スーパーロボット大戦Z Another Chronicle   作:レゴシティの猫

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第26話 蛾眉雷蔵……成敗!! Eパート

 〜その夜 京都 ホテル〜

 

 命依は、風呂上がりのバスタオル姿のまますずにビデオ通話をかけて京都で起きた事を話した。

 

 「て事があってさ〜」

 

 『ありがとう、教えてくれて』

 

 言葉のトーンに少し陰りはあったが、すずは概ね元気そうだった。

 

 『イチゴ君、元気?祭里も心配してたんだけど』

 

 「ピンピンしてるね、まあ初めて会った時よりは生気ってのに溢れてると思うよ」

 

 『そっか、良かった……』

 

 イチゴの母親から話はあったそうだが、その時はカイを取り上げる方向に行ってたから割と昔の話となる。

 

 「私達が何かしたのがきっかけって訳じゃなさそうだけどね」

 

 『……どっちにしても元気なのが一番だよ』

 

 「…………だね」

 

 『陰陽師の人達と会ったって、どうだった?』

 

 命依は十四夜達の顔を思い浮かべる。

 

 「それがさ〜名乗るとすぐこっちを煙たがるんだよ、ひどくない?」

 

 昔受けた迫害に比べたらマシと言われればそうなるが、モヤモヤは残る……

 

 『あの人達……まだ、私を恨んでるのかな?』

 

 すずの起源である壱与が彼らの祖である陰陽連の人達を倒して幾星霜……枝分かれして、京都を守る陰陽師と全国を守る祓忍になっても尚、その恨みを忘れていない?

 五行仙が消えてから、祓忍組合と陰陽師の関係が絶たれた件をすずは思い出した。

 自分のせいなのでは?と良心が痛んだ。

 陰陽師達は祭里にひどい事をしなかったから、そこまでしなくとも……と呟いた事もある。

 

 「まあ、反応見てるとこっちにビクビクしてるってのがそれっぽいのかな?」

 

 『え?』

 

 命依が感じたのは何世代にも渡り、研ぎ澄まされた恨みではなく……ただただ純然たる恐れ。その反応が意味するものとは?

 

 『その人達に直接聞かなきゃ分かんないかも……』

 

 「まあ、そうなるかもね……もう止そうよその辺の話」

 

 『あ、じゃあ話変えるけど蛾眉雷蔵って奴がでっかくなったの、それって……』

 

 「私も、多分同じ事を思った」

 

 似たケースを知っている。

 命依が昔、日喰想介という人の形を持った妖の魂魄に干渉して肉体を暴走させた件に似ている。

 能力か?それ以外か?

 

 『十六夜九衛門って人の仕業なんでしょ?』

 

 「らしいね」

 

 九衛門を放っておくと妖巫女相当の力が、どんどん悪い方に使われている気がする……こうなったらとすずは前置きして言った。

 

 『私もそっち行った方が良いのかな……』

 

 命依の言える言葉は一つだった。

 

 「止めといた方が良いかもね〜〜〜」

 

 『どうして?』

 

 「まず、そこらの妖が反対するでしょ。あの子達もまだまだ不安だろうし。それと、すずの強さは義務感じゃない所にあるわけじゃん?」

 

 『…………あ』

 

 「今、すずは義務感で戦おうとしてる。そんなんじゃ、多分勝てない気がする……少なくとも、あいつには」

 

 『…………………』

 

 「もし、あいつが私達の前世を喰らって力を得た妖であるなら……すずが一番危ないんだからさ」

 

 〜次の日〜

 

 十四夜の家に、壮年の男が現れた。

 彼の父親だ、蘆屋道満との戦いの後処理を終えて帰宅したのだ。

 

 「ようこそお帰りに」

 

 十四夜の父は着替えの暇も惜しいと言わんばかりの勢いで、迎えてくれた自らの母に問う。

 

 「十四夜は駅だったか」

 

 「うむ、祓忍を見送りに出かけたようじゃのう」

 

 十四夜の父は、ため息を吐いた。

 

 「十四夜に友達が増えるのは喜ばしいが、相手が祓忍となると考えものだな」

 

 どこで妖巫女に繋がっているとも限らない。

 

 「しかも、妖巫女の残滓も連れてきおった」

 

 「───────」

 

 十四夜の父は、飛び出していきたい気持ちを抑え、母に問いかける。

 

 「大丈夫なのか?」

 

 「今の所、敵意はなさそうじゃった。今の所はな」

 

 「そうか……」

 

 十四夜の父は急いで遠見の準備に取り掛かる。

 

 「五行仙……同じ祖を崇めるお前達の感情は理解もするし共感もするが、あれは触れてはならんものでもあった」

 

 五行仙がすずの命を狙った結果、能力、そして原初の記憶を引き出したのは明白。それらが引き起こした天変地異は全国に"天照"再臨を知らしめる合図でもあった。それを知った十四夜の父は真っ先に組織と話し合いを行い祓忍側と手を切った。より陰陽連に近い自分達は祓忍達にとって膿のようなものだろうと言って。

 

 「貴方達の末路は、過去を自ら手繰り寄せた報いだ」

 

 すずが怖いか?その通りだ。

 嗚呼……巫女王壱与、彼女こそ、自分達陰陽連の末裔に恨みを募らせているかもしれない……

 

 〜一方その頃〜

 

 蛾眉雷蔵を倒した天晴達は、京都に戻り1日休んだ後、すぐ東京への新幹線のある駅に向かった。

 

 「皆さん、もう行っちゃうんですか?」

 

 十四夜が同伴してくれた。

 私服姿なのか、丸メガネと青ジャージ一色となっている。

 長髪をゴムで纏めて額を露わにしているので、少し硬めの女の子に見えなくもない。

 

 「おう……もうちょっと回りたかったけどよ」

 

 「もう帰れって組合から通達来ちゃったからね」

 

 50m級の巨体がわんさか出てきて攻撃しあってそのまま爆発が起きれば、戦いが一段落着いたのは報告せずとも丸わかりであった。

 

 「組織の皆総出で見送りをやりたかったのですが、祓忍との関わりは極力するなと言われているので僕個人で勘弁を」

 

 「組織総出って……多くない?」

 

 「今回の皆さんのおかげで苦しむ仲間達を助けていただいたので、そのくらいは当然かと」

 

 だがしかし、一駅で組織総出となると通行人に迷惑になるのもそうだが、窮屈なのではなかろうか?

 

 「うーん、気持ちだけもらっとくよ。ありがとう」

 

 「はーい……」

 

 白虎達はというと、元の姿に戻って待っていた。

 

 『じゃあ、俺達も主の元に帰るとしよう』

 

 イチゴ達を十四夜が見送るその時まで待ってくれていたらしい。

 

 「このまま常駐していただけると心強いのですが……」

 

 『そういう訳にはいかない、君達に守るべき場所があるように、俺達にも本来守るべき場所がある』

 

 『騰蛇君達にもよろしくお願いしますね』

 

 そうだった、騰蛇という京都で作られた白虎達の仲間がいるのであった。

 

 「貴方達の主って……どんな御方ですか?」

 

 主に思い当たる節があったのでイチゴも話に乗っかった。

 

 「女の人かも」

 

 『そうだな、道士の一人で俺達の産みの親……作り主って所か』

 

 『尸解して人間ではなくなってるようだけど……あはは……』

 

 「す………すっごい僕達の先輩って事ですか……そ、そうですか……」

 

 符術を扱う点から見ても、超機人を産み出す技術から見ても、青龍達の主は十四夜達の先輩かもしれない。

 

 『会ってもらうのも悪くないが、後輩だからといって心を開く御方じゃないからな』

 

 「……………なるほど……」

 

 十四夜の脳内に、人付き合いの悪そうな暗いお姉さんのイメージが浮かんだ。

 

 「……なるほど……」

 

 『では、また力を必要とする時は遠慮なく呼んでくださいね』

 

 『いつでもとは言えないが、できる限り力になろう』

 

 青龍達は、空の向こうへと飛んでいった。

 

 「やっぱ朱雀より話しやすいな」

 

 風花がイチゴの言葉に同意する。

 

 「気持ちは分かるかも」

 

 一行は駅の中へと進んだ。

 

 「皆さん……この度は本当にありがとうございました。かの道満公に苦しめられた同胞の分も含めて礼を言います」

 

 十四夜は頭を下げようとし、一行はそれを留めた。

 

 「僕じゃ圧倒的に非力で……助けられた恩を忘れないよう、これからも精進していきます」

 

 「なーに、助けられたのは俺達もだ。だから呼び捨てでも良いんだぜ」

 

 「そうで……そう?」

 

 「………」

 

 「どったの〜?黒りん」

 

 ファイは、いつもより輪をかけてムスッとしている黒鋼に声をかけた。

 

 「………なんでもねえ」

 

 「みたらし団子足りなかった?」

 

 「足りなかった?」

 

 モコナもファイの頭上に登り、その会話に便乗する。

 

 「なんでもねえっつってんだろ!!」

 

 「わ〜怒った〜」

 

 「逃げろ〜」

 

 ファイは頭にモコナを乗せたまま駆け出した。

 

 「モコちゃん達、騒いだらダメだよ」

 

 「はーい」

 

 「たく……」

 

 本当は、蘆屋道満……彼はまだ本気を出していなかった。遊ばれただけだった気がする……だが、それは確かめるすべもなく、いたずらに不安を煽るだけだから、黒鋼の胸の内に留めるのみである……

 

 「じゃあ、お元気で」

 

 「じゃあね〜」

 

 乗り込む寸前で十四夜と挨拶を交わして別れた。

 これ以上進むと、進むのに切符を買わなければならないからだ。

 

 「席に着いちゃおー」

 

 イチゴ達は新幹線に乗り込んだ。

 

 「敵が減って、また増えた……小狼(シャオラン)君達の望みを叶えてあげるのって難しいね」

 

 「良いんじゃねえか?」

 

 天晴の言葉に、イチゴは振り向いた。

 

 「?」

 

 「どんなに難しくったってさ、今日踏んだ一歩を積み重ねていけば、いつかは牙鬼幻月だって倒せると思うぜ。俺は」

 

 馬鹿らしい、根拠もない楽観論。

 だが、天晴の言うそれには頷きたくなるものがある。

 

 「まあ、そういう事にしとこうか」

 

 「俺達だって、今のままじゃない。もっと強くなってやる」

 

 「ですね」

 

 「うん」

 

 「ええ」

 

 帰りの新幹線の中で、モコナ達は外を歩いている十四夜に手を振った。

 

 〜伊賀崎忍術道場〜

 

 アロハシャツを着たおじいさんが迎えてくれた。

 

 「決着は着いたようじゃな」

 

 「じいちゃん、ああ!!」

 

 話の流れから、伊賀崎好天と判断できた。

 そんな好天は天晴達の元に手を差し出してくる。

 

 「?」

 

 「京都に行ったなら、お土産とかあるじゃろう」

 

 「ごめん、おじいちゃん……忘れてた」

 

 「……ちぇっ残念じゃのう」

 

 好天はわざとらしく肩を落とした。

 

 「というのは嘘です、どうぞ」

 

 天晴達は好天にお土産を渡す。

 食べ物だったり、物だったり、

 

 「すまんのう」

 

 会うのは2回目だが、この人が伊賀崎好天……ラストニンジャと呼ばれる男。

 パンダ30頭に勝ったり、30m級の大蛇を倒したり、丸テーブルまるごと使ってようやく収まる大きな餃子30秒で完食したり、宇宙人との交流が未開と言っていい程少なかった時代に宇宙人と30回交信したり、色々と伝説が多いそうで、天晴が耳にタコができる程語ってきたのを思い出す。

 凝視していると、好天と目が合った。

 

 「どうも」

 

 イチゴは目で一瞥(いちべつ)した。

 

 「お主も御苦労じゃったのう」

 

 「……あはは……」

 

 「そうだ、聞いてくれよじいちゃん」

 

 天晴達は好天に今回の出来事を伝えた。

 

 「超機人……確かにそれはオトモ忍と無関係ではない」

 

 「本当ですか!?」

 

 「じゃが、関係があるとすればそれはお前達が今持っているオトモ忍ではないのじゃ」

 

 天晴達はズッコケた。

 

 「ええ……」

 

 「まだオトモ忍がいるのか?爺さん」

 

 八雲の疑問ももっとも……しかし、精神力で使えるのが多くなっていくという話を聞いているだけで本当はオトモ忍とやらが全部で何体いるのかは分からないイチゴである。

 

 「そう言えば、今どれだけいるの?(小声)」

 

 「シュリケンジンを構成する五体分、パオンマル、UFOマル、サーファーマル、キンさんの二体って所かな」

 

 「そのオトモ忍は天空のオトモ忍……ワシが唯一手懐ける事叶わなかったオトモ忍じゃ」

 

 一同、息を呑んだ。

 そんな奴がいるのか?と。

 

 「探してみるか?」

 

 好天にもできなかった事、やり遂げればラストニンジャへの道は大きく近づく。天晴達は頷いた。

 

 「おれ達もですか……?」

 

 小狼(シャオラン)は好天に質問した。

 

 「じゃのう……お主が望みを叶えたいならば、奴は大きな助けになるやもしれぬ。牙鬼軍を倒し、ラブ&ピースをもたらすためにはの」

 

 「分かりました」

 

 「どこにいるかは……」

 

 「そ〜れを言っちゃあ課題にはならんじゃろう」

 

 好天はおどけた口調で窘めてきた。

 

 「忍者たるもの、捜し物は己の手で成し遂げるべし」

 

 「そうですね……」

 

 「それに、気まぐれなあいつの事じゃ、どこにいる……とも言い切れぬものよ」

 

 〜一方その頃〜

 

 そこは、ある山中の寺。

 木々が風に凪ぎ、小川のせせらぎが耳に心地いい。

 そんな中、一際大きな木の幹に一人の男が寝そべっていた。

 そこに桃太郎が現れ、柿を渡す。

 

 『食うか?うまいぞ』

 

 「おう、あんがとさん…………落ちたもんじゃねえだろうな?」

 

 『俺はそんなものは人にやらん』

 

 桃太郎はもう一つ柿を取り出し、食す。

 

 「何の用だよ、また説教しに来たとかじゃねえよなぁ?そう何度も聞かされるのも俺ぁごめんだぜぇ」

 

 『何度でも言ってやろうか?使命を持って産まれたのなら、それを全うしろ。それを果たさずにここに居続ける意味が分からん』

 

 「けっ何が世の中を、人々を守るためだか……」

 

 『その割に、あいつの誘いを蹴ったそうじゃないか』

 

 男の脳裏に、青年の姿を持つ恐れの塊が浮かんだ。

 

 「知り合いかい……言っとくが俺ぁな、暴れるのが好きだからって暴れられる状況を自分から作るような悪党にもなるつもりはねえのよ」

 

 だから……牙鬼軍に頼まれたって組みはしない。

 

 『これだけは言っておく、お前がオトモである以上……子か孫か……いずれお前を求める奴は現れるだろう』

 

 「へっ上等だぜ」

 

 また平和だとか世の中をよくしたいだとか言ってくるような奴なら、何度だって突っぱねてやる。男はそう思った。

 

 〜伊賀崎道場〜

 

 好天は思い出として十四夜と天晴達を撮った写真を見ている。

 

 「なんじゃ此奴は」

 

 写真に興味を示したのが嬉しくなった天晴達は、十四夜の事を説明しだす。

 

 「向こうで活動してる陰陽師だってよ」

 

 「この人と協力して、京都の妖怪を倒したんだ」

 

 「そうか……」

 

 何やら首を傾げている好天、それを見て風花が問う。

 

 「どうかしたの?おじいちゃん」

 

 「……………知り合いに似とると思うてのう」

 

 「爺ちゃん、ラストニンジャだもんな!!あいつのじいちゃんとも一緒に戦ったりして」

 

 「(此奴、人間だった頃の九衛門にちょっぴり似ている………かもしれない。よく見れば程度だから、気のせいかのう?)」

 

 〜牙鬼城〜

 

 九衛門は、捕縛され、戀鬼と共に牢に入れられていた。

 

 「……………」

 

 「狐ぇ、よぉーくーもー、我達牙鬼軍が臣下の死を愚弄しおったな!!」

 

 有明の方の扇子が、九衛門の面にぶつけられる。

 

 『キバオニ?』

 

 戀鬼が訝しんだので、晦正影は有明の方を戀鬼から遠ざけようとした。

 

 「奥方様の御怒りはもっともでありましょうなあ……」

 

 九衛門の反省の色も後悔の念すらも垣間見えない呟きに、晦正影は激怒した。

 

 「前々から怪しいと思っておったのだ!!此度において疑惑が確信に変わった……生かしておけば、次また何をするかも分からん!!」

 

 「よし、此奴を処すが良い」

 

 『やめよ、奥。晦』

 

 牙鬼城の中に、照らす光もないのに、一筋の影が見えた。

 主、牙鬼幻月である。

 

 「御館様!!」

 

 「ま〜幻月様ではありませんか〜!!お久しゅうございます〜!!」

 

 動けない九衛門と奥方……そして戀鬼を除き、平伏する。

 

 『この度の行軍、見事であった。おかげで我もこうして己を出す事ができるようになった』

 

 「かたじけのうございます〜」

 

 「失礼ながら……この十六夜九衛門と名乗る者、我ら(ゆかり)のものでないと存じまする。このようなものをこれ以上ここに置いておくのは、些か危険かと」

 

 本当は名前を一言一句覚えてんじゃねえかよ糞翁、わざと間違えてんじゃねえ!!と九衛門は思った。

 ただ、牙鬼幻月は晦正影の言葉を飲まなかった。

 

 『未来にて、我が意に賛同せし新たな臣下が現れた。それで良いではないか……』

 

 「成る程……しかし、此度の此奴の行動……獅子身中の虫と断じて余りある所業ではありませぬか?」

 

 『晦の言いたい事も分かる。だが此奴はあの時、死んでも我ら牙鬼の敵を払えと念じたのだ。その情念とて分かる。此奴の行動も、此奴なりの忠義あっての結果だった……分かってくれるな?』

 

 「御館様がそう仰せになるなら……」

 

 「あ~それはもちろんにございます、幻月様〜」

 

 家臣にとって、主の言葉は絶対。戦国時代のものなら尚の事。

 

 『鎖を解き、この者への処罰は一時謹慎のみとせよ』

 

 「ははーっ!!」

 

 『謹慎が明けし後に引き続き我が世のために励むがよい、久右衛門』

 

 「()()(もん)、御館様の御厚情に感謝せよ」

 

 「まあ、今回は幻月様のとりなし故許すが……次はこうはいかんからの?」

 

 奥方の崇拝っぷりから、牙鬼幻月に何か言われれば再び舞い上がって甘々に振る舞うであろうとおおよその見当はつく……が、言わない九衛門だった。

 

 「はっ!!痛みいりまする」

 

 九衛門の鎖を解いた後、晦正影達はその場を去った。

 数分後、九衛門はため息をついた。

 今回のは確かに少々出しゃばりすぎたかもしれない…………それよりも

 

 「……………ははは……」

 

 庇ってもらえて初めて、実の父(・・・)の温もりというものを感じる事ができた。心中には、身が震える程に高揚感が湧き出ている。

 

 「どうかしている……」

 

 こんな事で喜んで、まるで子供みたいではないか。

 平素の自分がそうするように、くだらないと片付けようにも震えが止まらない。

 この挙動……泣いているのか?涙が頬を伝いはしないが、己の動きはそれを物語っている。

 

 「僕はどうかしている……」

 

 『それでいいのよ、久右衛門』

 

 九衛門の体の内から声が聞こえる。

 

 「む、母上ですか……此度は少々激情の剥き出しが過ぎましたなあ」

 

 『でも、あの御方は許してくれた。それもあなたに期待しているからこそ……』

 

 「………………」

 

 母を名乗るなら、もう少しかける言葉があってもいいのではないかと、九衛門は考えた。嫌、九衛門に言葉をかけるものは母として常識で括れるものではないのだ、分かっている……

 

 『ああ……可愛い久右衛門。血が見たいわ、社会の守護者面をした陰陽連の後継達の、悍ましく赤い血が……あなたがやり遂げるのよ、久右衛門。他の誰でもないあなたが、牙鬼幻月の血を受けたあなたが』

 

 「………………ええ、楽しみにしていてください」




Eパートまで長くなってしまいました。
面白かったと思っていただけると幸いです。
日本史で書かれてる事振り返ると、壱与ちゃん曇らせイベントが多すぎる件について(壱与→紫苑→その後とバトンを繋いでいった場合)
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