スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちはもしくはこんばんは。


第26話 蛾眉雷蔵……成敗!! Aパート

 〜????〜

 

 九衛門は、ドーマンと龍虎王が戦っていたどさくさに紛れ、陰陽師の施設に立ち入っていた。

 

 「蘆屋道満……読めない奴だったが、これで目的のものは手に入った」

 

 いわば、◯生石の封印された地へと立ち入る権利を得るためのパスコードをコピペした符である。

 妖怪ドーマンが陰陽師を多数戦闘不能に追い込んだ事。龍虎王、もう一つの姿である虎龍王の大立ち回り。

 忍びやら陰陽師やらの施設を探るのにこんな好条件は他にないだろう、九衛門はそのチャンスをものにした。

 九衛門は空を見る。

 今頃、蛾眉雷蔵がアカニンジャーと決着をつけている頃……

 

 「あの方の道楽も、どこまでかかるか……」

 

 〜戦場〜

 

 場所を移した蛾眉雷蔵と天晴は、斬り合っていた。

 

 「懐かしいな!!赤いの」

 

 近づく者あらばその瞬間巻き添えを受けるような、そんな刃の風が二人の剣戟で繰り出される。

 

 「覚えてるか?初めてお前と会った時の事」

 

 「忘れたくても忘れらんねえよ」

 

 ニンニンジャーとして戦い始めて初めて目の当たりにした、恐怖心。

 圧倒的な強さ、格上の敵が持つ威圧感、緊張感。すぐに呑まれかかっていた。

 天晴が彼の顔の一部、分割された般若の面の角を斬った事で関心を持たれるようになったが、今再び同じ事ができるかは微妙である。

 

 「あの時から、どれだけこの瞬間を待ちわびていたか……」

 

 「俺も、いつかこの瞬間が来るって分かってたぜ……あんたを倒せなきゃ、平和を守る事も、ラストニンジャになる夢も、叶いっこないからな!!」

 

 「……そうこなくっちゃな!!……うぉりゃあ!!」

 

 戦国時代の猛将、加えて妖怪へと転生した事で飛躍的に増した彼の膂力から繰り出される斬撃は、地面を割れる勢いだった。

 天晴は一旦距離をとって刀で防御し、ダメージを防ぐ。

 

 「そう何度も通用しねえぜ!!」

 

 「そうか……そうだな……雷電!!」

 

 蛾眉雷蔵の呼びかけに応じ、一頭の馬が走ってきた。

 牙鬼軍側の証なのか、何かしらのマスクを被っている……

 

 「よしっ来たな」

 

 「馬とかいたのかよ!?」

 

 馬は走って天晴に脚で一発蹴りを入れてきた。

 

 「うお!?」

 

 「ハッハッハ、お前も気合十分だな!!」

 

 蛾眉雷蔵は、その馬に乗り込んだ。

 

 「人馬、一体!!」

 

 馬も蛾眉雷蔵の叫びに合わせ、嘶き始める。

 

 「熱いな〜俺も行くぜ!!」

 

 天晴もムササビの術……凧を用意して、担いで飛んだ。

 蛾眉雷蔵の馬を追いかけ、天晴の凧もそのまま進む。

 並び立つ様は天に輝く二つの星のようだった。

 一度墜ち、再び輝かんとする星。

 武技を磨き、これから輝かんとする星。

 星の衝突はどのような結果を産むのか……

 

 「ガマガマ銃!!」

 

 天晴は空から銃を構え、蛾眉雷蔵を狙った。

 移動している凧から狙ったためか、かすりもせずに終わった。

 

 「そんなんで俺様に響くと思ってんのか、雷電!!」

 

 蛾眉雷蔵は愛馬に呼びかける。

 すると彼の愛馬は飛び上がり、空をかけた。

 

 「……すげえな!!」

 

 「はああ!!」

 

 すぐに天晴のいる高度まで及び、馬上から攻撃を仕掛けてきた。

 

 「よっと!!」

 

 天晴は凧を体で反らし、蛾眉雷蔵の攻撃を回避する。

 回避しながら空を飛び回り、忍者一番刀ですれ違いざまに斬りかかる。

 そうやって繰り出された攻撃は、全て手甲で防がれた。

 

 「蚊にでも刺されたぐれえだな」

 

 「まだ、これからだぜ!!」

 

 凧を担ぎながら天晴は回転し、刀を水平に向け、駒のように攻撃する。

 

 「うぉりゃあ!!」

 

 「はあああ!!」

 

 手甲と小太刀で防御する。

 一通り回った後、天晴はそのまま五トン忍シュリケンをセットし、水の術を放った。

 

 『ザブザブジャー!!』

 

 〜先日 伊賀崎道場〜

 

 『今日の授業は、色んな攻撃方法を知ろう!!という訳で……みんな、宿題はやってきたかな?』

 

 その日の授業は、イチゴや小狼(シャオラン)達も混じえて知ってるものを言うというものだった。

 五トン忍シュリケンにはアイデア次第で色々な使い道がある。

 火炎の術で焚き火をしたり、水の術で波を作ってサーフィンをしたり、木の術で隠れ蓑となる木を作り上げたり、金の術でタライを落とし、土の術で地面に落とし穴を作ったり。

 知見を共有する事で、それぞれが実践する忍術の可能性を広めるのが目的だった。

 

 『小狼(シャオラン)君が虎折神との戦いで見せたあれかな〜』

 

 丈瑠が獅子折神から放った炎をレイアースの刀に絡ませ、斬りかかる攻撃。

 

 『武器に属性を絡めるか〜いいねえ』

 

 『ことはが前に土で煙を起こしてたような……』

 

 目眩ましに使えそうである。

 

 『最近だと、千明さんのも捨てがたいかも』

 

 凪が言ったのは……千明が己のモヂカラで木を武器から生やし、敵を貫いた攻撃。

 

 『別の世界の奴が放った攻撃は強かったな。『夜摩天狼剣!!』つってな』

 

 『う〜ん……五行に当てはまらないものは止そうね、黒鋼君』

 

 『じゃあ、鉄球転がすトラップみてえなもんか?』

 

 『マンガにそういうのがあったね〜』

 

 『直進する鉄球と考えれば攻撃の一手としては、悪くないかもしれませんね』

 

 『……おれ達が旅を始めて最初の世界で出会った人が水を使う神様を使役してたんですけど、その水で落下の衝撃を抑えてました』

 

 『あ〜それ良いね、安全に気を付けるのは大事だからみんなこれ覚えておいた方が良いよ』

 

 『八雲君の以前使ってた扇風機ってどんな感じなんです?』

 

 霞の機転で八雲が披露した魔法……あれで妖怪ヌエの灰を吹き飛ばした。

 

 『あれか……五トン忍シュリケンの範疇ではないな、どちらかと言うと風の魔法に分類する。外側だけなら金の術でなんとかできるかもしれないが』

 

 『使うなら、あっしのこれでやすかね』

 

 風と雷を司るシュリケンを掲げた。

 

 『これも五行とは違うから……参考程度かな』

 

 『そういえば、イチゴさんの知り合いに火を使える方がいるという話がありませんでしたっけ?』

 

 サクラはイチゴに話を振った。

 

 『え?キョーコさん?うん、使えるよ……体質的な感じ……アハハ……口元からぶわっといったり、手のひらからボウっといったり色々できるかな』

 

 『あ、ルンと同じ人と結婚したって話だったっけ……相手はどこかの王様………あ』

 

 イチゴは全力で目を逸らしていた。

 

 『前から魔法には程遠いと思ってたが、体質だったのか……』

 

 『八雲君、魔法少女の番組見てたんですねえ〜』

 

 『ま、魔法の研鑽としてだな……』

 

 八雲はからかわれて慌てていた。

 

 『そ……それも捨てがたいけどさ、印象的なのはこれだね』

 

 イチゴはリドミハ星人の繰り出すウォーターカッターを挙げた。

 その力で車も難なく破断できる程だという。

 

 『え……えげつねえな』

 

 黒鋼は話を聞いてドン引きしていた。

 

 『うーん、よく分かんねえけど水鉄砲のようにすりゃいいのか?』

 

 『圧力によるけど、そんな感じ……と思う』

 

 〜戦場〜

 

 天晴は刀を向け、勢いを付けて水を放出した。

 

 「!?」

 

 蛾眉雷蔵は腕でガードしようと試みた。

 だが、できなかった。

 軽微だが、裂傷ができていた。

 

 「こいつは!?」

 

 「ずっとおんなじ所で受け止めりゃ、傷つくだろ?」

 

 「(封印とか召喚とかじゃねえ、水だけの単純な攻撃……だからこそ痛えやつか)赤いの?誰からこんな真似を習った?」

 

 「──仲間だな!!」

 

 「そうかい!!」

 

 すぐさま天晴の周りで円を描くように雷電が動き、避けた。

 

 「!?」

 

 天晴の水の攻撃は、途切れた。

 

 「今だ!!」

 

 蛾眉雷蔵を乗せた雷電は突っ込む。

 

 「でえええええい!!」

 

 蛾眉雷蔵は凧ごと天晴を両断する勢いで、大太刀を振るう。

 天晴の凧に亀裂が破れ、飛べなくなる。

 

 「うぉ!?」

 

 大太刀のダメージは忍者一番刀で防ぎ、反動を利用してさらに上空へと飛んだ。

 

 「力を貸してくれ、先輩」

 

 天晴は空中で一つの忍シュリケンをセットする。

 偉大なる先達、そのうちのカクレンジャーの意匠が描かれたそれは、彼らの得意とする力が封入されている。

 カクレンジャーの力で、天晴は10人に分身した。

 

 「へっ!!」

 

 10人に増えた天晴はそのまま忍者一番刀を掲げ、蛾眉雷蔵に突っ込んだ。

 

 「オラオラオラオラオラオラ!!」

 

 二刀を掲げ、連続攻撃を繰り出す。

 その斬撃は空を斬り、天晴の分身を蹴散らす。

 分身体、全て消滅。

 本体?と思しき残り一体が斬りかかってきた。

 空中で、二人の刃は交錯する。

 

 「うおおおおおおおおお!!」

 

 「はあああああああああ!!」

 

 反動により一瞬、間ができる。

 その間に………

 

 「牙凌道・雷幻斬り」

 

 雷をチャージし、十字に振るう。

 天晴も同じタイミングで、自身の忍シュリケンをセットした。

 

 「忍烈斬!!」

 

 各々のオーラを纏い、彼らの武器も光る。

 互いに、必殺技で決着を付ける気だ。

 

 「うおおおおおおおおお!!」

 

 「はあああああああああ!!」

 

 二人の叫びと、刀の嘶きが響き渡る。

 極まった方が、勝てる。そう見ている者は確信できるだろう。

 届いたのは……蛾眉雷蔵。

 

 「うぉりゃぁ!!」

 

 無慈悲な一閃の放つ音が鳴った。

 

 「うわああああああ!!」

 

 天晴は変身を解除し、森の底へと落下していく。

 

 「天兄!!」

 

 「天晴君!!」

 

 「お兄ちゃん!!」

 

 「天ちゃん!!」

 

 「天晴坊っちゃん!!」

 

 「嘘!!」

 

 「そんな!!」

 

 当の蛾眉雷蔵は、少し動きが止まっていた。

 

 「う……討ち取った……」

 

 「倒したようですな」

 

 「見事じゃ、蛾眉……そして……お前達、奴達をひっぱたいてしまえーい!!」

 

 奥方の号令でヒトカラゲ達の勢いが増す。

 

 「黒様黒様……まだダメそうだね」

 

 「くっはっどこだあの野郎!!」

 

 黒鋼は晦正影のかけた幻影に惑わされていた。

 真っ先に奥方達のいる場所を攻めてきたので、カウンターとして幻を見せられているらしい。

 

 近寄ると斬られそうな勢いだったため、誰も何もできないでいる。

 

 「くっ」

 

 急いで天晴を探さなければ……

 だが、足軽達、幹部達を片付けてからでないと……

 

 「…………………!!」

 

 蛾眉雷蔵が馬に乗って突然こちらに走ってきた。

 

 「来る!?」

 

 全員身構えた、だが蛾眉雷蔵の進路上にいるのは……イチゴだった。

 蛾眉雷蔵はイチゴの服の袖を掴み、空中に放り投げる。

 

 「うわあああああああああ!!」

 

 辛うじて、地面に不時着する前に万能工具(ツール)を差し込み勢いを削いだのでダメージは受けずに済んだ。

 

 「はぁ………」

 

 イチゴが呼吸を整えようとしていると蛾眉雷蔵が馬から降りて近づいてきた。

 

 「来る……」

 

 前回会った時……無惨にもすぐ倒されかけたのを思い出し、イチゴは万能工具(ツール)を構えた。

 

 「(御館様……これは、戦い以外で捧げる我が忠義であります!!)オメエ、名前は?」

 

 不意に突かれた質問に驚きながらもイチゴはおそるおそる答えた。

 

 「イチゴ」

 

 「姓はなんだ?」

 

 「……………結城」

 

 「結城イチゴか」

 

 戦国武将が人に名前をわざわざ聞いてくる……その意味を考えた時、背筋に悪寒が走った。

 

 「結城イチゴ……御館様の御為に、テメエの命、貰い受ける!!」

 

 蛾眉雷蔵が刀を抜き、大小両刀で斬りかかってきた。

 

 「うわぁ!?」

 

 天晴との対蛾眉雷蔵練習用に用意した二振りの武器を構えて応戦する。

 蛾眉雷蔵が大声で叫ぶせいか、イチゴに聞いた質問の内容は筒抜けだった。

 

 「珍しいな。たいして強くもなさそうな者の名を聞くなぞ」

 

 「あやつの奇行気紛れなぞ、さして珍しくもありませんからな」

 

 奥方達は、その意図は掴めないからか、半分聞き流している。

 

 「イチゴさん!!」

 

 小狼(シャオラン)は走って救出に向かおうとするも、足軽のパワーアップバージョンに阻まれる。

 

 「どいてくれ!!」

 

 「……………」

 

 小狼(シャオラン)はジュッカラゲに攻撃する。

 だが、精鋭らしく簡単には倒れない。

 

 「小狼(シャオラン)!!」

 

 八雲達もジュッカラゲとの戦いに参戦してきた。

 

 「皆さん」

 

 「早く倒して行くぞ」

 

 青龍は、符術でヒトカラゲを倒しながら白虎にどう動くかを述べる。

 

 「イチゴ君の援護に向かいます、(ブリット)君は天晴君をお願い」

 

 「分かった!!」

 

 ヒトカラゲに肘鉄をお見舞いし倒した後、白虎はその場を去った。

 

 「では行きます」

 

 青龍は姿を元に戻す準備を始めようとしていた。

 

 「させないよ」

 

 どこからか九衛門が現れ、攻撃を仕掛けてきた。

 青龍は符術でバリアを張る。

 

 「おお、狐!!どこ行っとった?」

 

 「私めは、京の都の地理に疎く……」

 

 「お、おお……そうか……では仕方がないのう」

 

 「あの時のあいつ!!画楽君、やっちゃって!!」

 

 命依は歌川に頼んだ。

 

 「そうしたいのは山々だけどそうもいかないかなあ……戦えない人達を守らなきゃだしね」

 

 事実、歌川は戦えないサクラや旋風達を守っていた。

 

 「私も、ヒトカラゲ?て奴の攻撃躱すので手一杯……何なのコイツら、数だけは多いから黒折神あっちこっち動かしてたらすぐバテちゃう」

 

 「メイちゃんは一人倒すのに8枚とか動かしてるからね〜加えて足裏に動くためのもの2枚も貼ってたら魔力とかがいくらあっても足りないんじゃないかな」

 

 ファイはヒトカラゲを蹴り飛ばしたり、踊るように立ち回りながら言った。

 

 「ぐぬぬ……」

 

 「命依、折紙なら折って連結させて長い棒にしとくのはどう?」

 

 モコナはヒトカラゲにジャンピング頭突きを当てながら提案してきた。

 

 「モコナ……うん、やってみる」

 

 命依は黒折神を束ねて長い棒を折る。

 

 「えーい」

 

 早速命依は折った長い棒でヒトカラゲの頭を叩く。

 ヒトカラゲは叩かれた頭を抱えて倒れた。

 

 「これいいね」

 

 数枚分独立させて動かすイメージをしなくて済むのは大きい……らしい。

 

 「行っておいで」

 

 命依は歌川に一瞥し、開いた所を進んだ。

 

 〜一方その頃〜

 

 「貴方は……何者ですか?」

 

 青龍は符術でバリアを張ったまま、問いかける。

 九衛門は攻撃しながら答える。

 

 「十六夜九衛門、平和を愛する……君の敵さ」

 

 「その体と妖力……人の身に(あやかし)を降ろしたというの?」

 

 「!!」

 

 話を聞ける状況にないイチゴと天晴と黒鋼以外、青龍の言葉に驚いた。

 

 「それって本当?」

 

 寝耳に水の情報、凪は青龍に聞いた。

 

 「詳しくは分からない……でも、彼の体から感じる妖の存在は一つ二つじゃない」

 

 「流石四神はよく分かってらっしゃる、そうさ。この体は妖怪と一つとなって得たものだよ」

 

 「人の体で……無茶です!!」

 

 「今更だね、もうこうなって何十年は立つ」

 

 「どうしてそんな事……」

 

 「貴方みたいなのがいるからさ、人の身で抗おうとするにはこうするしかないだろう?」

 

 「抗う?………………命依さん!?」

 

 九衛門の背後を、命依が攻めようとした。

 だがノールックで棒の先端をつままれ、力を削がれた。

 

 「本来なら、君は僕達の側に立って然るべきなのにね」

 

 「私の本体の望みは復讐と人の世の終わりだった……決して支配への加担じゃない」

 

 「命依さん……」

 

 「それより持ってるんでしょ?私の本体の残り」

 

 「どうしてそう思うんだい?」

 

 「あんなにきれいに残ってた骨が、しゃれこうべだけなんてあり得ないじゃん」

 

 ※比良坂命依の生前の遺骨を九衛門が回収していた、その帰りに偶然にもイチゴのそっくりさんと命依の怨念と歌川は遭遇してしまう。

 持ってたのはしゃれこうべのみであり、他の部分は見つかっていない。

 

 「そんな事をして僕に得があるのか?魂は転生を果たし、魄は恨みとして君に注がれ、あるのは残り滓だけだろうに」

 

 「残り滓でも、妖にとっては宝の山っぽいからねえ」

 

 「ふ……少々その口を閉ざしてやろうか」

 

 九衛門は符を1枚貼り付けた針を命依の腕に刺す。

 

 「痛っ」

 

 「封印術・()()(かみ)(しずめ)

 

 そのまま九衛門は何か呪文を唱えた。命依の周りをクリスタルが覆い、その中から出られないようにしていく。

 命依がジタバタするものの、出られはしない。

 

 『何……これ……』

 

 「命依!!」

 

 歌川は命依の方向に注目する。

 

 「かつて邪馬台国の女王、壱与とその仲間達に野望を阻止された陰陽連は、彼女の存在に恐れと恨みを抱いた。だから同じような存在に出会した時のために術を開発していたのさ。これは試行錯誤の過程で産まれた術の一種だ、ちなみにそういう術は数百存在している」

 

 「数百の術の積み重ねの果ての例の術……」

 

 風巻祭里の体にセットされていた呪いの術……そのプロトタイプと言っている?確実に殺そうとするものと違い、ただ封印に留めているようだが……

 

 「妖巫女の力は、置いてきたのに……」

 

 「ハッ大元の(ちから)を手放したぐらいで君の因子が完全に消えたとでも?」

 

 九衛門は動けない命依を足で歌川の方に押し出す。

 

 「今すぐ元に戻してください!!」

 

 「だったら力ずくで元に戻すと良い」

 

 九衛門は手をかざす。

 

 〜一方その頃〜

 

 イチゴは襲ってきた蛾眉雷蔵と戦っていた。多分天晴と激闘を繰り広げた後だと言うのに、疲れを知らない勢いだった。

 

 「さあ、見せてみろ。お前の力!!」

 

 一振り一振りが必殺の威力を持つと感じられ、受け流す事に徹さねばとても命を維持できない。

 

 「何の事!?」

 

 「出ねえってんなら……そのまま死にやがれ!!」

 

 蛾眉雷蔵は二刀を掲げた。

 雷が落ち、二刀に漲る。

 

 「牙凌道……雷幻斬り!!」

 

 そのまま、十字に振るう。

 

 「くっ!?」

 

 爆発が起き、イチゴは吹っ飛んだ。

 

 「ぐはぁっ!!」

 

 イチゴは教えられた通りにやっても、うまくいかなかった。

 

 「(技術体系として成り立ってるなら、オレでもできない事はない筈だけど)」

 

 逆立ちしたって雷を起こせる訳ではない。

 できた所で、必殺技として運用している蛾眉雷蔵に敵いはしないだろうが、時間は稼げるかもしれない。

 どうすれば……

 

 「もう一度だ……」

 

 ここだ……

 そう、直感は告げた。

 猿真似かもしれないが、同じ事を同じだけすれば……

 

 「今だ!!」

 

 蛾眉雷蔵が剣を掲げるのに合わせて、イチゴも万能工具(ツール)を掲げる。

 両者の得物に、雷が落ちる。

 

 「何!?」

 

 後は、十字に振るって、剣を当てるだけ……

 しかし、次の瞬間、頭を掴まれ、地面に倒され、それ以上の身動きが取れなくなった。

 

 「どう……して……」

 

 「腕を見てみろよ、そんな体で素早い動きなんざできねえ」

 

 イチゴは蛾眉雷蔵の鎧具足を加味した、大きな指と指の間から自身の体を覗いた。

 武器越しとはいえ雷を受けたせいか、イチゴの体全体の動きが鈍く、震えている。

 

 「敵であれ、味方であれ……俺様の技の真似っ子、しかももう少しで完成しかけるたあ、なかなかできる事じゃねえ、褒めてやりてえがお前だけはそうはいかねえんだ。覚悟しやがれ」

 

 やられる……

 そう思った瞬間……前回と違い、焦燥感と恐れが噴き出してきた。

 これが生きたいという感情なら……我ながら現金なものだと、イチゴは自嘲的に一笑した。

 すずを身代わりにしようとした時と違い、いっそ清々しい。

 

 〜一方その頃〜

 

 「マグマ・ヴァサール!!」

 

 「竜巻の術!!」

 

 符術と忍術がぶつかり合い、周囲に爆発が起きる。

 

 「さっき見せた力は、こんなものではないだろう?」

 

 「(こんな狭い所で移山法を使えば、周囲に被害が出る……龍王破山剣は(ブリット)君と龍虎王にならないと使えない)」

 

 青龍は別の符を掲げた。

 

 「急急如律令、勅!!勅!!勅!!」

 

 青龍の指から雷が走る。

 

 「単調だね……」

 

 九衛門は横へスライドして避ける。

 

 「十六夜流忍法・砂塵礫」

 

 砂埃より大きめの物体が、風に乗って青龍の周りを攻撃する。

 

 「手数は何のためにあるか」

 

 「え?」

 

 「崩すためにあるんだよ」

 

 青龍の張ったバリアが、崩れた……

 

 「そんな!?」

 

 「決めさせてもらう!!」

 

 九衛門は何か大きな術を唱えようとした。

 

 「はあ!!」

 

 九衛門に十四夜が攻撃を仕掛ける。

 

 「何!?」

 

 急に接近戦に入られたため、九衛門にダメージは無かったが術を唱えるのを中断させられた。

 

 「……ここは僕が引き受けます。青龍さん、行ってください!!」

 

 十四夜は青龍に1枚の符を渡す。

 

 「ありがとう!!」

 

 読み終えた青龍は、その場を後にした。

 

 「小僧が……」

 

 「お前のように、邪法に身を委ねた奴を許す訳にはいかない!!」

 

 「身の程を知れ!!」

 

 十四夜の刀と九衛門の打出の小槌がぶつかり合った。

 

 「はあ!!」

 

 互いに数歩下がり、九衛門は鬼火を撃ち出し、十四夜は超音波の符術で防ぐ。

 それからどちらかともなく走り、同じ術で攻防を繰り返した。

 

 「それなら!!」

 

 十四夜は先程とは別の符を掲げる。

 

 「土の術、(せき)(るい)(りん)(だん)!!」

 

 四角い石柱が土の中から数発現れ、回転を加えて九衛門を襲う。

 

 「!!だが、目眩ましにしかならないと知れ」

 

 九衛門は石柱と石柱の間を某配管工の壁蹴りの要領で上昇し、頂点となった所で印を切った。

 

 「十六夜流忍法─」

 

 それを見越したかのタイミングで、九衛門のいる位置に刀が投げ込まれる。岩で見えづらくなっていて、九衛門に対応しきれなかったのだ。

 

 「ぐはぁっ!!」

 

 岩壁まで飛ばされ、何かの術を唱えられ拘束される。

 

 「くっそー……まあいい……少々早いが、良いものを見せてやる」

 

 打出の小槌を掲げ、また印を切っている、何かの準備らしい。

 

 「狐、何をやっておる……あやつ達に逃げられてしまったではないか!?」

 

 「は?」

 

 九衛門は奥方の言葉で周囲を見渡す……確かに十四夜以外誰もいない。

 

 「何!?」

 

 「騰蛇!!」

 

 「後は主を残すだけです」

 

 先程の超機人の精が現れた。

 

 「時間稼ぎだったか!?」

 

 「昔の封印術まで熟知してる奴と僕だけでまともに戦えるが訳ないからね……」

 

 「さっきのあれなら動けない筈だろうが!?」

 

 「ええ……今の私は(ゆめ)(まぼろし)のようなもの……故にこういう事も可能なのです……陽炎(かげろう)(のじん)!!」

 

 騰蛇の剣から地面に炎が伝わる。

 炎は揺らめき、やがて十四夜を覆い隠してしまう。

 向こう側にいる筈の十四夜はどんどんボヤけ、輪郭さえ消えていく。

 

 「………………」

 

 「クソッ」

 

 自由になって地面に着地した九衛門は地団駄を踏んだ。

 十四夜との戦いに熱中してなければ……何故か、ある種の興奮を感じていた九衛門だった。それさえなければ、ここまで時間を食う事はなかったのに。

 

 〜イチゴがまたもや蛾眉雷蔵にトドメを刺されかけた頃〜

 

 『させない!!』

 

 青龍が人間の姿を解き、蛾眉雷蔵を爪で攻撃してきた。

 

 「!!」

 

 蛾眉雷蔵は咄嗟に刀で防御

 

 『一旦態勢を立て直しましょう』

 

 「う……うん」

 

 『さあ、乗ってください!!』

 

 青龍は龍となった状態で蛾眉雷蔵を攻撃した手と別の方の手を差し述べてきた。

 

 「こう?」

 

 イチゴは青龍の手に飛び乗った。

 

 『少し動かしますね』

 

 そのまま背中に移った。

 

 『では、捕まっててください』

 

 「待ちやがれ!!」

 

 蛾眉雷蔵は刀で青龍に斬りかかろうとする。

 

 『龍王火炎』

 

 青龍は、邪魔されまいと炎を吐き出す。

 

 「うぉっ!?」

 

 炎の勢いと熱さに、蛾眉雷蔵はたじろぐ。

 

 「青龍、天晴を助けないと」

 

 『大丈夫、(ブリット)君が既に救出してるから』

 

 「じゃあ」

 

 『命依さんも封印されました……黒鋼君も天晴君も戦えない今、引くよりありません』

 

 「ええ……(困惑)」

 

 イチゴ達は、その場から去った。

 

 「……………」

 

 残された蛾眉雷蔵は、座り込んだ。

 

 「あの高さと森の深さじゃ、もう助からんよ」

 

 晦正影が、寄ってきた。

 

 「それよりお主には、ここまで付き合ってやった礼としてやってもらわねばならん事が山程あるのだ。良いな」

 

 「おう、これからは一層御館様のため励むようにするぜ」

 

 「うむ、早速じゃが……」

 

 晦正影との作戦会議が始まった。

 赤い忍者は倒した、決着は付いた。

 久しぶりに血の滾る思いだった。

 それでも………何か、物足りないものがあった。

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