖に干渉できる腕と、でっかい鎧のカイと、カイから発する不思議な力がある。呪い抜きに直接神を討つにはもってこいって訳だ……五行仙を倒した後で良かったぜ、本当に」

 

 「………………」

 

 「これ以上の時間はやらない」

 

 イチゴの攻撃は、大きなものも、小さなものも、鬼火を全て消滅させるに至った。

 

 「す………すっげぇ」

 

 「これで残りはあのロボだけだね!!」

 

 「トドメだ」

 

 イチゴは光を纏ったままの刀をクコチヒコに向ける。

 

 「俺達も続くぜ」

 

 「この勢いで決めやしょう!!」

 

 「はぁっ!!」

 

 「シュリケンジン・アッパレ斬り!!」

 

 「アラクレバスター!!」

 

 全員で一斉攻撃を叩き込み、大爆発が起きる。

 爆発が収まった頃、敵は誰もいなくなった。

 

 「やったか?」

 

 「…………」

 

 だがすぐに、川の中からクコチヒコは現れた。

 無事だったようだ。

 時は少し遡る……

 

 「はぁっ!!」

 

 「シュリケンジン・アッパレ斬り」

 

 「アラクレバスター!!」

 

 「マズい!!」

 

 クコチヒコは槍をデコイにし、爆発の余波で川に飛び込みやり過ごす。

 

 「というわけでオレは助かったのさ」

 

 「仕方ない……もう一回だ」

 

 全員、身構える姿勢を取った。

 

 「待った」

 

 「え?」

 

 「参った、降参だ。さすがにもうこれ以上はね……」

 

 「じゃあ、大人しく……」

 

 祭里が降伏を勧めようとするとクコチヒコは後退りを始めている……逃げる気だ。

 

 「待て!!」

 

 「やーなこった」

 

 クコチヒコは犬型の姿に戻り、野を駆けていった。

 

 「追うか?」

 

 「嫌……いい、相手にその気がなくなってる」

 

 「そうだな」

 

 「終わった……で、良いんでやすかね」

 

 「…………敵性反応はない」

 

 「んじゃあ、やるか」

 

 勝利の合図の予感がする、出遅れる訳にはいかない。

 

 「これにて……一件落着」

 

 『ヴイです!!』

 

 カイは右腕でチョキのポーズを取り、天に掲げた。いつの間にそんなポーズをするようになったのか、疑問である。

 

 「「「「「「忍ばず〜ワッショイ!!」」」」」」

 

 「……………あ」

 

 戦闘体勢を解くと、村正は砕け散る。

 

 「もう、あれは使えないか」

 

 「あれ、すごかったな〜」

 

 「自分でもビックリだよ」

 

 「欲しかったらまた描こうか?」

 

 歌川が近くまで来ていた。

 

 「当然君にも君の絵を描いてもらうが」

 

 「え……」

 

 「歌川画楽……本人だと?」

 

 「誰だそいつ」

 

 「有名な絵師だって天ちゃん」

 

 「スクープにも出てますね」

 

 「へ〜」

 

 「まあ、絵画とかお兄ちゃん興味なさそうだし……」

 

 「おーい」

 

 そしてモコナ達も走ってこちらに来た。

 

 「お疲れ様〜!!」

 

 「ありがとう」

 

 「やったな」

 

 「おう」

 

 自分そっくりな存在、胸の球の持つ特殊な力、分からない事だらけだが、今はこの勝利を喜びたい。

 

 「………………祭里?」

 

 一方で祭里は考え事をしていた。

 

 「今回の異妖……いつもより強かったと思ってさ」

 

 「そして、湧いてきた大量の異妖……」

 

 牙鬼軍団や外道衆が暴れるようになって、最近妖が妙に強くなっているように祭里は感じていた。このまま何事もなければいいが………

 

 〜一方その頃〜

 

 『何故逃げた』

 

 「分かるでしょ、あの攻撃まともにくらったらマズいって。こっちが矛を収めれば収まるみたいだし、そっちの方が良い」

 

 カイの放った一撃。あの一撃をくらえば、神として祀られた存在だろうと再生が叶わずに散らされる。

 

 『……………そうだな』

 

 「ところで、急にすずさんに対する態度を変えたみたいだけど……?」

 

 『巫女は神と通じるもの、そしてその威を広めるもの……だがそれを執り行うのはあくまで人間である。元来神の力は人間には過ぎたもの……みだりに使えばこう疑問が出よう「妖と何が違う?」と』

 

 「ああ、なるほど」

 

 彼女の魄を一部喰らったから、そこに宿った記憶づてに分かる……生命力のストックが尽きないのをいいことに、覗けば羞恥心でこちらが顔を覆いたくなるようなあんな事やこんな事にさえ妖術を使用していたのを。

 

 『既に王であるなら尚の事、あの娘が死に至るならば次の転生は人の腹でなく妖怪として……になる』

 

 「ハッハッハッマジか」

 

 『肉体ごと魄力を食い尽くせば、あるいは……とも思ったが流石に強い……であれば我も強くならなければなるまい』

 

 「やった、これからよろしくね」

 

 『それより貴様、我の記憶を巫女の番に降ろしたな』

 

 「隙になったでしょ?」

 

 『は!?貴様……何をやってる!!』

 

 「うわー ヤ ラ レ タ」




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