スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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イチゴの精神統一中は急に言葉がキツくなるので苦手な方はそっちはスクロールで飛ばすといいかなと思います


第24話 迷いながらのライブ会場!! Bパート

 すぐに天晴達が私服姿で参上してきた。

 今、カイはステルスモード(周囲の景色に溶け込むよう、その色あいに己を馴染ませるというドレス機能を応用したカメレオン仕様)なので通信での会話となる。

 

 「何事?」

 

 カイの言葉で、おおよその察しは付くが……

 

 『この辺りで、牙鬼軍団の反応があったんだ』

 

 牙鬼軍団側だった。

 

 『イチゴさんは大丈夫ですか?』

 

 小狼(シャオラン)達も私服姿で現れた。

 忍者の衣装を着てコスプレなどと騒がれるよりは良いかもしれない。

 

 「カイのおかげでね……でももう会場内部から何があったか探るっていう作戦は取れないな」

 

 一回入った、だからもうチケットを使って中に入る事もできない。もう一回入ればきっと、中にいる受付の人がびっくりするに違いない。

 

 「多分、カイの反応からして会場内で何かが起こったと見ていいと思う」

 

 『じゃあ、今いる地点を教えてください』

 

 「ちょっと待っててね」

 

 霞の指示により、イチゴは今現在いる場所を提示した。

 合流する事に成功した。

 尚、イチゴは敵が巨大化した時のためこのまま待機となる。

 

 「おう、待たせたな」

 

 「よーし、じゃあ調べよう」

 

 ここまでに渡って、爆発などの物理的被害はない。

 

 「…………………」

 

 そんな時、警備員が現れた。

 

 「ここは危険かもしれません、すぐに避難を」

 

 「中に化け物がいるかもしれん」

 

 だが、八雲達の言葉に耳を貸さず、何も言わずその場から去るよう促すばかり。

 

 『あ……ひょっとしてこいつら……やーい、牙鬼幻月なんてサイテー!!単なる一領主のまんま◯んでれば良かったのに』

 

 警備員の動きが止まる。

 

 「あ……ちょっカイ」

 

 『大丈夫です。この言葉でキレるのは奴か奴の部下か歴史の敗北者(・・・・・・)マニアぐらいかと』

 

 「ギャー!!」

 

 凄まじい勢いで警備員が服を破り捨てて襲いかかってきた。

 青い体、鎧、頭に着けた編笠……なんと、警備員は牙鬼軍団の足軽だったのだ。

 

 「そ、そんな……」

 

 だが数秒で天晴達にやられる。

 天晴達は避けつつもカウンターを入れ、サクラに近づく奴らを小狼(シャオラン)が蹴飛ばしてやっつける形となる。

 

 「皆さん、ケガはありませんか?」

 

 「全然!!」

 

 モコナは叫んだ。

 

 「ヒトカラゲがいるんじゃ、牙鬼軍団の手であるのは確定か」

 

 「手分けして探すしかないでやすね」

 

 「窓ですか?」

 

 小狼(シャオラン)は建物周辺を見上げた。

 

 「やっぱりそうなるかな……」

 

 窓からの侵入という話に入ろうとしている。

 

 「とう!!」

 

 8人が散開し、窓を探し回った。

 忘れてはならない、ファイとサクラ後モコナは忍者の訓練は積んでいない。

 

 〜数分後〜

 

 「ダメだ、開かねえ」

 

 「鍵の閉まってる形跡は無かったんですが……」

 

 結果は最悪だった。

 依然として侵入不可能。

 しかし何も知らない客はぞろぞろと入り続けていく。

 直接襲ってきてる訳ではないだろうから、この流れを止めるのは難しい。

 

 「ええ……どうしよう……」

 

 足軽が数を率いて攻めてきた。

 カイの悪口が向こうまで響いてきた可能性が高い。

 

 『私が対処しましょう』

 

 やめな……さい!!するつもりなのだろうか?敵で血が出るかも怪しいが、絵面が悪いのでやめて欲しい所。

 

 「いえ、おれ達が引き続き……」

 

 そんな時……空から、誰かが降ってくる。

 白い民族衣装に赤い髪飾り…………朱雀だ。

 彼女は月を舞うように軽やかに、カイのいる場に着地する。

 朱雀は扇子を振るい、火柱を発生させ足軽達を焼き尽くす。

 そして、カイを見つめる。

 

 「困ってるようだね」

 

 カイの中で応答した。

 

 「今朱雀が関わるとこ?」

 

 「ああそうさ、聞くところによると……B小町というチームのルビーとやらが豊かな胸をしているそうじゃないか」

 

 「そ、そっか……」

 

 こいつまた趣味に走りに来やがった……とイチゴは察し、閉口した。

 

 「良いじゃないか、現代で人が踊るのは神への奉納でなく、自分という存在を衆目に見せるためである側面が大きい。ならば誰が見ようが自由だ。むしろそれで神に近い僕に見初められるならば光栄だと言えよう!!」

 

 「神隠しとか、マジでやめてよね……人気アイドルを攫う罪は重いよ?」

 

 「そうかもね……まあ、どちらにせよ今起こっているものを素通りはできないか」

 

 「そうだった……」

 

 中の様子は、どうなっているのか……

 

 「イチゴ、そいつは誰だ?」

 

 「かくかくしかじか……」

 

 「あれが、朱雀……」

 

 「ほー」

 

 「すごく強いオトモ忍みたいな?」

 

 「よろしくな!!」

 

 天晴達の言葉を無視し、朱雀は霞に言い寄る。

 

 「はじめましてだね……忍の娘かな?夜の闇でさえ、君の美しさを隠し通せないらしい」

 

 「はぁ……ありがとうございます」

 

 戸惑いつつも、意に介さない大人の対応を取る霞は流石としか言いようがない。

 

 「え……霞ちゃん、口説かれてる……」

 

 「ああ、すまない……僕はもう少し成長した娘じゃないとそそられないんだ」

 

 朱雀の視線の先は……やがて風花もその視線の意味に気づく。

 

 「はぁ!?」

 

 風花はキレた。

 

 「お……落ち着け、風花」

 

 「お兄ちゃん、こいつ一回シメないと気が済まないよ!!」

 

 「こういう奴だから、手放しで尊敬できないんだよね」

 

 白虎、青龍、玄武の顔を思い返せば自然と頭が垂れる……だが朱雀に対してはそんな気持ちは起きない。

 

 「そ、そうなんですね……」

 

 「小狼(シャオラン)君はあんな大人になっちゃダメだよ」

 

 「は、はい……」

 

 「で?あの建物のどこに妖怪がいると思う?」

 

 黒鋼の言葉で、本題に戻った。

 

 「そうだった……」

 

 「牙鬼軍団?……何それ」

 

 朱雀は牙鬼軍団の事を聞かされた。

 

 「そう……ここにいるのは400年前の亡霊が織りなす妖魔って訳……」

 

 「まあ、そんなとこ?」

 

 「なら……君達と出会った記念だ、僕が探ろう」

 

 朱雀はそう言って、何かを持ち、その何かを放り投げた。

 

 「1枚じゃ足りないか」

 

 もう3枚、何かを投げる。

 複数枚握った様子を見てようやく何かが何なのか分かった、それは彼女の羽根だった。

 

 「これは……」

 

 投げて朱雀が念じて数分、突如何か呟く。

 

 「どうだ?」

 

 「敵はいる……ただし、建物の中にある強大な妖力を除けば中の全域だ、巣食っていると言ってもいい……巣食っているものの意に反する侵入は通じない」

 

 〜時は遡る〜

 

 晦正影が、ある計画を提案した。

 

 「時に、奥方様……一つ提案が」

 

 「なんじゃ?」

 

 「調べました所……この度あいどるなるものを求め、多くの人間共が大移動を行っております」

 

 「あいどる……なるほど、妾と同種の者達か」

 

 九衛門はその一瞬だけ、有明の方を見る事ができなかった。

 

 「(そういう事にしとくか……)はい」

 

 有明の方のその無駄に溢れる自信はアイドルの風格が備わってる証拠……かもしれない。事実、トップ……牙鬼幻月の正室であり、そして戦闘もできる有明の方は牙鬼軍団のアイドルと言って差し支えない。

 

 「そこで、この妖怪マヨイガを用いるのです」

 

 ゴミ捨て場に捨てられていた迷路のおもちゃに封印の手裏剣が組み合わさって産まれた、妖怪マヨイガが現れた。

 

 「マヨ!!」

 

 「このマヨイガは、建築物に取り憑きその構造を好きに弄る事ができます」

 

 新たな部屋を作りあげる事も、既存の部屋を並べ替える事も、部屋の絡繰を止める事すら可能である……と晦正影は説明した。

 

 「おお、しかし……なんか意味があるのか?」

 

 「目的がため、今か今かと歩を進める人間共……しかし、その先に待っているものは求めたものではない!!という筋書きにございます……奥方様に協力していただきたく……」

 

 無論、それまでの通路も長めに改造する手筈である。

 

 「確かにやり口はそなた好みよな……それで、肝心の子供はどれほど集まるのじゃ?」

 

 子供の恐れを集めたがっている。

 

 「私の調べでは、これこのように」

 

 晦正影は部下の忍者に収集させた会場の名簿を見せた。

 マイクロンと呼ばれるロボット達が参加しているためか、親とセットだが確実に子供がいる。その証拠にペアや三人組のチケットを利用している人達が多い。

 

 「お〜これなら妾好みの恐れも申し分ない……だが!!晦、お主まさか妾をハズレ扱いにしてるのではなかろうな……」

 

 「め……滅相もございませぬ!!」

 

 「確かに」

 

 「き、九兵衛!?」

 

 「茶を所望しているのに団子を出されればハズレでしょうとも、どれほど団子が最上級に美味であろうとも……ですが、今回の作戦に求められているのはそれではありませんか?」

 

 「奥方様……お気に召さぬなら、いつでも!!白紙に戻す用意はございまするが」

 

 「……まあ良かろう、妾の美しさ、びゅーてぃふるさを、あいどる共に代わり知らしめてくれん!!」

 

 「ほっ」

 

 〜現在〜

 

 「通路、長いな……」

 

 「まだ?」

 

 「こんなに道あったっけ?」

 

 「スマホも繋がらないし……」

 

 通路を歩く人達に疲れも見え始めて来た頃、開けた道に出た。

 皆がようやくかと歩を進めた所……

 期待していたものと全く違ったものが見えた。

 

 「!?」

 

 青い怪人が数人、琵琶や太鼓を持ち、構えている。

 

 「皆の者、よくぞ来た!!今宵、貴様らを全員、牙鬼の家臣にしてくれようぞ!!」

 

 そして、有明の方によるリサイタルが始まる。時間?他の人の番?気にするものではない。

 すぐに人々に困惑と絶望に打ちひしがれた。

 

 「ち……違う!!」

 

 「ここはどこ!?」

 

 「あいつは誰だ?」

 

 「化け物だ!!」

 

 「マイクロン達は!?」

 

 「ルビー達がいない!!」

 

 後ろを振り返る者もいる。

 下がろうとする者もいる。

 スマホを取り出そうとする者もいる。今、ここはマヨイガの中で当然圏外だろうが。

 周囲を逃がし、殿を務めようとする身の程知らずの小娘もいる。

 だが、そんな事をさせる訳がない。

 

 「ほら、人数あるんだから集まりなよ」

 

 ヒトカラゲに、逃げようとする人間達を押し留めさせた。

 

 「全員、奥方様のありがたい調を聞くがいいぞ」

 

 「金返せ!!」

 

 観衆からの幾百もの恐れが、一気に水滴となって瓢箪に溜まっていくのを感じる。

 さながら、雨が織りなす大合唱。

 

 「ハッハッハッハ!!思いの他、集まりますなあ」

 

 九衛門は思った以上に爆速で溜まっていく恐れを感じ、上機嫌になった。

 

 「だが……流石にここまで嫌がられると、少々カチンと来るのう」

 

 琵琶を弾きながら有明の方はこぼした。

 そう言い終わるか終わらないか、突如屋内に暴風が吹き荒れる。

 

 「ギャアアア!!」

 

 セッションに応じていたヒトカラゲが耐えきれずに吹き飛んでいく。

 

 「な……何奴!?」

 

 有明の方が驚く間に……

 

 「やあああああ!!」

 

 先程の小娘がそのまま風に乗って奥方に近づき、何かを唱えようとしている。九衛門は防衛のため高速で近づき動きを止め、帽子ごと小娘の頭蓋を掴む。

 

 「あう!?」

 

 「おお、でかしたぞ狐ぇ!!」

 

 「…………」

 

 「あ、ああ…………」

 

 頭蓋を掴み、小娘の足を地面から浮かせた。

 風のブーストを使ってどれだけ速度を上げろうが、速さで忍者に叶う筈がない。

 

 「君みたいな正義感のお強い小娘程度が何をしようがさあ!!」

 

 高らかに叫ぶが小娘に違和感を感じる。

 それは、親近感のような何か。

 

 「ん?この因子……」

 

 九衛門は思考の末、一つの可能性に思い至る。

 

 「そうか、君は受肉者か!!」

 

 九衛門は狂喜しつつも小娘を壁まで放り投げた。力強く投げたせいか、小娘の周りに土煙が舞う。

 

 「九兵衛、なんぞその受肉者というのは……」

 

 晦正影の質問を遮る九衛門……

 

 「今ここでそれを説明するには、少しばかり時がいりますので」

 

 今この場で語るには時間がかかり過ぎるのは本当の事だが……事細かに説明し、周りの人間を困惑させる訳にもいかない。小娘の名誉を守るという、同族意識によって芽生えたやや奇天烈な道義心の為せる行為だった。

 

 「さて」

 

 人間達は、そんな九衛門を見て、縮こまるばかり。

 

 「君達を守ってくれる奇特な奴も、こうして伸びて……い、いない」

 

 煙が晴れたが……小娘は忽然と姿を消す。

 

 「まあ良い、あの様子では立ち上がる事もできまい」

 

 九衛門は引き続き、人間達を一つ所に集めさせた。

 

 〜一方その頃〜

 

 旋風を起こした少女を抱えて運んでいるのはアサキムだった。

 自分やイチゴ以外に次元力に干渉した存在がいるのを感じ、そして自らその大元の腹の中へと赴いていた。

 人間を連れて会場内から離れるのは難しいが、人目に付かないようかくれんぼの体で隅に隠れ、そして布で壁に強打した少女の頭部の手当てをしていた。帽子がクッションになっていて重症ではないが、人体の大事な部分だ。

 アサキムにとって縁もゆかりもない少女だが、単身で敵に挑んだ気高さを評しこうしている。

 

 「……いつの世も、死人(しびと)負念(マリス)は世界に牙を剥くか…………さあ、どうする?イチゴ。次元に干渉できるのは今君と僕、ただ二人だけだ」

 

 〜一方その頃〜

 

 舞台の地下でスタンバっていたヒコボシ・ミナトとロケットシップ・ベイビーズは狼狽していた。

 

 「ねえ、ベイビーちゃん、この奈落……いつになったら上がんの?」

 

 「分からん(渋い声)」

 

 「………………」

 

 「こうなるなら僕ちゃん、もっと普通に登場するんだった」

 

 〜一方その頃〜

 

 「嘘………」

 

 マイは焦っていた。

 ドアが、開かない。

 人を呼ぼうにも連絡が取れず、スマホも急に圏外と化す。

 

 「せっかくのフェスが、台無し」

 

 同室で待機していたマイクロンも不安をこぼす。

 

 『どうしよう、みんな……僕達を待ってくれてるのに』

 

 その様は半べそをかく子供のようで、頭を撫でて落ち着かせる以外の選択肢がなかった。

 

 「大丈夫大丈夫、他のみんなが来てくれるよ(私だって不安なのに、愚痴れなくなったじゃない……)」

 

 『マイさん……』

 

 〜一方その頃〜

 

 「せーので行くぞ」

 

 「ああ」

 

 ライとアクアは、動かせなくなったドアに向かって肩を前方に突き出しタックルを極める。

 しかしびくともしない、拒んでいるような、何者かの意思を感じる。

 

 「クソッ」

 

 「至急アイさんに協力を頼むのは……?」

 

 ゲッターロボの力を借りれば、あるいは……

 

 「良いな……それ……だがアイは、客として向こうに行っている」

 

 「そ、そんな……マイ……」

 

 「ルビー、有馬、MEMちょ……無事でいてくれ……」

 

 〜一方その頃〜

 

 「開〜け〜て〜」

 

 自動ドアだった筈の部屋が動かなくなり、ルビーは扉を叩く。

 

 「それ5回ぐらいやってんじゃない、もう諦めなさいよ」

 

 「先輩も手伝ってよ〜」

 

 ルビーはチームメイトの有馬かなに声をかける。

 

 「嫌よ!!私はあんたみたいに控え室でバカ晒す気はないの」

 

 「だって~」

 

 「何よー」

 

 ルビーと有馬が睨み合いになった所でMEMちょはなだめた。

 

 「まあまあ、二人共……今……探偵団の人達も、昆虫Brothersも頑張ってるんだからさ」

 

 探偵団はダクトなどの通れそうな道を、セミとザリガニとカブト虫の三兄弟は他のドアを張り手で叩いていた。

 

 『こういう時は、パワーなんだミーン』

 

 『ムチャス!!ムチャス!!』

 

 『OH、びくともしないでアーム!!』

 

 『若様がいれば、こんな扉、イチコロなのに』

 

 有馬はその様子を見て困惑する。

 

 「あの兄弟、コスプレ……なのよね……?」

 

 「…………プロデューサーの顔も見た事ないよね……あはは……」

 

 探偵団の1人が水を持ってくる。

 

 「皆さん、一旦水分補給にしましょう……今が力の出しどころではありませんから」

 

 〜一方その頃〜

 

 「ほ、本当に全域なんだ」

 

 「全域だ、ただし入り口だけは人を飲み込むために開いているようだけど……」

 

 当然、出口としては機能してくれないだろう。

 

 「ここからも朱雀さんの協力を頼みたいんですけど……」

 

 「こいつを倒したかったら、建物ごといっちゃうしか僕にできる事はないか」

 

 「そんな!!」

 

 「やっぱ無しで」

 

 「中にいる人間には悪いが、主戦力クラスを除けるなら尊い犠牲であったとするしか……ね。僕ならそうする」

 

 「Easyだな、尊い犠牲なんて言葉遊びに付き合える程、命は軽いものじゃない」

 

 「そうだよ、あの中にいる人達を楽しみにしてる人達は、あの中だけじゃないんだから!!」

 

 「ふっ……じゃあ僕以外がやるしかないね」

 

 「でこのままじゃ、侵入すらできない……」

 

 「それどころか、そいつの気分次第で中にいる奴らの命はなさそうだな」

 

 「一体どうすれば……」

 

 凪がそう言った時、朱雀がカイを見据えた。

 

 「君の力を使えば良いじゃないか……その胸にある、それだ」

 

 スフィア、沈黙の巨蟹を指している。

 

 「僕が作ったゲートを僕の力なしにこじ開けたその力だ、それなら」

 

 「あ……そっか」

 

 モコナが呟く、そこにいつもの笑顔はない。

 

 「アサキムが言ってた次元力って言うの……あれが使えるならもしかしたら……」

 

 名前通りの力なら、次元に干渉するのもできなくはないかもしれない。

 

 「そうか、次元力か……良い響きだ」

 

 「それが最近うまく使えないんだよね……」

 

 「あの時みたいに刀で斬るのは……」

 

 「それも、だよ……死にかけた日の夜以降……スフィアは毎回同じ風にしか輝かない」

 

 「同調が切れたって解釈で構わないのかな?」

 

 「アサキムの奴は、感情でどうこうするってったな」

 

 「同調ねえ………今の君では、足りないか」

 

 朱雀はカイのカメラ越しにイチゴを見つめた。

 

 「以前の君を思い出せ、初めてその球体を手にした時の君を……全てが等価であり無価値だと言わんばかりの眼光を携えていた君を」

 

 「以前の……オレ……」

 

 イチゴと朱雀の会話を聞いて、天晴達は話し合いを始めた。

 

 「忍タリティの問題か……」

 

 忍タリティ……忍者に対する心構えとか、精神の在り方が産み出す力……精神力のようなもの。忍者という括りを外せば、イチゴにも当てはまる……のかもしれない。

 

 「おれ達も実際のスフィア・リアクターは始めて見るのですが」

 

 「それもかなり歪な方向性みたいだね」

 

 朱雀の言葉をそのまま受け取れば……の話だが。

 

 「アサキムの言う通りだとね、後10個のスフィア、みんな同じように突き抜けた感情がいるんだって」

 

 「あれ?おかしいですね……巨蟹があの巨蟹だとするなら、後1個あるのが筋じゃないでしょうか」

 

 「星座の黄道十二門って奴だね」

 

 「最後のはそれを束ねる中心みたいな役割なんだって」

 

 「…………結構喋るでございやすね、その御仁」

 

 「侑子さん……私達を旅に送り出してくれた人もその話は知ってるから、「秘匿には何の意義もない」だそうです」

 

 「なんというか選んでその単語を出す辺り……………結構キテるね、その人」

 

 「ふーちゃん、シッですよ」

 

 「イチゴ、うまくいかねえなら俺達でなんとかするから」

 

 イチゴは天晴の言葉を遮った。

 

 「ううん、大丈夫。カイ」

 

 『ラ……ラジャー』

 

 カイに頼み、会場の上空を飛ぶ……

 イチゴは目を瞑った。

 

 思い出せ……

 自分の命を軽んじていた、あの時を……

 

 よく分からない場所で、怪獣に襲われた事。

 

 それよりも、前……

 

 あの時を反復するにあたりノノの裸と、それに対する怒りがノイズのように呼び起こされる。

 

 やめろ

 やめろ

 やめろ その顔を、体を晒すのをやめろ

 オレに何をした?嫌、言わなくていい

 オレに近づくな

 オレがずっと苦しんできた原因にオレを引きずり込むな

 来るな、迷惑だ

 消えろ

 消えてしまえ

 

 ダメだ

 ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ

 ノノは、妹で、家族で、ララさんの子で……

 傷つけてはならない子だ

 あの子はまだ12歳だ

 この感情を表に出してはいけない

 曇らせてはいけない

 心を◯せ

 封◯せよ

 できないなら……◯ね

 

 「………………」

 

 イチゴは目を開いた。

 そのものとはいかないまでも、近づいた確信は……ある。

 

 「空気が……変わった」

 

 「やるのか」

 

 「イチゴ……」

 

 「行くよ……鬼光眼」

 

 カイの目から、赤黒い光線がまろびでる。

 イチゴが淀ませた感情を乗せたように禍々しい光。

 破魔、あるいは破神、全てを貫くような光。

 狙うは建物の中心。

 

 「大丈夫……なのか?」

 

 建物を壊しはしないか……?という疑問が周囲に湧き立つ。

 

 「信じようぜ……このままイケイケドンドンだ!!」

 

 壊すのは建物じゃない。

 建物の裏側に潜むものだけを!!

 

 「消えろ、牙鬼の眷属」

 

 イチゴはゆっくりと、しかし力を込めて妖怪に向けて呟く。

 

 『マヨォォォォォ!!』

 

 何かが旅立っていった、そんな確信が湧いた。

 

 「うまくいったよ」

 

 「皆さん!!」

 

 「よし、行くぜ!!」

 

 イチゴ以外の全員、建物内部に突撃していった。

 

 「やはり、僕の見立ては正しかった」

 

 朱雀は、遠く行く天晴達を見送りつつ笑みを浮かべた。

 

 〜一方その頃〜

 

 「ああ、そうじゃ。晦〜」

 

 「如何なさいましたか?」

 

 「妾の地獄耳が捉えた悪口の調査はどうなっておる?」

 

 「帰ってきませんな……」

 

 「そうか……下手人を見つけ次第、其奴をギッタンギッタンにして引きずり回しにせよ。良いか!?幻月様は決して時代の敗北者でないと、叩き込むのじゃあ!!あの時は……あの時は忍者がちょっと強すぎただけなのじゃからな」

 

 「全くでございまする」

 

 「?」

 

 全身がぐらつく。

 重力で体を燻されていくような……体中が軋むのを感じる。

 人間達も、何かを感じているのか……有明の方を無視して騒ぎ出している。

 

 「な、何?」

 

 『常世より出でてマヨう事、叶わず……』

 

 どこからかマヨイガの、断末魔が聞こえた。

 それから会場内の雰囲気がどことなく変わった。

 

 「な、なんじゃ?」

 

 「十衛門、何が起こっておる!?」

 

 「わ、私にも測りかねまする……」 

 

 すると床が音を立ててスペースを開き、その中から数人アイドル達が昇ってきた。

 

 「やっと機械の調子が戻って来たんじゃない?」

 

 「まだ俺もお前も順番ではないが、顔を見せておかなきゃな」

 

 別の通路からも音がする。

 

 「良い?みんなを待たせた分、って置いてかないでよ!!」

 

 仕切る有馬を他所に、他のアイドル達は殴り込みをかけた。

 

 「いっちば~ん!!」

 

 『みなさ~ん、お待たせしたんだミーン!!』

 

 『ドアが開かなくて手間取ったでアーム!!』

 

 『スマヌ、セニョリータ!!』

 

 「昆虫Brothers……すごい勢い、お姉さん圧倒されそう」

 

 それから……マイがジェットパックに変形したマイクロンの1人を背負って飛んで来た。

 

 『ごめん、みんな』

 

 『気にしないで』

 

 『僕達も今来たとこ』

 

 「遅れた分、いっぱい歌うからね〜って……あれ?わわわ……ヤバいのがいっぱいいるんですけど」

 

 「お嬢様方、危険があるかもしれませんので、どうぞ僕達の後ろへ」

 

 マヨイガの力で待機部屋から出られなくしていたアイドル達が全員、姿を現す。

 

 「まさか、マヨイガが……やられた!?」

 

 建物の構造体そのものに潜ませたのだ、建物、そしてついでに中の人間達も人質に取れていたのに……

 一体どうやって?九衛門の頭に、疑問しか湧かなかった。




晦の御家老のキャラというか遊び心の解釈がうまくいってるか不安でございまする
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