スーパーロボット大戦Z Another Chronicle 作:レゴシティの猫
前回までのあらすじbyアサキム
「スフィアの中には、己を殺す心から培われるもの……いわば虚無を求めるものがある。その果ては死、生と陰陽の如く反立する概念に繋がる。そんなスフィア……沈黙の巨蟹に同調できるイチゴから生の極みである巫女王すずを守るため、妖達は立ち上がった……だが巫女とて人、心に傷はありそれを理解する者もまた、立ち上がらなければならない宿命にあるのさ。そして僕は今、何故か主の元を離れるカイを追いかけている」
〜東京 某所〜
オフィスビルの一室で、スーツ姿に身を包んだ現代の忍者達は集まった。
「遅ればせながら……そこのメガネも加えて作戦会議といきましょう」
「皆さん、お久しぶりです」
旋風は指定された場所に座る。隣の人間に話しかけられた。
「息子さん達、ご活躍だそうですね」
父親であるあなたと違って……
「……ええ、ありがとうございます!!息子達に伝えておきますので」
「!!……」
皮肉の意味であったが、素直に受け取られてしまい、これ以上何も言えなかった。
「そこ!!無駄口は叩かない!!」
祓忍の一人は御頭に注意された。
「は、はい!!」
「ごめんなさい」
そして、本題に入る……
「先日小美呼市に出現した妖は結城イチゴと同じ姿形を持ち、牙鬼幻月と同じく妖怪を産み出せたようね」
「そうだね、また行方不明になったけど」
「妖を産み出せるという事は、軽く見積もっても妖の王と同レベル……嫌、それ以上……」
「そして、かのクコチヒコから練った式鬼を持つ……という認識でよろしいでしょうか?」
「構わないわ」
「巨大ロボットに変形か……世も末ですわ」
「祓えるのか?」
「すぐ消すか消さないかの方向で考えるのやめていただけませんか……目的すら未知数でしょうに」
妖は動く目的こそ存在理由であるものが多い。
「こちら側と刃を交えた時点で祓いの対象ではないか」
「まあ、それもそうですがね……手を抜いて戦うという発想を持てる個体であるのも忘れてはいけませんよ。人妖側にしてはかなりの知能がある証左だ」
「そういうお前こそ、負の側であると決めつけておるな」
「いやぁ、バレちゃいましたか」
話題は、その妖の能力から、正体へと移り変わる。
「……同じ姿形を持つという事は……オモカゲですかねえ?」
「オモカゲっていうと……ドッペルゲンガーよろしく本人にそっくりな分身って事だよね?違うんじゃない?」
「旋風、根拠は?」
「オモカゲを主戦力として扱うすずちゃんの話を聞かせてもらったよ。すずちゃんを基準にして言えば、物理面を除いて
「……カゲメイの件を含めたら半々ねぇ」
オモカゲの方からのアクセスで主導権を握られた事もある……もっとも、奪い返せるようだが。
「例のアレである可能性は?」
「例のアレ?」
「明崎家に保管させてたアレです」
「アレかぁ……」
「アレなら、あり得るかもしれない」
封じられた、大江山の鬼の末裔ともいうべきモノ……封じ込めた後、代々明崎家に封印の監視をさせていたが去年明崎家当主が死んだ時、行方不明になったとか……志葉家にいたイチゴをそれとなく調べても何も出ず、途方に暮れていた所やっと掴めた尻尾……かもしれない。
「孫娘……現当主も呼んでおく必要がありそうね、名誉挽回の機会はあげとかなくちゃ」
〜志葉家 屋敷〜
「という訳です」
「そうか……悪いな」
イチゴにそっくりな妖怪、忍者、ヌエ、でっかい犬型のメカ……
「マジ?」
あまりに突飛な話に千明は驚いた。
「マジだろうなあ」
「犬……かわいかったん?」
「いえ、獅子折神のようなかっこいい系統です」
「そう、ありがとな」
「外道衆との戦いには関係ないが、注視はしておく必要があるか」
もし人々に牙を向いた時、戦えるように……
「しっかし、おんなじ姿の野郎か……」
千明は何か意味ありげに呟いた。
「千明、どうかしたか?」
「おんなじ姿のそいつが悪さしなくて良かったなって話、それされたらイチゴが悪い事したみたいになんじゃねえか」
実体験があるかの如く、勢いを付けて語りだす千明……
「そうね……」
「ところで
処刑されかけていたのだ、安否ぐらいは確認しておきたい。
「それが……その……まあ……今回遭った事に関しては特に気にしてないんですけど」
〜数時間前〜
イチゴは道場の外にいた。
「ああ……イチゴが、「自分の長所を突然ごっそり失った人」のオーラだしてる」
「ここ何時間かあの調子だな」
ため息を吐き出さないだけマシなような……そうでもないような……
「おい、いつまで……」
「しゃーない、オレちょっと聞いてくるよ」
ファイはゆっくり物音を立てずにイチゴの隣に座った。
「ファイさん……」
「大丈夫かい?」
「大丈夫じゃない」
「どうしたんだい?」
「母さんに、カイを取られた……から伊賀崎の道場にいる理由なくなっちゃった」
胸の球から発する力が発端で、処刑されかけたのが発端だった。
「まあ、すごいパワーだったもんね〜〜〜」
「まあ、一番の問題は、処刑されかけた事に恨もうとも、助かろうとも思ってなかったオレらしいんだけどね」
「……………どうしようもないね」
「でしょ?あれ民の総意だったらしいんだよ?どうにもできないよね」
「スフィアがなくなって、残念そうだね」
「あれがあれば、ずっとカイを動かせる。みんなのために戦える……そう思ってた、そうできないオレなんか何の意味もない」
戦いの最中密かに感じていた充足感、「ああ、オレは人々の役に立ってるんだ」という感覚、あれが得られなくなる……
「そう落ち込む必要なんかないさ、誰も戦えない君に意味はないなんて言ってないだろう?」
「……………ないけど」
「無理に戦う必要なんてないのさ、みんなのためって言えるイチゴ君の気持ちを持ち続けていればそれでいいよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「もう少し、考えさせて」
イチゴはその場を離れた。
「手強いね〜あれ」
「どこかの誰かみてえだな、「人命は大切、でもオレは別」ってタイプの」
「イチゴさん……」
「大丈夫でしょうか?」
「これ以上はあいつ当人の問題だな」
〜デビルーク 宮殿〜
「ハァ……」
美柑は、帰ってきたカイを見ていた。
これまでの行動履歴とイチゴの行動からして、スフィアと呼ばれた胸の球体から出た力でイチゴは処刑されかけていたのだ。
「イチゴのバカ……」
もう少し、生きるのに欲求を向けて欲しかった。
一緒にいるのもダメ、数年放っとくのもダメ、変わる気配はない。
何が「やっと楽になれる」だ。
何が「直接狙ってくれてありがたい」だ。
そんな事を言わせるような目に遭ってきたとでもいうのか?
遭ったのなら教えて欲しい、解決方法はなくとも。
嫌、解決方法がないのであれば、言っても無意味……とでも思っているのだろう。
イチゴを見ていると、美柑は自分の取った選択がはたして正解だったのか?と疑問を投げかけてくるようにも思える時がある。
無論、リトを選んだ事に後悔はしてない、したくないが……イチゴの言動が、美柑への罰のように思える。何が罰だ、人を好きになるのに何故罰を受けなければならない。
「お兄様……」
ノノが、いつの間にか現れていた。
その呟きから、多分イチゴの言葉はがっつり話を聞かれてたのかもしれない。
「どうしたの?ノノ」
「お兄様は、いったい何があったのですか?」
「…………………ノノは、気にしなくていいから」
子供が知っていい話ではない。
「おば様……」
割といつもより聞き分けよくノノは自室に帰っていった。
それからヤミが帰ってきた。
一仕事を終えた後のように、力が抜けての帰還だった。
「ただいま、美柑」
「ヤミさん、どうだった?」
「バッチリです、美柑は?」
「私は……その」
美柑はヤミに今の状況を説明した。
「私はデビルークにいたアリエナイザーを捕まえに行ってたので知りませんでしたが、それってまずくないですか?」
「まずい?」
「自分が処刑される程に周りから不必要だという認識を持たされた状態で、カイがいなくなった今……彼の取る選択肢は」
「……あ゙」
「すぐ地球に行きましょう」
〜道路〜
『ちょっとお遣い頼んでいいかな』
歌川から画材収集を頼まれたので、それを買いに行く事になった。
とはいえ百貨店で買い揃えられそうなものばかりなので、迷って時間がかかる……という事もないだろう。
「君、元気がなさそうだね」
歩いているとサングラスをかけた男女一組が話しかけてきた。
サングラスと帽子で顔を隠しているが、お肌に着目すれば美男美女のカップルの類に入るだろう。
『縁が』『できたな』
とプリントされた赤いTシャツを身に付けている。
『ワーハッハッハ!!』
空耳が聞こえてきた。
「何をしても楽しくない……と、そう思えて仕方がないって顔だな」
「そういう時、どうすれば良いか知ってる?」
深く考える気もないので、適当に答えた。
「さあ?」
「『推し』を見つける事だ」
「うわ、新手の勧誘か」
「そこまではしない、ただの人生経験からのアドバイスだ」
「失礼します」
イチゴは走ってその場を去った。
「いなくなるの早いな」
「アクア君、このシャツでこういう事するの、恥ずかしいよ……」
「すまん……はしゃぎすぎた」
〜一方その頃〜
画楽は自身のアトリエの一つに身を置く事にした。そこはニンニンジャー達の道場に近く、ちょっかいをかけるのも、加勢するのも可能である。道場主づてに祓忍である御頭とのパイプも依然繋がったままである。
先日の妖獣をキャンバスに描いていると、命依が話しかけてきた。
「画楽君。あの画材なら、ストックはまだあるし、なんなら私が買うよ」
「気持ちはありがたいけど、今回は彼にさせておきたい。差し当たっての行動目的になるからね〜〜〜次はご飯をお願いしよっかな」
何か目的を与えておけば、そうそう自棄にはならないでいいだろう……と画楽は考えた。
「優しいんだ〜〜〜画楽君、そういえばあいつって何者なの?」
「さあて……」
「分かってるから刀をあげたんでしょ?」
「本当はまだはっきりと分かった訳じゃないんだ、僕のツボを突く攻撃だったから、力を貸したくなったまでだよ」
「ええ……(困惑)」
「ただ……僕の絵を買ってくれた人の中にも結城という苗字の人がいてね……その人の息子は別の星の王女と結婚して王になってるそうだ」
「星?」
「うん」
「あの星?」
命依は空を指差す。
「そうだよ」
「……………………(宇宙猫)」
「まあ、そこは一旦置いといてだ……その息子は王子となる訳だろう?みんなの注目を集めやすい存在って訳だ、それを基に何かが産まれれば強いだろうね」
「でも、人間じゃん」
人の息子は、また人である……命依はそう言いたかった。
「かの大妖怪たる酒呑童子も、人間から産まれたという……人間が外道になる事もあるんだから、人間だからといって妖に通じないなんて事はない」
「………………」
〜河川敷〜
買うものを買い終え、イチゴは草むらの上で寝そべっていた。
「カイのないオレか」
料理は残っている……
だが母親から教えてもらった料理は、黒子のみんなに粗方教えた……というかそもそも、殿様とまで呼ばれている人の世話をする者達だ、最初から腕の良い人達だろう。事実、覚えてもらうのも早かった。
ラッキースケベ、ハーレム王の因子……
特にない……というか、フラグがなければこんなものかと思ったり。
だからこそ母の影響も、父の影響も関係ない、完璧に自分だけのもの……それがあれば、自分の思うままにいられると思った………それはカイと、スフィアだった。
それを抜いたら
「何もないな……」
あるのは、父親と母親の関係という事実と、織り込み済みで王子として生を受けているという悪評。決して暗君ではない結城リトの、王としての評判を貶めている存在であるという感覚。
本当に何も無い方がマシなまである。
「や」
親しげに声をかけられた。
振り返ると白虎だった。
人の格好をしているので、旅人に見えなくもない。ノースリーブに視線がいくぐらい……
「元気か?」
「まあ」
「単刀直入に聞くが、あのロボはどこだ」
「製作者の所に帰りましたよ」
「にしては…………はっまさか……」
「何か?」
「嫌…………まあ、これを機に危ない事をするのをやめる……というのはどうだ?」
「とはいってもな……」
「なぁに、君はまだ若い。道はいくらでもあるさ……」
「いくらって……どんなのだよ?」
戦う以外の選択肢……彩南町とデビルークは論外、前いた場所は美夜が怖いし、黒子という選択はほぼダメになったし……
「まあ……………………」
白虎が考え続けて……3分ぐらい経過……
「分からんのか」
「すまん、気休めだった……これの方がいいか」
白虎は薄い本を渡してきた。
「爆熱戦士ファイヤードラゴン 第1話」
と題された本
「なにこれ」
息子の自作本らしい……
「それすごくまずいやつじゃないですか」
人の恥ずかしい話に抵触する……
「本人はずっと(500年ぐらい)ノリノリなんだ、君が気にする事じゃない」
「あ……そすか」
「気に入ったら来月に続きを贈ろう、それまで無事でいてくれよ」
白虎は去っていった。
「は〜」
ものは試しに読んでみた。
「こ、これは……」
まず間違いなく、人間を困らせる悪が現れて、支配され、主人公が話を聞いて、成敗する……という話の内容のものばかり……西遊記の視点を悟空のみにして、勧善懲悪ものにしたような……
「ふふ……」
この本ぐらい世界が単純明快だったら良かったのに……と、考えてしまう。
倒すべき悪、越えるべき壁、愛すべき民達、全てがはっきりして、迷いなく自分のやるべき事を突き進める……そうであれば良かったのに……自分しかいない世界じゃないから、そんなに単純じゃないのだ。
ところで、自分のやるべき事、それは……なんだ?
妹への想いの決着……何も知られたくない、あの日の絶望も、母の罪も、何もかも……
謝罪行脚……今から買える業物なんかない。
考えると、女性の叫び声がした。
「きゃああああああああああああ!!」
大変だ!!と思い辺りを見回す……誰もいない、不意に危機感を感じ、空を見上げると、箒に乗った少女がこちらへ突っ込んできた。
イチゴのエッセンスには、ぼくのかんがえたアナザー丈ちゃんが含まれてたり含まれてなかったりするかもしれない。(自白)