スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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第20話 裏切りの画楽 Bパート

 「それじゃ、お母さん。明里達をお願い」

 

 「うん、モーレツ緊急事態なのは分かった……気を付けて」

 

 すず側の両親に娘達を頼むとすずと祭里は、妖のみんなが集まる場に赴いた。

 何故か?夜中、美柑から鬼電があったのだ。

 知り合ったばかりだが、お母さんの先輩だからという事で、メッセージアプリづてに友達に登録していたのだった……早速応対にすずは入った。

 

 「フワァ〜もしもし、美柑さん?」

 

 『良かった、繋がった』

 

 安堵の息遣いがスマホ越しに伝わってきた、何やらただ事でない雰囲気を醸し出す……

 

 「どうしたんですか?」

 

 『こんな時間にごめん、実は』

 

 美柑から、イチゴが妖に連れ去られ、次の朝殺されるという話を聞く。

 

 「嘘……」

 

 『カイからの知らせで私達も本当の事だって知ったの、場所は小美呼市らしいし、でも私はデビルーク……他の星だし、全速力でそっち向かっても間に合わないと思う。だからイチゴの事……頼みたくて。お願い、イチゴを助けて!!』

 

 「う……うん」

 

 妖達がそんな事をする筈ない……と言い切れない程に、彼女は慌てていた。

 本当であれば、朝ご飯を食べている暇が惜しい……だが、子供の朝ご飯は確保しておかなければ……

 普段三大欲求の全ての塊であるすずが、朝ご飯を抜かさなければならない出来事が起きている……すずの両親は事態を重く見て、快く引き受けてくれた。

 

 「行こう、祭里」

 

 「おう」

 

 〜山中〜

 

 信じられないものをみた。

 知らせ通り、イチゴを捕らえて、今にも何かをしそうになっている妖達……

 

 『やっつけろー』

 

 『早く倒さないと』

 

 『このっこのっ』

 

 「ちょっと……どうしたの?中止、中止!!」

 

 すずはその場に割って入ろうとする……がしかし、結界が張られて入れない。

 

 『あ、すず様』

 

 『待ってるポン、もうすぐこいつを亡きものにしてやるんだポン』

 

 「ダメだよ、こんなの私許可してない!!」

 

 『でもシロガネ様は良いって言ったブー』

 

 その言葉を聞いて、すずはシロガネを呼び出す。

 

 「シロガネー、シロガネー」

 

 『久しぶりだな』

 

 シロガネがすずに気付き、話しかけてきた。

 

 『少し遠出をしている間、色々あったようだな』

 

 「うん、それより……何をしようとしているの?」

 

 ほんの少し、語気が荒くなっているのに気付いた。

 

 『こいつの処刑だ』

 

 「え……」

 

 処刑……処刑……頭の中で数回反芻して、やっとすずはその言葉を呑み込めた。

 

 「◯すって……事?」

 

 『こいつがこの街に降り立った日から、この辺り一帯の妖は恐怖で眠れないようだ……無論、我輩もだ……お前もそうではないのか?』

 

 身に覚えはなくはない、少なくとも……ここ最近のかなでは怯えている。

 

 「ふざけんな……それが昨日、お前達を守った奴にする事かよ!!」

 

 『守ったけど、あれはマズいタヌ!!祭里も言ってたタヌ!!あれは神殺しだって』

 

 「それができるかもってだけで、そうすると決まった訳じゃないだろ!!」

 

 祭里達の言葉を横目に、妖達は騒ぎ立てている。

 

 『怖いモン怖いモン……』

 

 『まだ無事カンナ?』

 

 『早く僕らの前からいなくなれ!!』

 

 妖の一人は、小石を投げつける。

 ただしその手の小ささから……小豆一粒にも満たない大きさのものだが。

 

 「………………」

 

 イチゴは今投げてきた方向を見る。

 

 『ヒィ!?』

 

 『やめとけやめとけ、こいつがその気になったらどんな目に遭うか分からん』

 

 「とにかく……こんなのはもうやめよう?イチゴ君の攻撃がダメなら、使わないように説得するから……」

 

 『使わないでは、こいつの気分でいつでも使えると言っているのと同義だ。使える事自体が恐怖を加速させていると何故分からん!!』

 

 「!?それは……」

 

 「埒があかねえ、押し通る!!」

 

 祭里は強行突破しようとするも弾かれる。術を唱えるも……結果は同じ。

 

 「なん……だと……」

 

 『この辺りの地脈全てを利用しての結界だ、祓忍一人に突破できるものではないと知れ』

 

 「嘘だろ……」

 

 こうまでするとは思ってもいなかった、二ノ曲や香炉木を呼ぶにしても……時間がかかる。

 

 「王様命令……じゃダメ?」

 

 『確かに王として裁定を下せるのは、我輩かお前のみ……だが、お前の裁定では、あいつ等を止める事などできん……、納得をさせられないのだ』

 

 妖に法は存在しない。

 故に王がいる。

 ただ、王であれ……たくさんの民が異を唱えればどうにもならない。

 

 「どうしてこんな事……」

 

 『どうしてだと?いいか、奴らが何のためにこんな事をしてるのかよく耳を傾けるが良い』

 

 すずは、言われるがままに耳を傾ける。

 

 『あんな奴にすず様はやらせないむん』

 

 『すず様に危険が及ぶ前に』

 

 『すず様が倒されませんように』

 

 『すず様がやられない内に』

 

 異口同音だが

 

 『すずを守らなきゃ』

 

 その考えの下、団結して行っていた。

 

 「───────」

 

 『一番偉い者が一番重い決断をしなくてはならん、それを下すのが王である』

 

 悲痛な面持ちを取り繕う暇もないまま、すずはイチゴに問いかける。

 

 「イチゴ君、君はそれで良いの?」

 

 当のイチゴは、質問の答えを考えるより先に別の事を考えていた。

 美夜との会話を思い出していた。

 題して「呪詛返し」を教えてもらった時の話……

 

 〜明崎邸〜

 

 彼女は戦闘装束でなく、普段着の着物を着てイチゴに術を教えていた。

 

 『この術は、相手と意識を同調させて念じるの。必要なのは情報と恨み。カウンターの意味合いの強い術だからね。直接呪い、害意を受ければそれを辿って返せばいいけど、傷とかは顔や名前を知らないとどう返せばいいか分からないでしょ物理なんだから。後は『絶対同じ目に遭わせてやる』っていう気持ちね……まあ、ざ〜こなイチゴには無理か。はいざ〜こ♡ざ〜こ♡』

 

 二言ぐらい余計な気がした。

 自分の受けた傷や呪いを同じだけ任意の相手にも共有させる、言わば自身を媒介とする呪い。

 自分の痛みは引き続き受けるものの、確実に同じ痛みを相手にぶつけられる。

 

 『ていうか話聞いてるとダメージはそのままっぽいじゃん、そんなもん教えられたって使いたくないよ』

 

 『…………印の組み方知らないイチゴにもできるよ?強く相手を意識すれば良いんだし』

 

 結局、うまくいかなかった。

 相手を意識して念じる力が足りないとかどうとか……

 実際美夜がやると、向こうが指を切った時の痛みがイチゴに乗っかってきたのだった。

 何故今、それを思い出しているのか……

 自分の中にある、黒い衝動は告げる。

 

 『すずを狙え』

 

 『自分が死ぬ時、共に死ぬようすずを呪え』

 

 『自分の腹を切られれば彼女の腹が裂けるように』

 

 『自分の首を刎ねてくるなら彼女の首が飛ぶように』

 

 『王の命に鎌をかければ手を緩める筈だ』

 

 『あんなに死なせないようにしてくれてるんだからダシにするくらい許してくれるさ』

 

 それが……生きたいと思うが故の判断なら、なんて身勝手で醜いのだろう。反吐が出そうだった。

 

 「いいよ、構わない」

 

 イチゴは、そう吐き捨てるのが精一杯だった。

 

 「やっと楽になれる」

 

 20年弱、「デビルークの汚点」として蔑まれているのを感じながら生きていかねばならなかった。そこから目を逸らすには、自分が人の役に立てる、価値のある奴だという実感が必要だった。やっと最近それを感じられてきたのに、もう終わりなのか?やはりダメなのだろうか?こんな自分では……だがしかし、少なくとも今自分がいなくなれば、目の前の妖怪達は、安心できるのだろう。デビルークの人達も、そう……ならば、これで良い。

 

 『ふむ、殊勝な心がけである』

 

 「あ、ああ……あ」

 

 不思議と、胃の中が逆流するような……吐き気が湧いてくる。

 耐えられなくなり、すずはその場で吐いた。

 

 「すず!!」

 

 祭里は、すずの背中をさする。

 

 「何、これ」

 

 すずの脳裏に、農夫達から、烏帽子姿の男から力いっぱい罵られるシーンが映る。想像にしては生々しく、気分が悪い。

 

 「比良坂命依の記憶だよ」

 

 いつの間にか、かなでが外に出ていた。

 

 「!!幼心ちゃん」

 

 「人の記憶には二つあって、体と心にそれぞれあるんだってさ……昔歌川くんの絵を見て涙を流したでしょ?……私が記憶を引き受けたけどもう、一度宿して産まれたすずの体にもすっかり刷り込まれてしまってるとしたら……」

 

 すず同様、もしくはそれ以上に弱った姿を見せている。すずはおぼろげながらのフラッシュバックであるが、かなではくっきりと覚えている事柄なのだ。

 

 「シロガネ……やめさせて、こんな事……」

 

 どんどんかなでの息までもが荒くなり、段々とえづき始めている。

 

 『どうしてすず様達は、そんなに弱ってるサル?』

 

 「私は………」

 

 『あいつが怖くて、◯にそうサル?』

 

 「ち、違うの……違うから……」

 

 『ならば横になっていろ、直に終わる』

 

 「確かに私も、あの子が怖いって思った……怖くて……だから……何かの拍子にいなくなればいいとさえ……でも、大勢でよってたかって◯そうなんてそんなの……私を生贄にしようとした人間達と変わらないよ」

 

 昔の出来事を想起させ……妖術全体が練られなくなっている。

 

 〜一方その頃〜

 

 強烈な不快感を添えて、比良坂命依はすずの声を感じ取る。

 

 「え!?」

 

 「どうしたんだい?」

 

 画楽は心配になり声をかける。

 

 「すずが呼んでる……こっちに来て」

 

 「……分かった」

 

 二人は、すずの方に向かった……

 

 「すず君……!?」

 

 「!!」

 

 すずとかなでが泣き崩れている場面に遭遇する。

 そして、少し視界をずらした時に見えたもの、それは……

 

 「……………………やめて」

 

 命依は激昂した。

 

 『今回ばかりは、そうはいかん』

 

 「やめてって言ってるの!!」

 

 メイは黒い折神を飛ばし、場を乱すよう図る。

 だが、狙いがつかず空を切るばかり。

 

 「─────ッ!?」

 

 メイもまた、気分が優れずに膝を付く。

 

 「…………!?いけない」

 

 すずと……特にかなでとメイの表情は、冷や汗と涙でぐっしょりとなっていた。

 思い返せば、比良坂命依が◯された時と状況が似ている。

 彼女は水害の生贄として◯んだが、生贄にされる時、誰もがその様を見守る……つまり、大勢が生贄の◯を望んでいる時間があって……彼女はその悪意にあてられていた。

 二人はその当事者……生贄にされた彼女の記憶を持っている。一人は怨念として、もう一人は転生者として……

 生前のトラウマをそっくりそのまま叩きつけられる、しかも今度は友達(ともたち)の手によって……なんという、地獄絵図だろう……

 

 「画楽……くん」

 

 怨念として蘇った歌川画楽の初恋の面影は、助けを求める子犬のように縋りつく目で画楽を見ている。言いたい事は分かる、なんでもいい……目の前の光景をどうにかして欲しいのだと。何か、暴走しかけてすらいる雰囲気を纏ってもいる。

 

 「ああ………」

 

 今、この瞬間、自分が動かなければ……

 あの時助けられなかった比良坂命依を、再び助けられないばかりか、今度は見て見ぬふりをする事になる。

 

 『では、同じ事があっても大丈夫ですね』

 

 イチゴは問いかけた。

 こうなる事を知ってか知らずか、彼は問いかけた。

 本当にそういう状況が舞い込んできた、彼の力を甘く見ていたミスではある……

 いずれにせよ、やるべき事は一つ。

 それをすれば、どうなるかも分からない程馬鹿ではない。だがそれを差し引いても、動かなければいけない瞬間はある。

 

 「今がその時か」

 

 力が無かった事。

 守れなかった事。

 あの時(幕末で)の自分の後悔が、筆を動かす腕に力を与えるというのなら……

 

 「画現術」

 

 ありがたい御札を模写して何枚も何枚も量産し、結界周りに貼り付ける。

 

 「出血大サービスだ、持ってけドロボーってね……今だ」

 

 「お、おう」

 

 祭里が術を唱えると、結界は壊れた。

 その瞬間、歌川の抱えてる紙から怪鳥と言うべき大きな鳥が現れ、イチゴに乗っかる妖をついばみ、全て放り投げた。

 

 『ギャン』

 

 『あ、アイツが』

 

 「歌川……さん」

 

 鳥はイチゴの腹部を口に咥えると、飛び立とうとする。

 

 『おのれ、歌川画楽!!』

 

 『そいつを離せ!!』

 

 「離すと思うか?この状況で?」

 

 『貴様……自分が何をしているのか、分かっておるのか!?』

 

 「ああ……僕だって妖の端くれだ、自分が何をしているのかぐらいはよく分かっているとも……だが、ここで彼が討たれるのを指で咥えて見てるのはそれこそ……俺自身を裏切る事になる」

 

 画楽はメガネを外す、その仕草に、彼の本気を見た。

 

 『よく分かった、貴様をこれより裏切り者と見なす』

 

 「君と触れ合えなくなるのは残念だけど、仕方ない」

 

 大きな鳥は画楽とイチゴを乗せ、大空まで飛んでいった。

 

 『追えー!!追えー!!』

 

 シロガネの指示なしに妖達は、歌川画楽を追いかけた。

 

 「画楽君……」

 

 ありがとう

 

 場違いのようだが、命依達の心が思うのはその一言、感謝の一念だった。

 

 『どうしてすず様達は、今喜んでるんだキュン?』




ごめんなさい、妖とすずちゃん達……
イチゴのスフィア属性的に、すずを守るためにああしてくるのは仕方がないというかむしろ当然と思い至り、その結果前世のトラウマを思い出させてしまいました。
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