スーパーロボット大戦Z Another Chronicle 作:レゴシティの猫
そうだ。
最も待ち望んでいた瞬間は、これだったのかもしれない。
「オメェ、名前は?」
己が認めた強者足りうる誰かと、心ゆくまで刃を交え、勝敗を決する。
勝つもよし、それは主君への奉公となる。
負けるもよし、戦いに生きた者として、有終の美を飾れる。
自分がこれまで相手にしてきたように……自分を討ち取ったものの礎となるのだ……病の末や、弱いものになぶられ殺される結果などによる死は真っ平ごめんだった。
同じ死なら、己の望むままに。
『死に方まで選り好みとは、我儘な御人だ』
心を完膚なきまで砕いた少年の似姿の言葉が甦る。
結城イチゴ……今世の恐れの象徴、牙鬼の世のためにはいずれ殺さねばならない相手。そう主君もいずれ気付いてくれるだろう……奥方と御家老がそれに気付いたとは思えないが。
「伊賀崎……
伊賀崎家の赤い忍者はそう名乗った。
その名を、心に刻むとしよう。
自分を討ち取った、一人の男の名前を……
退屈に身を置き、嘆くには早いと気づかせてくれた男の存在を……
忍者達だけではない。
棟梁として在るべき、強き刃。
忠の名の下に磨き続けた刃。
一皮剥け、三下から成長する様を見せてきた若葉。
女だてらに戦場に立ち、そう形容してしまう事を恥じさせる程の力を見せた二人。
異世界の戦士。
いずれも強者達であり、今の世も捨てたものでないと思わせるには充分だった。
嫌……三下を三下と呼び、避けるのは己の怠慢だったのかもしれない。
「そうか、アッパレな奴!!」
そう言い残し……蛾眉雷蔵の体は、爆発した。
〜戦場〜
「……………」
天晴は、振り返らない。
一騎討ちによる決着、それで負けたならば潔く散るのみ……それが蛾眉雷蔵という男だという事を、斬りあった中で分かってしまったから。
「やられおったか!?しかしなんと満ち足りた様子」
「蛾眉、見事じゃったぞ〜」
他の幹部達は、その様を賞賛していた。
だが突然、モフモフの触手が朽ちかけている蛾眉雷蔵を包む。
触手というよりは尻尾……九衛門だ。
『何をしている……牙鬼の勇士なら、今すぐ立ち上がりなさい!!』
九衛門は、今にも消え入りそうな蛾眉雷蔵の魂魄に、打出の小槌を叩きつける。
『立って、刀を振るって、幻月様の敵を一人でも斬るのよ!!命尽きてもその使命、終わることはないと知れ!!』
「妖術、肥大蕃息の術!!」
無慈悲に、さらには陥れるように……九衛門は妖術を唱える。
「!?」
勝利と惜別の余韻どころではない、天晴は九衛門の声に驚き振り向かざるを得なくなった。
〜一方その頃〜
蛾眉雷蔵の魂魄は、彼岸へと向かおうとしていた。
『御館様……彼岸の先でも一番槍として奮起致します……』
だが、邪魔が入る。
『何ぃ!?』
小槌の妖力が昇天してゆく魂を掴み、此岸へと引っ張ってゆくのだ。
『や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
〜一方その頃〜
「あ、ああああああああ!!」
蛾眉雷蔵が巨大化していく。
そして彼の妖力が、安定しなくなっている。
「どういう……事じゃあ?」
変わり果てた臣下の姿に、奥方は戸惑う。
「あやつ……蛾眉の魂魄に細工をした様子……」
「蘆屋道満にもこうしてやりたかったが、下手な術では逆らわれるのがオチ」
蛾眉雷蔵は、咆哮をあげたり、刀を振るったりして、周辺に被害を加えだした。
九衛門はついでとでも言わんばかりにガシャドクロを2体程召喚し、それらも暴れだす。
「おのれ……どういうつもりじゃ、狐ェ!!」
「聞こえておらぬか……これでは成り行きを見守る他ありますまい」
奥方達は天晴達には何もしないようだ。
「どうなってるんだ?」
後ろから飛んできた龍虎王が説明してくれた。
『消滅していく筈の蛾眉雷蔵という方の魂魄が、悪しき念によって励起され、暴走させられているようです』
「消えていく蛾眉雷蔵を、九衛門が無理矢理押し留めて動かしてる……という事ですか……」
『ええ、それにしても、十六夜九衛門から感じる念……どこかで……』
「そういえば、そっちは……」
その問いはイチゴが答えた。
「実は……」
戀鬼はピンピンしていた。
それのみが答えではあるが、もう少し釈明を唱えさせて欲しいイチゴだった。
「倒しきれてないのか?」
「この武者……さっきから固すぎるんだ……」
少しだけ遡る……
『いけ!!万能
『
『はあ!!』
『閃龍・飛光撃!!』
『くらえ〜』
『虎龍爆連打!!』
各々、攻撃を集中させた。
『やったか?』
『アッハッハ、イチゴ君……それ、やれてない時に言う言葉だよね』
しかし、これといったダメージは入っていない。
『………あ』
『こいつ……硬い!!』
『オワリカ……』
戀鬼は水平に刀を振るう。
『くっ!!』
最前列にいたカイを中心にダメージを受けていった。
『まだだ!!』
黒鋼はセレスを駆使し跳躍、戀鬼に斬撃の雨による範囲攻撃を繰り出す。
『…………ハア!!』
戀鬼は刀を斬撃に逆らうよう振るい防御する。
『そこか!!』
アタリを付けた黒鋼はそこに一閃を繰り出す。
だが戀鬼は肩当でガード、ダメージを最小限に防ぐ。
『届かねえか……』
黒鋼ですら匙を投げる結果となり、今に至る。
「マジか……」
「大マジ」
「そして、暴走した蛾眉雷蔵……」
イチゴは蛾眉雷蔵を見据える。
「似たような敵が一陣営に二人もいるとか、キツくない?」
「そうでもないかな〜こいつ、攻める敵は選んでるよ」
結びつきの強い者同士が相手だと、手を止めるようだ。
人がそういうお熱いのを感じられるのだ、より念に重きを置いた存在なら感じられない訳がない。
もしかして、牙鬼軍と誤認させられている今でも想いの結ばれないまま死別させられた痛みを味あわせるのを躊躇している?
カップルの守護者というのも納得させられる。
「つまりファイさん……あっち(蛾眉雷蔵)はすごく暴走しかかってる方でこっち(戀鬼)は無意識に相手を選ぶ奴って事?」
「そゆこと」
「んじゃあ……」
天晴は八雲達に頼んだ。
「みんな……もっかい力を貸してくれ。あいつを……ちゃんと眠らせてやりてえんだ!!」
華々しく、満足げに散っていった彼を笑いながら傀儡にした九衛門への怒りはあるが、まずは倒さなければならない。
「ああ」
「うん」
「分かった」
「いつでもいけます」
「いっちょ派手に暴れやしょう!!」
天晴達がオトモ忍を召喚し、シュリケンジンとバイソンキングに合体した。
「んじゃあ……」
「いっくぜー!!」
シュリケンジン達は直進した。
そのままバイソンキングの拳で、シュリケンジンの盾で蛾眉雷蔵に攻撃。
「!!」
敵意を認識した蛾眉雷蔵が、天晴達に狙いを定めて二刀を振るう。
「くっ」
さらに横から戀鬼がやってきて、刀を横薙ぎに振るってきた。
「きゃっ!!」
さらに追い打ちを仕掛けてきた。
「こっちだ」
イチゴはカイの万能工具を展開、戀鬼の攻撃を妨害する。
「イチゴ、ありがとう」
『ジャマダ』
戀鬼は標的をすぐさまイチゴに変える。
袈裟斬りの構えを取る。
「今だ」
イチゴはカイに指示を出し、引きつけた上で後退して避けた。
「戀鬼はこっちに任せて、
「はい!!」
黒鋼と
『龍王炎符水』
炎が帯となってガシャドクロと戀鬼両方を攻撃する。
ダメージは軽微だが、多方向を攻撃できる龍虎王はありがたい。
このままなら楽に倒せる……イチゴはそう思っていた。
「
レイアースは怯んだ隙に走って跳躍、足でガシャドクロに攻撃する。
「はぁ!!」
『………』
突如ガシャドクロが吸引されたように後退し空振りになる。
「!?」
なんと、蛾眉雷蔵は、ガシャドクロ二機を大振りの剣に変形させてきた。
「……………………!!」
そのままガシャドクロを掲げ、走ってこちらを斬り裂いてくる。
「くっ!!」
攻撃範囲内にいた
「きゃっ!?」
「くっ!!」
「
他のみんなも同じようにダメージを受けていた。
「ありか、こんなの」
「イチゴこの前やってなかった?」
「あ……」
妖怪に万能工具を使って武器に仕立てた記憶が甦る。
「オレが文句言える立場じゃないのか……」
イチゴ、自省。
「蛾眉雷蔵……さっき俺達が戦った時以上のパワーだな……」
黒鋼が所見を述べた。
「火事場の馬鹿力って奴を出させた状態で、限界が来て壊れないように狐のあいつが調整してるって所か?」
「みたいだね、黒たん」
という訳で妖力の消失による時間切れは実質ないと見ていいだろう、そもそも蛾眉雷蔵の猛攻の前には避けるという選択肢がない。
「俺達にも今以上の力がいる……奴の干渉を押し切れる力が」
「それって……」
鬼光眼、使うしかない……だが、白虎達のいる前で使うとまずそう。
『龍王破山剣を使うしか……』
「青龍さん……何それ……あ、痛っ」
イチゴが他所見をしている間に戀鬼に攻撃された。
「イチゴさん達の気持ちはありがたいですが、ここはおれ達がなんとかするしかなさそうですね」
打つ手を、どうするか……
「こうなったら……天晴坊っちゃん」
「おう?」
「風雷丸様の御力でできたその忍シュリケンなら、合体にも使えると思うんでやす」
天晴は「合」の忍シュリケンを見た。
「これか……よし、やってやるぜ!!」
「合」のシュリケンを忍者一番刀にセットした。
バイソンキング、そしてシュリケンジンのパーツが分解されていく。
ボディ同士が結合、足にバイソンキングのパーツがくっつく。段々重ねに近い状態で合体していき、重なったバイソンキングの上半身パーツを中心にシュリケンジンの腕を組み込んでいく。
シノビマルとロデオマルも、一度立ち上がって組み上がってから所定の位置に戻る。
シュリケンジンとバイソンキングのコックピットモジュール同士の通路も繋がった。
「ん!?」
バイソンキングの中のコックピットにいるキンジが座席が崩れ落ちる形で落下。
「なんでやすかあああ!?」
落ちた先は天晴達のいるコックピット。
急にキンジが目の前に落下してきて、天晴達は驚いた。
「大丈夫ですか?」
「こ、こうなるんだ……」
とりあえず、コックピットも共有となる。
頭の部分にもパーツが合体、胸の部分を展開し、牛の兜がくっつく。
キングシュリケンジン、爆誕。
すると、どこからか風雷丸の声が聞こえる。
『忍とハンター一つとなりて、天下御免の手裏剣大王!!』
シュリケンジンが一回り大きくなってバイソンキングの頭パーツを付けてパワーアップしたイメージとなる。
「グレート合体だ〜!!」
モコナが拍手した。
敵にまともに反応を示すやつがいないから、合体の感想を言ってくれるモコナがいて助かる。
「この前のテンクウシンケンオーみてえなもんか」
「これなら勝てるかもね」
早速キングシュリケンジンは直進する。
「いけえ!!」
キングシュリケンジンは蹴りや百裂拳をお見舞いする。
「!!」
蛾眉雷蔵に、これまでよりダメージが入るようになった。
「!!」
蛾眉雷蔵は反撃する、しかしキングシュリケンジンは分身して避ける。
「よしっ」
「このままイケイケドンドンだ!!」
だが……
『オオオオオオオオ!!』
戀鬼が走りながら示現流の構えを取りつつ刀をお見舞いしようとしてくる。
キングシュリケンジンが狙われている。
「!!」
一番強いと判断したのか?
「まあ、合体ロボだもんなあ」
そうも言ってられない、依然、戀鬼はキングシュリケンジンを狙ったままだ。
『イチゴ君、その方を抑えてください!!』
「カイ!!」
『いつでもいけます!!』
龍虎王に言われた通り、拘束する事にした。
カイに飛行してもらい、加速をかけ滑空、そして戀鬼に覆い被さるように降下、アームロックをかけて全体に重心をかけて抑えた。
「こう?」
『そのまま10秒程』
龍虎王は符を持ち出す。
『────────』
何か聞き取れない詠唱より、繰り出される手の動きの方に魅入られそうだった。
『今です!!』
何か上から降ってくる予感を感じ、イチゴは後退した。
龍虎王は戀鬼を符術で拘束した。
『キ……バ……オ……ニ?』
拘束されても目線だけはキングシュリケンジンに突っ込もうとするばかり、龍虎王には目を逸らしてばかり。
「じゃあ、お願い!!」
「今だ!!」
だが好都合、天晴達は集中攻撃を始めた。
「はあああああ!!」
レイアースの盾で
「いくぜ!!」
セレスの一閃で
「いっけーっ」
ウィンダムの風で
「まだこんなもんじゃありやせんよ〜!!」
キングシュリケンジンの格闘でダメージを与えていく。
蛾眉雷蔵はガシャドクロを落とし、ガシャドクロは武器の状態から元に戻る。
「キメちゃえ、みんな〜」
「おう」
「トドメだ!!」
天晴達は、操縦桿として突き刺した忍者一番刀に力を込める。
「「「「「「キング破天荒斬り!!」」」」」」
キングシュリケンジンは手に持っている武器を構えた。
「はあ!!」
一撃目でロデオマルがバイソンキングの胴体部分であるバギーに乗って蛾眉雷蔵を轢く勢いで直進する。
「はあ!!(エコー)」
二撃目でドラゴマルの幻影が現れ、蛾眉雷蔵達を焼き尽くす。
「オオオオオオオオオオオ!!」
命の散るような雷鳴が響き渡る。
血飛沫のような、確かな手応えとして。
「礼を言う、赤いの……御館様……無念!!」
そう言い残して蛾眉雷蔵は、爆発した。
「妖力が……再び還っていく……」
どこに……?かはさておき、九衛門の干渉という楔は解かれたと見ていいだろう……
「……………ふん、最後っ屁としてはこんなものか……派手に暴れ回ったおかげで恐れもたまったが」
九衛門はそう吐き捨てて去っていく。
「ヒヒン……」
彼の愛馬も、どこかへ去っていった。
主亡き馬は、どこへ行くというのだろう?
「帰還致しましょうぞ、奥方様。どうも排さなければならん相手は外でなく内におる模様」
「よし、良きに計らうがよい」
奥方達もどこかへ去っていった。
そのまま戀鬼も消えていった。
解放された訳でなく、ただ……音もなく消えていった。
「終わった……のか?」
気配は消えた以上、もう終わり……でいいのか?
天晴達、
「ふう……」
白虎達は融合を解き、人間の姿に変化した。
「もう降りてきていいんじゃないか?」
「そうするか………」
イチゴはカイから降りようとした。
「奴は逝ったか」
「!?」
同じタイミングで腑破十臓が草むらから現れた。それも人間の姿で。
「お前は……」
「あんたはあん時の!!さんきゅー」
天晴が気軽に手を振ろうとするが、八雲は制止する。
「天兄、あいつはシンケンジャーと刃を交わしたと聞く……つまり敵だ!!」
「え!!」
「……あの時の奴か……」
黒鋼を皮切りに、合点のいった者達から武器を構えた。
「安心しろ、お前達に用はない。斬りあった奴の最期を見届けに来た……それだけだ」
「え……」
意外だった……というか、最期を見届ける。外道衆がそんな風な真似をするとは思わなかった。
「刃を交わして分かっていた。あれは人でなくなったが、外道ではない。戦を求め、敵を求め、栄誉を求める。
蛾眉雷蔵の狂暴性も、戦闘意欲も、人間の範囲内……そう言われるとそうかもしれないし、外道衆が言うと説得力も違う。
「………………」
「そんな相手と斬り合っても、我が身の飢えは満たされない。求めるものは、
十臓は刀を掲げ、見つめる。
刃の光に魅入られている模様……違う、魅入られているのは、その光る刃でいずれ切り裂くものに対してだろう。
「………なんて、Crazyな奴だ」
「この念……狂気に身を委ねた者の持つそれです……」
ただ圧倒される者、それを在るものと理解する者、恭順する者はいないが、いずれも固唾を呑む事しかできなかった。
「シンケンレッドに伝えておけ、またいずれ会う……その時を楽しみにしていると」
腑破十臓はその場を去ろうとする。
「逃がすか!?」
イチゴはカイの操縦桿を引いて、腑破十臓に攻撃を仕掛ける。
「イチゴ!!」
モコナが引き留めるも、止まれない。
こんな奴は生かしておけない、殿様と戦わせる訳にはいかない。その思いがイチゴを動かした。
「はぁぁぁぁぁ!!」
カイが今手に持っている万能
だが、刀に角度を付けて滑らされる形でいともあっさり防がれてしまった。
「え」
イチゴは次の攻撃をしようとするも、万能
「イチゴ!!」
カイの胸元がガラ空きとなる。あ、やべえ……イチゴはそう思わざるを得なかった。
だが、腑破十臓から繰り出されたのは、攻撃でなく、ただ意外な言葉だった……
「お前、シンケンレッドと共にいた奴だな……一つだけ忠告しておいてやろう」
突然の言葉にイチゴは戸惑い動けなくなる。
「(外道衆が?オレに?何を?)」
疑問が頭の中でいっぱいになっていき、防御を取る事も忘れてしまう。
「シンケンジャーとはこれ以上関わるな」
「!?」
その場にいる全員、固まった。
言っている言葉の意図が理解できなかったからだ。
「どうして?」
「いずれ分かる、分からんなら……それで終わりだ」
それだけ言い残して十臓は去っていった。
「……………………」
疑問は尽きない……だが、戦いという嵐は過ぎ去った。それだけは言い切れるだろう……