スーパーロボット大戦Z Another Chronicle 作:レゴシティの猫
ことはに、反抗期が訪れた。
〜数分前〜
「ことは……体はどう?なんともない?」
茉子はことはに体調について聞いた。
だが、返ってきたのは別の言葉……
「茉子さん、うち……稽古しに行くわ」
足取りは早く、茉子から離れようとしている……茉子はことはの腕を掴んだ。
「攻撃受けたんだから、休んでなきゃ」
ことはは茉子の手を振り払う。
「大丈夫やから、そんな心配せんでええ!!」
ことはは駆け出した。
茉子さん…茉子…さん……さん……さん………さん……………
「嘘……」
〜現在に戻る〜
「そんなにしてもらわんでええ、このくらいうちでもできるわ」
などと言いつつ黒子を部屋から追い払っているようだ。
丈瑠はその場に着いた。
「俺が行く」
黒子から首を横に振られた。
「様子を見るだけだ」
「本当に大丈夫か?」
千明もついて行った。
「ことは、大丈夫か!?」
丈瑠は勢いよくことはの部屋に入った。
そして、着替え途中のことはが見えてしまった。
「きゃっ!?」
3人共、全員顔を赤くして慌てる。
「あ、わりぃ」
「す、すまん」
「千明のバカ!!殿様のスケベ!!二人共あっちに行って!!」
ことはは部屋の枕を千明の頭部に投げつけてた。
「逃げんぞ、丈瑠!!」
「あ、ああ!!」
千明と丈瑠は、走ってその場から去った。
「……………(だからやめとけって言ったのにというジェスチャー)」
数分後……
「ただいま……戻りました」
ブラウンに別れを切り出して間もない流ノ介が屋敷に帰ってきた。
力が抜けていたと言えるかもしれない。
足取りもキビキビしたものでなく、少し揺らつくような
ことはが道着に着替えて外に出ようとしていた。
「どうした、ことは」
「うち、稽古行くわ」
「待て、稽古なら複数人で集まってやった方が」
「流さん」
「何だ?」
間を取って数秒、ことはの口から出ないような言葉が聞こえた。
「うざいわ」
流ノ介は衝撃のあまり石化した。
そんな流ノ介を置いてことはは足早に外へと出発する。
念の為、黒子が陰から様子を見る事になったのだが……
屋敷の雰囲気は、お通夜のそれへと変貌する。
しかも……黒子達が集まっている場所から、阿鼻叫喚の叫びが聞こえるようだった。
『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!』
実際に聞こえる訳ではないが、その悲痛な叫びが、みんなのショックを代弁するようにこだまするのだ。
それもその筈、戦いと、その支援と、で日々戦々恐々としていた志葉家の屋敷に、笑顔と安らぎを与えてくれる天使が一人、堕天したに等しいのだから……
「こういう事だったか……」
彦馬は、見極められなかった事を済まなさそうに呟いた。
「絶対、今日の攻撃だよなあ」
千明は枕に当たってできたたんこぶを冷やしながら呟いた。
「敵が出たタイミングにあの豹変ぶり……そうとしか考えられん」
流ノ介も同意した。
「ことはのためにも、絶対あの妖怪倒すよ」
黒子達も頷く。
優しいことはを取り戻すために、あの妖怪を倒す。その場にいる全員の意思は統一されていく。
しかし気になる事も……
「ことはってさ、あの妖怪になんか食われてああなったんだよな?」
「だね」
「食われたのって一体何だよ?」
全員、頷きあった。
それが何か分かれば、この現象ももう少し理解ができるのに。
「イチゴも食われてるんだよね……」
モコナが呟いた。
「あ、そっか」
「イチゴさんもああなる可能性が?」
「否定できないねえ」
「バクっつってんだから、夢を食われてんだろうが……」
「じゃあ一体、どんな夢を食べられて」
そう話していると、襖を開いてイチゴが現れた。足音の聞こえた瞬間、普段とは違う気配を感じた……
「知りたい?」
妖気……というか、決して気を緩められない、ただならない気配を感じる。
丈瑠は背中に冷や汗を感じた。
「イチゴか」
「ええ」
「イチゴ、大丈夫なのかよ」
「全然問題ないよ、むしろ快調」
反抗期的な態度は見られない、むしろ遠慮のようなものがきれいさっぱり消えて距離感が縮んだ気がする。
「で?その口振りからして、何か分かったのか」
黒鋼の言葉に、考え込む仕草を取った後、イチゴは言った。
「オレが言いたかったんだけど……そろそろかな」
丈瑠のショドウフォンから着信音が鳴る。
「すまん」
丈瑠は席を外し、電話に出た。
『殿様、こんにちは』
旋風だった。
天晴達の道場からかかっている模様……
「旋風さん、何かありましたか」
『天晴とあの子がその……』
「2人が?」
丈瑠が聞くと向こうの音量が大きくなり、その様子が聞こえてきた。
『おう、見ろよ風花……これ学歴不問の高収入だってよ』
『へ〜って、違うでしょ!?いつもの忍者はどうしたのよお兄ちゃん』
『そう言われてもいまいちピンと来なくてよ……』
『仕事内容がはっきりと書いてないですね……これ、よくないやつじゃないですか?』
風花と霞が彼の行動を留めようとしている。
『と、いう訳です』
「あいつがか……」
忍者である事、忍者になる事が全てであるかのような人間が、いとも簡単にそうでなくなる……一体何が起こっている?
「とりあえずやめさせてください……終わった後の障害になるかも」
『だよね……そっちはどう?』
バクに何かを食われたことはとイチゴについて聞いている。
「ことはは道着に着替えて外出中です、イチゴは……今近くにいるのでこれから調べる所です」
『分かった、じゃあそっちはよろしくね』
「ええ」
丈瑠は電話を切った。
「殿?」
「天晴達にも異変が起こってるらしい」
天晴は忍者以外の道を模索し始め、野球少年はバットとグローブを放り出し、家に帰ろうとしていたと丈瑠は伝えた。
「天晴が!?嘘だろ」
千明も驚いた。彼から忍者を取ったら何が残るのか?というぐらい忍者バカである彼の変貌ぶりが信じられないようだ。丈瑠も信じられない。
「マジで異常事態だな」
黒鋼にすら、そう思われている。
「だが、これで仮説が立った。バクの食べたものは、夢は夢でも、将来の夢や希望とやらを食べているのかもしれない」
天晴と球児に起きた事で言えば、そうとしか考えられない。ことはのがどういうのかは、この際置いておく。
「食べられた人は、それらがなかったのと同じになる……という事ですか」
「お、
イチゴが笑顔で言った。
イチゴの態度が普段より軽く、より一層困惑を受ける。
「ことはは稽古はやる気みたいだったが」
「我達の戦いは夢ではなく使命、だからこそ戦う意志まで消えた訳ではないのでしょうな」
「食われるものがあるとすれば、戦いの先、勝った暁にしたい何か……とかだろうねぇ」
「じゃあ、今頃他に夢を食われた者達は……」
〜一方その頃〜
「こんなの持っててもねえ」
女性はカバンの中の、ウェディングベールを腕でたくし上げているアイが表紙に載っている結婚雑誌を捨てた。
〜一方その頃〜
男は、自宅にいた。
揃っている運動器具も、ボディビルダーのポスターも、なんでそんなものがあるのか見当がつかないものとなっていた。
「ご飯食べようっと」
スマートな肉体を手に入れたいという情熱も、好きな女の子にカッコつけたいという想いも、全てを忘れた彼はカツ丼を食べに町に出た。
〜志葉屋敷〜
「でも、夢を抱いてた認識まであのバクは食ってしまった。夢や目標を叶えられないという理不尽がまかり通るから、恐れというものは産まれる。でも今回初めから何も無い状態にさせられた……これじゃあプラスをゼロにしただけだ、恐れを集めるという点では役に立たないだろうに」
「イチゴ……お前……」
様子がおかしい。
妙に気安くなったというか、饒舌になったというか、言動がそちら側になっているというか……
「イチゴ、お前はバクを倒すまで戦闘には出るな」
「ええ……ひどくない?」
憤慨……という程でもないが、イチゴは丈瑠の行動にブーイングを唱える。
「………………すまん、妖怪を倒すまでの辛抱だ」
うまくいけば15分で解決できる。(メタ)
「……仕方ないか、じゃあ黒子の目が届く場所にいるよ」
イチゴは部屋を出た。
「殿は、どう思われます?」
「バクを倒すしかない」
あっち側の言動になっているとはいえ、人に仇なしてない奴を倒す必要はない。
「そうだね、そうしよう」
それ以上は、誰も何も言えなかった。
何か、タブーに触れる気がして……
「さて、次に奴が攻撃してきた時の対処法だな」
「夢を奪う攻撃だね?あれは庇ってもどうにもならないみたいだねえ」
少なくとも、庇っても一緒にやられると分かった。
「俺は無くして困る夢なんかないつもりだが、千明は特にマズいんじゃないか?」
「え?俺かよ」
「そうだな、お前の夢を奪われるという事はだ、殿を越えると普段息巻いてるお前じゃなくなるという事だろう」
「うっへ、想像付かねえ」
「(じゃあ、私の場合は……)」
「躱すしかなさそうですね」
「ああ、防御や庇うのは極力しない方が良い」
そう言っているとまた、ショドウフォンから着信音がなる。
『殿様、来たよ』
「よし、行くぞ」
「ことはを呼ばなきゃ」
「だが、ことはは」
千明は彦馬の呟きにこう返す。
「じいさん、よろしくな」
「わしか!?」
彦馬はことはと会話してないのでまだなんとかできるかもしれない。
「じい、頼む」
「仕方ありませんなあ」
丈瑠達は旋風の示した場所、彦馬は黒子の示した場所に向かった。
〜野原〜
「やぁ!!やぁ!!」
ことはは、素振りに勤しんでいた。
噴き出ている大量の汗が、外出してから今まで頑張っていた事を物語っている。
シンケンジャーの戦いは夢ではなく使命……そうは言ったものの、心の奥底ではもし、戦いから離れようとするならばと……不安があった。
「ことは、牙鬼軍団だ」
そう彦馬が言うと、ことはは駆け寄る。
「どこですか?彦馬さん」
「おお、思ったより聞き分けが良いな……」
「牙鬼軍団は倒さなあかん。でも、そのためにみんなでいる必要はなか……そう思ってるだけです」
「何故……みんなと一緒ではダメなのだ?」
「分かりません」
即答だった。
「何度も、おんなじ事考えてました。みんなでいた方がええんやないかって……でも、ダメでした。なんでそうなんかも、
これまでの戦いの記憶も、消えているのかもしれない……
「む、惨い……」
「ウチ……どないしたら……」
「ことは」
彦馬はことはの肩を叩いた。
「わしらは、お前の強さをよく知っておる。できない事を嘆くより、己のできる事を一心不乱に取り組み続けてきた。今もそうであろう、それを信じろ……自分が、するべきだと思っている事があるなら、それに従え」
「……ありがとうございます」
ことははその場を後にし、走った。
〜一方その頃〜
屋敷の一室、黒子達の監視もあれど、スペースを取れる場所でスマホを手に取った。
歌川宛に電話を始める。
『誰だい?』
「歌川先〜生、イチゴだよ」
『おや、どうしたんだい?あ、この前のグラタンおいしかったよ。命依も熱い熱い言いながら絶賛してたしね』
2人共なんやかんやで和食派なので、洋食を食べる機会はなかなかないとの事……
「それは良かった……じゃ、なくてさ」
イチゴは今日あった事を説明した。
『それは大変だね』
「言うほどかなぁ……とは思うんだけどさ、恐れもそんなに取れなさそうだし……って言ったらお前戦闘に出るなってさ」
スマホの向こうから、鼻で笑うような音が聞こえた。
ついでに眼鏡をクイッと傾ける音も……
『甘いね、甘すぎる。3歳児のお絵かきより甘い』
「そんなに!?」
『何も被害が恐れだけとは限らないさ。いいかい、夢や目標ってのはね……なんでもいいけど「自分はこうなりたい」と思う事で産まれ、そこに向かって頑張る力になる。その爆発力は侮れない、むしろ夢こそ人間の真骨頂と言っても良い……その力を発揮して己の道を突き進む人間を僕は何人も見てきた。そういう人間はいつも輝いていたし、見ていてつい筆が乗っちゃうんだ』
「じゃあ、それがないと……」
『絶望はしないかもしれない……が、人々は受容に徹し、今より先に進もうとする原動力を失うだろう。夢を追う事への後悔すらできないとなると、身震いするね』
受容のみに徹するならそれは停滞……嫌、むしろ退化を促す。
「だとすれば凄まじいな……」
『よーし、その話が本当なら由々しき事態だ。僕も出よう』
「いいの?」
『いいも何もないさ、今の君なら分かるだろう?』
言葉を交わしただけで、お見通しという訳だ……
「まあ、よろしくね」
会話を終え、電話を切った。
「さてと……」
せっかく妖力も自信も満ち溢れているのでイチゴは、歌川に書いてもらった村正を床に乗せた。
黒子には見えないよう、認識阻害をかけて。
自分の牙になるものだ、自分の力を張り巡らせている方が良い……
村正に手を乗せ、念を送った。
「銘決めないとなあ」
村正は村正なので村正は外せず、村正に何か取って付けねばならない。
バクに夢食われるとハザードオン!!しそうな人が味方陣営にいる件について……