スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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第21話 突き破る沈黙 Cパート

 雨雲が見えてきた。

 しかし、縁が絵の如くというか、絵そのものであるかのよう

 窓ガラスの向こうから手を振っている画楽が見えた。

 

 『御頭から許可は得ている、協力しよう』

 

 「どうしてあんな場所から……」

 

 雨が降り、建物の炎が消えた。

 

 「なるほど!!」

 

 建物からでないと、濡れる恐れが高く、紙に致命的だからだろう。

 

 「思うように火の手が広がらない、ムシャクシャするー!!」

 

 「畳み掛けるぞ!!」

 

 ウサギの左腕の攻撃を刀で防いだ小狼(シャオラン)が促す。

 

 「今です、黒鋼さん」

 

 「ああ!!」

 

 黒鋼はウサギまで突進する。

 

 「破魔・竜王刃!!」

 

 それから数々のウサギの道具と道具の間の関節部分に切れ込みを入れた。

 

 「しゃあ、行くぜ!!」

 

 天晴達は自分達の武器にあるスイッチを押す。

 

 「一斉忍烈斬!!」

 

 回転して突撃。

 5人で連続でダメージを与えていく。

 

 「あっしも行きやす!!」

 

 キンジもギター型の銃で攻撃。

 

 「ばあさん、仇は取れなかっ……あれ?ばあさんって一体……?」

 

 ウサギは爆発した。

 

 「モヂカラが効かねえって、結構きちいな」

 

 「そうね……でも、私達のモヂカラじゃかえって逆効果だからね」

 

 千明達は、アヤカシ相手にモヂカラを込めずに戦ってる……炎で戦う相手と「木」と「天」のモヂカラでは相性、噛み合わせが悪過ぎたからである。

 

 「流さん、トドメはお願いします!!」

 

 「ああ!!」

 

 流ノ介の了承のもと、ことはは突っ込んでいった。

 

 「やぁ!!」

 

 土のモヂカラは火の攻撃と相性が良い訳ではないが、丈瑠の「火」や茉子の「天」千明の「木」よりはマシである。

 

 「シンケンマル・水流の舞!!」

 

 当然、水のモヂカラならば相性がいい。

 

 「ムシャクシャしたばっかりに倒された、特に反省はない」

 

 アヤカシは爆発した。

 

 「オー、スゴーイ、スゴーイ!!」

 

 モコナは木の陰でブラウンに言った。

 

 「いいかいブラウン……侍になるにはあれくらい強くなる必要があるのだよ」

 

 「先はキビシイネ」

 

 「でも……諦めないで、流ノ介も諦めないからブラウンを助けられるまで強くなったんだよ。諦めない……それが侍に一番大事なものだよ」

 

 遠くにいた流ノ介は不満を露わにする。

 

 「そ、それ私が言うやつなのでは……」

 

 「あ、あはは……」

 

 「殿様の所、行こ!!」

 

 丈瑠と蛾眉雷蔵は攻防を繰り広げていた。

 

 「はあ!!」

 

 「フッ!!」

 

 蛾眉雷蔵の猛攻を防ぎ、丈瑠は機を伺っていた。

 

 「はああああああ」

 

 「おおおおおおお」

 

 何度も剣を交えれば嫌でも分かる。

 蛾眉雷蔵は気質もそうだが攻めを重点においた戦い方をしている。

 

 「どうしたどうした!?攻撃の手が緩み始めてるぜ!!」

 

 「………………………」

 

 流ノ介より野性的で苛烈な攻勢だが、倒すべき相手でしかない分、気は楽だった。

 

 「っ」

 

 蛾眉雷蔵の動きが一瞬鈍る。

 

 「今だ!!」

 

 渾身の一撃を、丈瑠は振るう。

 

 「テメエ……まさか、この一瞬を狙って!?」

 

 「多少時間はかかったが……俺の勝ちだ!!」

 

 シンケンマルに炎を纏わせ攻撃する。

 

 「はぁ!!」

 

 「おぅっくっ!?」

 

 蛾眉雷蔵は膝を着いた。

 

 「やったか……」

 

 九衛門は一人、草むらに潜み、術を唱える。

 

 「妖術・肥大蕃息の術」

 

 ウサギが巨大化した。

 

 「山みたいに、でっかくなっちゃったー!!」

 

 「重ねて……妖術・妖怪ガシャドクロ召喚の術」

 

 巨大な骸骨を組んで作ったような妖怪が出現した。

 

 「おお……なんだあれ」

 

 「妖怪の一体か」

 

 今まで出なかったという事は、初めからそういう仕様?

 ガシャドクロは街の破壊を始めた。

 

 「そうはさせるか!!」

 

 金髪の青年が叫んだ。

 

 『変化の術を解く!!』

 

 青年の叫びと共に一体の獣が、ビルの屋上から姿を現す。

 どことなくメカニカルで、だが一目で白虎と分かる姿だった。

 

 「虎折神!?」

 

 「いいえ、殿……脚の部分が違います」

 

 ついでに目の色も違う。

 

 「ならあれは……」

 

 あの白虎は何だ?という話題になりかけていたので八雲がぶった切った。

 

 「なんでもいい、加勢するぞ」

 

 「おう」

 

 「うん」

 

 「そうですね」

 

 「手裏剣合体」

 

 『ファング・ミサイル!!』

 

 足軽をミサイルで、

 

 『ソニック・シャウト!!』

 

 巨大化したナナシ連中は雄叫びをあげ破壊した。

 

 『次!!』

 

 「ば、ばあさ〜ん」

 

 シュリケンジンが現れた。

 

 「手伝うぜ!!」

 

 『ありがたい、行くぞ!!』

 

 「はあ!!」

 

 シュリケンジンの武器でウサギに攻撃。

 

 「あ!!」

 

 トングの部分で防御される。

 

 「えーい」

 

 そして火炎放射器で反撃を受ける。

 

 『おうりゃ!!』

 

 白虎はガシャドクロに噛み付く。

 

 『!?』

 

 白虎達が攻撃を加えるも、あまりダメージを与えられていない。

 

 「こいつ、強い!!」

 

 そして白虎に対抗して歯で噛み付いてきた。

 

 『くっ放せ!!』

 

 「今日は強い個体みたいだねえ、この調子で頼むよ」

 

 「白虎様、助太刀致しやす!!」

 

 バイソンキングの銃で攻撃、その隙に白虎は噛まれて発生した拘束を振り払う。

 

 『助かった!!』

 

 「いえいえ」

 

 『青龍の力がなければまずいか……』

 

 「青龍?」

 

 『俺と青龍が合身すれば、倍以上の力を出せるんだ』

 

 「そ……そうなんだ」

 

 〜一方その頃〜

 

 「巨大な敵相手はキツいな……避難しよう」

 

 雨も上がってきたのでレイアはイチゴの手を引っ張り、別の建物に移動を始めた。

 

 「そういえば、結構戦い慣れてたけど……」

 

 「学校でも、こういうのの成績は良かった方だよ。外国の方でね……授業の一環で自分の魔法で戦うのがあって」

 

 「そうなの?どうしてここに」

 

 「ここに来たのは最初はただの留学だけのつもりだったけど……こういう事できちゃうから、できれば人の役に立ちたいんだよね。丁度魔法少女の役受かったし」

 

 「……なんか関係あるの?」

 

 「襲われて我先に逃げてるの見たらイメージ壊れない?私の活躍を見て喜んでくれる人の前でそんなの見せられないよ……どうせ逃げるなら、誰かを助けて逃げたい」

 

 「……すごいね」

 

 「ありがとう、そう言われるとやる気出ちゃう」

 

 〜数分後〜

 

 無事、避難場所に着いた。

 

 「ここなら安全だよ。じゃあ私、他の人の避難誘導するから」

 

 レイアはその場を去った。

 その先でも、避難誘導をしている。

 コースを見るにさっき見えた箇所を優先的に動いている。

 

 「オレも」

 

 『あなたが否定しても、私はそれを肯定します』

 

 イチゴは今、満たされていた。

 共感でも、憐憫でもない、純然な肯定……おそらく最も飢えていたものなのかもしれないものを受けて、心が軽くなっていた。

 

 「オレも、やらなきゃ」

 

 できる事を人のために……

 自分に何ができる?

 …………今なら、なんでもできそうだった。

 軽く、手を掲げた。

 

 「うわー!!」

 

 感じる。

 

 「化け物だー!!」

 

 「嫌ー!!」

 

 どこかで人々の恐怖が募るのと同タイミングで水が滴り落ちていくのを。

 それらでできた水たまりを。

 これらを利用して……

 

 「来い……」

 

 今の自分にとって必要なものを呼び出す。

 

 「来い!!カイ!!」

 

 〜デビルーク 王宮〜

 

 ララは、カイの新しい体を作り終えた。

 

 「じゃあ、頭移し替えるね〜」

 

 これまでの記憶を差し替えて、スフィアの付いた方は破棄する。

 それを見てアサキムは駆け出した。

 

 「ジャストアモーメント!!」

 

 無駄な足掻きと知りつつも、手を伸ばし阻止しようと。

 その瞬間、カイが消えた。

 

 「え?」

 

 ララが驚いている、ララの想定しない事態だからだろう。

 アサキムは、その事象を知っている。

 

 「この感覚……オリジン・ロー……行使したとでもいうのか!?」

 

 しかし、アサキムの独り言が多すぎたせいか、辺りが静まり返った。

 

 「………………」

 

 スフィアのあるカイがその場から消えた以上、留まる理由もない。人質を取ってどうこうする……という選択肢も必要なくなった。

 

 「誰?君」

 

 「貴様は何者だ!!」

 

 兵士は武器を構えた。

 

 「ならば君達に用はない」

 

 アサキムは爆速でその場を去る。

 窓を開けてから脱出し、シュロウガに乗り込んでデビルークを離れる。

 

 「なんだったんだ?」

 

 「さあ」

 

 「侵入者だ!!」

 

 兵達は、アサキムの捜査を始めた。

 その騒ぎを聞いて、モモの娘ココは呟く。

 

 「え?何一体」

 

 〜地上〜

 

 九衛門のいた位置の真上に黒い円が現れ、中からカイが現れた。

 

 『え?え?』

 

 カイは驚いていた。

 デビルークに帰った筈なのに、いつの間にか地球に戻って来てしまっていたのだ。

 

 「…………どういう……事でございやすか?」

 

 「カイ……帰ったんじゃなかったのか?」

 

 その反応を他所に、イチゴはカイに近づく。

 

 「ささ、乗せて乗せて」

 

 『え……あ、はい』

 

 イチゴはカイに搭乗した。

 

 「あ〜ニンニンジャーのみんな……まあ、見ての通りというか……カイが帰ったのも本当だし、今ここにいるのもその通りだし……」

 

 嘘をついていた訳では無い……という事は伝えたかった。

 

 「細かい事はいいや、お前も一緒にイケイケドンドンだ、だろ?」

 

 「うん」

 

 「よし、そうと決まれば行こうぜ!!」

 

 「うん!!」

 

 白虎はカイを見て立ち塞がる。

 

 『君は……どうしても戦いを選ぶのか』

 

 「そうなるかな……でも、一つだけはっきりしてる事はある」

 

 イチゴは一呼吸おいて、呟いた。

 

 「黙って見てられないんだ、こういうの」

 

 『…………………』

 

 白虎は少しの沈黙の後、頷いた。

 

 『俺もだ……そうだよ。何の力で戦おうが、肝心なのは本人の意思じゃないか』

 

 白虎は味方となった。

 

 「おれ達も出ます」

 

 小狼(シャオラン)達も出る。

 

 「俺達も続くぞ」

 

 丈瑠はショドウフォンを構えるも、蛾眉雷蔵に邪魔される。

 

 「赤大将、もっと楽しませろや」

 

 蛾眉雷蔵の生命力故か、トドメにはなれていなかったようだ。

 

 「くっ」

 

 「殿!!」

 

 流ノ介達が丈瑠の加勢に入ろうとする。

 

 「お前達……」

 

 「邪魔だ、赤大将以外はどいてろ!!」

 

 「嫌や、どんなに強くてもうちらは負けへん」

 

 「生憎だけど、丈瑠の命預かってんの俺達なんで」

 

 「2回も背を向けるなんて、あり得ないから」

 

 「我らの忠義、あなたに証明してみせる!!」

 

 「良かろう、お前達の首級、纏めてあげてやるぜ」

 

 イチゴを肯定してくれる人達……

 気付こうとはしなかったが、こうして改めて考えると案外いるのに気が付いた。

 否定する人間の方が多いかもしれないが、今はそう考えていれば力が湧いてくる。

 

 「外道衆、牙鬼軍団……人々に恐怖をもたらすなら……」

 

 オレはあんた達に災いをもたらす!!

 

 イチゴは極を覚えた。

 

 「く、来るな!!」

 

 ウサギは発火用具をカイに向ける。

 

 「ならば!!」

 

 カイで飛んで滑空した後ウサギの近くに迫り、背中にドロップキックを仕掛けた。

 鉄骨部分に凹みを入れる。

 

 「やれるか?……」

 

 イメージしろ。

 壊すための形、仇なすための力。

 できない、嫌……しようとしないだけだ。

 インスピレーションはその場の流れに任せれば良い、踏み出せ……

 

 「(先人は言った……99%の努力と1%のひらめきと……これは99%の内に入るか?)」

 

 ひらめきを形にする……それを目の前のもので形にするに辺り最適化させる動作……

 

 「お前、道具から産まれたんだってな……?」

 

 「ぎょっ」

 

 カイの万能工具でウサギの体を全部弄ってキャノン砲を製造した。

 

 「名付けて、カチカチバスターくん」

 

 ウサギでできたキャノン砲をガシャドクロに向け、発射した。

 

 「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 当てると、それまで攻撃を意に介してなかったガシャドクロがたじろいだ。

 

 「ガシャー!!」

 

 『おお……なんてビームだ』

 

 発火用具の先端が前に出るよう改造しただけなのに、万能工具のすごさを思い知った。

 

 「そのままいけー!!」

 

 照射して十秒、ビームは途切れた。

 

 「エネルギー切れか!!」

 

 「そんな!!」

 

 他のみんなの落胆する声が聞こえる。

 

 「えい」

 

 イチゴはカチカチバスターくんをガシャドクロに投げつけた。

 

 「じ、じいさ〜ん!!」

 

 ウサギは爆発し、ガシャドクロにダメージが入る。

 今畳み掛ければ、倒せそうだ。

 

 「今だ!!」

 

 「おう!!」

 

 『俺の叫びを聞いてくれ!!』

 

 「シュリケンジン・アッパレ斬り!!」

 

 「アラクレバスター!!」

 

 『ソニック・シャウト!!』

 

 白虎の超音波と、シュリケンジンとバイソンキングの攻撃を受け、ガシャドクロは爆発した。

 

 〜一方その頃〜

 

 「行きます!!」

 

 「えーい」

 

 「行くぜ!!」

 

 小狼(シャオラン)、黒鋼、ファイ、三人の攻撃でアヤカシを斬り裂いた。

 

 「やったか?」

 

 「黒鋼それフラグ!!」

 

 モコナの言う通り、アヤカシは立ち上がって攻撃を仕掛けてきた。

 

 「複数で殴ってきやがって、ムシャクシャムシャクシャ」

 

 炎が3体の巨人に近づく。

 

 「いけるか?」

 

 小狼(シャオラン)はレイアースの盾を使って炎を防ぐ。

 

 「何!?」

 

 「黒様、加速付けるよ」

 

 「ああ!!」

 

 黒鋼の駆るセレスはウィンダムの風のブーストを受ける。

 

 「悪いな、俺もキレイにトドメさせなくてムシャクシャしてんだ、晴らさせてもらうぜ」

 

 黒鋼はセレスを駆使し、一刀両断した。

 

 「名前も名乗れなかった……ムシャクシャする」

 

 アヤカシは爆発……二の目撃破。

 

 「後は、殿様達だけだな」

 

 〜一方その頃〜

 

 シンケンジャーは、蛾眉雷蔵と戦っていた。

 

 「はっ」

 

 「やっ」

 

 茉子とことはで連撃を入れる。

 

 「おらぁ!!」

 

 蛾眉雷蔵は二刀を振りかざし、2人に反撃する。

 

 「させるかよっと!!」

 

 千明はそれから2人を庇い、蹴りを入れて距離を取る。

 

 「ウォーターアロー!!」

 

 流ノ介の追撃が来た。

 複数の流水の矢が、蛾眉雷蔵を攻撃する。

 

 「良い、いいぞ!!これが現代の侍の力!!全員一対一で味わい尽くしたかったが、仕方ねえ」

 

 蛾眉雷蔵は、必殺技の構えを取った。

 

 「まだ余裕がありそうだな」

 

 「殿、全員分の力を合わせましょう!!」

 

 「ああ、全員でやるぞ」

 

 全員、ディスクを構える。

 

 「シンケンマル・五重の太刀」

 

 5人がモヂカラを溜め……一斉攻撃。

 蛾眉雷蔵も、必殺技を放つ。

 

 「牙凌道・雷幻斬り!!」

 

 「はああああああああああ!!」

 

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 シンケンジャー側が競り勝った。

 爆発と共に、蛾眉雷蔵の腹に一撃を入れた。

 

 「俺様の腹に傷を入れるたぁ……はは……」

 

 蛾眉雷蔵は笑っていた。

 流石の千明も狼狽える。

 

 「こいつ……まだ!!」

 

 「俺は死なん、赤いのと決着を着けるまではな……」

 

 蛾眉雷蔵は退却した。

 

 「倒せなかったか……」

 

 「ですが、手応えはありますよ、殿!!」

 

 「このままの勢いが続けば、倒せない事はないんじゃない?」

 

 「まあ……それより見ろよ」

 

 「みんな倒してはるわ」

 

 戦いは終わっていた。

 

 「………………仕方ない、これにて一件落着」

 

 「忍ばず〜ワッショイ!!」

 

 『ヴイ!!』

 

 戦いが終わった後、そびえる機影が一つ……

 

 『マスター!!』

 

 「カイの反応……何故……」

 

 「カイがいるなら多分、イチゴがいるかも……」

 

 「行きましょう」

 

 その後、イチゴはカイから降りた。

 白虎が去るのを見届けて……

 その場に千明達がやってきた。

 

 「おつかれ〜」

 

 「イチゴ、お疲れ様」

 

 「ことは達もお疲れ様」

 

 「あれ?なんか、聞いた話より明るくなってんじゃん」

 

 「そう?」

 

 「鏡見ろよ、後でいいからさ」

 

 丈瑠もその光景を見ていた。

 

 「…………」

 

 「良かったって顔してるわよ、丈瑠」

 

 「そうか?」

 

 丈瑠も、そう言われて自分が笑みを浮かべている事に気がついた。

 

 「お疲れ様だぜユー」

 

 「だ、誰この人」

 

 イチゴはブラウンを見て驚いた。

 

 「侍見習いヨ、今後ともヨロシク」

 

 イチゴはつい丈瑠の方を見た。

 丈瑠は首を横に振っている、正式に認可してはないらしい。

 モヂカラが使えないからか?

 少しイチゴがゆっくりめのペースで歩いて列の最後の方になった時、声がした。

 

 「イチゴ……」

 

 美柑の声が聞こえたので、イチゴは振り向いた。

 

 「あ……」

 

 美柑がいた。

 

 「ぶ、無事で良かった……けど、カイ……」

 

 「母さん……ごめん、母さんの思う通りには生きられないと思う……」

 

 「………………」

 

 「でも、生きるよ……生きられるだけ」

 

 生きる事を肯定してくれた人がいるのを知れたから……前を向ける。一人の女の子にそれを諭されたがきっかけになったのは恥ずかしくて言えそうにはなかったが……

 

 「…………………そっか」

 

 美柑は、頷いた。

 

 「無事でいて、良かった」

 

 そこでモコナが乱入してきた。

 

 「イチゴのお母さんみーっけ、どうしたの?」

 

 「あ………」

 

 「げ」

 

 「聞いて聞いて、今日イチゴがね〜」

 

 話を振られる訳にはいかない。

 

 「あ、オレ頼まれてるものがあった……じゃ」

 

 イチゴがその場を去ろうとした途端、ヤミがぬぅっと現れた。

 

 「逃げる必要ないじゃないですか」

 

 「うわぁっ、いきなりのヤミおばさんは心臓に悪いよ」

 

 「ま、諦めるこったな」

 

 黒鋼も悪い笑顔を浮かべていた。

 

 「く、黒鋼さんまで……」

 

 「白饅頭はしつけえぞ〜」

 

 一同、どっと笑いがあふれた。

 

 九衛門はビルの屋上で様子を見ていた。

 

 「あいつ……一体?」

 

 同じ疑問を呟いた気がするが仕方ない。

 視える側である事は分かっている。

 先日戦った恐れの力の塊と瓜二つの容姿。

 それに勝るとも劣らない強力な妖術の使役。

 

 「それにしても……」

 

 嫌に持っている荷物が軽い事に気付き、瓢箪を確認する……

 

 「ッやられた!!」

 

 九衛門は舌打ちした。

 今回集めた恐れの力、余さず抜き取られていたからだ。

 さっきの偉業のリソースに充てがわれたのは明白。

 蛾眉雷蔵も、彼らが束になれば劣勢になる一方だ。

 

 「クッこれでは……せっかく集めた恐れの力が……仕方ない……今まで以上の牙鬼軍団の兵力、そして団結が必要か」

 

 『仕方ないわね……奥方様の力を借りるしか』

 

 〜その日の夕方〜

 

 哀れ置きっぱなしにしていた荷物は濡れ、画材は使い物にならなくなってたのでもう一度買った(今度は自腹で)

 

 「レイア、無事だったかな」

 

 そう思いながら歩いていると、本人に出くわす。

 

 「あ」

 

 レイアはイチゴの顔を見て驚いていた。

 だがすぐに笑顔を浮かべた。

 

 「無事だったみたいで良かった」

 

 純度100%の安堵で、イチゴも笑顔で返す事ができた。

 

 「レイアはなんともなかった?」

 

 「うん」

 

 良かったとイチゴも相槌を打つ。

 それから、どちらかが誘う事なくまっすぐ同じ道を歩き出した。

 

 「さっきはありがとう」

 

 「ん?ああ……気にしないで、危険を退けるのが魔法少女の仕事だから。あ……戦闘中でも演技中でもないから恥ずかしいな」

 

 「そっちじゃなくてその……」

 

 「?」

 

 「な……なんでもないや」

 

 「そう?」

 

 言葉に詰まってそうなイチゴを変に思いながらレイアは歩を進めた。

 

 「さっきのロボット乗ってたのってイチゴ君?」

 

 「オレ、19なんですけど……」

 

 レイアは女子高生の制服を着ている。卒業して1年経つイチゴより年下だ。

 

 「まあ、イチゴ君自身の年下感がすごいっていうか……」

 

 「そ、そうなんだ」

 

 「あ……なんか脱線しかけたような……そうだ、イチゴ君も誰かを守ってる人なの?」

 

 「できれば、そうありたいんだけどね……」

 

 「ん〜認められてない感じ?」

 

 「使う力が良くないって言うのがいてさ……」

 

 「そっか……でもその力で悪い事をした訳じゃないなら、私は応援するよ。だから……挫けないでね」

 

 「…………ありがとう」

 

 「ふふっどういたしまして」

 

 駅の近くになってレイアは歩を止める。

 

 「あ……電車?」

 

 「自転車停めてるから、じゃあ……またね」

 

 ヘルメットを持ち出して、レイアは駅の向こうへ行った。

 

 『またね』

 

 レイアの笑顔が、妙にイチゴの心に刻まれていった。

 イチゴに怒った姿、イチゴを励ます姿、蛾眉雷蔵から庇ってもらった後の一連の言動が頭から離れない。

 

 「……………これって」

 

 後日……

 

 「買ってしまった……」

 

 イチゴは「少女旋風マギア・レイア」のビデオをビデオ店で買ってしまった。

 

 「見られたらなんて言われるかな?」

 

 ただ、自分に寄り添ってくれた女の子の活躍してる場面を見てみたかっただけだった。

 

 「やめやめ、堂々としてよう」

 

 少なくとも、助けられた現場を見ていたみんなは分かってくれる筈だとイチゴは思う事にした。




面白かったと思っていただければ嬉しいです。
スフィアステージは落ちたままなので格闘と翼と万能工具でしか戦えないイチゴ君であった……
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