スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちはもしくはこんばんは
次回に必要な回……とはいえロボ戦もないしで断章扱いとなっております。
個人的考察の結果、カッコいい蛾眉雷蔵は序盤と中盤にしか出ませんのでご了承ください。


断章 蛾眉雷蔵vs虚像の忌み子

〜某山 山中〜

 

 蛾眉雷蔵は、数人の部下を引き連れ山中で鍛錬に励んでいた。

 素振りを繰り返し、一息付く度に瞑想し、呼吸のように剣気を繰り出す。

 

 「はぁっ!!」

 

 赤い忍者の男、長身の男、火の男、水の男、木の男、天の女、土の女。

 彼らを思えば、酒を浴びるのみではいられないと心が逸る。

 再び彼らと繰り広げる、果たし合いが待ち遠しい。

 一対一であれば尚の事。

 

 「うりゃぁ!!」

 

 気分が高まってきた頃……一匹の妖魔が、森を走る音がする。

 枝を蹴散らし、砕く音……体躯の大きな存在であるとすぐに分かる。

 堪らず、蛾眉雷蔵は大太刀を振るい衝撃波を繰り出す。

 

 『何!?』

 

 「!!」

 

 木々をかき分けて現れるは一匹の当世風の絡繰。

 赤い忍者達の毎回乗ってる絡繰に近い。

 だが、絡繰そのものにあらかじめ命を吹き込んだそれとは違い……生身の妖怪に、そういう形を被せただけに見える。

 中に、誰かがいる。

 

 「あ~あ、せっかく一寝入りしようと思ったのにな」

 

 中から誰かが降りてきた。

 

 「テ、テメェは……」

 

 この間、トドメを差し損ねた少年だった……

 ただ、以前見た時なかった覇気やらが、瞳にありありと映っている。

 

 「……こないだの三下か?」

 

 「…………………?」

 

 少年は意味が分からなさそうに、沈黙を発していた。別人なのか?そう思い問い直す。

 

 「何をしにきた?ここは人間の登山道でもない、ただの獣道だ」

 

 「嫌、ただ通りがかっただけなんだけど……修行したいならどうぞお構いなく」

 

 少年は、その場を離れようとし始める。

 その行為は、蛾眉雷蔵の顰蹙を買う。

 

 「素通りたあ、気に入らねえな……俺様の姿を見て、怖がるか、立ち向かおうとする奴が殆どだ。だがお前はそれらとは違う選択を選んだ」

 

 少年は、売られた喧嘩を買うように、蛾眉雷蔵を見返してきた。

 

 「それで?あんた、オレを斬る訳?」

 

 「俺様自らというほどでもねえか……」

 

 部下に後を任せた。

 袋叩きにし、死なない程度の所で放りだす筈だった……

 

 「仕方ない、かかった火の粉は払うだけだ」

 

 だが、すぐにそれが誤りだったと悟る。

 少年は五指を真っ直ぐ部下に向け、唱える。

 

 「祓忍法、水錬糸(すいれんし)

 

 片方の腕の指の数だけ糸のように水を放出し、部下のヒトカラゲにくっつけてきた。

 粘着性のあるその水は、くっついた対象を操り人形のように動かすのを可能とするようで、少年の指の微妙な動きに合わせ、同士討ちが始まる。

 

 「……………」

 

 固まってきた所で少年は腕を大きく振りかぶる。

 

 「はあ!!」

 

 その動きに従ってヒトカラゲが動き、肉塊として一網打尽を成し遂げた。

 

 「!!」

 

 そのまま黒いモヤモヤを持ち出し、刀に変化させ蛾眉雷蔵に斬りつけてきた。

 動きはそれなり……だが、妖力は以前見た少年の比ではない。

 ただの人間ではない……そう察しつつもそのまま、少年との斬り合いとなった。

 

 「テメェ……何者だ!!」

 

 一撃一撃の威力は低い……すぐ、押し通れる。

 

 「人に名乗らせたい時は、自分から言えって作法だったよね」

 

 「ハハハ……俺様にそんな口を利くたあ……我が名は蛾眉雷蔵、牙鬼軍団が一番槍!!」

 

 「ッ牙鬼軍団!!」

 

 蛾眉雷蔵は太刀を振るい、パワーで押しにいった。

 

 「さあ、お前の番だ!!」

 

 少年はすぐに距離を取り、受け流す方に走る。

 忍者として、己の所属や肩書でも語るかと思いきや予想だにしない事を語る。

 

 「誰でもない……ただの虚像だよ、あんたらみたいな上の連中の好き勝手に悩み狂わされた連中が産み出した」

 

 虚像という言葉に蛾眉雷蔵は察しが付いた。

 

 「!!そういうことか!?」

 

 民の恐れが寄り集まって産まれたもの……らしい。

 古来より人の恐れは、ただの人間を神にも怪物にも変える事ができた。かの山に住む鬼や、かの学者が大怪異と名を連ねたのは、その者達が望むにせよ望まないにせよ、日の本の民の恐れを一身に受ける存在だったからに相違ない。故にこそ、蛾眉雷蔵が主……牙鬼幻月は恐れを我が物としようとし、誰にも負けない力を欲した。時代の移り変わりによって人は都度、その恐れの行く先を鞍替えしていく。今世の人間がその座に据えたのは、よりにもよって自分がトドメをさせたであろう少年……で、あろうか?虚像が産まれる程であれば、かなり人に知られている存在であるのは確かだ。

 

 「弱い奴らの無念の集合体ってか。自分達で反旗を掲げもできない三下共がいくら何を言おうが、思おうが、俺様にゃ関係ねえな」

 

 その言葉を聞いて、少年はキレた。

 

 「上に立って踏みつけといて、言う言葉がそれか!!」

 

 「悔しかったら足掻けって言ってんだよ!!」

 

 蛾眉雷蔵は脇差を振るう。

 少年は避け、蹴撃をくらわせる。

 

 「足掻く?どうやって?民はあんたらみたいに、日々の暮らしで貯める財もなければ、財で成す富もない、富で育める力もない。それらは全てあんた達が取り上げた物だ!!」

 

 「なら、大人しく支配されとけよって話だろ!?……我が牙鬼軍団の治世の元でな」

 

 「牙鬼軍団、恐怖で民を支配してきたそうじゃない。そんな国家の末路を教えてやるよ。民の怒りに焼かれるか、民の活力の消失による、滅亡か!!あんた達はそうやって滅びてきた、過去の遺物だろ!!」

 

 少年の刀の勢いが増す。

 

 「っほざけ!!」

 

 蛾眉雷蔵は手に持つ脇差で防御する。

 

 「御館様を愚弄するか!?牙凌道……」

 

 「させるか!!」

 

 少年の武器が鞭に変形し、脇差の動きを妨害する。

 雷を、纏えない。

 

 「何!?」

 

 「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 そのまま迫ってきた少年の掌が、蛾眉雷蔵の角を掴む。

 

 「禍津怖心園!!」

 

 少年の掌から、蛾眉雷蔵の角を伝い全身へ何かが流ていく。

 

 「何だ?これは?」

 

 「これが、恐れだ!!」

 

 〜444年前〜

 

 時は戦国の世、幕府に終わりの刻が近づいていく……ぐらいの話。

 戦国最強最悪の大名と謳われた牙鬼幻月……そして、彼らが率いる牙鬼軍団がいた。

 常に必殺必勝、和平和睦、同盟など以ての外。

 その精強ぶりたるや、武田と上杉が手を組み全軍で向かってようやく互角と言えた程。

 だが最も恐るべきは鬼畜を越えたその所業である。かの軍と相対したものは、敗残した将兵達はおろか、草木の根一本すら残らぬ程の蹂躙を受けた。その様は神も仏も、全て我の前には塵も同じと言わんばかり。

 さらに、生き残った僅かな者達の血までも啜るような悪政を敷き、更なる恐怖を刻んでいく。まさに、鬼と呼ぶに相応しい。名は体を現すと言うのか?それともそうあれかしと自ら名乗ったか?は後年の研究においても定かではない。しかし、最も問うべきは、どれほどの民が、傷つき、恨み、嘆き、恐れたのだろうか?

 そんな牙鬼軍団の中で、一番槍として駆け抜ける男がいた。

 

 『オラオラ!!』

 

 愛馬に乗り、数多の敵を薙ぎ倒すその男の名は蛾眉雷蔵。

 酒を煽り、兵舎では寝てばかりであったが……いざ戦場とあらば、誰よりも早く敵陣へと乗り込み、誰よりも多く戦果をあげた。その様は一番槍という名乗りに相応しい、兵達の目標となる存在であった。

 戦場に赴く度に自分を奮い立たせるような強い敵を求めるという悪癖はあるものの、主である牙鬼幻月はそれを笑ってこういった。

 

 『お前のその飢えこそ、旧き日の本を壊すのに必要なものである』

 

 その言葉は、彼の励みとなった。

 ある日の出来事……

 

 『御館様、御館様!!』

 

 兵の一人が城内に慌ててやってきた。

 

 『どうした?』

 

 手紙を持っていたので、晦正影はそれをもらってすぐさま広げ、読み上げた。 

 

 『な!?』

 

 大名の全てが、否、もはや形のみではあるが発言力はある征夷大将軍、そして京のやんごとなき御方達までもが、牙鬼軍団を誅する事に賛同したという檄文であった。

 

 『これは………』

 

 日の本最強最悪と謳われた大名は、転じて国の和を乱す最大の悪と見なされたのだ!!

 

 『御館様!!』

 

 全員の不安感が、牙鬼幻月に集中する。

 いずれはそうなるよう行動しても、いざその時になるとやはり抵抗がある……

 ある者は顔を俯かせ、またある者は震えていた。

 牙鬼幻月は、こう答えた。

 

 『好機ぞ』

 

 堂々とした振る舞いに、一同顔を上げる。

 

 『いずれ滅ぼすつもりであった者共が一同に集ったというだけの話。この機に乗じ一切合切を滅ぼせば、我……牙鬼幻月こそが日の本の支配者となるであろう』

 

 その言葉に魅せられ……牙鬼の家臣達は、歓声をあげた。堂々とした態度が持つ支配者にのみ許された、圧倒的なカリスマがそこにある。

 

 『御館様、流石でございます!!』

 

 『妾も、感激致しました!!』

 

 その場にいる全員の意思は一つに固まっていく。

 その熱にあてられ、蛾眉雷蔵は動く。

 

 『御館様、行ってまいります!!』

 

 『うむ、期待しておるぞ』

 

 別室まで行った所で、晦正影に引き留められる。

 

 『待て、策を練ってからの方が良いのではないか?』

 

 『軍師殿……あんなもん(檄文)出してくるんだ、時刻は差し迫ってる。だったら考えるより先に行動だろうが』

 

 『……………まあ、良いわ。お主の美点はその猪武者っぷりだからのう……無謀な真似だけはしてくれるなよ』

 

 『俺様に無謀という言葉は存在しねえさ』

 

 そう、無謀という言葉を覚えるには……いつも敵が弱すぎた。

 それを感じさせてくれる相手がいるのなら、どんな地へも赴きたいとすら思っていた。

 感じたのは、数度しかない。

 2度は未来での話。

 最初は………

 

 〜戦場〜

 

 大名達の連合に囲まれた、事実上の籠城戦であった。

 敵の勢いを削ぐため、又は牙鬼軍の命運を前にして座して待つのが性に合わない蛾眉雷蔵は、数千の兵を連れ外で迎え撃つ方を選んだ。

 先鋒は、忍者達であった。

 雑賀も、甲賀も、伊賀崎も、色んな大名の下に所属していた忍の連中が手を組み、牙鬼軍団を攻めこむ。

 この時の徒党が、後に祓忍組合と呼ばれる日本全国を繋ぐネットワークの原型となる。共通の敵を討つために携えた手が、その後のコネクションとして大いに役立ったと言えるだろう。

 数日戦ってみたが、刀で斬れば容易に死ぬ、恐るるに値しない連中であった。

 だが、蛾眉雷蔵のいない方面の軍は崩されるとの報せを受ける。

 敵の中に強い奴がいるかもしれない……期待を感じつつも任された方面を進む。

 師である弓張重三、家老もいる。

 農民崩れの装いをした者達もいる。

 であれば所詮足軽、そういう人間達は無視する事にした。

 敵であっても大したものではない、部下の刀の錆にさせておけばいい。

 陣地の最奥にて、忍者が待ち構えていた。

 

 『ついに来たか……』

 

 女の忍者らしい、衣の色と結い上げた艷やかな髪でなんとなく分かる。忍者同士でコソコソやっていればいいとも思うが、この集まりの頭目らしき動きを取っている、捨て置く訳にはいかない。

 

 『悪いな、三下だろうが御館様のために死んでもらうぜ』

 

 蛾眉雷蔵は刀を抜く。そして、突撃を始めた。

 対して敵の忍者は刀で防御してきた。

 捌きは悪くない、振るった太刀を肉に届かない方向に逸らしている。

 それから距離を取って苦無を投げつけてくる。

 

 『邪魔だ!!』

 

 全て刀で払う。

 そういう攻防を繰り返す内……

 

 『そろそろか……御免!!』

 

 女忍者は、煙玉を使い、後退を始める。

 

 『待て!!』

 

 『蛾眉様!!』

 

 部下に引き留められた。

 

 『すぐに片付ける!!お前達は別の持ち場へ行け!!』

 

 部下に言い残し、すぐに追いかけた。

 一人だし、なんとかなる……そう思い込んでいた。

 人間である筈なのに、馬と遜色ない速さで走っている。少々不気味に思えた。

 追っていく内にいつの間にか、森のど真ん中まで来ていた事に気付く。

 

 『な……なんだ?』

 

 農民達が揃っている。周りをぐるりと囲むように、そして彼達は何か長いものを構えている。構えているのは、当時最先端の兵器だった鉄砲。

 

 『かかったな、お前は足軽以下の生死に頓着してないそうだから……必要な分着替えてもらっていたのだ』

 

 農民達が服を脱ぐと、忍の装束となる。

 隅には荷車と大きな積み荷……足元には部品を弄った跡。

 誘き出された、その事実に思い至った時……全てが手遅れだった。

 

 『放て!!』

 

 蛾眉雷蔵に向けて放つよう、号令がくだされる。

 轟音と共に、蛾眉雷蔵の身を無数の弾が四方八方から襲いかかってくる。

 

 『くっ!!』

 

 雷電が空高く地面を蹴って飛び、刀で防御に専念する。

 だが、防ぎきれない。

 雷電に命中し、蛾眉雷蔵は地面に放り出される。

 

 『ぐはぁ!!』

 

 痛みに悶えつつも、愛馬に駆け寄る。

 

 『雷電、雷電』

 

 愛馬は蛾眉雷蔵の目を見てから、震えつつも力尽きてしまう。

 

 『オメエらぁぁぁぁ!!』

 

 蛾眉雷蔵は刀に雷を纏い、雷撃を放つ。

 忍者達は散開し、被害を半減される。

 

 『あああああああ!!』

 

 確実に当たるよう狙った指揮官の忍者の、片腕と持っている銃に傷を入れたのみ。

 

 『雀様!!』

 

 『構わん!!私に構わず、撃て!!』

 

 再び、全方位からの発砲。

 体中を削ぎ落とされる痛みに蛾眉雷蔵は身悶えした。

 

 『ぐわああああああ!!』

 

 そのうち力が抜け、やがて大の字になって倒れる。

 痛みで動けない、意識を保つので精一杯。

 蛾眉雷蔵は、抜けていった力をかき集めるように叫んだ。

 

 『お前達の……勝ちだ、さあ……首を……取りやがれ!!』

 

 もはや、立つことは叶わない。

 強者と戦う事も、牙鬼幻月に忠を尽くす事も……

 ならばいっそ、敗者として潔く首を差し出すのが戰場に立ったものの勤めである。

 だが……空に狐の如き何かが見えた次の瞬間、前を見る事はおろか痛みを感じる事すらできなくなった。

 弾が頭にでも、当たったのだろう。

 その数日後、牙鬼幻月の死を以て牙鬼家は没落となる。以後、復活を遂げるその日まで、その魂は牙鬼軍団の隠れ城にて彷徨う事となる。

 

 〜現実〜

 

 「おおおおおおおおおおお!!」

 

 蛾眉雷蔵は、膝から崩れ落ちた。

 少年は蛾眉雷蔵の耳に顔を近づけ、囁く。

 

 「恐れの味は、どう?」

 

 「ぐううううう」

 

 銃で体を貫かれる恐怖が蘇る。

 銃というものの存在への忌避感も共に。

 斬られる事、弓矢で撃たれる事は覚悟の上だった。自分もそうしてきたし、そうされて倒される事こそ、至高の死だと思ってきた……

 だが銃は違う。

 最悪持てれば良い。

 剣術、弓術、という言葉があるように、扱うのに鍛錬がいるような代物ではない。あったとしても、極める必要がない。

 そしてその手軽さが、蛾眉雷蔵の最も嫌う三下を、三下のまま戦場に送る手助けとなっていた。戦の形を、変えてしまったのだ。

 そして奴らは頭を狙った。

 すなわち首、自分を討ち取った証、お前を倒す手柄なぞいらない、という意思表示。

 お前を倒すための努力はいらない。

 お前と刃を斬り結んで得るものなど必要ない。

 磨き上げた武技も、立ててきた武功も、全てを否定されるに等しい苦痛を感じていた。

 そんな思いを垣間見たであろう少年が、蛾眉雷蔵を見下ろしてくる。

 

 「自分が殺してきた人間に恨まれてるかどうかなんてのは、二の次みたいだね。彼らの恨みつらみを、参るまで、とっくりと、聞かせてあげられたのに」

 

 「三下がいくら恨もうが、屁でも……」

 

 「そう」

 

 再び頭に手を付けた。

 

 「じゃあもう一回あんたの嫌いな三下に囲まれて撃たれてよ」

 

 蛾眉雷蔵の脳内で、再び取り囲まれ撃たれるイメージが浮かび上がる。

 

 「ぐわああああああ!!」

 

 そうしなければ、勝てないが故に三下であるとは理解している。だが、そんな奴らに命を、牙鬼軍団を終わらせられたという事実が妖怪と成り果てた身を灼く。

 

 「ぐううう」

 

 「これが一番効くのか、そっかそっか」

 

 再び少年は蛾眉雷蔵に念を送り込む。

 

 「がああああああ!!」

 

 目の前の少年の言葉が、心の柔らかい部分を抉っていく。

 蛾眉雷蔵はショックで転がった。

 これ以上の恥辱は勘弁ならない。

 

 「……………トドメを……させ」

 

 やっと、その言葉がでた。

 

 「?」

 

 「見事俺様の心を倒したオメエの責務だ」

 

 「あれ?昔の傷口抉っただけなのに脆すぎない?まああれ(オレ)もそんな感じだったしそんなもんなのかな?」

 

 その独り言に怒りを覚えつつも、尚叫んだ。

 

 「さあ、やれ!!」

 

 だが、少年は否定する。

 

 「あんたを倒すのはオレじゃない。弱者に嬲られる結末、強者と派手に死会った末に看取られる結末、どれもアリだ……だけど、無関係のオレに倒される結末だけはダメだよ。無常が過ぎる」

 

 「……ふ、ふざけるな!!そんな尺度で俺様の生死を決めるってのか!?」

 

 「フゥー、死に方まで選り好みとは、我儘な御人だ。あんたが殺してきた人間達は、選べもせずにただ無念のまま命を散らしていっただろうに」

 

 「弱い奴らが望む死を選べなかった。それだけだ」

 

 「なら、あんたもその一人だったって事で」

 

 少年は、今一度妖怪に搭乗しようとする。

 

 「逃げんのか!?」

 

 「見逃してあげるのさ」

 

 「背を向けるなら、切り刻んでやる!!」

 

 「できるの?折れた心は刃に出るよ」

 

 「……………クソッ」

 

 見透かされているようで、気分が悪くなる。

 

 「バイバーイ」

 

 『ロクな死に方しないぞ、貴様……』

 

 「オレはオレで人の理に沿って生きてるんですがね」

 

 少年は、その場を去った。

 残されたのは、羽根を毟り尽くされたように意気を消沈させた蛾眉雷蔵一人。

 追いかける気も、応援を呼ぶ気も、壊された。

 そして虚ろな気分を拭えないまま城に帰った後……数日に渡り、その時の記憶が彼を襲った。

 

 「うぉおおおおお!!」

 

 それは妖怪に転生した時に忘れようと押し込めていたものだった。

 

 「………………俺は…………」

 

 三下が自分を倒すにはそれしかない……という事は分かる、割り切ろうともした……が、できなかった。

 

 「俺はぁ!!」

 

 少年の気配は追えない。

 だからこそ……伊賀崎の赤い忍者と、決着を着けねばなるまい。

 それのみが、この憂さを晴らす唯一の薬とならん。




蛾眉雷蔵、人間時代に強い相手と戦えてなさそうだしああいう討たれ方したのかな……と思ってしまいました。
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