世界の破壊者のヒーローアカデミア 作:白滝
続きは未定です。
題名は仮面ライダーW第37話「来訪者X/約束の橋」のオマージュ(?)です。
街の少し入り組んだ路地裏の奥にあるもはや使われていないことが一目でわかるような廃工場。そこは現代社会の犯罪の大多数を占める個性を使った犯罪者の溜まり場と化しており、毎日のように非合法の武器や薬品と言ったものが取引されていた。しかし、そのような
「あ……ここは?」
あたりを見渡して緑谷は呟く。学校でいつものように彼の幼馴染に揶揄され、行く当てもなく──家に帰る、という手段もあるのだが──彷徨っており、文字通り流れて来てしまった、といったところだろうか。周囲を見渡せば過去に工業地帯であった工場の残骸しか見当たらずずっとこの街に住んでいながらも見たことのない風景であることがわかる。
(ここは……廃れた工場跡?でもそれにしては人の気配が……)
困惑しながらも考えつつ歩みを進める。戻る、という選択肢もあるが生憎どうやってここに来たのかわからない以上、戻っても迷うだけだし人の気配もあるんだから道案内でも頼めないだろうかだなんて考えつつ人の気配があった方向へ進む。この廃工場を知る人間からすれば愚かさえ見えるだろう。当然だ。学生は個性を使う権利さえ持たない。ましてや多対一で勝てる戦闘能力など有している方がまれだ。加えて、緑谷は無個性。わかりやすいほどに無力だった。
ギイ……と重い金属扉が音を立てて開く。だが騒ぎ回る敵からすれば雑音の1つに過ぎず、特に気づかれることなく中を見ることができた。中には空き缶や空き瓶、使われた形跡のある薬の袋──それも市販品ではない──だったりが落ちていて、中心に置いてある大きな机には縁が鉄を使って造られたのであろう黒いトランクケースが開いたままおいてあり、その中には
「ヒッ……!」
緑谷はその衝撃にも恐怖にも等しい感情と中の肌で感じる異常な空気に後ろに気圧され、転んでしまう。不幸だった、と言わざるを得ないのは転んだことで大きな刺激を背中が一身に受け空気の入っていない音が漏れた後に雷声が出てしまったことか。
「ア゛ッ……」
急に外から聞いたこともない人間の張り上げたような声が聞こえたら警戒だってする。それが常日頃からヒーローと戦っているここの敵からすれば当然のことだ。そして、違法行為だろうが何であろうが罪悪感などないといわんばかりに行動に移す敵。緑谷に死の危機が迫っているのは明らかだった。それを理解している緑谷は重い体を無理やり動かし、後退する。とはいえ足もろくに動かないほどに体が強張っている状態だ。そう動けやしなかった。そして、そこに追いついた敵の一人が血走った眼で緑谷を睨み付ける。
「チッ……テメェ、なんでこんなとこにいんだぁ?」
ドスの効いた声。それにより緑谷は尚一層震え上がる。そして後ろから出てきた他の敵も緑谷を見て、最初に出てきた敵に耳打ちをする。要はここで殺してやればいいのではないか、ということだ。それが聞こえない緑谷でも危害を加えられるであろう事は理解できた。最初に出てきた敵は嘲弄するような嗤いを浮かべ先ほど緑谷が見たUSBのようなもの──ガイアメモリと呼ばれる──の中で紅かったものを構え、起動する。
機械的な音が鳴り、男は生体コネクタに端子部分を押し込む。するとメモリ自体が体に取り込まれて男は異形そのもののような怪人に変化する。荒れ狂う火砕流のような見た目のそれは文字通りの化け物だった。そしてこの怪人、マグマドーパントの力によって周囲の温度は上昇し、マグマドーパントは火の玉のようなものを創り出して緑谷に向かって放つ。
──その時だった。
緑谷が目を閉じた瞬間に銀色の幕のようなものが火の玉を消し去り現れたのは。緑谷もマグマドーパントも知りえぬ情報ではあるがこれはオーロラカーテンと呼ばれる能力であり現象。そしてこの現象がある、ということはこれを通りこの世界のこの場所に現れる人間がいることの証左。
事実、幕の中からはブレザーのような黒い学生服にマゼンタのセーターを着てマゼンタカラーの2眼カメラを首から下げた高身長の少年が現れた。
「なるほど、ドーパントか。だが、Wの世界は既に訪れた後だ。ここにも財団Xがいるのか?」
少年の独り言に困惑したマグマドーパントは激昂したように叫ぶ。
「お、おお、お前っ!何者だ!?」
「何者だと?フッ……通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!!」
少年はニヒルに笑い懐からベルト……ディケイドライバーを取り出す。そして、装着してカードを取り出す。緑谷は後ろから恐怖におびえ、震えながらも突如現れた少年を凝視していた。少年はカードを構え、一言言ってカードをドライバーに入れる。それに対応するようにドライバーからは先ほどのガイアメモリから出た音とは違うような機械音が鳴る。
「変身!」
KAMEN RIDE
DECADE
「え……」
そして10の灰白色の体が少年を中心に集まり、黒いアーマーとなって少年を覆う。そして10のマゼンタ色のカートリッジのようなものが頭蓋に集まり、体のさまざまな部分がマゼンタ色に変化する。そして、瞳は鮮やかな緑になり、頭の先端が黄色く光った。彼の名、いや彼が変身したライダーの名は仮面ライダーディケイド。ある世界において世界の破壊者と言われた存在だった。
緑谷は啞然としたようにディケイドを見ており、その視線に気づいて緑谷の方へ振り向き、早く逃げろ、とだけ言い残して再びマグマドーパントと相対する。
ディケイドは相手がドーパントであることぐらい理解している。そのため、もう一枚別のカードを取り出し、ドライバーのバックルを開いた。
「ドーパントにはこれだな」
KAMEN RIDE
W
カードが読み込まれ、姿は瞬く間にマゼンタ色の体から緑と紫に近い黒で構成されたこの世界にも存在する風とエコの街、風都のヒーローであり仮面ライダー、仮面ライダーWの基本形態であるサイクロンジョーカーに変わる。それに対しマグマドーパントは気圧されつつも火の玉を放ってくるがディケイドはライドブッカーをソードモードにして火球を切り裂いていく。本来であれば変身したライダーにあった行動を行うが今回は緑谷出久という守るべき人間がすぐ後ろにいるために自重しつつ立ち回る。火球を薙ぎ払い、廃工場の上へと移動するとそれに対抗するようにマグマドーパントが付いてくるのが見えた。
(ここら辺で変えておくか)
100mを5.2秒で駆けるWの速度を生かし、現場から離れつつディケイドはライドブッカーをソードモードからブックモードに戻しカードを取り出す。描かれているライダーは色の変わったW……つまり、フォームライドだ。カードを再びバックルに入れ、機械的な音声が流れだす。
FOAM RIDE
W LUNAJOKER
忽ち姿は緑と紫から黄と紫へと変わり、瞬時にマグマドーパントにルナメモリと同様の効果ともいえる変幻自在の手足を利用して攻撃を仕掛ける。マグマドーパントは負けじと火球を多数放出するが、どの火球も伸縮変幻自在と化して腕にかき消されていく。焦ったようなマグマドーパントは体中を覆う炎のようなものから高熱の熱波を放出してくる。が、決定打たりえるどころか聞いていないかのようにディケイドはいなしてマグマドーパントに近づいていく。もう目前となったところで飛び上がり、空中にいる間に3度相手を蹴る、という器用なことをやってのけて着地、ジョーカーがベースになっている左腕を軸に回転して右腕でパンチを鳩尾、肩、顔と殴ってバランスを崩させて追撃。攻撃させる暇すら与えずに10mは優にあるであろう高さまで蹴り上げ、ルナジョーカーからサイクロンジョーカーにフォームを戻して黄色いカードをバックルを開いてドライバーにいれる。
「これで仕舞いだ」
FINAL ATTACK RIDE
W
サイクロンメモリの効果と同様の効果が発揮され、ディケイドは空中に蹴り上げられたマグマドーパントよりも高いところまで移動し足にエネルギーが収束されていく。ファイナルアタック、その名にふさわしい威圧とエネルギーなのが肌で分かるほど強烈な風が吹き荒れている。
突然かもしれないが、メモリブレイクと呼ばれるドーパントと化した人間をガイアメモリを破壊して体の外に出すことで使用者自体の死を回避する、というドーパントの倒し方があるのだが、このメモリブレイクで必要なのはドーパントと同じくガイアメモリを使用したマキシマムドライブという名のガイアメモリを使用するライダー固有の必殺技でありメモリの能力を完全に発揮することができる状態でしかできないのだ。そのため、ガイアメモリを使用していないディケイドであれば本来はメモリブレイクを行うことはできない。だが、今回のような事態であれば異なる。ディケイドは全く別の仮面ライダーに変身し、その能力を行使できる。つまり、Wでのファイナルアタックライド、ということはWの必殺技の一つであるジョーカーのマキシマムドライブで放たれる仮面ライダーWが最初に使用した必殺技、ジョーカーエクストリームを使用できる、ということだ。
空中で両足を前に突き出すようにしてキックを構え、ディケイドはマグマドーパントに向かって蹴りを放つ。空中で縦に真っ二つに割れて、サイクロンとジョーカーによる二連撃の蹴りだ。これを食らったマグマドーパントは耐えられるはずもなく爆散し、敵の一人であった男とマグマガイアメモリに分離して男は気を失って倒れ、ガイアメモリは空中で砕け散る。
「これで終わりか」
ディケイドは終わったことを確認し、警察に連絡だけして変身を解き、緑谷のいた場所へと向かう。彼が逃げられたか、あるいは彼が怪我を負っていないかの確認だ。そもそも少し別の場所へ誘導したとはいえ、最初にいた場所からはそう離れておらずディケイド自身が方向音痴でもないため先居た場所へたどり着くのにそう時間はかからなかった。少年はマグマドーパントと戦い始めたあたりから敵たちが逃げ始めていたのはわかっていたため廃工場内はもぬけの殻であることは予想できており、事実そうであったことを確認して一息ついて扉から少し歩いたところに隠れている緑谷を発見する。足腰は震えているが立ててはいるのである程度は緊張は収まったのだろうと考えつつ緑谷に声をかける。緑谷もそれに気づいて一瞬身震いするも少年の方を向いた。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫……えっと、君は?」
身の知らぬ恐怖による緊張とはまた違う緊張を感じているのかはわからないが緑谷の震えは収まっていなかった。結論から言えば見たことのないヒーローの活躍を見て安心した後であるため彼の持つヒーローオタクとでも言える脳がフル稼働を始めていたのだ。そんなことは露知らぬ少年は名前でも聞かれているのだろうと考え口を開く。
「門矢司。通りすがりの仮面ライダーだ」
門矢司、そう名乗った少年は緑谷が口を開こうとしていることに気づきながらも背を向け、歩き出す。そしてオーロラカーテンの中へ消えていき、マグマドーパントと仮面ライダーディケイドの戦いがあった場所には緑谷だけが残った。
「凄い……人だった」
その言葉を最後に緑谷も場を後にする。心の中で熱い情熱のようなものが昂っていることを心のどこかで理解して、仮面ライダーと名乗った少年に思いを馳せながら。
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