瞼の裏   作:米糠稲穂

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第1話

 ――瞼を閉じた時、何か奇妙なものが見えたことはないだろうか?

 

 

 

 瞼をを閉じると人は瞼の裏を見ることになる。それは明るい場所ならモヤのかかった暗い赤のような模様で他にも枝分かれした黒い影などが見える事がある。

 

 まぁ、見えるものは人それぞれだ。

 

 

 

 そんな瞼の裏であるが、私はある日友人から面白い話を聞いた。

 

 それは、瞼の裏に極稀に誰かの背中が見える時があるというのだ。

 

 それが誰なのかについてはわからない。しかし、その人物に似た人物を現実で見かけた時は気をつけたほうがいいという。なんでもそいつは死神で、自分を死に引きずり込もうとしているとのこと。瞼の裏はそういう危険なものを知らせてくれる危機回避の信号が見える部分なのだそうだ。

 

 

 

 最初は冗談の一種や都市伝説と思っていた。

 

 しかし、面白半分でそれを自分で確かめた時……。

 

 

 

 私は見てしまったのだ。

 

 ほんのり薄暗い赤い部屋の中。そこで何かを漁っている男の背中が見えた。

 

 

 

 慌てて目を開くと、友人の顔が見える。

 

 友人に見えたものについて伝えると、友人はからかうなよ、これは俺の作り話だぞとけらけら笑うのであった。

 

 

 

 ならば、私が見たものは何だったのか。

 

 私は帰宅した後、再度瞼の裏を見ていた。

 

 

 

 ――また見える。赤い部屋の中で男がしきりに箪笥やベッドの中を探っている。

 

 何をしているのだ。分からない。ただ苛立ちを覚えているのか呼吸は荒く、舌打ちをしながら何かを探しているようだった。

 

 

 

 瞼を開くと、風呂が湧いた音声が流れていた。

 

 私はそのまま風呂や夕食を済ませ。床についた。

 

 

 

 さて、寝ようかと布団をかぶった時。

 

 

 

(……ドサッ)

 

 

 

「……っ!?」

 

 

 

 押入れからなにか重いものが落ちる音がした。

 

 一体……なんだ?

 

 私は布団の隙間から押入れの方を見た。

 

 するとそこに見えたものは……。

 

 瞼の裏に見えた男だった。やや猫背で古ぼけたニットの帽子をかぶった男。手に何かがこびりついたナイフを握り、ボロボの穴のあいたジーンズを来たコートの男だ。

 

 何故、部屋の中に?

 

 意味が分からない。しかし、相手は凶器を持っている。私は息を殺して、布団をかぶりただじっとしていた。

 

 

 

 彼は乱雑に箪笥やクローゼットを開け、ベッドの下を探している。

 

 リビング……トイレ……風呂を巡回し、荒い足音が少しずつ遠ざかっていく。

 

 なんとかしてここから逃げなければ……。

 

 

 

 私はぎゅっと目を閉じた。

 

 その時、見えてしまったのだ。

 

 彼がじっとこちらを見つめる、その顔を。

 

 

 

 彼は私にこういった。

 

 

 

「――見つけた」

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